異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第325話 バケモノ大決戦

 憎しみ合う二人。

 しかし、奇妙な偶然から、この二人は全く同じタイミングで、同じ言葉を言った。

 

「どういうつもり?」

「どういうつもりですか? それに……他の方々も、大体、カイザー将軍までどうしてここに!」

 

 はは、意外に息ピッタリじゃねえか。

 

「ヴェルト君さ、あのさ、状況分かってるわけ? ボクの味方になるの? それとも敵になるの?」

「君は、タイラー将軍を殴った……ウラ姫の婚約者……ッ、まさか、タイラー将軍を倒したというのですか?」

 

 僅かな静寂。今、この戦場全体が俺に意識が向けられていた。

 

「ヴェルト・ジーハではありませんの!」

「ヴェルト君、君は、何をやっているのよ!」

 

 まあ、注目されることも、もう慣れた。

 

 

「別に、理由なんてねえよ。唾を飲み込むか道端に吐き捨てるか、そこにあんまり理由はねえ。ただ、なんか見ててムカつく喧嘩してたからよ。まあ、理由としてはジャレンガの方が好きだけどな。ムカつくからぶっ殺すとか、シンプルで分かりやすくて小気味いいぜ。下手にイッちまった目で、正義だなんだを押し付ける奴らよりな」

 

「むっ………どういうことですか、僕たちを侮辱しているんですか?」

 

「勇者様……あんたも、後半の方は分かりやすくて嫌いじゃなかったけどな。テメエの女を傷つけられたとかさ……まあ、途中で正義とかゴチャゴチャこんがらがって、アレだったけどな」

 

 

 どうして、俺はこの場に居るのか。

 

 

「あのさ、それでさ、ヴェルト君? ちょっとどいててくれない? 話は後でしようよ? 今、そいつ殺すからさ?」

 

「邪魔をしないでください! ウラ姫の婚約者といえど、言っていいことと悪いことがあります! 僕たちは、これまでの全てをこの戦いに捧げるためにここに来ています! 彼らを滅ぼさない限り世界に光は無い!」

 

 

 それは、この戦争を止めたいからでも、義憤に駆られたからでもない。

 

 

「お前らの事情なんか、興味ねえよ。まあ、いきなり襲われてるジャレンガの方には同情するけどよ。ただ、そういうの抜きにして、どっちの味方にもならずに世界を獲るって宣言した以上……俺の前でうるさい喧嘩を続けてーなら………かかってきやがれ。まとめて俺が面倒見てやるよ!」

 

 

 だから、これでいい。

 両方俺の敵だから。だから戦う。それでいい。

 

「それは容認できないな、ヴェルト氏」

 

 その時、空から声が聞こえた。

 

「静かだと思っていたら、今出てきたか……テメエ……」

 

 そこには、天使と悪魔の翼を羽ばたかせ、爽やかな苦笑を見せる、ルシフェルが居た。

 

「なんだ、アレは! 見たことないぞ!」

「異業種? 混血? しかし、見たことないぞ!」

「何者だ、あいつは!」

 

 無論、こいつの存在は、人類大連合軍にも分かっていない。

 いきなり何だ? と思われる人物の登場に、もはや誰も訳分からず。

 

「テメエの部下でもないのに、許可なんかいらねーだろ? ルシフェル」

「そういうわけにはいかないさ。君はドラにとっても大切な人間だ。それが、こんな無茶なマネを……そして、せっかくの聖騎士や真理の紋章眼を抹殺できるタイミングを逃すわけにはいかないからね」

 

 そんな中で俺たちの対立は続いた。

 

「だから、そういうのがウザッテーって言ってんだよ。だいたいだ、テメエもそれは誰の命令で動いている? ハッキリ言って、クロニアって女がそれを考えてるとは思えねーんだけど?」

「……確かにクロニアはそういうことは言わないだろう……しかし、神族の力を人間に取られるわけにはいかない。ここで彼らを打倒するのは、間違いではない」

「俺がいつ、正しいことしかしない優等生だと勘違いした? 間違ってることだと分かっていても、それでもやっちまうのが本能ってやつなんだよ」

 

 退かねえよ。俺は。 

 苦笑していたルシフェルの表情が、段々真顔になって来ていてもだ。

 すると、そんな俺たちのやり取りに溜息をついたのは、こっちからだった。

 

