異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第388話 妖精の決意

「ぐわははははははははは! やりおるのー、二人共!」

「やっぱ、あの人……俺との喧嘩のとき、本気でやればもっと簡単に勝てたみたいなんで、逆にへこむ」

「すす、すごいです! なんか、あ、あんな大きいのアッサリ! っていうか、コンビネーションっていうか、息もピッタリバッチリですし!」

「……むすっ……あれ、私の婿だ、私の婿だ……婿だもん……婿はアレと離婚したみたいだし……」

 

 案外、アッサリ決まったか? こういう状況じゃなければ、ハイタッチでもして頭でも撫でてやるとこだが、俺たちは互いに頷くだけで、それ以上のことはしなかった。

 が………………

 

「ああ、本当に美味しそうだよ、美味しそうで食べ散らかしたいッ!」

「ッ!」

 

 覆われる大きな影。上には巨大なキマイラッ!

 えっ? だって、奴は………

 

 

「殺られる前に肉体の一部を千切って再生………そういう分裂再生もできるんだにゃあああああああああああああああああ!」

 

「迅雷烈覇ッ!」

 

 

 危うく踏み潰されるか、食い殺されるかの寸前で、雷速でフォルナが俺ごと脱出。あっぶね………

 

「けっ、やっぱ、そう簡単に瞬殺されてはくれねーか」

「そうですわね。ですが、所有する能力すべてが未知である以上、やはり短期決戦しかありませんわ」

 

 フォルナの言うとおりだ。イチイチ、能力を予想したり対策立てたりしても仕方ねえ。

 クレランだって、何百何千と、えげつねえ能力を持っていた。こいつだって同じだろう。

 なら、能力がどうとかの前に、瞬殺といかなくとも、秒殺する!

 すると………

 

「ひゃっはあああああああああああ!」

「ガアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 もはや、可愛いデレデレのドラゴン、むしろデレゴンと化したユズリハが、襲いかかってきたグーファをブレスで吹き飛ばし、ドヤ顔で俺たちを見下ろしていた。

 

「ユズリハ姫!」

「お、おお、さっすが、ユズリハ」

 

 そう言って褒めると、尻尾が嬉しそうにパタパタ………おい、なんかもう、こいつ開き直りすぎだぞ!

 

「乗れ、婿」

「はっ?」

「乗れ! 乗って! 乗るんだ! 乗れ! ゴミ婿を乗せてやる!」

 

 ………まあ、いっか………

 

「だな。ニートの戦いでは温存したが、こういう化け物退治には遠慮することはねえ」

「ん!」

「いくぜ、魔導兵装・騎獣一体・ふわふわ新世界《ノイエヴェルト》!」

 

 ユズリハの背中に飛び乗り、力を開放。ロアとの戦いで編み出した、騎獣一体。

 それを、この地底の世界で光に変えて、解き放つ。

 

「なんと! ぐわはははは、ユズリハと騎獣一体するとはのう……ちゃっかり魔導兵装もできとるし、なんじゃヴェルトよ……むしろお前が敵の方が、熱い戦いができたかもしれんの~う」

 

 それだけはもう二度と勘弁とイーサムに対して心の中でツッコミを行い、俺たちの一体となった瞳で射抜くのは、ブレスの破壊力で破損した肉体を再生させながら立ち上がる、グーファ。

 

「ふふ~ん」

「……な、なんですの? ユズリハ姫。その勝ち誇った顔は……」

「ふふん」

 

 なんか「どやぁ」っていう、ドヤ顔ドラゴン、通称ドヤゴン丸出しのユズリハと、難しい顔で「ぐぬぬ」と悔しそうなフォルナだが、今はそれどころじゃねえと分かってんだよな?

 

「喧嘩してる場合じゃねえぞ、二人共。とにかく、こいつを秒殺しねえとな、秒殺」

「ええ、分かっていますわ。先ほどのワタクシとの連携を繰り返していけば………」

「私と婿で最強だから、他はいい。他いらない」

「じゃあ、三人合わせれば超最強ってことでいいだろうが!」

「いきますわ!」

「ちっ!」

 

 あ~、もうめんどくせ!

 まだブレスの爆炎で身を捩ってるグーファに一斉攻撃をしかける。

 月光眼が再生されてるなら、また同じ手を使うまでだ。

 

 

「ぐ、く、ぐ……でひゃひゃひゃ」

 

 

 しかし、その時、爆炎の中で気味の悪い笑みを浮かべるグーファの声が耳まで届き、そして次の瞬間………

 

 

「でひゃひゃひゃひゃひゃ、ひゃはははは!」

 

 

 地面から、巨大な割れた音。振り返ると、俺たちの背後に巨大な大蛇。

 

「はっ?」

「奴の尻尾の大蛇ですわ! 爆炎に隠れて、地中を伝わって……!」

 

 だが、その大蛇は俺たちの後ろをとったものの、俺たちを見ていない。

 じゃあ、何を………

 

「い、………いやああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 突如響いた、妖精の悲鳴。何が起こっ………ッ、あいつがいねえ! まさか!

 

 

「ニート君が! ニート君がッ!」

 

 

 ニートがいない。どこだ? ニートは………

 

「ニート君が、蛇にッ!」

 

 喰われた……のか?

 確かに、蛇が出現した場所は、さっきまでニートが立っていた場所。

 喰われ……丸呑みされたのか?

 

「じゃあ、ニートは……ッ!」

「い……急いで大蛇の胴体を切り離しますわ! 蛇の胴体を伝わり、奴のお腹に彼が到達する前に!」

 

 蛇に飲み込まれたニートは、そのまま蛇の体内を通って、グーファの本体まで届くことになる。

 もし、そこまで到達しちまったら、取り返しのつかないことになる。

 幸い、蛇の全長は数十メートルある。まだ、今から蛇を切断して腹をカッ捌けば!

