異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第392話 過去のすり合わせ

「あんた……本当にあの、朝倉なのか?」

「朝倉くんが……こ、こんなことって……」

 こいつらは、ずっとこれまでお互いとしか、クラスメートと再会してなかったんだろうな。

 だからこそ、俺がここにこうして居ることに、平静でいられるはずがなかった。

「ああ。そうだよ……ヴェルト・ジーハは、かつて朝倉リューマというバカな不良だったよ。そして、お前らだけじゃなかったってことだよ。あの日に死んで、そしてこの世界に生まれ変わったのはな」

「ッ、ほんとかよ……なんで……」

「この世界に生まれて十七年。俺が前世を思い出したのは、八歳の頃だったな。それから、まあ、人並みに生きてきて、色々あって、今こうしてここに居る」

「あの~、途中からかなりめんどくさくなって、省いてませんか? なんで人並みに生きている人に、奥さんがいっぱい居たり、四獅天亜人と一緒に居たりするんですか?」

 まあ、その通り、省いた。正直俺の生涯を語り始めると、どこからどこまで話せばいいのか分からなくなるしな。

 でも、俺がどうしてこの世界に存在しているかの説明など、それだけで十分。

 だが、それでもニートとフィアリはまだ信じられないといった様子だった。

「あの、朝倉が……必殺技名を叫ぶとか……」

「そこは拾うんじゃねえ!」

「いや、その前に、あんた俺のこと完全に忘れてるとか、マジ酷いと思うんで!」

「……だってよ……もう、何年前の話だと思ってるんだよ。そもそも俺は学校あんま行ってなかったし、男子で覚えてるのとか、ミルコと十郎丸、体育祭で絡んでた鮫島と宮本。それに、加賀美。あと覚えてるのっていったら、目立ってた星川と、いつも写真売っ……こほん、江口ぐらいだしな。あとは、名前と顔がウッスラなのが少々……」

「あのさ、修学旅行同じ班だったのに忘れるとか、俺はどんだけ存在感ないとか思ってショックなんで」

「いや、そこら辺はあんま覚えてねえ……」

 修学旅行の班編成? 確かサボってる間に勝手に決まってたけど、自由行動どうするかぐらいしか考えてなかったしな。

 すると、ジト目のフィアリもニートの横で頷いていた。

「あ~、あの~、朝倉くん、いちお~、私も同じ班だったんですけど~」

「えっ、そうだったっけ? いや、もうそこら辺は完全に忘れた」

「ひどいですよ~。男子は、朝倉くん、星川くん、土海くん。女子は、私に、綾瀬華雪ちゃんに、不知火《しらぬい》有希子《ゆきこ》ちゃんの六人だったじゃないですか~」

「し、シラヌイ? あ~、なんかウッスラと覚えてるな」

「っていうか~、今だから教えちゃいますけど~、その修学旅行の班編成は女子たちの陰謀だったんですからね~」

「なに?」

「私と綾瀬ちゃんと有希子の三人の恋愛同盟ですよ。好きな人と思い出を作るために、そういう班編成にしたんですよ。だから~、ニート君がさっき言ってたのには~、えへへ、ちょっとした真実も加味されるわけでしてね~」

 恋愛同盟? なんつうアホらしい……ん?

「いや、それ俺も初耳なんで? え、そうだったの? あれ、ん? え?」

「あははは~、いや~、まさかニート君が綾瀬ちゃん好きだったのは、私としても想定外だったわけでしてね~、いや~」

 意外な真実を知ったとばかりに、ニートが目を丸くして、フィアリは申し訳なさそうに苦笑している。

 だが、ちょっと待て。

 ニートはさっき言ってたな。

「おい、ニート。さっきのトラウマ話……あれって、地底世界の学校じゃなくて、前世での話だったのか?」

「……ああ、そうだよ……」

 少々ブスッとして振り返るニート。

 ほうほう、つまり、さっきのこいつのトラウマ話、確か、クラスの代表の女生徒に恋して、クラスのイベントの班分けで同じ班になった。

 嬉しかったが、そのクラス代表の女生徒は同じクラスの不良を好きだった。

 そのクラス代表の女子は不良と同じ班になるために工作した。

 もしその班分けってのが、修学旅行だとしたら?

