異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第366話 さあ、荒ぶる二次会のスタートだ

 OK。今の会話をもう一度整理しよう。

 バルナンドは、「イーサム、協力し合わない?」と聞いた。

 そしてイーサムは、酒飲みながら「いいぞ」の即答。

 おい!

 

「イーサム。お前、理由ぐらいは聞かんのか?」

「はあ? なんじゃそれは。ワシが気に入った奴らと共に戦うことに、理由を聞いて断るような奴だと思っておったか?」

「……………いや、全く」

「じゃろ? お~い、トウシ~、ソルシ~、というわけじゃから、こいつらと一緒に戦うぞ~。ほれ、これで問題無しじゃ」

 

 いいのか? いいのか、それで! いや、こいつならいいんだろうけど、周りもいいのか?

 と思ったが、回りの連中も「やれやれ」「まっ、局長だし」とどこか慣れた様子で既に観念した様子。

 ああ、こういうの日常茶飯事なんだ。

 

「最前線から離れたとはいえ……し、四獅天亜人のイーサムの存在がどれだけワタクシたちにとって脅威だったか……いつかまた動くかもしれないと、あれだけ警戒していましたのに……それがこんなにアッサリ共同戦線……」

「ダメよ、フォルナ。もう、考えるのはやめましょう。私もヴェルト君と行動を共にするようになって、それをやめたわ」

「そうだな……私もそうだ。二年前、私とヴェルトとファルガの三人から始まった旅が……気づけばこんなことになってしまった」

「ヴェルト様は、とても出会いに恵まれた方ですから」

「………ふん……ゴミ父と一緒とか、ヤダ………」

 

 嫁たちのそれぞれの反応は、どれもがごもっともではあるんだが、とにもかくにも、百万力の味方が出来たことには変わりねえ。

 とりあえず、敵じゃなくてほんと良かったと、思えた瞬間だった。

 

「局長と真剣に話すと色々どうでもよくなってくるぞ」

「でも、だからこそ頼もしいだよ」

「私たちも難しく考えなくていいの」

 

 呆れる俺たちに、ジュウベイ、ウシワカ、ベンケイの三人か移動してきて近くに腰を下ろしてきた。

 そういや、さっきはゆっくり話せなかったが、こいつらとも久しぶりだな。

 

「おい、お前……その、何があったかは知らないけど……」

「ああ、久しぶりだな」

「っ……」

 

 正直、イーサムは俺とキシンを覚えてなかった理由を説明したが、「ふ~ん」で終わってそれ以上聞いてこなかった。

 その空気が伝わってか、あまり余計なことは聞きづらいと思ったのか、ジュウベイたちも、どこか口がモゴモゴしている。

 だが、最低でもこれだけでもと思った、こいつらの質問は……

 

 

「なあ、その、ムサシお姉は今元気?」

 

「……この間、会ったときは元気だったな。仕事は怒られてるけど、俺の妹とも仲良さそうだし」

 

 

 ムサシか……多分、あいつも今頃俺を思い出してんだろうな……泣いてるかな?

 正直、フォルナやバーツたちにしたような嫌がらせをあいつにすると、普通に切腹しかねないから怖い。というより、今、大丈夫だよな?

 こればかりは、先生に何とかしてもらわねえといけない問題なんで、少しだけ気がかりだった。

 

「お前らも大変だな」

「何がだ?」

「姉ちゃんのことが気がかりなのに、今はあの局長のメチャクチャに付き合わされて」

「ふん、思ってもいないくせに、軽口叩くな。死ね!」

「ああ? ったく、相変わらず可愛くねえ。ユズリハを段々可愛くした必殺ケツ叩きでも食らわせるぞ?」

「うるさい、野蛮な人間め! 死ね死ね死ね!」

 

 ジュウベイと軽い口論をするも、この感覚は懐かしかった。

 ああ、世界は本当に俺のことを思い出したんだなと実感させられる。

 そして、他のシンセン組の奴らも、みんな俺のことを知っている。

 ついこの間まで、幼馴染にすら「あんた誰」状態だったのにだ。

 タイラーが死んだり、コスモスが攫われたりでバタバタだったが、徐々にこの空白だった二年を取り戻せてきているような気がした。

 

