異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第373話 色々と惜しい地底族

 

「フォル―――――ッ!」

「ッ、またですの?」

 

 フォルナに声をかけようとした瞬間、フォルナに何かが飛んできた。

 反射的にフォルナは回避したが、なんだ?

 そう思ったとき、俺たちの足元に先端の尖った大きめの螺子が転がっていた。

 

 

「ウズマを倒すとは、やるネジね~」

 

 

 ちっ、また新手かよ。暗闇の洞窟の向こうからゆっくり近づいてくるのは、かなり小柄な……

 

「やいや、あの方は!」

「はっはっは、ついにあの方まで!」

「小柄で、パワーもない。しかし、その発想力で一気に地底世界で名を上げ、十指の螺子に選ばれたお方!」

「あの方が開発した『ボルトガン』は、圧縮した空気を破裂させて、ネジを強烈な速度で射出する!」

 

 その両手に、小さなハンドガンをクルクル回しながら、小柄なハゲの地底族が待ち構えていた。

 

「ウズマを倒したぐらいで、調子にのるなネジ~。あいつは十指の螺子の中でも最弱の――――――」

「サンダーショット!」

「ほんぎゃあああああああ!」

 

 そんな男を、まだ名前も名乗っていないのに、指をピストルの形にしたフォルナが、雷光線を放って瞬殺した。

 

「撃ち抜く武器。なかなか素晴らしい発明ですわね。ですが、……人の心までは撃ち抜けませんわ」

 

 お見事。もはや言葉もないぐらいの絶好調ぶりだった。

 こうなってくると、後を追いかけてきていた解説地底族たちが、かわいそうになってくる。

 もう、完全に腰抜かしてガタガタ震えているよ。

 

「うそだ、う、うそだ、うそだーー!」

「なんなんだよ、地上人は所詮駄作じゃなかったのか?」

「つ……強い……ば、ばけものだ……」

 

 こらこら、こんな可愛い女を捕まえて化物はねーだろうが。

 まあ、こんな大道芸集団を必殺部隊とかとして崇めてる時点で、こんぐらいリアクションしても仕方ないのかもしれねーけど。

 

 

「狼狽えちゃ~ダメだよ~、お前たち!」

 

「ちょっと待っと待てちょっと待てお兄さん達!」

 

 

 んで、そろそろネタ切れかと思ったらまだ出てきたよ。ご苦労なことだ。

 

「おおおおおお! つ、つ、ついにあの方たちが!」

「全く、粋な方たちだ! 気分の下がった時に上げてくれる、あの方たちこそ!」

「十指の螺旋において、唯一二人組で名を挙げた連携の達人! 二人の連携が見せる螺旋の舞は、この地底世界で知らぬものはいない!」

「ゴウレライ様とレジェン様だ!」

 

 現れたのは二人組。何か黒塗りのメガネをかけた男二人なんだが、ガテン系とかエンジニア系の地底族に比べて、なんか髪の毛もおしゃれな感じでセットして、微妙に髪も長くて、なんか少しチャラい。

 そんな二人が、いきなり見たこともない構えをして、まだ距離のある俺たちを前にして腰を振りだし、何か声を挙げた。

 

「いくぜ、ゴウレライお兄さん。まずはこのお兄さん達に、すごい伝説言ったげて! レジェンデンデンデデンデン!」

「俺は螺旋ゴウレイライ! ラセンゴウレライ! はいっ! ラッセンゴウレライ♪ ラッセンゴウレライ♪ ラッセンゴウレライ♪ ラッセンゴウレライ説明して――――――」

 

 手拍子叩いて何かをやろうとしていたんだろうけど、

 

 

「説・明・不・要! ですわ!」

 

「「――――――ッッ!!??」」

 

 

 なんやかんやでフォルナが瞬殺した。

 