「は~~~~~~~~~~、あのさ………ちょっと、黙ろうか? ヴェルト君?」

 

 ジャレンガだ。

 軽く息を吐いた直後に、腕を伸ばして俺を押しつぶそうとして来やがった。

 だが……

 

「おっと、させへんで!」

「ぬっ?」

 

 そこには、もう一匹の巨大竜が出現し、俺を庇った。

 鬣を纏った、獅子竜という、これもまた奇跡の異業種。

 

「で…………でかい!」

「ちょ、ま、ド、ドラゴン!」

「なっ、こ、これは! しかも、ただのドラゴンじゃない! 朱色のウロコに、獅子の鬣……伝説の獅子竜!」

「どういうことだ、どうしてこんなのが!」

「しかも、あの人間を……ヴェルトという男を守ったぞ! どういうことだ!」

 

 何の前触れも無い、竜化したジャックがジャレンガの攻撃を弾いた。

 

「あ~あ……君……あれでしょ? さっきまで、ボクに恐れて震えてたチビちゃんの同種? なに? 殺すよ?」

「ちょっと黙っときや。あんさんは、ワイらの大将やからな」

 

 突如、自分と同等のサイズ、そして流れる種族の血が半分同じ存在が目の前に現れたジャレンガが目を見開いた。

 そして……

 

「まったく、仕方ないな、ヴェルト氏は。少し眠っていてもら――――」

「ストーップ!」

 

 俺を急いで退場させようと強硬手段に出るつもりだったルシフェルは、今度はその行く手をキシンが阻んだ。

 

「ッ……キシン氏……」

「How are you? ミスター・ルシフェル」

 

 邪魔はさせない。このアホみたいな俺の行動を、守るため、最強の二人が壁となってくれた。

 

 

「ジャレンガはん。あんさんを、そして勇者はんを倒したいんやったら、ワイが相手したるで?」

 

「ミスター・ルシフェル。さっきの続きだ。戦争を続行させたければ、ミーを倒せ」

 

 

 それは、ジャレンガ、ルシフェルにとっては想定すらしていなかった巨大で強大な壁。

 ある意味で、人類大連合軍を相手にするよりも、もっとしんどい相手に他ならない。

 

「ど、え、は? どーなってんだよ! あの、妙な異形の存在が、SS級賞金首のキシンと対峙するし!」

「ヴァンパイアドラゴンに対して『獅子竜ドライゴン』! 何がどうなってんだよ!」

「これは、幻ですの? どうなっていますの、アルーシャ! あれもあなたの……って頭抱えてどうされましたの?」

「……………………君たちねえ…………」

 

 確かに、これはすごい。

 別にこの組み合わせで戦おうなんて示し合わせたわけでもねえのに、なんか凄いことになった。

 だって、最強の魔王キシンと七つの大罪トップのルシフェル。それと、ジャレンガとジャックの怪獣大戦争だぞ?

 

「お、おお…………すご…………」

 

 ドヤ顔で登場したはずの俺でも少しビックリ。

 だが二人共、俺や周りの驚きなんか無視して、とっくにヤリ始めやがった!

 

「面白い…………ならば、行こう! キシン氏!」

「ふっ……カモン!」

 

 先に動き出したのは、ルシフェルだ! さっき、魔王城の中で見せた、音速の動き! 疾い!

 だが、キシンなら………

 

「ノープロブレム、スロウリイだ」

「ッ!」

 

 翼を爆発的に羽ばたかせ、正面から殴りにかかったルシフェルの背後に回り込んでいる。

 完全に見切ってやがる!

 

「……さすがだな……さっきの一幕で、もう俺の動きを見極めたのかい?」

「同じ曲を何度も演奏することが許されるのは………ロックのみ! ミーの歌で体の底から震え上がれ!」

 

 そして、歌さえ届けばそれがキシンの攻撃になる。

 さっき、名前ももう忘れたけど、聖騎士の一人を倒した歌。

 超音波振動!

