異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第319話 メテオカオス

「ラガイア!」

「ッ……が……」

 

 まずいか?

 

「お姉さま、およしください!」

「甘いな、エルジェラ。お前の超天能力では、私には勝てんぞ?」

 

 エルジェラも近づくことすら出来ずに、目に見えない力場のような壁に弾かれてる。

 

「うわああん、マッマをいじめるの、やなの! おばちゃんの、バッカ!」

「ちい、なかなかやるじゃねえかよ、ドブスが。この俺様を見下しやがって!」

 

 コスモスと同じ能力とはいえ、質が違う。研ぎ澄まされている。

 

「どいてよーっ!」

『大人しくしてください、コスモス様。リガンティナ皇女の力が続く限り、このクラウドジャイアントも半永久的に動きます』

 

 コスモスのダンガムすら、リガンティナにとっては片手間でどうにかできる質量なんだろうな。

 確かに、想像以上に強いな。

 

「いくぞ、シャウト! リガンティナ皇女を援護だ!」

「待つんだ、バーツ、無闇に飛び出……上だ、バーツ!」

「ウガアアアアアアアアアアアアア、ドカス共が騒いでんじゃねえ!」

 

 割って入ろうとしたバーツを、さっきぶっ飛ばされたチーちゃんが拳骨気味の拳を振り下ろすが、咄嗟に反応したバーツは見事に剣で受け止めた。

 

「テメェ、七大魔王チロタン!」

「ったくよ~、どいつもこいつも……コスモスの周りでギャーギャー騒いでんじゃねえよ!」

 

 バーツの炎の剣がチーちゃんの表皮に傷をつける。

 それは、決して致命傷とは言えないものの、自身の表皮を傷つけた敵を前に、チーちゃんは再び怒号を上げる。

 しかし、その魔王の叫びに、もうバーツたちは怯まねえ。

 

「姫様、お下がりください。ここは僕たちが」

「負けるかよ、これが最後の戦いだ!」

 

 いや、怯まねえだけじゃねえ。

 

「このクソガキ共が…………ぶっころ――――」

「そうはさせん!」

「ッ!」

 

 怯まねえどころか、怯ませやがった!

 バーツ、シャウトと対峙しようとしたチーちゃんに、巨大な戦斧を肉体にめり込ませた!

 

「ガハッ…………」

「チーちゃん!」

 

 それは、もはや岩……いや、巨大な山のような存在感。

 姫に近づこうとする魔王を、不退転の覚悟で滅っしようとする、最強の騎士。

 

 

「貴殿らの想いがどこに向かっているのかは分からぬ。だが、我らとて引けぬ思いがある」

 

「ガハ、ガハハハハハハハハ、この俺様にやってくれるじゃねえか。二年前のどっかのクソガキみてーだぜ」

 

 

 フォルナの懐刀として、フォルナが生まれた時から傍に仕え、そして守り続けた男。

 世界に『巨人殺しのガルバ』として名を轟かせた男。

 さっきまで、みんなこの荒れた状況を呆然としているだけだったが、今じゃ持ち直して、余計荒れた展開になってきたな。

 

「サンヌ、ホーク、ペット! お前らは姫様とタイラー将軍を連れて、本陣に戻れ! そして、『カイレ様』と『ガゼルグ様』にこのことを伝えてくれ!」

「シップ、チェット、ハウ! 僕たちはガルバ隊長と共に殿だ! リガンティナ皇女の援護だ!」

 

 そうだ。多少の非現実的な展開に動揺することはあっても、こいつらはもうプロだ。

 引きずってぼんやりしていて、取り返しのつかない事になることのほうが問題だ。

 そう、これがこいつらの成すべきことだ。

 

「待ちなさい、あなたたち! 『聖母カイレ様』……そして、あの『猛聖獣ガゼルグ様』まで来ているというの?」

「バーツさん、シャウトさん、私たちの話を聞いてください。この戦争、これ以上は……」

「アルーシャ姫……エルジェラ皇女……わかんねーのは、お二人っすよ」

「ええ。お二人が、操られていたり、脅されているわけではないというのは分かりました。しかし、ならばこそ……もう僕たちも止まることができないのは、承知の上のはず」

 

 いつまでもガキの頃のようにわがままで、「あれやる、これやる、これやらない、やっぱやめた」なんてことは、こいつらには出来ない。

 それが本気の言葉だからこそ、もう止められない。

 そう、止まらない。それこそ、この戦場そのものを一変させるようなことが再び起こらねえ限り。

 そう………丁度今、空から降って………アレ?

 

「…………えっ?」

「はっ?」

「?」

「……………うそ…………」

 

 それは、何の前触れも無かった。

 

 

「ちょっ……」

 

 

 俺も、仲間も、天空族も、人類大連合軍も、誰もが共通で、夢か幻を見たかのように呆けてしまった。

 まるで、映画のようなワンシーン。

 世界滅亡を題材にしたスケールのでかいアメリカ映画にでも出てきそうな光景。

 

 

「い、………隕石?」

 

 

 戦場全体を包み込むような影。それは、雲じゃない。

 隕石!

