異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第382話 黒歴史

「はあ……あのさ……フィアリ……」

「はいっ! はい! なんですか? 私はここです! ニート君! 私はここにいます!」

「……あのさ……お前の素性は置いておいて、お前……俺のどこがいいの?」

「………………はへっ?」

「こんなだし。不良にも負けるし。惨めだし。弱いし。ダメダメだし……なんで?」

 

 不意打ちのような質問を予想していなかったのか、妖精は思わずアホヅラで固まるも、すぐにボンッと音を立てて顔を真っ赤にした。

 まあ、ニートからすれば、俺や周りがどれだけ「妖精はどう見てもお前好きじゃん」と言っても、「何で」という疑問がついて回る。

 それだけはどうしても分からなかったニートがドサクサに紛れて妖精に聞くと、妖精はかなり狼狽えながらも、「ここで言わなければ全てが終わってしまう」と判断したのか、真剣な眼差しで、ニートの頬に体を預けた。

 

「ニート君………実は私って……計算高くて、腹黒で、人の心を弄ぶ最低の女だったんです」

「見りゃわかるんで」

「な、なんすとーっ! って、そうじゃなくて……ん、んん! その、ニート君、私たちがクラスメートだった頃を覚えていますか?」

 

 ん? クラスメート? なんだ? 妖精はニートと同じ学校に通って? いや、そんなはずねえよな。どういうことだ?

 

「あの時の私は、モテモテで、超ウケがよくって、とりあえず男子にはイイ顔しとこみたいなところがありまして……、思わせぶりなところも多くて、みんな私の外面に勘違いして、告白とか、デートの誘いとか、……でも、そういうことをされる度に自分が『可愛い』って言われている気分で、快感で、ほんと私は自分が世界の中心でした」

「今も変わんないと思うんですけど………」

「ちょっ! ッ……そんな時ですよ……ミスコン一位の友達にどうしても勝ちたくて……フッた男の人数百人斬りとか目指していて、それで百人目にとりあえずドカイ君に……っていうのが最初の出会いで……」

 

 まるで懺悔のように全てを白状するフィアリの、思いのほかエグい考えに、若干俺も引いた。

 つか、俺にあーだこーだ言えるほど、テメェも真っ当じゃねえじゃねえかよ。

 にしても、なんだ? 『ドカイ』? 何のことだ? いや、どこかで聞いたことあるような………

 

 

「ショックでした。私がネコナデ声で話しかけたら、いきなり『俺、壺買うお金無いんで』ですよ? 警戒心丸出しで、しかも私のこと全然知らなくて、それでいて私の本心や本性を一目で見透かしたような顔で、物凄い呆れた顔されて……ムカつきました。意地でもコクらせて、フッてやろうと決意しました」

 

「……いや、警戒するだろ……なんで一度も話したこともないクラスピラミッド最上位に何の脈絡もなく言い寄られるんだって……どうせクラスでグルになってからかってるとしか思えなかったんで」

 

「それなのに……いっぱいアピって、同じ部活に押しかけたら……肝心のドカイ君は部活にあまり参加しないし、かと思えば、部活は部活で大変だし。だって花だけじゃなくて、畑作ってサツマイモとかまで育てるんですよ? 泥まみれになるし、私もバイトで忙しいのに……でも、コノヤローと思って全部こなしてやろうと思って頑張って……ほら、可愛い女の子が泥だらけでひたむきに頑張るとか、ギャップ的な好感度アップになりますし……でも、そんな時ですよ。………あの、蒸し暑い夏の日に………私が花壇の水やりに学校に行って、偶然ドカイ君を発見して………あの時、あの瞬間……私は……」

 

 

 ちょっと待て、蒸し暑い夏の日ってどういうことだ?

 だって、こいつら……ずっと地底に居たんじゃ……

 

「ただの根暗な、ぼっちくんだと思ってました。だから、色々なことに冷めてるんだと」

「なにが?」

「でも、あの日……クラスメートで野球部の輪島くんが、部活の終わりに同じクラスで野球部マネージャーの吉田さんの誕生日パーティーを部員とグラウンドでやってて、その勢いのまま告白しようとしたら、肝心のプレゼントを校舎のどこかに落としたらしく、慌てて校舎中を走り回っていましたけど、それでも見つからない様子で……それにショックを受けて落ち込んでいる彼に、土海くんは、花壇から見繕ったペチュニアの花を鉢に入れて、誰にも見つからないようにコッソリ彼の部活カバンの上に……」

「いやああああああああああああああああやめてええええええええええええええなんで知ってんの!」

 

 その時、ボロボロのニートが身をよじらせて、悶え狂った。

 

「それを輪島くんは神様からの贈り物なんて勘違いして、そして告白は大成功して、そんなキューピットになった土海君は自分から名乗り出ることもなく、カップルになった二人を遠目で優しそうに微笑んでいて……小さく『お幸せに』とだけ独り言のように呟いて立ち去ろうとして……その瞬間から私は………」

「わああああああ、もういいから! あのとき、本当にどうかしてたんで! 黒歴史掘り起こさないで! もう、忘れて忘れて!」

「………忘れないです。死んで生まれ変わっても………絶対に忘れられません」

 

 キャラに合わない粋な図らい。誰にも見られていないと思って自己満足で、自己完結した過去の歴史は、実は見られていたと知ったニートは恥ずかしくて頭を抱えて悶えている。

 しかし、フィアリはその瞬間こそが、自分の心を大きく動かしたのだと真剣に語った。

 一方で俺は………

 

 

「ワジマ……ヨシダ…………ヤキューブ………?」

 

 

 おやっ? はて? なんだって? という言葉ばかりが頭の中で繰り返され、ちょっと頭の中が混乱し、やがて、「まさか?」という考えに辿りついた。

 

 

「今だから白状しますけど、あの修学旅行の班分け……実は、綾瀬ちゃんだけじゃなく、ああいう班分けにするようにしたのは、実は―――――――」

 

 

 あ………………こいつら………ッ!

