異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第342話 マッキーの本心

 どいつもこいつも同じだ。

 タイラーも、マッキーも、ゴメンゴメンゴメンゴメン言いやがって。

 

「ゴメンで済んだら警察はいらねーんだよ! 謝るぐらいなら最初からするんじゃねえっ!」

 

 状況は最悪だ。だが、まだ間に合う。

 マッキーが裏切ろうと、ママンが洗脳されようと、マニーにどんな奥の手があろうとも、ここで逃がすわけにはいかねえ!

 

「ゴミヴェルト、動けるのか?」

「けっ、腸が飛び出るかと思ったら、煮えくり返ったんで、なんとかな!」

「なら、乗れ。カスを殺す!」

 

 ママンはキシンとカー君で押さえている。

 茫然自失のアルテアは、ルンバとバルナンドが付いている。 

 十分だ。残るメンツでも、奴らをまとめてぶちのめせるぐらいの力はある。

 

「だから~、ダメダメ。せっかくのマニーとラブのラブラブラブ~なところを邪魔しちゃ、メだよ♪」

「ひははははははははははははは。もう、だめだね~ヴェルト君。カラクリくんたちをパナイ忘れちゃってるでしょ?」

 

 くそ! 急いでるって時に、真横から豹やら熊やらのカラクリモンスターが俺たちに!

 

「殲滅殲滅殲滅」

「殲滅状態継続中」

 

 それほどデカさはねえ。といってもそれでも実物と同じぐらいの大きさなわけだけどな。

 しかし、その全部が……

 

「お兄ちゃん、危ないッ!」

「魔炎放射器解禁」

 

 どこが魔法だよ! ウイーンとか言って口から出したのは、ただの火炎放射器の炎じゃねえかよ!

 

「そんなもの、私の氷の前には無力よ!」

「しかし、まずいぞ。こいつら、攻撃力はもとより、装甲が硬すぎるぞ!」

「何とかマニーまでの道を確保しろ。そうすれば、私の拳で打ち砕く。奴には魔法は通用しないが、私の拳なら!」

「どいてください! コスモスを奪還するまで、例え誰が相手でも容赦はしません!」

「アカンは、ほんま次から次へとうざったいで!」

 

 自惚れじゃなく、俺らはこうして集えば正直世界全部を敵に回しても恐くはないと思っていた。

 しかし、世の中そんなに甘いもんじゃねえ。

 あのスモーキーアイランドで完全となったと思っていた俺たちのチームに綻びが見えてくる。

 疲労や激戦による消耗もそうだ。そもそも、ここに来るまでに全員砂漠を越えて七つの大罪やらとも戦い、コンディションがヤバイ。

 おまけに、次から次へと来るこのカラクリモンスター共……

 

「あ~、くそ、なんでや、加賀美ッ! おどれ、ほんまに裏切ったんか!」

「あちゃ~、もうその名前は呼ばないと約束しなかった? ジャック君。パナイ物忘れ♪」

「ッ……生きとれば、そら、しんどいことや、どうしようもないことだってあるはずや。ワレがそうなったんにも、事情はあるはずや。事情はあることは責めん! せやけど、何も言わんのはちゃうやろ!」

「え~~~~、パナイ熱いね~、ジャック君は。でもさ~、俺たちって……そんなにパナイ仲良かったっけ? ほんの少し一緒に旅したぐらいで、そこまでにはならないでしょ~?」

 

 マッキーに対してどうしようもない気持ちをぶつけるジャックだが、マッキーは昔のように笑いながら付き合わず、相手を余計に挑発するように言い返す。

 しかし、それは昔のようにであって、昔と同じではない。

 

 

「けっ、ほなら一言いわせてもらおか? ……笑顔……ひきつっとるで?」

 

「ッ!?」

 

「なんや、意外とデリケートやったんやな、え~? ラブちゃん?」

 

 

 本当だよ、マッキー。今のテメエは痛々しすぎる。

 覚悟は決めたのに、それでも俺たちへの未練が見え隠れし、それを断ち切るために、あえて非情なキャラ演じてますってのが丸分かりだよ。

 

「あはははは、みんな煩いよ! ラブのこと、な~んにも知らないくせに、本当に迷惑迷惑ッ!」

 

 その時、マッキーの首に後ろから抱きつくようにマニーが飛びついた。

 

 

「ラブはね、もうね、全部全部受け入れてくれるの。マニー『たち』を受け入れてくれるの! ラブのこと何も知らないワケわかんない人たちと遊ぶのは終わったんだよ?」

 

「……どうかな? テメエよりは知ってるぜ? 過去に、なぜマッキーが暴走したかも知らないくせによ」

 

「………………そんなの、もうどうでもいいんだよ」

 

 

 おっ、少し反応したか? どうやら、色々狂ったお嬢ちゃんでも、マッキーに対する想いは意外と本物か?