 

「ちょ、冗談だろッ! なんだよ、それは!」

「うそ、………どうして!」

「なんだ、これは!」

 

 言葉がそれしか出ねえ。

 隕石だ。巨大な力を纏って、それは勢いよく戦場のど真ん中に落下してくる。

 どうして? いや、分からねえことだらけだが、これだけは分かる。

 

「あんなもん、落ちたら……ッ!」

 

 誰が死ぬとかそういうレベルじゃねえ! 

 全滅だ!

 

「ッカやろう!」

 

 どこのどいつの仕業だ? 誰がこんなとんでもねえことを、平然と?

 爆弾で爆発とか、テロとか、もはやそんなレベルじゃねえ。

 敵も味方もそういう境界でグダグダしている俺たちを嘲笑うかのような一撃。

 

 

「ッ、どこのクソバカだアアアアアアアアアアアアアアアアア! コスモスに石を投げるんじゃねええええええええええええ!」

 

 

 黄金の弾丸を全身に受けた傷だらけのチーちゃんが真っ先に飛んだ。

 その全身に強烈な爆炎を纏い、隕石に向かって正面衝突する気だ!

 

「ふわふわ世界!」

 

 あんなもの、物質とはいえ操作できるはずがねえ! だが、それでも多少でも威力を!

 

 

「この私の結婚式を、台無しにする気かっ!」

 

「いやなの……いーーーーーーーやーーーーーーなの!」

 

 

 それは、互いに意識したわけではない。

 しかし、この戦場に存在した二つの紋章眼が同時に解放。

 俺の援護をするように、リガンティナとコスモスの力が隕石を包み込んでいるのが分かる。

 

「た……頼む! チーちゃん!」

 

 大爆発。

 燃やしつくせねえ巨大な隕石がバラバラに砕け散った。

 雲も一瞬で拡散した。天空世界はどうなった? チーちゃんは?

 それでもバラバラになった破片が次々と地上に落下し、戦場の至る所に落下し、人類の断末魔が響き渡る。

 この馬鹿げた力……何だ?

 

 

「あーあ、どうして邪魔しちゃうの? あの技ってさ、何発もできないんだよ? せっかく一人残らず殺せたのに、迷惑じゃない? 殺しちゃうよ? って言っても、チロタンはどうなったの? 死んじゃった?」

 

 

 別に、その声は特別でかかったわけじゃねえ。

 一定のトーン。なのに、俺たちの頭から爪先まで一瞬で寒気を与えるほどの脅威を感じさせた。

 そして……

 

「な……なんだ、あれは!」

 

 リガンティナが思わず声を荒げる。

 それは、怒涛の勢いで進軍していた巨大ピラミッドの兵たちが、次々と吹き飛ばされていくからだ。

 その中心にいる、巨大な黒い影。

 

「ドラゴン?」

 

 いや、ただのドラゴンじゃねえ。

 翼というよりも、コウモリのような羽。

 ドラゴンの牙というよりも、吸血鬼のような牙。

 竜の瞳というよりも、真っ赤な満月のような瞳。

 

 

「あれは、まさか……世界最悪の混血……ヴァンパイアドラゴン……」

 

 

 誰が言ったかは分からない。そもそもそんな生物を知らない。

 だが、それでも誰もが『ソレだ』と理解してしまった。

 それは、最強と最強の組み合わせ。正に最凶。

 

 

「とりあえず……どういう世界にするかの討論は、こいつら皆殺しにしてからしようよ? ね? ヴェルト君? まあ、君も巻き添えで死ななければの話だけど?」

 

 

 世界をハメるつもりで動いていたヤヴァイ魔王国は、世界同盟にハメられた。

 俺もそう思っていた。

 だが、これを目の当たりにして、俺は思わず思っちまった。

 果たして世界同盟は、『コレ』を想定していたのだろうかと。

 もう、敵とか味方でなく、天災にすら思えちまう。

 これは、世界同盟にとっては誤算にはならないのか?

 ついに、世界最強クラスではなく、生物界最強種がベールを脱ぎやがった。

 

 

「じゃあ、まずは皆殺しから始めようか? 月光眼……メテオディープインパクトやっちゃうから?」

 

 

 そして、ベールを脱いだ瞬間に、全てを終わらせようと、宇宙より破滅の使者が次々と降り注ぎ、砂漠を燃やしつくせぬ炎で埋め尽くした。

 先ほどのような全てを消滅させるような巨大隕石ではなく、小粒な……と言っても、それでも一つ一つが建物を遥かに越える質量であるのだが……それは、この一帯を消滅させるかのごとく、生命を容赦なく摘み取っていった。

 

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