異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第270話 プロポーズでも構わない

 子供相手に自信なさげに曖昧な態度をとり続けた結果、こんなことになっちまった。

 だが、今の俺は反省することよりも、まずは何から頭を整理すればいいのか分からねえ。

 天賦の才能では済まされないほどの、コスモスの潜在能力か?

 それとも、コスモスに何かを吹き込んだ、何者かにか?

 

「Hey、ヴェルト。ユーのガールが、紋章眼と話を聞いたが?」

「驚きだゾウ。まさかこの人生で、紋章眼を二つも見ることが出来るとは」

 

 既に消滅したスモーキーアイランドから避難してきた、キシンやカー君たちも、苦笑いしながら空を見上げた。

 

「アカンは、アレは」

「おいゴミ。一体、何があったんだ!」

 

 あまりにも想像からかけ離れた者を見ると、もはや恐怖や反逆の意思もアホらしくなる。

 この機動戦人ダンガムを、どうしろっていうんだよ。

 

「どーすんの、ヴェルト君。パナいヤバくなったけど、しょーじき、コスモスちゃんに何かを吹き込んだ人について、掘り下げたい気もするけど」

「なあ、やっぱ、それって、そうなのか? つか、マジなん? あたし以外でああいうギャル語をふざけて使うやつって……」

「無関係とは思えないわね。まさか、こんなところであの子のヒントが転がっているとはね。どうするの? ヴェルト君」

 

 まったくだ。まさかずっと探していたヒントがここにあるとは思いもしなかった。

 これが偶然なのか、それともただの勘違いなのかは分からない。だが、何かがどんどん繋がっていくような気がした。

 だが……

 

「どうする? そんなの、決まってるさ……」

 

 それでも他に優先することはない。

 昔の俺なら「そっち」を選んでいたかもしれない。

 でも、今現在進行形で進んでいる今の状況を無視して追求するものじゃねえ。

 

「コスモスを落ち着かせよう。間違いが起こる前にな」

 

 そうだ、「今はそんなこと」に気を取られるわけにはいかねえ。

 俺に心から信頼しきった瞳で「パッパ」と呼んでくれるあのガキを、放置できるわけねえだろうが。

 

「普通はお尻ぺんぺんするところだが、コスモスは別だ。全部、父親の所為だから。だから、どんなことをしてでもあいつに間違ったことはさせねえ」

 

 俺の所為でこうなった。だから、俺が何とかしねーとな。

 

「悪いな。俺の所為で、身内のゴタゴタに巻き込んだ」

「へい、ヴェルト、ミーたちはなんだ? 仲間にソーリーを言うのは最大の侮辱! ミーたちは、とっくにユーの身内だ」

「……くはははは、……ああ……ありがとよ」

すると、その時だった。誰かに声をかけられた。

 

「どうして、そこまでできる」

 

そこに居たのは避難したのか、連れてこられたのか、ラガイアが立って居た。生きてたか。

 

「ただの子供のために、命を懸けるのかい?」

 

ただ不思議そうな顔をして。しかし、それもこいつには重要なこと。だから俺は言った。

 

「理由なんて、考えるのも難しい」

 

 そう、理屈じゃねえ。だから、俺はゆっくりと前へ出て、ダンガムを見上げて叫んだ。

 

「コスモス! 俺の話を聞いてくれ! そこから出て来い!」

 

 伝えなきゃならないことがある。だから、コスモスに言った。

 しかし、ダンガムからは、ぐずった少女の声しか聞こえなかった。

 

「う、うう~、パッパ、いじわる。パッパ、コスモスとマッマ、すきじゃないんだ!」

 

 ダンガムの瞳が光った。その瞬間、ダンガムが棒状の柄を取り出し、なんとその柄から赤く光り輝く剣が出現した。

 

「げっ!」

「おおお! あれは、ビームセーバーっしょ!」

「うおおお、あたしでも知ってるじゃん!」

 

 本人は俺におしおきのつもりなんだろうが、魔力か超天能力か、いずれにしろ目に見えるほど神々しく光り輝く巨大なビームセーバーを、コスモスは真下目掛けて振り下ろした。

 まずい! どんだけの威力かは分からないが、どっちにしろこの質量で振り下ろされたら、俺への八つ当たりどころか、被害甚大だぞ!