「は~~~~~~、もう、お前ら地上に来るなよ。つうか、お前らどういう基準で軍の幹部的なの選んでるんだ? 功績じゃなくて、一芸やった後の投票か?」

「な、そんな、あの方た――――」

「ふわふわパニック! ……つか、お前らもいい加減うるせえ」

「ぎゃあああああああ……あぶぶ」

 

 もう、何だか耐えられなくなった俺も、いい加減後ろから追いかけてきては解説したりリアクションしたりの地底族たちを気絶させた。

 

「まっ、これでようやく静かになったってところか?」

「ですわね。まあ、肩慣らしぐらいにはなりましたわ」

「…………なあ、ゴミ婿。さっきからそいつしか活躍してないけど、私だってあれぐらい出来たぞ?」

 

 とにかく、もう向こうからやってくる邪魔な気配は感じない。

 これで少しは落ち着いて出口を探せるってところか。

 

「それにしても」

「ん?」

「なかなか惜しいですわね、地底族」

「はっ、何がだ?」

 

 人の気配を感じなくなった通路を歩きながら、フォルナが何気なく言った。

 

「あの螺旋をもう少し戦闘に特化させ、極めさえすれば恐ろしい脅威になるのは間違いありませんわ」

「確かにな。地上に来たやつらの中にも何人か腕の立ちそうなのも居たしな。でもあいつら、日曜大工の道具売りとか大道芸団としてなら地上でブームになるんじゃねえの?」

「まあ、そうですわね……文化的なものに力を注げば、かなりの才を発揮すると思えますわね」

 

 そう、正直な話、どうして地底族共があそこまで戦闘に自信満々なのかは知らねえが、もしあの力を生活に役立つ道具の発明とか、建設とかに使えば、人間なんか比較にならないぐらいの活躍をするだろう。

 そういう意味では、確かに惜しいと言える。

 ひょっとしたら、ボルバルディエ王国はそれを見抜いたからこそ、地底族を利用し続けたのかもしれねえな。

 

「それにしても、洞窟みてーな道が続くばっかだが、地底族ってどんな所で住んでるんだ?」

「そうですわね……やはり螺旋を活かした穴掘り技術で、穴ぐらの中に暮らしているのでは?」

「はは、そりゃまたモグラみたいな感じだな。ま、そうだろうな。正直、天空世界は雲を材質に作った家とか、中々幻想的な感じがあったから、それとタメを張る地底世界は、地下大帝国みたいなのを想像したけどな」

「でも、天空族とはやはり違いますわね。彼らの格好や粗暴さから、文明的な水準は高くはないでしょう。広い地下空洞の壁に穴を開けている……そんな所だと思いますわ」

「ま、そうだろうな」

 

 俺たちはこの時、地底世界はデカイ地下空洞の岩盤などをくり貫いた家にでも住んでいる、薄暗く原始的な世界を思い浮かべていた。

 そう、これまでのことから、この地底族という種族は「そんなもん」だろうと思っていたからだ。

 

 

「おっ、道が開けてきた」

 

「ええ。どうやら大きな場所に出られるよう…………で……す……わね……えっ?」

 

 

 そんな時、ようやく広い空間に出られると思った俺たちを待ち構えていた世界。

 その世界に俺たちは、思わず目を疑い、固まってしまった。

 

「……なっ……にっ?」

「…………うそ…………」

「……ゴミ婿……これ……」

 

 そこには、空洞があった。しかし、空洞の壁に穴を開けた家など存在しない。

 超巨大なドーム状の世界。その世界に広がっていたのは……

 まず、地下なのに明るい。天井に輝く巨大な球体は電灯? それとも魔力で固めて作られた人工太陽?

 

 

「うそだろ?」

 

 

 そして、一面に並ぶのは、巨大な石造りの建造物の数々。

 形の整った石が床に埋め込まれ、建造物はどこか近代的で、前世の西洋を思わせる建物、並ぶ店、聖堂のような存在。

 地下水で作られた巨大な川を渡る船や巨大な橋。広々とした広場のような場所は、子供たちが遊具で遊んでいる公園。

 遠くで見える校庭のような場所と併設されている建物は、ひょっとして学校か?