 

「ぎゃはははははははははは! 紋章眼! 紋章眼、紋章眼ッ! 紋章眼! もらったああああ!」

「させるかよっ!」

「にぎゃははははは、月光眼ッ!」

「ッ!」

 

 しまった………近づけねえッ!

 

「イーサム!」

「ぐわはははははははは……やれやれじゃのうっ!」

 

 不意に叫んじまった、イーサムの名前。そこには、「頼む」という思いを込めていた。

 するとイーサムが亜人の身体能力を超越した速度で、グーファの懐に飛んでいた。

 

「邪魔アアアアアア! 月光眼!」

「ぐわははははははは、ワシが若い頃からどれだけヴェンバイと殺し合いしてきたと思っておる。そんなものを心の拠り所にするようじゃ、まだまだじゃ!」

 

 月光眼で斥力発動。だめだ、間に合わねえ。

 イーサムですら吹っ飛ばされ………

 

 

「いくぞい! 超絶獣神帝覇王流星飛天翔滅却大破壊殴りッ!」

 

 

 どう見ても、ただの本気右ストレートにしか見えないイーサムのパンチ。

 しかし、その単純にしてただのパンチが、まるで巨大なガラスを粉々に砕いたかのような音を響かせて、何十倍もの質量のあるキマイラを、斥力何それ美味しいの? みたいに一切無視して殴り飛ばしやがった。

 

「ぐぎゃあああああああああああああああ!」

「ぐわはははは、わめくでない。喰うという欲望……己の欲望しか満たせぬおぬしに、これ以上は勿体無いのう」

 

 べちゃりと、辺り一面に臓腑をブチまけ、胴体が粉々になったグーファ。

 たとえ不死身でも痛覚はあるのだろう。言葉にならぬうめき声を上げ、その瞳は強くイーサムを睨みつけていた。

 って、そういえば、ニートは大丈夫かよ! と思ったとき、イーサムに殴られた衝撃で、胴体から切り離された蛇の腹が、突如一部で尖り、そして貫かれた。

 すると、その中からは、全身を胃液のようなベットリとした液にまみれながら、過呼吸するほど全身を震わせたニートが中から出てきた。

 

「ニート君ッ! よ……よかった……」

「あ~~~~~………二度と蛇見たくない……一回死んだ時より怖かった……」

 

 外に這い出して、しかしそのまま腰を抜かして座り込むニートは、どうやらガチで怯えている。

 まあ、無理もねえよな。後一歩でマジで死んでたんだから………

 

「ッ……もうちょっと……だったのにいいいいいいい! 絶対美味しいと思った食べ物を、飲み込む前に吐き出せられるって、最低の生殺しだよ! もうちょっとだったのにいいいいいいいいい!」

 

 そんで、壁に打ち付けられ、再生を始めながらも、狂ったように怒りをブチまけるグーファ。

 どうやら、余計に怒らしちまったよう……ってか、イーサムのパンチでも生きてるとか、ガチの不死身だな。

 

「ふ~……しっかし、やっぱ倒すのは無理そうだな」

「ですわね」

「婿、私がアレ倒すからさ、ねえ、なんかしてくれ。倒したらなんかしてくれ……ちゅ、ちゅ、チュウでもいいぞ?」

 

 ユズリハというより、やはりここはフォルナの技の方が効果的だろうな。

 そして、さっきみたいなのだけは気を付けねえとな。

 もし、こいつが紋章眼まで手に入れちまったら、ちょっとそれはかなりキツい展開になっていただろうからな。

 

「う、ううう、うう、ニート君、ニート君、ニート君」

「あの、いや、……わり、ちょっとソっとしておいて欲しいんで」

「ニート君、ニート君、ニート君……よかった……良かった」

 

 泣きじゃくってニートの頬にしがみつく妖精。まあ、無理ねえよな。ほんと、あとちょっとでヤバかったからな。

 だが、今のニートと妖精のメンタルじゃ、もう一度同じことされても、何もできねえかもしれねえ。

 となると、俺たちの誰かはニートに付いてたほうが……

 

「う、ううう、もう、いや……こんなの嫌です……」

 

 そんな時、フィアリから漏れた弱音のような言葉。

 しかし、その弱音は、どこか力が篭っていた。

 

「もう、嫌、です……妖精族のこと、ニート君のこと……もう、私、私! 頭がどうにかなっちゃいそうで……家族が友達が、私の働き一つでどうなるか……でも、ニート君だけは失いたくなくて……」

 

 その、フィアリの言葉から俺たちが「もしや」と思ったのは、フィアリが無理やりニートを連れてでもラブ・アンド・ピースに戻ろうとしているのではないかということ。

 

「ひゃっは! なら、どうする? トゥインクル、帰ってくる? え~~~、抵抗してくれた方が、喰っちゃった言い訳できるから帰ってきて欲しくないんだけど」

 

 もしここで、フィアリがラブ・アンド・ピースとして、ニートを連れて行くというのなら、それはそれでも問題になる。

 俺たちとしてはそれも防ぐ必要があった。

 でも、そんな心配は杞憂だった。

 

 

「それでも、私はもう、ニート君なしでは生きていけません。だから、……誰にも渡さないです! 渡したくないんです! 誰にもです!」

 

 

 フィアリが潤んだ瞳で精一杯グーファを睨みつける。敵意と決意を込めた目だ。

 

 

「ニート君は私のです! だから、私が今度こそ守るんです!」

 

 

 妖精が泣きながら吠える。その小さな体いっぱいに声を張り上げ、そしてその全身から光り輝くエネルギーを放出している。

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