異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第330話 真・勇者の覚醒

 全身に感じた勇者の衝撃を噛み締めながら、俺は再び立ち上がり、俺は俺の言葉で返してやった。

 その言葉を受けてロアは? ただ、小さく微笑み返した。

 

「ふふ、あなたらしい。ですが、どうやらとことん僕たちは相容れないようですね」

「当たり前だ。お前みたいなやつ、別に友達になりたいとも思えねえ。人をさんざん冷やかしても、意外とノリよく俺を祝福してくれた魔王ネフェルティの方が、よっぽど友達にしてみたいぜ」

 

 だから俺も笑い返してやった。

 

「それは悲しいですね。僕は、あなたの言葉で色々と胸にくるものがありました。もっと色々話をしたかったんですが」

「元々性格的に合う合わないは存在するんだよ。合えば魔族も亜人もドンと来いだが、合わなけりゃ人間ってのは近所に住んでるやつとも関わりたくねえもんさ」

「僕は、あなたのこと……どうしても嫌いにはなれません」

「俺はテメエが嫌いだ。残念でした」

 

 ほんの僅かだけ、穏やかな時間が流れた。

 今この場だけ、俺は真勇者ロアではなく、ただのロアという男の心に少しだけ触れられた気がした。

 でも、そんなのどうでもいい。今言ったように、俺は別にこいつと友達になる気はねーんだから。

 そして、お互いにもう気づいている。

 決着が近づいていることを。

 

「兄さん………ヴェルト君………」

 

 まるで祈るように手を合わせて目を瞑るアルーシャ。

 何を祈ってる? どちらかの勝利? 無事? それとも全く別のもんか。

 複雑な表情で俯き、しかし決して止めようともしない。こいつも、もうすぐケリが付くことは理解している。

 

「ロア王子………」

「王子!」

 

 そして、それは周りの連中も同じ。

 この時間が間もなく終わりに近づいていることを、誰もが本能で感じ取っていた。

 ロアが勝って、世界の歴史を変えるか。

 それとも俺が勝って、世界の歴史を訳わからんことにするか。

 

 

「いきます、ヴェルトさん! あなたを倒すために、今の僕の力の限界………そこから一歩先に踏み込んだ力をお見せしましょう!」

 

 

 動き、魅せるのはロア。

 紋章眼の輝きが増した。それはジャレンガの時のようにブチ切れた力の解放ではなく、精錬されて淀みない光の輝き。

 

「ふわふわキャストオフ!」

 

 空気読まずにその魔力を脱がしてやろうと思った。だが、できなかった。

 

「………あれ?」

「無駄です、魔力で相殺しました」

「なに?」

「あなたの技は、レビテーションで自分の魔力で相手の魔力を包み込み、そして引き剥がしたり操作したりするもの。あなたの魔力が僕の魔力に触れようとした瞬間、僕の魔力を弾かせて、あなたの魔力を相殺しました。僕にはもう、あなたの技は通用しません」

 

 その時、ニッと、まるでガキのように笑うロアは「どうだ」と言わんばかりの誇らしげの顔をしていた。

 やってくれるぜ。俺の技の正体を勘破したことで、咄嗟に破り方まで考えたってのかよ!

 

「あっそ。まっ、別にいいけどな。これはあくまで力の一つ。俺はこんなもんを心の拠り所にしてるわけじゃねえし」

「はは、ブレませんねあなたは。その、揺るぎない心………見習いたいです」

 

 俺の魔法による、魔法引き剥がし戦法は使えねえ。

 これを機に、ロアは心おきなく力の解放をした。

 さっき、俺に潰されて不発に終わった、ロア自身の魔法を使った戦闘スタイル。

 

 

「いきます! これが、紋章眼が解放された時のみに使用できる、八つの属性全てを融合させた僕の、魔道兵装・アルティメットスピリッツ!」

 

 

 それは、虹色に輝く魔の極みの輝き。

 かつてイーサムが言った、万の魂と血肉を喰らい、それこそ死力と魂を振り絞り戦い抜いた者だけが辿り着く境地。

 俺の魔力を無理やり固めて作った魔道兵装が、なんと安っぽい光に見えることやら。

 だが、この力までは、ロアの今の限界。

 しかし、ロアは言った。今の限界の一歩先まで踏み込んだ力を見せると。

 