 

「アルーシャ、俺に合わせろ! ふわふわ大津波!」

「任せて! アイスワールド!」

 

 俺が海の水をかき集めて、巨大な壁となってビームサーベルを防ぐ。

 その海を、アルーシャの能力で凍らせる。何重にも張られた分厚い氷の壁はドーム上となり、ダンガムの攻撃を何とか防いだ。

 だが、威力がヤバイ。氷にヒビガ入ってる……

 

 

「なかなかパンクなレディだ! だが、今はロックよりスリーピング! ねーんね~ころ~りよ、お姫様~、おね~むり~なさ~い」

 

 

 キシンが暴れるダンガムを取り押さえるべく、子守唄を披露。

 だが、その数秒後には、構わずダンガムが左拳を振り下ろした。

 

「ワオ!」

「だー、へたくそな子守唄歌うから効いてねえじゃねえか!」

 

 キシンの言霊が弾かれた。どうやら相当奥深くにコスモスは潜り込み、そして防御力のあるボディなんだろう。

 さらに、強固。右手の片手持ちビームセーバーで一撃、そして左拳のもう一撃で、俺たちの張った氷の障壁を粉々に打ち砕いた。

 

「キュートガール、子守唄はユーのジャンルには合わないなら、少しヘビメタルにいくぞ?」

 

 キシンが宙に飛んだ。物理的な攻撃ではなく、歌でダンガムを崩していくつもりだ。

 それに安心もあった。この敵も味方も含めたメンツの中でも最強なのがキシン。

 キシンならば……

 

「やーなの! パッパはコスモスとマッマのだもん!」

「ッ!」

 

 宙に飛んだキシンに強烈な振り下ろしを一閃。キシンが反射的にクロスアームブロックで防御した瞬間、目を覆うような閃光と火花が世界に拡散した。

 

「ぐ、ぬ、っ、あ、アンビリーバボー……」

 

 空中で受け止めたキシン。だが、その表情が明らかに苦痛でゆがんでいる。

 

「受け止めた!」

「いや、で、でも、あのキシン君が押されてる! なんてパワーだ!」

「つっても、ある程度堪えてるキシンもフツーにスゲーけど!」

 

 両者のぶつかり合いで、行き場のなくしたエネルギーが海面を螺旋状に抉っていく。

 信じられないほどのエネルギーを生み出してるのは、まだ二歳の子供だぞ!

 

「やめなさい、コスモス! 言うことを聞いて! マッマの声が聞こえないの?」

「やめるんだ、コスモス!」

「コスモス様!」

「コスモス姫!」

 

 割って入ることが出来ないものに出来るのは、せいぜい叫ぶことだけ。

 しかし、それでもコスモスは止まらない。

 

「ミスターカイザー。ヴェルトのガールだ。手荒にはできない。OK?」

「やれやれ。暴走した紋章眼を相手に手抜きとは、なんとも無理難題だゾウ! ゆくゾウ、森羅万象!」

 

 その時、重い腰を上げてカー君も動いた。

 海底から出現する大樹の枝が、次々とダンガムの手足に絡みついていく。

 

「コスモス様! 貴様ら、コスモス様に!」

「動きを封じるだけだゾウ! 小生とて、幼子を手にかける気はない!」

 

 さすがカー君、頼りになるぜ! いや、でも……

 

「カー君! 木が……メキメキ折れかかってるぞ!」

「ぐっ……やはり死んだ海ではこの程度の力しか……しかし、それを差し引いても何というエネルギーだゾウ!」

 

 大樹の枝の拘束が自力で破られようとしている。

 枝や蔓が次々と引きちぎられている。

 

「巨大には巨大や! ユズリハ、いくで!」

「ヤダ。兄だけでやれ」

 

 だが、コスモス宥め隊の動きは止まらない。ジャックポットがスーツの上着を脱ぎ捨てた。

 すると、瞳が赤く染まり、全身が盛り上がり、爪、牙、そして角。朱色に染まった巨大な竜が出現し、ダンガムを無理やりホールドした!

