異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと 作:アニッキーブラッザー
「あの、ヴェルト様……その、本当はこのような状況下で聞くものではないのですが……その……」
「なあ、ヴェルト。やっぱり、その……フォルナもお前の……というか、私たちと同じ……よ、嫁?」
そういや、今のこいつらは事情分かってねーんだよな。
エルジェらとウラにどう説明するかを考えていたところ、フォルナは構わず宣言する。
「いきますわ!」
フォルナは、俺に許しを求めているわけじゃない。
しかし、自分への怒りに満ちたフォルナは次の瞬間、更なる爆発を起こし、戦場を舞った。
「雷神の乙女よ、その涙を纏いし力に変えて、無限の雷轟、世界に光れ! 魔道兵装・迅雷烈覇!」
それは、正に空を駆け抜ける彗星。閃光と共に目の前から消え、すると次の瞬間遠くの場所でカラクリモンスターが爆発。
「閃脚《せんきゃく》万雷《ばんらい》ッ!」
それを俺たちが気づいた瞬間、真逆の戦場で別のカラクリモンスターが爆発。かと思えば、戦場の至る所で同時に次から次へとカラクリモンスターたちが破壊され停止していく。
「お……おおおおっ!」
「フォルナ様だ! フォルナ様が、復活された!」
「そうだ、まだ俺たちにはフォルナ様が居る! 金色の彗星フォルナ様が戦乱を駆け抜けている!」
それは絶望の中の希望を目の当たりにし、歓喜に満ちた世界同盟が一斉に歓声を上げる。
その瞳を輝かせ、口元が緩み、誰もが涙した。
だが一方で、その金色の彗星様は、どんな顔をしているのか? ……っていうか、スゲーなあいつ。
「凄いゾウ! 小生ですら手こずったカラクリモンスターを、ああもアッサリと!」
「いや、あの姉ちゃん凄いのは分かったが、それでもなんやねん。姉ちゃんの攻撃、カラクリモンスターに効き過ぎやろ!」
確かに、フォルナは凄い。だが、ちょっと凄すぎないか?
いくらフォルナが覚醒して暴れているとはいえ、ここまで出来るものか?
「パナイね……カラクリモンスターに雷を流してオーバーヒートさせている……」
その理由を答えたのは、マッキーだった。
フォルナは多分無意識なんだろうが、それが思いのほか有効だったってことか。
「それじゃあ、カラクリモンスターには……雷が有効ってこと?」
「よく分からんが、それならカラクリモンスターにとって、フォルナは天敵ということだな……」
それは、カラクリモンスターを主要な戦力として考えていたマニーにとっては大きな誤算だったのかもしれない。
「も~~~~~~~~~~~! もうっ! 本当に、フォルナちゃんってバカ! 迷惑っ! それなら、ユーちゃんとヴェンちゃんが潰しちゃえっ!」
その時、マニーの指示を受けたママンとヴェンヴァイの目が怪しく光った。
そうだ、まだ、こいつら……というか、こんなとんでもねえ奴が残ってやがるんだ!
キシンもカー君もジャックもかなり消耗している中で、俺もこのザマ。
ロアもタイラーたちも戦えねえ。
フォルナ一人では………
「これは……四獅天亜人ユーバメンシュ。弩級魔王ヴェンバイですわね」
「そーだよっ! カラクリモンスターをいっぱい倒したからってチョーシに乗ったらダメダメ! フォルナちゃん一人でこの二人に勝てるわけがないんだから! 恐怖に怯えて、死んじゃえッ!」
しかし、フォルナは小さく笑った。
「怯えることは無理ですわね」
「強がりなんだから!」
「あら、強がりではありませんわ? ワタクシにとって、ヴェルトに嫌われ、そして失うこと以上の恐怖などこの世にありませんもの!」
恐れてねえ。逃げる気もねえ。だからって、投げやりになっているわけでもねえ。
「千雷《せんらい》槍雨《そうう》!」
雷で構成された巨大な無数の槍。それを一斉にヴェンバイ目掛けて放出した。
だが、それじゃあ倒せねえ。
「月光眼倍返し」
「ッ!」
そうだ! 俺の技もあれに返されたんだ。
斥力を発生させて相手の攻撃を全て弾き返す。
しかも、それを倍返しという、とんでもないオマケ付きだ。
「ダメだ、アレは破れねえ! ジャック、お前はどうやってジャレンガ倒したんだ?」
「はっ? いや、ワイは小難しいの抜きで正面突破やったけど……」
「それはつまり?」
「気合や」
「……ダメだ、使えねえッ!」
やっぱり、あの目の能力をどうにかするしか、手立ては見つからねえ。
だが、どうする?
