異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第321話 謎の聖騎士の言葉

 

「さて……つぎは、このメテオのシャワーだな。……俺のライブは終わらねえ。俺が歌えば路地裏だろうと、そこは誰にも壊せねえ聖地になるのさ! ドリームなドームは誰にも手出しできねえ!」

 

 軽く歌を口ずさむと、俺たちの周囲にドーム上の透明な膜が出現。

 恐らくは、キシンの魔法障壁か?

 

「さっきのジャイアントメテオならまだしも、今のスモールメテオではミーのウォールはデストロイできない。この間に、ネクストアクションをプランニングだ、ヴェルト」

 

 なんつー、規格外な。

 聖騎士を涼しい顔で秒殺しては、降り注ぐ隕石からアッサリとガード。

 フォルナたちが可哀想なぐらい衝撃受けた顔して、リガンティナも怖い顔して睨んできてる。

 

 

「そ、んな、う、そだろ。ガゼルグ様だぞ! 伝説の英雄の一人、聖騎士の一人! その武威や戦歴は、現役の十勇者以上かもしれねーんだぞ!」

 

「この鬼………六鬼大魔将軍のゼツキと同等? いや、まさか……それ以上……」

 

 

 十勇者と比べねーほうがいいぞ? バーツ、ガルバ。

 なんてったって、こいつは一人で十勇者ほぼ全員を一斉に相手して余裕だったんだから。

 

 

「へい、youたちは、ミーに怯えてるタイムはない。ビコーズ、youたちは自分たちがハメたとシンキングしているだろうが、アンラッキーだ。誰もイマジネーションできなかった組み合わせがこのカントリーにはある」

 

「最悪の組み合わせ……どういうことですの?」

 

「へい、ルック!」

 

 

 キシンが荒れ狂う戦場を指差す。次々と人類が傷つき、倒れ、命を失っていく……ん?

 

「ッ、これは!」

 

 ようやく気づいた。倒れた人間たちが次々とユラリと立ち上がる異常な光景。

 それは、怪我が浅かったからではない。

 その目や肌に生気がない。死んでいる……

 では、死んでいるなら、何故立ち上がる?

 

 

「ジャレンガ王子が命を摘み取り、死んだ数だけ魔王ネフェルティのネクロマンサーで兵と変えているようだのう」

 

「は? まじ? バルナンド、それって、まぢやばくね?」

 

「ヤバイどころではない。戦争では、死んだ仲間の屍を越えて進軍するものじゃが、超えようとした屍が起き上がって襲い掛かる。悪夢じゃよ……」

 

 

 目の前で仲間が死に、その死んだ仲間がゾンビ兵となって反撃してくるとか、最悪すぎる展開だ。

 バルナンドの言うとおり、悪夢だ。

 

 

「まあ、プラス、まだ魔王ラクシャサがムーブしていないというのもあるが……アレがムーブしたら、味方もエスケープしないと、ピンチだ」

 

「ッ……く………」

 

「プリンセス・フォルナ。いくら、天空族や聖騎士を引き連れても、ユーたちのビクトリーはべリーディフィカルトだ。それでも、バトルは続行するか?」

 

 

 想定外ではなく、これは計算外だったんだろう。

 ジャレンガとネフェルティが組んだ状況下の悪夢のレベルを、誰も計り切れていなかった。

 十勇者も、聖騎士も、この状況は覆せないか?

 

「ふん、それがどうした。角人間……お前こそ、あまり侮らないことだな、天空族を」

 

 この中で、唯一焦りが見えないのはリガンティナ。

 毅然とした態度で、翼を広げる。やる気だ。

 キシンも溜息を吐きながら、指関節を鳴らす。

 おいおい、少し落ち着……

 

 

 

「戦う必要は無い。己の身を守ることに意識を保て」

 

 

 

 その時、誰かの声が俺たちに響いた。

 

 

「それにしても、さすがは、キシン。ガゼルグを全く寄せ付けないとは、恐れ入る」

 

 

 声のした方向に振り向く。

 

 

「世界最強の五人。『弩級魔王ヴェンバイ』、『武神イーサム』、『狂暴音術士キシン』、『狂獣怪人ユーバメンシュ』、『聖母カイレ』。何十年も続く格付けも、未だ衰えぬか」

 

 

 そこには、人? 魔族? 亜人? 一体、何者か分からないが、誰かが居た。

 

 

「金色の彗星フォルナ、超魔天空皇リガンティナ、二人はまだ必要なのだよ。これからの世界には。無駄に瞬間を送らないことだ。特に、リガンティナ皇女。その瞳の意味を知るものとしてな」

 

 

 それは、どこかハッキリとしない存在感。不鮮明な存在。翼も無いのに、ゆっくりと空から降りてきて、俺たちの真上に止まった。

 