 

「バイブバイブ! エーンド、ロックンロールクラッシュ!」

 

 だが、ルシフェルが急に右手を前に突き出し、何かを放った。

 

「超振動波!」

 

 空間が一瞬歪んで見えるほどの、揺れ動く何かのぶつかり合い。

 気づけば、キシンは歌をストップ。

 発動したはずの超音波が、ルシフェルには全く届いていない?

 

「…………やはりな…………ユーは、超振動のスキルを持っている」

 

 どこか、合点がいったかのように、キシンは笑みを浮かべた。

 超振動? どういうことだ? キシンの超音波振動と何か似てるのか?

 あまり聞き覚えのない単語や技は、歴戦の戦士が揃う人類大連合軍の連中すら首を傾げている。

 だが、ルシフェルは口笛を吹きながら、お手上げのポーズを見せて笑った。

 

「すごいな。やはり、この技も気づいていたのかい?」

「イエス。さっき、ユーがミーの腕を掴んだとき、嫌な感じがした。まるで、腕が強度を無視してクラッシュするのでは? というイメージ」

「凄まじいものだね、鬼の勘は。その通り…………俺は超振動を使うことができる。あらゆるものを分子レベルまで分解する。さっきのは、君の超音波振動を俺の振動波で中和したのさ」

 

 いや、何お前らだけで納得してるの? この中で、カー君ぐらいしか理解してなさそうなんだけど。

 

「ヒュ~、スリル満点。これでは迂闊に近づけないな。なら…………どんなに遠くでも届くようなソングをプレゼント!」

 

 キシンが飛んだ。そして、小さく何かを呟いた瞬間、何もない場所からギターが出現。

 それは、かつて見た、真っ白なフライングV。

 いよいよ、キシンが本領発揮か?

 だが…………

 

「遠距離なら勝てるとでも? そこは、甘かったな、キシン氏」

「ッ!」

「これがもう一つの俺の牙!」

 

 ルシフェルが左手を伸ばす。振動波? 違う、まるで電気のようにスパークされたエネルギーがルシフェルの手に凝縮され、それは……

 

「いかんゾウ! キシン!」

 

 強烈な光のビームとなって一直線上に突き進んだ。

 俺と同じ技? いや、違う!

 

「ッ、なんだ、この戦いは!」

「うわあああああ!」

「な、何が起こっているんだ!」

「もう、訳が分からねえ!」

 

 俺まで叫びたくなっちまった。 

 だが、今のは大丈夫か? なんか、ビームをまともに食らったっぽいが…………

 

「ヒュ~、デンジャラ~ス」

「キシン!」

 

 生きてたよ。空中に放たれたビームをまともに食らって爆発したかのように見えたが、少し服と髪を焦がしただけで、キシンは笑みを浮かべたまま降り立った。

 これには、ルシフェルもどこか笑みを引き攣らせてやがる。

 

「はは……俺の『荷電粒子ビーム』を防ぐとは……どうやら直前に磁場でも発生させて、方向を曲げたのかな?」

 

 な、なに、ビーム?

 どういうことだ? ここは………

 

「…………か、カデン?」

 

 あっ、戦闘博士のカー君でもさすがに知らなかったのか、額に汗かいて難しい顔してる。

 やっぱ、かなり珍しいというか、規格外の存在なのかもな。この、ルシフェルは。

 

「ふっ、何となく、ユーの正体が分かってきたぞ。他の七つの大罪とは、大きく異なる」

「……はは……すごいな、キシン氏は……俺の居た時代には………居ないタイプだ」

「……アンビリーバブルだな……未来ではなく、ユーが過去の存在というのがね……」

 

 二人自身、それだけで何かが理解し合えたのか、キシンもまたどこか初めて見せるような難しい表情をしている。

 一体、ルシフェルの何を感じ取り、何を分かったんだ?

 

「今は、それはどうでもいいよ、キシン氏。君がそうやって戦うのなら………ヴェルトくんを止めるためにも、俺は君を倒すよ」

「まあ、ユーの正体も存在も、ミーには関係ない。ロックとベストフレンド、それがあれば、ミーのユートピア。ヴェルトは守る」

 

 しかし、掴んだ正体について、二人共言葉では語らない。

 ただ、お互いを戦う相手ということだけを再確認し、再び舞った!

 大地から宙へ、そして、戦いながら遠くの空へと移動しながら、見えないほどの速度で、何度も衝突音だけが響いた。

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