「関係ありませんわ。ようするに、斥力を上回る物理的な力を加えれば貫通できるはずですわ」
だから、その物理的な力をどうやって生み出すかで……
「グーッドアイデアだ、プリンセス・フォルナ!」
その時、飛び回るフォルナに並走するように、キシンがフォルナに付いた。
当然、フォルナにとっては、ある意味因縁の相手でもある。
ほんの少しだけ、フォルナは切なそうな瞳を向けていた。
「ッ……魔王キシン……」
「ふふ、ミーのことも思い出したか。バット、今は昔の話をしているタイムではない」
「……ええ……分かっていますわ。ただ、あの時の戦いの後にワタクシは全てを失ったのですから、少し感傷的になっただけですわ」
「Youの気持ちはアンダースタンド。バット、今は協力すべき」
「確かにそうですわね。でも、信じてよろしいんですの?」
「ミーは、ヴェルトのベストフレンド」
「なるほど。この世でこれ以上信用できる言葉はありませんわね」
昔は互いに種族の存亡を懸けて殺しあった。
しかし、どういうわけかこの瞬間、たった数回の会話だけで、二人はまるでその過去が嘘のように、笑みを浮かべている。
フォルナも記憶が戻ったことで、随分と柔軟な思考にもなっているじゃねえか。
「それで、どうしますの? 一斉に攻撃を?」
「ノー。今のミーのエネルギーでは、魔王ヴェンバイの月光眼を破るのはインポッシブル。だから、ここはミーの力でYOUのパワーを最大限引き出すことにする」
「ワタクシの力を? どういうことですの?」
「へい、ミスターカイザー! 今からミーはライブに入る! それまでミーはノーガード! ユーの力であの二人を止めて欲しい!」
ゆっくり説明している暇はないため、二人はヴェンバイに捕捉されないように動きながら作戦を話し合っている。
その内容とは……
「プリンセス・フォルナ。今、YOUは自身への『怒り』をパワーに代えて、通常以上のパワーを引き出している。怒りは負の感情。あまりグッドではない。バット、一時的とはいえ、それが自分の潜在能力を引き出すキッカケになることは確かにある。だから、それを利用する」
「怒りを力に変える? と言われましても…………」
「今からミーが一曲YOUのために演奏する。その曲は怒りや悲しみなどの負の感情を攻撃力に増幅させる曲。だから、ユーはもっと怒れ。アングリーだ。ジェラシーだ。クライ! 今のユーならば、スーパーパワーを生み出せるはず」
それは、あまりにも哀れすぎる。フォルナもかなり難しい顔をしている。
アルーシャたちも、今のフォルナの心情を察して、声を掛けられないでいる。
しかし、キシンの能力で、負の感情を攻撃力に変えることができるなら、今のフォルナなら……
「ワタクシへの怒り……わ、分かりましたわ。あまりにもメチャクチャな話ですけど、あなたがそう言うのであれば、そうなのでしょう。なら、負の感情をむき出しにしてみせますわ!」
「OK! Are you ready? Yhaaaaaaaaaaa!」
キシンのライブが始まる。
それは、これまでのキシンのロックとはどこか違う気がした。
「あれ…………この曲……どこかで?」
「せや、ワイも聞いたことあるで。前世や……前世でテレビや映画のBGMで流れとる……あ~、題名は分からんけど、聞いたことあるで!」
「ええ、私もあるわ。これは……ロックではなく、クラシック…………確か、レクイエム……怒りの日よ……」
そう、キシンの演奏する曲は俺も聞き覚えがあった。前世でだ。
だから当然、この戦場でその曲を聞いたことあるのは俺たちだけ。
しかし、そんな中で、フォルナは構わずに目を瞑り、自身に怒りをぶつける。
「殺してしまいたいですわ……あの時、ワタクシはヴェルトを拘束し……今日までのうのうと生きていましたわ! 正義だの人類だの平和だのと分かったような顔で、挙げ句の果てに今日、ヴェルトを罵倒し、傷つけ、そして……アアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
キシンの音楽が鳴り響く中、自分への怒りを口にしては怒りを開放していくフォルナの頭上にはエネルギーの塊のような黒い球体が浮かび上がっていく。
その球体は雷を纏ってスパークし、フォルナが自身を罵倒するたびに、その球体は大きく、そして雷の力が増していく。
「黒い雷……」
ああ、なるほど…………そういう感じなわけね…………