異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第337話 ざけんじゃねえゾウ

 誰かこの状況を教えてくれと思っていても、誰もがやらなければならないことは分かっている。

 生きること。守ること。そして戦うことだ。

 

「いくゾウ! 戦象大突破ッ!」

 

 その巨体に勢いを付けて小細工なしの突撃。

 間近であれば、地響きが感じられるほどの圧力と重力。

 だが……

 

「迎撃モードヘ移行。殲滅作戦続行ノママ排除」

「ぬ、ぬぐっ!」

 

 鋼の肉体を持ったグリフォンに向かって突撃するカー君。

 しかし、強烈な金属音を響かせながらも、グリフォンは正面からカー君の突撃に耐えていた。

 

「なんじゃと、カイザーの突進を受け止めおった! 相当頑丈じゃぞ!」

「ちっ、うざったいね、こっちはそれどころではないというのに!」

「私が動きを止めるわ! みんなは、その間に!」

 

 今度はアルーシャが前へ出る。その両腕に魔力と冷気を融合させ、一気に解き放つ。

 

「いかに頑丈とはいえ、関節を凍結させてしまえば身動き取れないでしょう? 何者かは知らないけど、あなたたちに構っている暇は無いのよッ!」

「氷属性ノ魔法ヲ感知。ボディヲヒートモードヘ」

「その機械的な言葉はどうにかしなさい! 吹雪の暴走、ブリザードドライブ!」

 

 爆発的な冷気が解き放たれ、ドラゴン、グリフォン、ガーゴイルの三体が一気に包み込まれていく。

 これで動きが取れねえ。後は、砕くだけだ。

 

「私が破壊する! いくぞ、魔極神カラーテ・降臨踵堕とし!」

 

 まるで、フォルナの落雷のように稲妻を描きながら振り下ろされる、ウラの踵落とし。

 しかし次の瞬間、氷に包まれていたはずのカラクリモンスターたちに異変が起こった。

 いや、異変じゃねえ。むしろ、何も起きてねえ。

 

「えっ……そ、そんな! 氷結されていない!」

 

 凍りつくどころか、ピンピンしてやがる。

 纏わり付く氷が、まるで熱せられたかのように、カラクリモンスターたちのボディに触れた瞬間に溶けて湯気になっている。

 

「機体チェック、異常ナシ。ロングアーム起動」

「なっ、にいいっ!」

 

 そして、一体のカラクリガーゴイルがその腕を空に向けた瞬間、その腕がロープ上になって伸びた。

 噴射されたかのように伸びた腕は、踵落としをしようと宙へ舞ったウラの足首を掴んだ。

 

「ウラ姫から離れるであります! マジックシューティング!」

「魔力感知。攻撃力解析。異常ナシ」

「えっ……は、弾かれたであります!」

 

 すかさずルンバがウラを助けるために魔法銃を取り出してガーゴイルに連射する。

 だが、その弾丸をまともに食らいながらも、ガーゴイルはまるで反応なし。

 傷一つ負わず、そのままウラを掴んだ手を振り下ろし、ウラをルンバにたたきつけた。

 

「あっ、あああ、がっ、あ、ひ、姫様!」

「つっ、だ、大丈夫だ……しかし、このガラクタめ、よくもやってくれたな! ドラの同族かと思って甘い顔をしてやったら、いい気になりおって!」

「しかし、なんでありますか、こいつらは!」

「分からん。だが、今は敵であるというのは間違いない! ヴェルトは必ず守る。ルンバ、私を未亡人にさせるな!」

「もちろんであります! 婿殿へは指一本触れさせないであります!」

 

 こっちが力を入れ、睨みつけても一切の反応無し。

 ドラのように感情豊かな奴とは明らかに違う。

 完全なカラクリ人形のように淡々とした様子で、表情も魂も何も見せずに近づいてくる。

 

「宮本剣道・斬鋼剣ッ!」

「迎撃。チェンソーバイト起動」

「ッ………くっ!」

 

 バルナンドが一気に駆け抜けて切り裂こうとした瞬間、直前で止まって慌てて後ろへ飛び退いた。

 一体なんだ?