 

「うおおおお、ジャックポット!」

「なんちゅ~、パナイ豪華なオンパレード!」

 

 ああ、豪華すぎるな。本来豪華すぎる魔族、天空族、そしてラブ・アンド・ピースの面々も唖然としてやがる。

 

「こ、この方々は一体!」

「信じられん……なぜ、こんなバラバラの種族たちが一つに……」

 

 ウラとエルジェラからすれば、自分たちこそが異なる種族と協力し合える存在だと思っていたはずだ。

 だが、今この場には、こいつら以上に規格外なメンツが種族云々なんか無視して、これだけのことをやっている。

 驚いて当然だ。そして、俺は頼もしすぎて誇らしかった。

 

「今や、あんさん! ワイが抑えとる間に、なんとかしいや!」

「ああ、分かってる!」

 

 ジャックポットが取り押さえてくれている間に、コスモスを。

 

「ヴェルト君、あの子が欲しいのは、今、この場を誤魔化すための言葉じゃないわ。むしろ、テキトーな言葉は、あの子は見抜くわ。あなたがあの子を想う素直な気持ちをぶつけるしかないのよ」

「分かってるよ、アルーシャ。だが、その前にはまず……話をつけとかなきゃならねえからな」

 

 だが、それをやるには、俺一人じゃダメだ。

 だって、コスモスは言った。

 俺が居るだけじゃダメなんだ。

 みんなが居ないと。

 

「エルジェラ!」

「ッ、は、はい……」

 

 コスモスのために今すぐにでも飛び出しそうだったエルジェラを止めた。

 エルジェラは反射的に俺の声に止まった。それは、記憶というよりも、ムサシのような本能的なものなんだろうけどな。

 

「エルジェラ。もう、今更だから、正直に言う」

「………はい……」

「ワケあって、お前もウラも、俺を覚えてねえ。知らないんじゃねえ。覚えてねーんだ」

 

 その言葉には、エルジェラも、そして当然ウラも、驚いたというよりも、どこか納得したような表情をしていた。

 

「………やはり……そうだったのですか……いえ、……もう、そうでないと納得できないことが……では、そうなのだとしたら、コスモスは本当に、私と……そして、あなたの?」

 

 そうだ。嘘じゃない。俺はただ、事実をそのままに述べた。

 

「どうしてお前らが俺を覚えてないのかは言えない。それと、ぶっちゃけた話、俺とお前は出会ってそれほど長く一緒に居たわけじゃねえ」

 

 二年前、もしあのまま一緒に過ごしていたら、ひょっとしたら違っていたかもしれない。俺たちはただの仲間から、本当の家族になっていたかもしれない。でも、そうはならなかった。

 

「コスモスは……俺の魔力を受け継いでるが……俺たちが愛し合って生まれた子供なわけじゃねえ。でもな、それでもこれだけは信じてくれ」

 ただ……

 

 

「それでも俺はコスモスが、心の底から愛しいぜ」

 

「……ヴェルト……様………」

 

 

 ああ、そうだよ。それは否定しないさ。どうやったら、嫌いになれるってんだ。

 

 

「見ず知らずの男にいきなり言われて気持ちワリーかもしれねえが、俺をコスモスの本当のパッパにしてくれ………いや、もうなるからな! そのつもりでいろ! だから、マッマもよろしくな!」

 

「あ、あの、それって、つまり……」

 

「俺がパッパでお前がマッマ! そしてコスモスは……俺たちの子供だから、そのつもりでいろってことだよ!」

 

 

 もはやプロポーズだな。

 まあ、もうそれでもいいけどな。

 俺がコスモスのパッパでいられるならな。

 

 フォルナ……それが嫌なら、さっさと……お前も思い出せよ。

 

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