「とりあえずだ。ノリで戦っちまったが、明日こそランドに乗りこまねえとな。さすがに、コスモスが心配だしな」

「ヴェルト……ええ、そうですわね」

「そうね。それに、これだけのメンバーが揃えば恐るに足らずよ」

「コスモス? ああ、ムサシお姉がすごい可愛がっていた……ん? おい、あの子がどうかしたのか!」

「コスモスちゃん? コスモスちゃんがどうしただよ!」

「ウガアアアアアアアア、そうだあああ! コスモスゥ~!」

 

 頼もしすぎる援軍を受けて、「明日こそは」と俺は決意を胸に、目の前のグラスに注がれた物を一気に飲み干そうとした。

 すると、その時だった。

 

 

「ほほう…………ブラックダック…………懐かしい名前じゃの~、バル」

 

 

 グシャリと何かが握りつぶされる音がした。

 振り返ると、バルナンドと向かい合っているイーサムが、真剣な顔をして酒瓶を握りつぶした音だった。

 その声のトーンは低く、その瞳は獲物を狙う肉食獣のように鋭い。

 そんなイーサムの様子に、俺たちは思わず言葉を失った。

 すると、そんな空気に構わず、バルナンドが口を開いた。

 

「そうじゃ。あの日、ハイエルフの国を炎に変え、亜人史に残る悲劇を生み出した、あの恐るべき者じゃ」

「………………ふむ…………」

「おまけに、それと肩を並べる最高幹部は未だ健在のようじゃ。ラブ・アンド・ピース。一筋縄でいぬぞ?」

 

 あっ、エロトークじゃなくて、真面目な顔で話をしてるよ。

 でも、どうしてだろうか。明日の作戦も考えないでノンキに宴会するこいつらを最初は心配したけど、イーサムが真剣な顔して話をしてると、その方が色々と心配になってくる。

 

「へい、ミスター・バルナンド。先日もそのネームを聞いたが……その者はストロングか?」

「…………ああ……強いぞ、キシン君。君やイーサム、人間であれば勇者ロアが表世界の強者であれば、裏社会に名を轟かせる仕事人……『何でも屋』じゃ」

「ふん、裏でコソコソ動く仕事人に興味ないのう、ワシは」

「そうでもないゾウ、イーサム。この世には、表世界で名を上げぬことを信条とし動く、世界が知らぬ強豪は確かに実在するゾウ。小生ら亜人大陸ですら、『特別諜報部隊』、『暗殺ギルド』、他にも上げればキリがないゾウ。戦争で戦う相手ではないが、侮れぬと思うゾウ。もちろん、地底族や深海族にもまだ見ぬ強豪はいると思うゾウ」

 

 地底族と深海族。

 地底族とは少しだけ戦ったが、確かに本気の力は未知数だ。

 天空族にリガンティナやエルジェラ、そして戦乙女たちが居るように、地底族にもランクの違うやつ等ぐらいは居るだろう。

 問題は、そいつらがどの程度のもんなのか。

 もちろん、ラブ・アンド・ピースの最高幹部も軽視する気はねえが。

 すると、そんな会話の中、イサームが何かを思い出したかのように、指を鳴らした。

 

 

「そう言えば、ワシも一人だけ見てみたいのがおるの~……何年か前に……世界最強の称号が本気で欲しければ、裏社会に生きる、ある人間と戦ってみよと唆された」

 

「唆された? 誰にじゃ?」

 

「グワハハハハ、……亜人大陸の生態調査に来た、ハンターギルド統括者……『聖騎士フリーダ』……」 

 

「……あの自由奔放な流浪の聖騎士か……そういえば、先の大戦でもあ奴はおらんかったが……あやつが何と唆したのじゃ?」

 

「三大称号を得られぬ、人類最強のチンピラをラブ・アンド・ピースのバウンサーとして雇ったと。コードネームは、『ピイト』と。そこそこ強いそうじゃ」

 

「三大称号を得られぬ?」

 