 

「どうしたんだい、バルナンド」

「こやつ、牙がまるで回転する鋸のように……チェンソーのように回転しておる……」

「なんだって? ちぇ、ちぇんそーって何だい?」

「あのまま斬りにいっておれば、ワシの剣が折れていたじゃろう……こやつ……」

「僕の魔法も弾かれる。なんて硬い物質なんだ!」

 

 舌打ちするように再び納刀するバルナンド。

 どうやらこいつら、このメンツ相手でも十分に手こずらせるほどの戦力のようだ。

 いや、戦力というよりも、兵力かもしれねえ。

 

 

「殲滅作戦続行。多連装魔砲弾発射」

 

 

 おい………なんだ、それは……

 

「ちょっ!」

「いいいッ! ちょー、マヂあれなんなん!」

「ッ、どういうことじゃ!」

 

 カラクリドラゴンが立ち上がり、その胸部が観音開きのように開いた。

 そして、中からは、縦二段、横に六列、肋骨の代わりに突起状の何かが装填されている。

 それは、乳首なんかじゃねえ。

 だが、この世界の住人に分かるはずもねえ。だが、俺たちには分かる。

 前世では直接見たことは無くても、何となくそれがどういうものかは分かっている。

 戦争なんかでよく出てくる、多連装ロケットシステム。

 

「ぬおおおおおおおっ!」

「させるわけないでしょ!」

「ちょー、あたし、どうすりゃいいのどうすりゃいいの!」

 

 ソレが何かを理解したアルーシャとバルナンドが前へ出る。

 火を噴き発射された筒の魔力砲は一斉に解き放たれ俺たちに向かってくる。

 

 

「宮本剣道・千華繚乱ッ!」

 

「ビッグアイスピック!」

 

 

 発射されたミサイルのような砲撃に対し、バルナンドは連続斬りで分解し、アルーシャは巨大な氷柱で突き刺し、俺たちにミサイルが届く前に爆発させる。

 爆発の瞬間、ソニックブームのような衝撃が俺たちの体を突き抜ける。

 一方で、全てのミサイルは撃ち落せてねえ! 

 

「くっ、しまっ……!」

「誰かッ! それを止めてッ!」

 

 まずいっ!

 

 

「森羅万象ッ!」

 

 

 カー君ッ!

 

 

「砂漠に必要なのは血でも骸でも武器でもない。必要なのは緑と知るゾウ」

 

 

 巨大な樹がみるみる内に天へと伸び、それは一切揺らぐことの無い大木で、ミサイルを受け止めた。

 さすが、カー君。

 だが、カー君はそれだけで終わらねえ。

 温厚なカー君の額に、明らかに怒りの血管が浮かび上がっている。

 

「力の温存など不要のようだゾウ。ここは………瞬殺させてもらうゾウ!」

「カイザー!」

「少し離れているゾウ!」

 

 カー君がその巨体では信じられないほどの大ジャンプ。

 まるで太陽と重なるように高らかと舞ったカー君に対し、カラクリモンスターたちは見上げ、さっきのウラにしたように、腕を伸ばして捕まえようとする。

 

「ロングアーム。起動」

 

 だが……

 

「おい…………誰に気安く触れようとしているゾウ?」

 

 カー君……?

 

「ぬぬっ?」

「………鳥肌が……」

 

 カラクリモンスターたちに反応が無い代わりに、バルナンドたちが反応した。

 まるで一瞬、空気が凍りついたかのように全身が硬直した。

 

 

「戦象の……………」

 

 

 この感覚はアレだ。幼いころ、悪いことをして、大柄な大人から遥か上空より拳骨を振り下ろされる直前の硬直。

 確実に来る痛みに対して、全身が固まるのと同じ。

 それは、受け流すことも回避することも不可能。

 

 

「圧殺拳骨!」

 

 

 カー君の腕が、目に見えるほどの巨大なオーラを纏い、周囲何十メートルも覆い尽くすほどの巨大な象の足の形を創り出し、三体のカラクリモンスターをまとめて踏み潰した。

 

「っ、ひょ、ひょええええええええええええ、な、あ、あっぶな! って、すっげえええ、潰れてバラバラになってんじゃん!」

 

 大声で騒ぐアルテアと俺の気持ちは同じだった。

 巨大なクレーターと共に、砂漠の奥底へと踏み潰されたカラクリモンスターたち。

 恐る恐る穴を覗いたアルテアが目玉飛び出して驚いてる。

 はは、さすがカー君……だが、ゆっくり地上へ降り立つカー君の表情は厳しいまま。

 

「ッ、一匹逃したゾウ!」

 

 なに? ………あっ……

 

「回避成功。撃墜」

 

 それは、一匹だけ寸前に逃れたと思われる、カラクリドラゴン。

 何事も無かったかのように鋼鉄の翼を羽ばたかせ、カー君へと向かって飛んでいる。

 

 

「マジックバルカンブレス発動」

 

 

 そして、目をチカチカ光らせて、ウイーンとかいう音と共にカラクリドラゴンが口をあける。

 すると、口の奥から何か出てきて………お、おいおい!