 

 

 

「グワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 

 

 その時、この時間や世界観や空気すら全てをぶち壊すかのように巨大な轟音と笑い声が響き渡った。

 

「ッ、なにごと?」

「なんだ、この揺れは!」

「おい、天井をッ!」

 

 それは数百メートルはある天井から響き渡った。

 ドーム状に覆う地底世界を塞ぐその天井を突き破り、一人の大柄の怪物が落ちてきやがった。

 おいおいおい、あいつは!

 

 

「グワハハハ。なにやら青臭い魂の波動と最愛の娘の匂いに引き寄せられ、地中を掘り進んでようやく辿りついたわい」

 

 

 その圧倒的な存在、全身から溢れる威圧感、そして武の匂い。

 地上の生命を見下す自信過剰な地底族たちが一人残らず絶句している。

 

「ひゃああああ!」

「いや、なんで?」

 

 妖精の悲鳴と、予想外の展開に目が点になるニート。いや、俺も同じ気持ちだ。

 

 

「ッ、ピイト専務……奴は……」

「……ふっ、その通りだ、グーファ……これはまた、とてつもない大物が現れたな」

 

 

 ああ、同感だ。

 

 

「さあて、モグラ遊びは随分堪能させてもらったが、ようやく見つけたの~、地底世界。そして、ラブ・アンド・ピース。ワシの居ない間に随分と暴れてくれたようじゃが、ヤケドじゃすまぬ仕置をしてやろうかのう」

 

 

 武神イーサム。全身泥だらけになりながらも、猛々しい笑みと共に、ついに地底世界に足を踏み入れちまった。

 これは、地底世界にとっても、そしてラブ・アンド・ピースにとっても完全な予想外のはずだ。

 何故なら、地上で戦うならまだしも、イーサム本人が自分たちの本拠地まで乗り込んでくるとは思わなかったからだ。

 

「……ッ……な、なにいものおだ?」

「……な、こ、こんな化物が………」

「ええい、怯むな!」

「その通り、こやつが何者かは知らぬが、所詮は地上の駄作! 我ら、力を合わせれば……」

 

 その時、イーサムの存在に恐れを抱きながら、四人の地底族が一歩前へ踏み出そうとした。

 だが…………

 

「よせ、螺旋五槍。元帥不在の今、お前たちが死ねば王は守れぬぞ?」

「なっ、ピ、ピイト専務!」

「全員がかりでも瞬殺だろう。種族がどうのの次元ではない。無駄死にするだけだ」

 

 地底族を止めるように、ピイトが間に入った。

 そう、その判断は正しい、たとえコイツが………

 

「ん? ひょおおおおおおおおお、ユズリハちゅわ~~~ん! ワシのユズリハ~~~!」

「ちっ、ゴミ父……」

「ぐわはははは、いや~、まあ、無事じゃったか! 無事だとは思っておったが、フォルナ姫と、小僧と一緒に………ん? 小僧ッ! どういうことじゃ! 運良くユズリハと一緒に落ちたというのに、まだハメとらんのか! こういう状況だからこそヤル展開いくらでもあったろうが! どんだけ奥手のヘタレじゃ! 娘は無事でも膜まで無事じゃなくて良いというのに!」

「うううう、うるさい、ゴミ父! 汚い口挟むな! ゴミ婿には、ふかふかベッドの上で、あとでスルからいいんだ!」

「ばっかもーん! たかが膜の一枚二枚消費するのに、な~にを勿体ぶっておるのじゃ! 何で何もしとらんのじゃ!」

「黙れ! それに、何もしていなくもないんだ。さっきだって、ペロペロしたから」

「なんじゃと! ペロペロじゃと? 本番まだなのに、先に口でシテやったのか? しかし、あのユズリハが従順に口でするとは、小僧噛み切られなかったのか? いや、そこまで惚れられておるとは、ある意味アッパレじゃな。それで、うまくできたのか?」

「できた。私はペロペロの方が癖になる」

「なんじゃと! ユ、ユズリハは奉仕体質じゃったのか? あの幼かったユズリハが、そんな成長をしとるとはな。正に、口淫矢の如しじゃな」

 

 たとえコイツが、変態ドスケベジジイでも、力の次元はハンパじゃないのは確かなんだからな。

 

「……なにやら、状況が更におかしくなりましたわね、ヴェルト」

「本当だよ。せっかく俺が手を焼いて、……」

 

 そう、せっかく俺が、ニートとフィアリに話をする機会を作ってやったのに台無しだよ。どーしてくれんだよ、このジジイ。

 おかげで、フィアリもニートも口半開きで固まってるじゃねえかよ。

 

 

「確かに、混乱の極みだ。それに、このままではトゥインクル・ベルも、新たなる同胞ハッピーターパンのこともウヤムヤになりそうだ」

 

 

 だが、その時、小さくため息を吐いたピイトが………

 

 

「仕方ない。どうせ後々戦うのであれば……現在世界で最も危険な存在を、ここで始末するか」

 

 

 その言葉に耳を疑うも、そのあまりにも当たり前のように自信に満ちた言葉が、俺にはハッキリと聞こえた。

 同時に、全身に鳥肌を感じるほどの寒気と、禍々しい何かが、可愛らしい山猫の着ぐるみから感じた。

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