「ジャレンガ王子については心配いらん。世界が悲劇と絶望に包まれしとき、その闇を晴らすのは『勇者の聖剣』と決まっている。七大魔王のシャークリュウ………そして……四獅天亜人のカイザー大将軍……お前が負けた時のようにな。」

 

 そこに居るはずなのに、実態がぼやけて揺れ動いている。

 全身真っ黒で、頭部も黒い目出し帽のようなものを被っている。

 

「本来であれば、二年前……余計な邪魔さえ入らなければ、キシンも同様に始末できたのだがな。そこが唯一の誤算だ。全てのシナリオが、まさかお前のような小僧に乱されるとは、面白いものだな、ヴェルト・ジーハ」

 

 一見すると強盗にしか見えないし、怪しいし、だが、今はこんな変な奴に構っている場合でもないのだが、それでも俺たちは誰もが、現れた謎の人物に目を向けていた。

 

「何者だ……名を名乗れ」

 

 リガンティナが一言尋ねると、謎の人物は穏やかな口調で応えた。

 

 

「ただの、怪しい者だ。そうだな……『謎の聖騎士ヴォルド』とでも名乗っておくか」

 

 

 ギャグなのか? あまりにも唐突過ぎて、反応できなかったぞ。

 

 

「えっと……こいつも五人の内の……えっと、タイラーにキモーメンの親父に秒殺ジジイ……んで……」

 

「YES、ヴェルト。『聖母カイレ』も入れて、これで五人……もっとも、ミーもこの人物のことは全く知らない……五人の聖騎士で一人だけ素性不明と言われた騎士……ということだけ」

 

「そうか……でも、どうしよう……思わせぶりに大物ぶって登場してきて、色々と驚くべきなんだろうけど、キシンの強さやジャレンガの暴れっぷりを見てるとショボく見える……」

 

 

 言葉に詰まったが、あまり驚くことができなかった俺たち。

 まぁ、確かに只者じゃないし、只ならぬ何かを感じたのは事実だけどな。

 

「……ヴェルト・ジーハ……」

「あ? 俺?」

「ラブが世話になっているようだな。いや。今は……マッキーと名乗っているようだが」

「マッキーだと?」 

「まさか二人が組んで再び世界へ出るとは思わなかったよ。世界の大まかな流れは分かっても、一人一人に目を向けると、一寸先の人生すら分からぬものだな。ある意味で、この世界最大の誤算はお前の存在だったのかもしれないな」

「なんだよ……何か文句でもあるのか?」

「……かもしれんな。流石に聖王様ですらお前ひとりの存在にここまでかき乱されるとは思わなかったからな……世界がお前の記憶を忘れたというのにだ」

 

 って、そういえば、マッキーだけここに居ないな。

 キシンたちを見ても「あれ?」ってな感じで気づいてなかったようだが。

 

 

「なんか逆ギレされてるみたいだけど……テメエも聖騎士なら、一応……殴っていいんだよな? タイラーをぶん殴った俺は、見ず知らずの聖騎士ぐらいは平気でボコるぞ?」

 

「そう睨むな、ヴェルト・ジーハ。世界は今日、大きく変わる。その果てで、また会おう。お前たちはただ、この場は戦わずに生き延びることだけを考えればいい」

 

「生き延びるだけ……だと?」

 

「そうだ。これ以上は何もするな。せっかくロアの成長できるチャンス。二年前、それを潰したのはお前だ。今回も逃せば、より面倒なことになる。『ハルマゲドン』まで、多少の時間があるとはいえ、機会は貴重だ」

 

 

 一体、こいつは何だったのか? 威圧感も、器も、何も感じねえ。

 

 

「三つの紋章眼の中で、最も重要であり、所有者に負担が大きくかかる、『真理の紋章眼』。しかし、真理を掴めしとき、ようやく歴史の塗り替えが始まるのだ」

 

 

 存在そのものが希薄なのに、何故か印象だけが俺たちに残った。

 

 

「お前たちは、もうすぐ知ることになる。嘘から出た真実という言葉があるが、そんなことはない。真実があるからこそ嘘が出る。火のない所に煙は立たないのと同じ」

 

 

 そして、陽炎のように体を揺らし、何も無かったかのように、奴は消えた。

 まるで俺たちに、一言釘を刺したかのように。

 

「消えた……なんだったんだ? あいつは……」

 

 結局何も分からないままだった。この様子だと、フォルナたちすら分からなかったようだ。

 野郎は一体何者?

 だが、リガンティナだけは一人違う反応を見せた。

 

「まさか……奴は、『モア』の存在を知る者か?」

 

 なんだよ、それは。余計に頭が混乱するから、これ以上やめてくれ。

 まあ、今はそんなことよりも……

 

「って、また、隕石が落ちてきたっしょ! キシン、マジこのバリア大丈夫なん?」

「イエース、プロバブリ」

「ぷろばぶりってなんだっけ!」

 

 確かに、今は、奴の言うとおり、生き延びることを考えたほうがよさそうだな。

 

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