 だとすると、その班分けでクラスメート代表の女子となると……

 

「あっ! お、お前、アルー……じゃなかった、綾瀬が好きだったのか!」

 

「…………コク」

 

 となるとだ、綾瀬が好きだった不良? こいつのトラウマの原因は綾瀬と……

「お前がムカついた不良って、俺のことか!」

「気づくの、おせえええええええええええ!」

 俺は探偵のように真実にたどり着いたと思ってそれを口にすると、ニートは目を血走らせて俺に詰め寄った。

「ああ、ほんとそうなんで! あんたには色々とムカついてたんで! それなのになに? 俺のこと覚えてない上に、あんたはこの世界でも普通に美人の嫁何人も手にしたマジハーレム野郎だし、なんなの? ほんとなんなの? どんだけ不平等な勝利者なの、あんた!」

 なるほど。不良のくせにクラスに馴染んだムカつく不良も、腹黒い女も……あ~、なんか複雑な気分だ。

「っていうか~、朝倉くん、綾瀬ちゃんが朝倉くんのこと好きなの知ってたんですか~? 朝倉くんは美奈のことしか見てないと思ってたのに」

 なんと……こいつらまで知ってたのかよ……やっぱ、俺ってそんなに分かりやすかったのか。

「あ~、綾瀬の件は知ってたというより聞いたっていうか、まあ人づてや、本人から」

「本人? はあ? なんでですか? 綾瀬ちゃんは、コクってなかったですよね? だって、コクる前に――」

 コクる前に死んでしまった。そういう言葉を続けるつもりだったのだろうが、その言葉は、ある奇声にかき消された。

 

「えへへ、えへへへ、えへへへへへへ。婿~、むこ~、ムコ~、えへへへへへへ、婿との赤ちゃん! 産んだから、また交尾できるな~、もう一人つくる! くぱ~」

 

「あああんっ! そうですわ! じ、自分は、わた、ワタクシは、ヴェルト専用のメス豚ですわ! ぶひぃ♥」

 

 忘れてたよ…………

「……そ、そう。うん。私が言うのもアレですけど、前世では美奈ばかり追いかけてたツン倉くんが、この世界ではとんでもないゲス倉君になっていてショックなのであります」

「いや、待て、俺の所為じゃねえ。手ェ出してないんだから、マジで俺の所為じゃねえ」

 妄想世界の住人となり、未だこちらの世界に戻ってこないで艶やかで幸せそうに悶える二人の眠り姫を憐れみながら、フィアリがジト目で俺を睨んでくる。

 

「で、そのゲス倉くんは、どうして綾瀬ちゃんがゲス倉くんを好きだって知ってたんですか?」

「だから聞いたんだって、本人から。ああ、だから、それはこの世界でって話だよ」

「……ほへ?」

 

 今度はフィアリが目を丸くし、目が血走っていたニートもピタリと固まった。

 

「言っただろ? 俺やお前らだけじゃねえ。この世界に生まれて、そして生きているのはな」

「ッ、それじゃあ! ……まさか!」

「ああ。今は、ニートの所為で離ればなれになったけどな」

「えええええええええええええええっ! あの中に居たのか!」

 

 ああ、居たんだよと頷いた。

 

 

「あ、あの、あ、綾瀬が……」

 

「綾瀬ちゃんが……うそっ! 本当に綾瀬ちゃんですか? うっはああああああああ! 本当ですか! ちょ、今、どこですか! どこにいるんですか! う~~~、さっきなんで気づかなかったかな~、早く会いたいです!」

 

「つか、フィアリ、テメエはラブ・アンド・ピースの最高幹部なら色々知ってたんじゃねえのか?」

 

「ッ、そ、そうなんです、それです! なんでラブ・アンド・ピースは、ランドのキャラクター使ったりしてるんですか! 副社長や他の幹部に聞いても、社長の趣味としか教えて貰えなくて……」

 

「ああ、でも、その社長ってのは人間に逮捕されていて正体不明のまま。どうにかして、その社長……マッキーラビットの正体を探ろうと思っていて……」

 

「あ~、そうか、じゃあお前らはマッキーの正体が、加賀美だったってことも知らないのか」

 

「「はああああああああああああああっ? あ、アッサリ言った!」」

 

 

 そうか。フィアリがラブ・アンド・ピースに入った頃には、マッキーは牢屋の中か。そのニアミスで正体を知ることができなかったわけか。

 

 

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