異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第360話 懐かしき腹ごしらえ

 

 

「おお………」

 

 

 身構えていたつもりが、一瞬呆けてしまうほど美しい大草原、遠くに見える山、太陽。

 人の手など一切加えられていない、正にありのままの自然そのものを感じさせる世界。

 自然のエネルギーが広がっているように思わせる。

 ジャックの背に乗った俺たちは、彼方まで続く世界を堪能していた。

 

「ふふ、ワタクシたちはこれまで、神族大陸の中でも戦地ばかりを渡り歩いていましたから、このような光景は珍しいですわ」

「おお、小生も懐かしいゾウ。このあたりは、エロスヴィッチが、いつかは亜人の移民を受け入れる場所に使おうと、大事に取ってあった地帯だゾウ」

「この近くに、マッキーくんが手を加えた夢の国があるなんて信じられないわね」

 

 どの種族も問わず、今はこの光景にウットリとしていた。

 正直、探せば神族大陸ではなくても、これぐらいの自然はありそうだ。

 人の手も加えられていない地帯なんていくらでもありそうだ。

 特に壮観な山や、圧倒するような建造物があるわけじゃねえ。

 でも、うまく言葉では言い表せないんだけど………

 

 

「なんかさ、田舎に行ったときみたいに………ほら、なんつーか、住んだこともない場所なのに、『帰ってきた』って感覚じゃね?」

 

 

 そう、俺もアルテアの言うとおり、そう思った。

 初めて見るこんな場所が、何だか故郷に帰ってきたかのような感覚。

 簡単に言えば、居るだけでホッとするような感覚だ。

 

「なんか、そのへんの草原に寝転んだり、ピクニック気分でご飯食べたりしたいわね」

「ああ、そうだな」

 

 神族大陸。ジーゴク魔王国との戦争では、そこまでノンビリする事ができなかったから、行ったという感覚があまりない。

 でも、なんだか今日初めて、ようやくここに来たという感覚になった。

 そして同時に、こういう世界を、三種族は遥か昔から取り合ってきたのかと、何だか切ない気持ちにもなった。ガラじゃねえのにな。

 

「その、みさなん」

「あら、どうしたの、フォルナ?」

「コスモスのことは一刻も争うので、のんびりピクニックはできませんが、移動しながら摘む程度でしたら、できますわ」

 

 そう言って、フォルナは何やらゴソゴソと袋を取り出した。

 すると、中から紙に包まれた、円盤状の何かを差し出してきた。

 なんだそりゃ? なんか懐かしい……というか、何だか香ばしい匂いが……

 

 

「携帯用の簡易食ですわ。これから倒すべき敵が開発したものではありますが………今、帝国で流行の、ハンバーガーですわ。それを真似して、今朝、調理の方に作ってもらいましたわ」

 

 

 ………あら、懐かしい。

 

「それは、確かラブ・アンド・ピースが………前社長のマッキーラビットが出したアイデアを、奴が逮捕されたことで、マニーが引き継いで発表して販売された………」

「ええ、ウラも、そしてアルーシャは当然ご存知ですわね。今、帝国で大変流行しているものですわ」

「あっ、私もコスモスと一緒に口にしたことがあります。焼いた肉と野菜を挟む、シンプルですけどジューシーな食べ物でした」

 

 そーいやー、キモーメンがそういうの流行ってるとか言ってたな。

 

 

「はは、マッキーが開発した……ラブ・アンド・ピースの商品か。ええやん! ラブ・アンド・ピースを喰うっちゅう感じで、ガブっていったらな! おーい、誰がワイの口に放り込んでくれや!」

 

「ふむ、ヒューマンたちはミーに黙ってこんなものをクリエイトしていたか。ミーたちも良く、スクールサボって、ファーストフードに居たな」

 

「懐かしいのう。確か、君ら三人が授業をサボっていつまでも時間潰しているのが問題になって、生徒の立ち入り禁止が出たことがあったのう」

 

「あー、あれな! あれ、マヂムカついたの覚えてるし!」

 

「へえ、僕、こんなの初めて見たよ………えっと、お兄ちゃん、このままガブっていくのかい?」

 

「う~む、小生はこういう肉はあまり………」

 

「なんでもいい! コスモス救うために体力つける! 食って食って食いまくる!」

 

「あー、チーちゃん、それな、とある世界じゃジャンクフードって呼ばれるものだから、体に良いわけでもねーぞ?」

 

 

 実物食うのは俺も初めてだ。

 最初帝国で流行してるって知ったときは驚いたが、まあ、ラブ・アンド・ピースが出店したんだ。どうせ、マッキーのアイディアに決まってるって、そのまま放置したっけ?

