異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第390話 女のことは言われたくない

「ぷっはー! うっめー! 内蔵ソテーに脳みそゼリー、眼球キャンディー! うひゃっはー! 口の中でコロコロ転がしてよー! 久々の超グルメ! ロルバン帝国じゃ人間的な料理しか無かったが、こういうゲテモノこそ究極グルメ!」

 

 幻の世界で心ゆくまで何かを食っていると思われるグーファ。何を食ってるかは想像したくもねえ。

 

「はう~、婿~、欲しい。いや、よこせ! 私もつくる。赤ちゃん~! あう、でも、待って。最後、頭撫でてチュウしながら」

 

 唇と舌を突き出して、何もない空間を抱きしめながら、衣服を激しく乱してサカるユズリハ。

 その獣のように相手を求める姿は、かなりキツイ。

 だが、誰もこれには敵わないだろう。

 

 

「…………ぶ……たですわ……」

 

 

 シュンとした表情で、四つん這いになっているフォルナ。

 真っ白い膝上高さのヒラヒラスカートがまくれて、水色の下着が丸見えだが、まるで意に介してない。

 

「う、うう、わ、わ、ワタクシは、淫乱なメス豚ですわ! ヴェルト専用の卑しい奴隷ですわ!」

 

 あのさ、ママがああいうキャラなんだから、普通、お前みたいのはドS女王様みたいになるんじゃねえの?

 なんでお前が調教されてるんだよ。

 

「あはは、このお姉さん、よっぽどお兄さんのこと好きなんですね~」

「はあ? なんでだよ、妖精。こんなの、好き嫌い以前に、ただの変態じゃねえか」

「ちっちっち、分かってませんね~、女の子って、心から愛する人にはその人の所有物だと実感できるぐらいに、乱暴されたりイジワルされたりしたい、そういうMッ気なところは誰もが持ってるんですよ~」

「そういうのを、ドメスティックバイオレンスって言うんだよ」

「まあ、このお姉さんも相当、えっちっちなのは否定しませんけど…………」

 

 大規模なテロによって地底世界が混乱と悲劇の渦の中で、生命の食欲、睡眠欲、性欲のうち、二つの欲望妄想世界に突入しているこの三人だが、正直こっからどうすりゃいいんだ。

 

「おい、ちなみにこの幻術は数分間って言ってたな? ほっとけば元に戻るのか?」

「ええ。ですから、グーファ常務を倒すなら今のうちです」

 

 だが、倒すといっても、再生機能を持っているこいつをどうやって倒す?

 フォルナの技ならこいつを封じ込めることはできただろうが、今のフォルナは妄想の中でSMプレイのメスブタイム中だ。

 

「イーサム……できるか?」

「ぐわはははははは、まあ、喰っても不味そうだしのう。ようするに、細胞一つ残らず消滅させれば良いか?」

「ああ、サラっと言ってるけど、そんなスゲーことできるならな」

「しかし、そんな威力の技となると、この地底世界も、より甚大な被害を受けるが、良いか?」

「………………………」

 

 いや、そりゃよくはねえか……

 思い入れもない嫌いな世界とは言え、だからってこの手で敵ごと滅ぼすってのも……

 

「じゃあ、俺がやるんで」

「はっ?」

「俺がどうにかするんで、いいすか?」

 

 それはあまりにも意外だった。蛇に丸呑みされて精神的にヤバくなっていたはずのニートが立ち上がっていたからだ。

 

「ニート君! 大丈夫なんですか? っていうか、どうしてニート君が……」

「いや、まあ、なんつうか、まあ、ほら、俺にも色々あるんで……」

 

 こういう時には、率先せずに目立たずに成り行きに身を任せるであろう男が、急にどうした? そんな冷やかしも込めてニヤついた笑みを見せてやると、ニートは少し拗ねたようにそっぽ向いた。

 

「……とりあえず、あんたと戦って、そしてあんたの戦ってる姿見て、分かったことがあるんで……」

「分かったこと? ほう、そりゃ何だ?」

「……とりあえず、やれることはやっといた方がいいってことと……あと……」

「おう?」

「あと、あんたには恋がどうとか女がどうとか、そういう話は言われたくないんで! あんなの見ると尚更なんで!」

 

 ビシッとニートが指差す方向には、乱れまくったメス二匹。

 

 