 

「今こそ僕の前に! ルドルフーーーーッ!」

 

 

 ルドルフ? 虹色に輝くロアが剣を掲げて叫んだ。

 すると、その時、黒い何かが彗星のごとく空から舞い降りてきた。

 それは、

 

「馬?」

 

 馬だ。しかもただの馬じゃねえ。ついさっき見たばかりの馬。

 普通の馬の三倍近くデカイ、筋肉質な馬。当初纏っていた重厚な鎧は全て破壊されて、馬体がむき出しだが、間違いない。

 

「それは、さっき、聖騎士の奴が乗っていた………」

「ご存知でしたか……。ふふ、勝手にお借りして、後でちゃんと謝らなければ」

「その必要はねえぞ? 今頃、夢の中だ」

「ッ………まさか、ガゼルグ様を? どうりで、すんなりルドルフが来るわけですか……」

 

 そう、名前はもう忘れたけど、キシンが秒殺した聖騎士の馬だ。

 

「これは、聖騎士の一人、ガゼルグ様が所有する、聖馬ルドルフ。聖王様から授けられたと言われしこの馬は、僕が成人を迎えた時に譲ってくださると、ガゼルグ様はおっしゃいました」

「けっ、さすがお坊ちゃん。成人式のお祝いが馬とか、欧米かよ。んで、馬がどうした?」

「今こそお見せしましょう。僕が踏み込むさらなる領域の世界を!」

 

 ロアがルドルフという名の馬に跨った。

 

「勇者に、聖騎士に、幼い頃二つの道に憧れた僕が選んだ答え。それは、どちらかではなく全てを選ぶことです」

 

 その瞬間、馬の目が赤く光った。まるで、新たなる主を受け入れているかのように。

 これは、何が起ころうとしている?

 

 

「行きます! 魔導兵装・騎獣一体!」

 

 

 騎獣一体? 確か、秒殺聖騎士がやった技。

 自身だけじゃなく、騎獣とも一体となる、魔導兵装。

 しかも、さっきの秒殺聖騎士とは違う。馬の馬体を覆う虹色の光が変化していく。

 

「これは、翼?」

 

 魔力で型どられた翼。それは、まるでペガサス!

 

 

「お待たせしました、ヴェルトさん。これが僕の新たなる力! 魔導兵装・騎獣一体! 真・聖勇騎士ロア・推参!」

 

 

 天より見下ろす、聖なるペガサスにまたがりし、輝く勇者。

 それは、何とも神々しく、文字通りの神聖さを表していた。

 

 

「………………………ロア………様………」

 

 

 その時、人類大連合軍も、そして天空族にも異変が起こった。

 ほとんどの兵たちが、戦場であるにも関わらず、ひざまずき、静寂が訪れた。

 まるで、神が降臨したかのように、感動のあまり涙するものも多く、誰もがロアを崇めるように、両手を合わせて祈りを捧げた。

 

「我々は……ううっ、人類大連合軍であることを、今日ほど誇りに思ったことはない」

「なんと勿体無い、この目で、史に刻まれる偉大なる勇者様の姿を………ううっ………」

「ロア様、何ともご立派に……このお方こそ、人類を、そして世界の歴史を変えるお方」

「全ての聖騎士を、カイレ様をも超えていかれる……」

 

 まるで、宗教のようだった。しかし、馬鹿にしようと思っても声が出ない。

 

「兄さんが、ついにここまで………」

「ッ、リガンティナ皇女、ヒューレをお願いしますわ! この姿、このロア様の姿を絶対にヒューレにも!」

「世界の誇りだ………ロア………」

 

 俺ですら、あまりの威風堂々とした姿に、敵ながら胸にくるものがあったのかもしれねえ。

 そして、理解した。これは、ちょっとどころじゃねえ。明らかにケタが違う。

 タイラーや、秒殺聖騎士、そして他の十勇者とも違う。

 

 

「さあ、いきますよ、ヴェルトさん!」

 

 

 ロアも、まさかこの力を使って戦う最初の相手が、七大魔王でも四獅天亜人でもなく、不良になるとは思ってもいなかっただろう。

 まあ、一番貧乏くじ引いたのは俺なんだけど、さてどうする?

 ふわふわキャストオフも通じなさそうだし………

 

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