 そして、やはり目を見張るのは、そんな空間の中央にそびえ立つ、細長く巨大な建物が複数並んでいる。

 一番下から天井まで、恐らく数百メートルはあるだろうに、その天まで届かんばかりの建物の数々は、まるで前世でいうビル。

 それは、前世の世界の言葉を使うなら、こう呼べるだろう。『摩天楼』と。

 

「し、信じられませんわ。それに、あの巨大な建物、建物同士が空中の通路で繋がってますわ」

「おい、ゴミ婿……穴ぐらみたいな生活じゃなかったのか……」

 

 あまりにも予想外過ぎて言葉を失った。

 そこに広がるのは、大都市であり、そして国であり、その文明は地上のこれまで見たどの種族の国よりも発展していると言えた。

 そして何よりも……

 

「なんか……平和そうだ……」

 

 そう、今、地上で何が起こっているのかを理解していないのか、この位置から見える地底族たちは誰もがそんな様子を感じさせず、働いたり、談笑したり、子供たちが笑ったり、そんな世界が広がっている。まるで、エルファーシア王国のように。

 

 

「いいところでしょ?」

 

 

 呆然と立ち尽くす俺たち三人の背後から声がした。

 それは、俺たちを追いかけていたのか、さっきの妖精だ。

 

「私も元々、地上に居たから、この世界がどれだけ平和に発展しているか分かってます。地上の世界が武力で国を発展させている中で、地底世界は文明を発展させているんですよ。でも、地上の世界はそれを許さなかった……だからこそ、地底世界も戦うんです」

「とても…………地上と戦争をしているように思えないが?」

「ええ、ほとんどの人達は戦争に関わりません。関わるのは、王国の兵士や街で職を失っている人たち。あとは、強制徴兵でニート君のような運の悪い人たちとか」

 

 思えば、これだけ巨大な王国を作り上げた文明人として、あんな地底族たちの自信が出てきたのかもしれない。

 地上の生物たちが、いかに原始的で野蛮で文明の遅れた奴らだと、下から見下しているのかもしれない。

 まさか、ここまで奥深い世界が広がっているとは思わず、俺も未だうまく心の整理が出来てなかった。

 すると……

 

 

「で、お兄さん達。これは内緒なんですけど……ニート君からの伝言です」

 

 

 ニート? そういえば、あいつはどこに?

 

「お兄さん達が飛び出したあと、私たちは別の通路から逃げようと横穴掘ってたら、捕まっちゃったんです。ニート君は何とか私だけ逃がしてくれましたが」

「……捕まった? あいつ、何か悪いことでもしたのか?」

「まだ、調整が終わってない紋章眼を地上で使ったのバレちゃったんです。王国兵に捕まって~『これから』、『王国前広場』で、『ラブ・アンド・ピース』の『最高幹部』交えて、色々追求されるそうです。だから、あなたたちをすごい恨んでるって伝言です」

 

 ………………あの野郎…………その伝言、こういう風にしか聞こえねえぞ。

 

 

「いまから王国前広場でラブ・アンド・ピース最高幹部来るから、そこを狙えってことか。くはははは、妖精さんよ。テメェの根暗な旦那も、少しは粋じゃねえか」

 

「えへへへへへ、こういうことをサラッとやっちゃうから、私のニート君は困ったさんなんですよ……え? 旦那? え? 見えますか? んも~、見えちゃいますか! 旦那さんに見えちゃいますか~! いや~、困りました困りました♪」

 

 

 色々と驚くことはあったが、今一番手に入れたかった情報とシチュエーションが俺たちの前に現れた。

 ニートのブスッとした表情を想像しながら、俺たちは真っ直ぐ摩天楼を見据えた。

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