「えへ、なあ、言え。お前から言え、命令だゴミ! うん…………えへへ、言われた~えへ、言われた、全く身の程知らずのゴミめ! もう、仕方ない、お前も聞きたいか? 私の口から。なら、一回だけだぞ? 一回しか言わないからな! だ、だいしゅき……本当はお尻ペチペチ好き!」

 

「う、ううう、ううう! ヴェルト、その鞭はお母様の、ひん! も、いた、ダメ! もう、もう逆らいませんわ、ヴェルト! 二度とあなたを裏切りませんわ! もう二度と、生涯、例え生まれ変わっても、もう二度と忘れないよう、刻み込んで、ヴェルトォ!」

 

 

 俺の背中に冷たい汗が流れた。

 

「あんた、あんなになるまで追い詰めて、何やらかしたんだ?」

「…………………………………………」

「あんな妄想抱いている以上、何だかんだであんたも、ちゃんとやってないってことだと思うんで、あんたには女のこととか言われたくないんで」

 

 シラーっとした表情のニートに、ここまで来るとドン引きなフィアリ。

 まあ、そうだろうなとは俺も思う。

 

「ここに来る前に、フォルナに言われたよ。お前はまだ、ヴェルト・ジーハとして誰かに恋したことないってな」

「はっ? だって、さっきあんたはクラスメートがどうとか……」

「確かに俺はこれまで、俺を想ってくれている奴らを、もう蔑ろにしたりしないで、受け入れてやろうぐらいにしかしてなかったから……そうだな……それで十分だと思っていた。フォルナのことだって、今後どこかのタイミングでわだかまりさえ消えればと……」

 

 俺に言われたくないというのは分かった。確かに言う資格がないかもしれない。

 

「フォルナたちに対する、配慮が足りなかった。まあ、認めるよ」

 

 だが、言う資格はなくても、それでも言わねばならねえことは残ってる。

 

「んで、どうやって倒すんだ? あんなのドリルでズタズタにしても再生されるぞ?」

「ん? あ、ああ……そうだな。なら、もう再生もさせないんで」

 

 再生すらさせない? イーサムのパンチでも再生したやつを?

 

「ただ、少しぼっちの世界を味わってもらうだけだ」

 

 ニートの右腕のドリルが回転する。

 そのドリルは巨大化するわけでもない。だが、少しだけ温かい光を纏っている。

 

「螺旋術・渦巻地獄」

 

 ニートはドリルを突き刺した。しかし、それを突き刺したのはグーファにではない。

 自分の足元の地面にだ。

 だが、ニートが足元にドリルを突き刺した瞬間、地面が大きく揺れ、グーファが悶えている足元が急激に崩れ、ただの砂と化した。

 

「これは?」

「地中の岩や鉱石も全部砕き、取り除き、どこまでも続く砂の底なし沼だ」

 

 そして、砂となった足場に飲まれ、狂った状態のままグーファが飲み込まれていく。

 しかも足元から徐々に砂が伸び、グーファの体を包んでいく。

 

「そして、取り除かれた硬い鉱物をかき集めて、全身を固め、身動き取れないようにどこまでも続く底なしの世界まで落とす。そのまま圧迫されて、二度と地底の奥底から出てくることができない」

 

 それは、相手を殺す技じゃなく、相手を文字通り封じ込める技。

 こいつ、そんなことまで出来たのか?

 

「ほほう、じゃが動作が遅いのう。こんなもの、完全に捕らえた相手にしか使えん。実戦なら時間がかかりすぎて、まず使えんのう」

「……ああ、まあ、そこは……アシストがあったんで……」

 

 ちょっと照れくさそうに呟くニートの真意が手に取るように分かった。

 ようするに、妖精がこうして敵の動きを止めなければ使えない技。

 妖精の存在なくしてできない技ってことか。

 

「ニート君……」

「不死身の肉体なんだ……誰の声も届かない暗闇の世界を、少しぐらい体感したらと思うんで」

 

 あれほど激しく始まった戦いは、気づけばとても静かに終幕を迎えようとしている。

 自分自身に何が起こっているかもわからないまま、グーファは鉱物によって全身を固められ、圧迫され、そのまま底知れぬ地底のそこへと飲み込まれていった。

 生物が存在するかも分からぬ地底の更に奥深く。そこから這い出せる種族の能力を保有していない限り、グーファが出てくることは二度とない。

 ド派手さがまるでなく、それが逆にこいつらしい、実に静かな幕引きだった。

 

 

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