 それも見たことあるぞ!

 

「なんじゃとっ! どうなっておるのじゃ!」

「はあああ? なんなん? マヂでなんなん? どうしてあんなのが!」

 

 ああ、アルテアの言うとおり、何であんなもんがあるんだよ。

 カラクリドラゴンの口の中から出てきたのは丸い筒。それが、回転しながら小さな弾丸を一斉に放った。

 

「ま………マシンガンッ! いけないわ!」

 

 そう、マシンガンだ。一秒で無数の弾丸を放ち、人間の肉体等一瞬で消し去る兵器。

 それを身動きもとれねえ空中に居るカー君目掛けて放ちやがった!

 

 

「ッヌグオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 

 

 カー君ッ!

 

 

「カイザーッ!」

 

 

 これはもはや魔法なんてもんじゃねえ。

 銃声と共に回転しながらカー君に向かって放たれる弾丸。

 その弾丸の雨、いや、もはや壁は、頑丈なカー君の肉体を次々と貫通し、その全身を染めて……

 

 

「…………………なにを………………」

 

 

 だが、その時、うめき声を上げるカー君を救出するために誰もが飛ぼうとした瞬間、地面に引っ張られるようにその身を縮こまらせてしまった。

 それは、傷つけられるカー君の体から溢れ出てくる、強烈な殺意のようなオーラ。

 

 

「こんなもの………どこが戦だゾウ……心も無く、魂も無く、気力も無く、ただの武器のお披露目ごときでこの小生に……」

 

 

 陽炎のように空間が僅かに歪み、それは誰も近づけぬほどの圧迫感で味方すら言葉を失うほど強烈だった。

 そして………

 

 

「なにを………なにをさらしてんだゾウッ!」

 

 

 カー君の鼻が伸びた。その瞬間、カラクリドラゴンの全身が拘束され、怒りのカー君が一気に締め付け、そして………

 

 

「たわけが……戦のイロハも知らぬガラクタが、ざけんじゃねえゾウッ!」

 

 

 締め付けたまま、一気に砕いたッ!

 

「強い!………に……兄さん……よくあの人に勝ったわね……」

「カイザーをキレさせるのはやめよう……味方も怖いからね……」

 

 味方ですら引きつり、苦笑してしまうほど感情剥き出しで敵を粉砕したカー君。

 鮮血に染まろうともその力、四獅天亜人の貫禄そのものだった。

 

「ふう………少し、怒り過ぎたゾウ……」

「さすがね、カイザー。でも、傷が……」

「いや、小生は大丈夫だゾウ。それよりも今はヴェルト君を……」

 

 ゆっくりと地上へ降り立ったカー君。だが、さすがにかなり怪我が重そうだ。

 肉体にはいくつも貫通した穴が出来ており、夥しい血が流れ出ている。

 俺の治療を優先といいながらも、カー君自身も消耗しているのか、肩膝ついて少し息が上がっている。

 

「大丈夫かのう?」

「心配いらないゾウ。七年ぶりのブランクで、運動不足なだけだゾウ。しかし……」

 

 一息ついて俺の脇に腰を下ろすカー君。心配そうに俺を見下ろしながら、その視線を今度は、未だ炎に包まれている戦場に向ける。

 

「たった三体でこのザマ……一体なんだったんだゾウ、こやつらは。小生も長いこと戦場に居たが、このような面妖な生物は初めてだゾウ」

 

 そして、同時にこいつらのレベルもだ。

 まさか、これだけ手こずるとは思っていなかったうえに、そんなものが百体近く暴れている。

 

「アルーシャ姫……今は堪えるゾウ。向こうには、勇者ロアや十勇者、そして聖騎士も居る。小生らが優先すべくは、今はヴェルト君だゾウ」

「わ………分かっているわ……分かっているわよ……」

 

 唇をかみ締め、握り締めた手からは血がにじみ出ている。

 そんな様子でジッとカラクリモンスターたちが暴れる戦場を見つめるアルーシャの表情に、僅かに涙が見えた。

 だよな………そりゃそうだよな……

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