異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと 作:アニッキーブラッザー
誰も気づかなかった。ひょっとしたら、そこらへんにかくれんぼしてるんじゃねえのか?
「コスモス……コスモス、どうしたの? どこにいるの? パッパとマッマの前に出てきて!」
「コスモス! どこだ、どこに居る!」
「ウガアアアアアアアアアア、クソ共、よく探せ! どこだ、どこに居る!」
岩陰とはいえ、周りは沙漠。隠れる場所なんてどこにもない。
なら、どこだ? ついさっきまでそこに居たはずのコスモスはどこに居た?
俺たちに気づかれずに、どうやって……
「まさか、さっきのカラクリモンスター……」
ラガイアの言葉に俺たちは思い出した。
そう、あの時、あんなのが目の前に出てきたら大はしゃぎするはずのコスモスの声は出なかった。
エルジェラに危ないから隠れていろと言われて、コスモスは?
あの時は、さすがに全員が目の前に現れたカラクリモンスターに意識を向けていた。
「マニーでありますか?」
マニーのワープなら? 確かに一瞬でこの場に現れ、コスモスを抱えて逃げることぐらいはできる。
だが、マニーじゃねえ。マニーなら、ずっと聖騎士やロアと対面中だ。
コスモスを抱えている様子もない。
なら?
「ちょっと皆、これを見るのじゃ!」
その時、周囲を探していたバルナンドが何かを発見して地面を指差した。
そこには、砂がかぶせられているものの、何か掘り起こされたように盛り上がっている。
ゆっくりとその盛り上がりをどけていくと、人間二人ぐらいは通り抜けられるような穴が掘られていた。
「穴…………」
「まさか、この穴に落ちたのか?」
落ちた? いや、違う……ッ!
「あいつらだ!」
俺たちは同時に、同じ連中のことを思い浮かべた。
あの、現れたドリル野郎共……
「くっ……僕が中を見てくる! …………ッ、これは……」
「どうなの、ラガイア君! 穴は続いている?」
「ダメだ、途中から道が塞がれている」
八方塞……やられた……クソッ!
「しかし、どういうことじゃ? なぜ、コスモスちゃんを?」
「ええ。でもこれは不自然よ。まるで、カラクリモンスターを囮に使って意識を逸らし、その間にコスモスちゃんを攫うなんて……彼らの目的は、世界同盟と魔族同盟をまとめて潰すことじゃないの?」
「そうだゾウ。なのにこれは、まるで初めからコスモスちゃんを攫うことを目的としていたような動きだゾウ」
何故、コスモスを?
だが、それもほんの少し考えれば分かるようなこと。
コスモスを誘拐することで、天空族や人類大連合軍と交渉のカードに?
違う……
「紋章眼…………」
キシンがボソリと呟いた言葉が、正に全ての答えだと俺たちは理解した。
「ちょっと待て、キシン氏。その、ヴェルト氏の娘が紋章眼とでも?」
「イエス。キュートガールは、創造の紋章眼を覚醒させている」
「創造の紋章眼? 超魔天空皇リガンティナと同じ?」
あえて言う必要も無いことで、さっきの会議では黙っていたが、その事実はやはりルシフェルにもジャレンガにも衝撃を与える事実だった。
「でもさ、コスモスっちがその眼を使えるようになったの、ここに来る直前じゃん! 何でそれなのに分かったっての?」
「いや、アルテアさん。コスモスちゃんが覚醒した時、あの場には他にも大勢居た。そして……ラブ・アンド・ピースもな」
「せや。ほなら、その情報から、ちっこい姫ちゃんのこと知られたってことかい」
なんつーことだ。俺自身、それほどそのことに対して重要視していなかったが、世界はそう捉えていなかった。
「い……いやああああああああああああ! コスモスが! 私のコスモスが!」
「エルジェラ皇女、落ち着いて。冷静になりなさい! まだ、それほど遠くには行っていないはずよ!」
「いや、コスモス! コスモスッ! いや! いやーーーっ! コスモスがっ!」
コスモスの紋章眼の希少性。そして何よりも、その眼を入手するなら、リガンティナを力ずくで捕らえるよりも、よっぽど楽だ。
「ッッ、ざ、っけんじゃねえっ! これほど、人をぶっ殺したいと思ったのは、前世を含めて初めてだ」
まだ、間に合うはずだ。
治療が終わってない? 知ったことか。
「ヴェルト様ッ!」
「ダメよ、ヴェルト君! まだ、損傷した臓器の再生が全然……血だってこんなに」
「ヴェルトッ、落ち着け!」
「ヴェルト君、コスモスちゃんは必ずワシらが救出する! ここは堪えるんじゃ!」
「痛いほど気持ちは分かっているゾウ。だからこそ、確実にコスモスちゃんを救うために落ち着けと言っているゾウ! 伝承によれば、紋章眼は本人が死ねばその効力を失い、普通の眼に戻ると言われているゾウ。コスモスちゃんは絶対に無事だゾウ」
ざけんなよ。堪えろだと?