 

「ヴェルト君はね、本当に不愉快だったの。二年前のあの頃から」

「なに?」

 

 なんのことだ? 俺はこいつに特に何もしてねー気もするけど。

 

 

「ラブがマニーを見てくれなくなった日から……でもね、マニーは楽しかったもん。ラブが何かをする時は、いつもマニーを傍においてくれたの。でもね、あの日………ラブが帝国で君と再会した日……あの時のラブの嬉しそうな顔も、怒りも、全部……ぜ~~~~んぶっ、マニーの知らないラブだった!」

 

「………だからなんだよ」

 

「ラブが逮捕された時もそう。マニーがラブを脱獄させてあげようとしたのに、ラブは……『しばらくはいい。それよりも、ヴェルト君を巻き込んじゃおう。なんかパナイ面白そうだし』……とか言うんだよ? 私と一緒にいるよりも、君のことばっか! あの時、本当はマニー『教えたいこと』もあったのに……でも、分かっちゃった……あの時、あのままラブにマニーの秘密を教えても、無関心だったと思うから……全部、ヴェルト君の所為なんだよ!」

 

 

 こいつ、なんだその意味不明な論法は。

 

 

「おいおい……なんだ? 俺は女の嫉妬に巻き込まれてるのか? 何とも笑える話だぜ。なあ、マッキ~、この脳みそヤンデレちゃんに一言なにか言ってやれよ」

 

「あはははははははは、も~、ヴェルト君ってば、マニーの気持ち全然分かってないんだから~」

 

「分かるかよ。おホモ達でもねーのにん、そんな嫉妬されるなんてよ。まあ、俺たちにはそのケは無いんだが、これぐらいは覚えておけよ? 男同士の友情を理解してやれねえ女房なんて、遅かれ早かれ見放されるさ」

 

 

 まあ、こいつが意味不明なのは最初から。少し分かったのは、この女の恋愛脳が変な感じで拗らせて、マッキーはそれの責任取るってことか?

 いや、しかし、それだと少し弱いか? 

 マッキーが責任? なんか、マッキーをこれほど真剣にさせて決断させるような何かが他にもありそうだが……

 

「まあ、もうそれはどうでもいい。コスモスを今すぐ返せ。それさえ飲めば、後はイカれたカップル同士、好きなだけイチャついてろ」

「えへ、それは、も~~~ムリ~~~。コスモスちゃんは今頃地面の下の下の下~を移動しながら、遠くの世界に向かってるから」

「だったら、テメエを九割殺して、残りの一割でそこへ案内してもらうだけだ!」

「だから、ムリなんだって、ヴェルト君♪」

「試してやるさ」

「だから~そうじゃなくて~……まっ、いっか♪」

 

 結局、やることはかわらねえ。

 全部を救ってやれれば一番カッコいいのかもしれねえが、今の俺の優先事項はコスモスであることは譲れねえ。

 だから、マッキーやマニーのことを救ってやる余裕はねえ。

 だが、確かに俺は分かっていなかったかもしれねえ。

 

「もう一人、送っちゃって♪」

 

 マニーの底知れねえ手札の枚数の内容を、見誤っていた。

 

 

「月光眼」

 

 

 向かった瞬間に、見えない壁に弾かれ、そして後ろから何かに引っ張られるように俺たちは散り散りになった。

 

「な、ど、どうなってんだ!」

「ヴェルト様ッ!」

「くっ、………そが……てうおおおおおおおおお、なんやこれ!」

 

 一体何が起こったのか、砂漠を転がり顔を上げた俺たち。

 するとそこには、思わず全身が萎縮してしまう、巨大な人型の化け物が仁王立ちしていた。

 

 

「……殲滅せよ……」

 

 

 デカイ。帝国で見た、十メートル級のサイクロプス並み。

 だが、それだけなら俺たちは恐れない。問題なのは、大きさよりもその生物が発する空気のようなもの。

 黒いタキシード姿に赤いマント。肌は不健康そうに青白い。

 長い金髪の髪を全て逆立たせて、そのツンツン頭が何メートルも伸びている。

 

「ワッツ? あ、アンビリーバブル………ミーたちは……ドリームを見ているのか?」

 

 キシンの表情すら強張らせる、この巨人紳士は何者だ?

 それは……

 

 

「ヤヴァイ魔王国魔王……ヴァンパイア王……弩級魔王ヴェンバイ……」

 

 

 それは、例え見たこと無くてもその名を誰もが知る、世界の生物界の強者ランキングでもすれば、上から数えて片手で足りる存在。

 

「ど……ど、弩級魔王のヴェンバイやて!」

「魔族大陸最強の魔王………それが……」

 

 思わず俺たちは腰を抜かしていた。

 遥か高みから、俺たちを見下ろす魔王。

 そして、その異常性。

 

「せやけど、どうなっとんのや? ボロボロやないか……」

 

 そう、その存在感ゆえ最初はそこは気にしなかったが、俺たちの前に立ちはだかった魔王ヴェンバイは、ところどころスーツが破れ、そして全身を腫らして血も流している。

 ママン同様激しい戦闘でもあったかのように……

 

「それに、ママンと同じ全身に伸びた黒い刺青……明らかに自分を見失った目……」

 

 その瞬間、俺たちは信じたくも無い事態だが、理解せざるをえなかった。

 

 

「マニーラビット……あなた、まさか、ユーバメンシュ同様に魔王ヴェンバイまで!」

 

「ピンポーン! アルーシャちゃん、せ~かい! そーだよ、あのね、魔王ヴェンバイも洗脳しちゃったの♪ 狂獣怪人ユーバメンシュ、『淫獣女帝エロスヴィッチ』、『無眼魔王ノッペラ』、蒼鬼のゼツキ、『鬼カワ魔王キロロ』、このメンバーと戦争して相打ちなんだから、やっぱりすごいよね~、ヴァンパイアって」

 

 

 もう一つの戦場では、この場にも匹敵するほどの伝説級の死闘が繰り広げられていた。

 両者出し惜しみなく、それぞれの全てを出し切るほどの戦いだったはずだ。

 それを、この女……

 

 

「えへへへへ、みんな御バカ様だよね」

 

 

 何のためらいも無く横槍を入れて、全てを破壊しただけでなく、こんな胸糞悪いことまでしたったのかよ。

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