「うむ、腕はあっても素行が悪いんじゃろう。そこのヴェルトのようにの。まあ、本来であれば興味もないところじゃが、せっかくだしの」

 

 

 何やら随分と重要そうな裏話をされているようだな。

 まあ、一筋縄じゃいかねえのは理解したが、マッキーの野郎、意外とめんどくさい組織作ったもんだな。

やっぱ、マッキーは百発ぐらいぶん殴るか。

 そう、新たに俺は誓った。

 

 

「…………ぐわははは…………近づいて来おったな」

 

 

 イーサムが、酒を飲む手を止め、口元に笑みを浮かべた。

 すると途端に立ち上がり、器を放り投げて、刀を抜き出した。

 気づけば、シンセン組も、そしてキシンやカー君たちも表情を変えて立ち上がった。

 

「酔っても油断しねえか。さすがだな」

 

 俺も立ち上がり、真下を見た。

 そこにはただ土があるだけだが、問題なのは、足から感じる僅かな振動。

 それは、地震じゃない。広範囲でいたる箇所から聞こえてくる掘削音。

 徐々に近づいてくる。

 

「総員、直ちに武器を持って警戒態勢へ!」

「今すぐ、身近なものと組を組んで前後左右を固めなさい! 急いで!」

 

 さっきまでの宴会が嘘のように、全員が一斉に酒瓶を放り投げて刀に手を置き、傍に居たものたちと密集して背中合わせに構える。

 このオンとオフの切り替えの早さに、鍛えられた兵としての様子が伺える。

 

「ヴェルト様!」

「ヴェルト君!」

「ヴェルト!」

 

 そして、俺たちも同じ。互いに互いをカバーできるように構え、地面に向けて構える。

 そう、今、何が起きようとしているのかを俺たちは既に理解している。

 どうやら、カラクリモンスターとは別のお客さんたちが、アポなしでやってきたようだ。

 

 

 

「螺旋階段!」

 

 

 

 次の瞬間、地面の底からいくつものドリルが貫いて空へ向けて伸びた。

 割れた大地でバランスを崩しながら、俺たちは飛びながら回避し、現れた連中に舌打ちした。

 

「くははははは、来たな! 地底族!」

「夜襲をするとは、なかなかオーソドックスなことしてくれるじゃない!」

 

 そう、地底族たちの襲撃。

 先日はまるで予想もしていなかったし、存在そのものを認知していなかったために痛い目を見たが、今回は違う。

 仲間たちも、その表情に驚き等はない。あるのは、一つ。

 

「上等だよ。彼らには僕の姪であるコスモスを攫われた恨みがあるからね」

「コスモス攫ったクソ共……皆殺しだああああああああああ!」

「あの時の借りはここで返すゾウ!」

 

 そう、リベンジだ! 

 だが、次々と地中から顔を出す地底族たちも、好戦的な目で俺たちを睨んでいる

 

「ほう、うまく回避したか……駄作どもめ……」

「なかなかの奴らも揃っているようだな」

「だが、こっちも先日の戦いで何人か失った。並みの駄作共の数倍価値ある同胞たちだ」

「テメエらの血で、拭ってもらおうか!」

 

 かなり多いな。それに。亜人たちも昼間の戦いで怪我人も多い。

 だが、前回の戦いほどじゃねえ!

 

 

「いくぜ、駄作共! まずは俺からだ! 誇り高き地底族の特攻隊長! 俺のメガドリラーアタックは、この世のあらゆる――――」

 

「ふわふわパニックッ!」

 

 

 そして何よりも今は、死の淵からよみがえり、最愛の娘を攫われて怒りに震えるパッパがいるんだぞ?

 

「ッ……な、なに!」

「どうした、何があったんだ!」

「いきなり体が浮いたと思ったら、激しく揺れて……き、気絶している!」

 

 ドリルがどうした。そんなもんまとめてへし折ってやる。

 

 

「天も地も、海すらも関係ねえ。……俺の世界でおいたしたバカ共……全員ぶちのめす! かかってこいよ、半端共!」

 

 

 それが戦いのゴングになった。

 俺の怒りの声と同時に、一気に血みどろの乱戦が始まった。

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