「血だ? 臓器だ? ふざっけんな! 世界や正義のために捧げられねえ俺の命を、コスモスに捧げねえで、どこで使えって言うんだよ!」
堪えられるか!
「まだ間に合う。今のミーにYOUをリカバリーさせるパワーはないが、一緒にランニングは出来る」
「せやな。ほな、行こか」
そんな時、誰もが俺を止めようとする中で、両端から俺の腕を掴んで肩に回し、支えるように前へと進んでくれる二人。
キシンとジャックだ。
「キシン君! ジャック君、何を考えているの! バカなことはやめて! 私たちだけでコスモスちゃんを探すのよ!」
「へい、ストップだ、アルーシャ。バカなことをやめる? ミーたちはストゥーピットだからノープロブレム」
「ワイにもガキがおったら、同じことするで。そういうことや」
全く、こんな状況下で嬉しいぐらい俺を理解してくれる。
でも、ありがとうとは言わねえよ? 俺だって立場が逆なら同じことをした。
礼を言われるほどのことでも言うほどのことでもねえのさ、俺らにとっては。
だから、礼の代わりに言うのは、一つ。
「いくぜ」
「イエス」
「おう」
その一言と同時に、走り出すだけだ。
開いた穴から血が吹き出ようと、腸が飛び散ろうとも、今、死に物狂いでやらなきゃどうすんだよ!
「キシン! ジャック! マニーだ。マニーをぶっ倒す……ッ……」
二人に支えられながら、俺たちは走り出す。
「ちっ……ゴミヴェルト……」
その時、舌打ちと共に駆け出した俺たちの真横にピタリとくっついて現れたのは、ユズリハだ。
「走るな。乗れ」
「ユズリハ………」
「お前が私に恩を返さず死ぬのは許さない」
……はは……ソッポ向いたドラゴンは、口調は厳しくも……
「なははははは、……デレとるで、ヴェルト。ワイの妹まで嫁にするんか? ほなら、ワイはおどれの兄ちゃんやな! ほれ、ワイに兄ちゃんて言うてみ~♪」
「兄ッ! なんだ、そのニヤついた顔は! そもそも兄が竜化すればいいのに!」
「いや、ワイ、ジャレンガはんとの戦いで、もう竜化はアカンのや」
「く~~~~、虚弱兄め」
今度、精一杯撫でてやろう!
「ッ、私も行きます、ヴェルト様!」
「それはそうだろう。ヴェルトの娘である以上、私の腹違いの娘だ。夫のバカに付き合うさ」
「まあ、僕の姪でもあるしね」
「あんな幼子に手をだすなど、断罪に値する。ワシもこの剣をもって、手を貸そう」
「あ~、もう分かったわよ! 誰が行くとかじゃなくて、全員で行けばいいんでしょ?」
「まぢ? まぢ? あ~、もう、まぢかよ。てか、あたしだってこんな所に留守番はぜってーやだし、行くよ、行きゃいいんしょ?」
「やれやれ……仕方ないゾウ……」
「グラアア、俺様も連れてけ、首ぐらいは動く! 敵がいたら噛み殺す!」
安全圏へ避難することもできたが、その選択肢はなかった。
再び戦場へ。
ユズリハの背に乗り、今この世界で最も苛烈な戦いを繰り広げられている炎上網の中へと飛び込んだ。