 まあ、俺も何だかんだで前世ぶりのジャンクフード。

 ポテトでもありゃ完璧だが、まあ贅沢はなしだ。

 俺も懐かしさを感じながらかぶりつこうとした。

 すると、

 

「あら、ヴェルト。体に良くないとは心外ですわ。最近では、体に良いようにと、色々レシピが増えてますのよ?」

「ん? おいおい、種類が増えようと、所詮ハンバーガーだろうが」

 

 つっても、ハンバーガー歴の少ないフォルナに言っても仕方ねえけどさ。

 

「そんなことありませんわ。ちなみにこちらのハンバーガーは、つい最近新商品として発表され、今では女性に大人気のヘルシーなものですわ」

「あら、そんなのがあったの? ハンバーガーが流行っているのは知っていたけど、そんなハンバーガーあったかしら」

「ええ、アルーシャ。ご覧なさい。ほら、これ………」

 

 そう言って、フォルナはハンバーガーのパンを上だけ外して中を見せる。

 そこには、レタス、トマト、玉ねぎ、チーズ、そして肉汁タップリのハンバーグ………ん?

 

「あら、これって……」

「ええ、これはお肉に見えて、お肉ではありませんの。豆の絞り汁を固めたものを味付けした、実にユニークでヘルシーな食べ物ですわ」

「おお、小生はその方が食べれそうだゾウ」

 

 へ~、豆の絞り汁を固めた食材、へ~、色んなこと考えてんだな。

 すると、ウラも知ってたのか、反応を見せた。

 

 

「ああ、それは私も聞いたことがあるぞ。私がラブ・アンド・ピースとして所属していたとき、三ヶ月ほど前に食品開発部門へ、とある夫婦が売り込みに来ていたな。若くて、可愛らしく、非常に仲の良い夫婦だったので、よく覚えている。確か、普段はロルバン帝国に住んでいると言っていたな」

 

「あら、私は知らないわね。と言っても、あの頃は裏カジノの調査とかでバタバタしていたし」

 

「そうでしたの。まあ、確かにアルーシャは忙しかったですもの。ワタクシも食べましたが、お肉と全く遜色ない味ですのに、原料が豆ということに驚きでしたわ。それでいて、作り方もそれほど難しくはないんですもの」

 

 

 へ~………と、俺たちがそれなりに感心したような表情で頷きながら、フォルナの説明は続き………

 

 

「ちなみに、これはハンバーガー以外にも様々な食事に活用され、将来的に料理の歴史が変わるかもしれない開発として、今、少しずつ世間に浸透していますわ。この、『トーフ』と呼ばれる食品」

 

「「「「「………………………………………………ん?」」」」」

 

「よって、こちらのハンバーガーも、今では『トーフバーガー』と呼ばれ、とても人気ですわ」

 

 

 ちなみに、反応したのは当然、俺、アルーシャ、キシン、ジャック、アルテア、バルナンドだった。

 そして俺たちは互いに顔を見合い、「あれ~?」って顔で首を捻った。「まさか?」とまで呟いた。

 

 

「ヴェルト様? ボーッとされてどうされたのです? もう、お口の周りにソースが付いてますわ。こういうところ、コスモスと同じでお行儀悪いです。ジッとしてください。今お取りします。ん~………チュッ、パック………ふふ、取れました」

 

「はぐわっ! う、うう、ワタクシの前で…………」

 

「おい、エルジェラ! 手で取ればいいであろう! 何でキスするみたいに直接なんてドサクサに羨ましいことを! お前の方が行儀悪いし、見ろ! フォルナが失神寸前ではないか! コスモスのことで落ち込んでいるお前を大目に見てやろうと思っていたのに、そういうことをするとは、う~、ヴェルト~、私のソースも口に付いてるから、取って欲しいぞ?」

 

「うう~~~~~~、ウラまで!」

 

 

 エルジェラのバカップルよろしくの行動にも反応できず、俺たちはただ顔を見合わせて、四角い白くてプルプルしたものを想像しようとした。

 だが、その時だった。

 

 

「むぅ?」

 

 

 全員の顔つきが変わった。

 ジャックが翼を止めた。 

 

 

「……………なんか、あるで?」

 

 

 穏やかな景色が続いていると思っていたこの地帯。

 その前方に、何やら騒がしい音が聞こえる。

 これは、テーマパークの音?

 

 いや、違う…………もっと、物騒な気配を感じる。

 

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