異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと 作:アニッキーブラッザー
まさかのドシリアスに凹んだフォルナに、俺はどうしてやればいい?
イジワルをやめてやる? それはこいつが納得しない。
もっとイジメル? こいつの心がもうこれ以上もたない。
テキトーにする? こいつはいつまでも前に進まない。
許すことも許さないことも現状維持も、全てがフォルナを壊してしまう。
まさか、フィアリのとんでも魔法の巻き添えで、こんなことになるなんてな……
でも……
「お前をドM調教する変態プレイを……実際に俺が望んでるとでも思ってんのか?」
「ヴェルト?」
「フォルナ。何をやってもお前が納得しないなんて当たり前だ。だって、俺の気持ちなんてまるで無視じゃねえかよ。実際にそんなこと俺が望んでもいないのに、自己満足な贖罪してんじゃねえよ」
そう、結局最初から間違ってるのだ。
俺に贖罪したいと言いながらも、そこに俺の気持ちはまるで入ってない。
ただ単に、フォルナが自分で苦しんで贖罪してると勘違いして酔ってるだけだ。
「俺がお前にイジワルしたのは、ただのイタズラ心みたいなもんだ。別にそれでお前に罪を償わせてるつもりでもねーし、そこまで深く考えてねえ」
しかし、そうなると振り出しに戻るだけだ。
「ならば……ワタクシはどうすれば良いのです? ヴェルト! 自分で考えるべきことなどというのは分かっていますわ! でも、どうしても答えが見つからなくて………」
そう、ならどうすればいい?
自分で考えろ?
考え尽くして、妄想でシミュレーションし尽して答えが出ないならどうするか?
なら……
「フォルナ……今のお前の償い方を実際されると……俺のほうが余計心が苦しくなって……つらい……」
なら、俺が提示してやるしかない。
「どうしてこうなんだろうな、俺たちは。今になってみると、ニートやフィアリのような甘酸っぱいのが、少しだけ羨ましかったりする……」
どうやったら俺が償われたという気分になるのか……
「フォルナ。お前はこの世界の誰よりも俺を知ってる。だから、お前がさっき俺に言ったことは事実だ。俺は愛された奴らを愛しても、恋をしてねえ」
「……ええ」
「ガキの頃のお前みたいに周りが見えなくなるぐらい夢中にも、フィアリやニートみたいな不器用ながらも初々しい気持ちも……なかったな……」
恋は無敵。昔のフォルナ、そしてアルーシャの言葉だ。そして、その時のこいつらは誰よりも幸せそうだった。
「でもな、それでもこれだけは言える。サンヌも言ってたけど……俺も嫌だよ……今の状況は。お前との、こんな複雑な関係は」
その恋に応えてやれない今の状況は仕方ないとはいえ、それでも俺だって嫌だ。
「俺とエルジェラで、コスモスを幸せにする。親友の忘れ形見であるウラを俺が幸せにする。アルーシャは俺と前世も含めた話をしてくれる。ユズリハはペッt……まあ、それはそれとして、そうなると後はなんだ?」
「ヴェルト?」
「だからフォルナ……お前は、もう償いとかじゃなくて、お前が感じた罪悪感の分、俺のことを幸せにしてくれればいいんじゃねえのか?」
まあ、今でも十分俺は幸せなんだけどな……
「ヴェルト……それはどういう……」
でも、何か役割さえあれば、それがこいつの救いになるのなら……
「例えば、親父とおふくろが死んだとき、俺は心の底から悲しかった」
「……ええ」
「ハナビが生まれたとき、俺は心の底から嬉しかった」
「……そうでしたの……ワタクシはあまり面識ありませんが……」
「コスモスが生まれたときは、自分の何と引き換えしても守ってやらなきゃ……そう思った」
「ええ、あなたなら当たり前の感情ですわ」
「ラガイアがお兄ちゃんと呼んでくれたとき……思わず抱きしめた」
「……そんなことがありましたの……」
俺は考えたわけでもなく、ただ思ったことをそのまま口にし続け、フォルナはそれを真剣に聞いている。
俺が思っていることを……
「フォルナ。俺は家族を失うとつらく苦しく、一方で家族が増えると幸せになるようだ」
その言葉はどう続くのか? だから、フォルナに俺の家族になれとでも言うか? 違う。それをこいつが納得しないんだ。
なら、言い方を変えよう……
「だから……今から俺と子供作……ん? いやいやいや!」
「………………………………………………………………へっ?」
いや、違うだろ? いや、いいのか? ヤバイ、なんか俺もテンパって良く分からなくなってきた………
「あ、いや、そうじゃねえ。別にそういうことじゃなくてだな……とりあえずよ、償いよりも俺を目いっぱい幸せにしてくれれば、もう、それでいいんじゃねえの? 罪悪感や罪や、俺のお前に対する恨みも霞んじまうぐらいに……お前が俺を幸せにしろ! お前の無敵の恋のパワーで俺を負かせ! 昔以上にな」
そうだ、言いたかったのは、言ってやりたかったのは、ただ、昔のお前に戻って欲しかった。
だから……
「そして、いつか俺がお前無しで生きていけなくなるぐらいに幸せにしてみて……俺からお前に懇願するぐらい……俺を惚れさせて……あのひねくれたニートが素直になっちまったように、俺が観念するような……朝倉リューマではなく、ヴェルト・ジーハに恋でもさせてくれよ……」
多分、こいつに償われることよりも、昔の俺たちに戻れることのほうが、俺にとってはよっぽどいいことだから。
「――――――ッ!?」
その時、フォルナは顔を覆って肩を震わせた。
「い、いいん、ですの?」
「あっ?」
「ワタクシが……あなたを幸せにして……いいんですの?」
肩を震わせ、嗚咽し、瞳を拭うフォルナ。
「大変だぞ? コスモスを取り返せば、正に幸せ最高潮の俺を更に幸せにして、惚れさせるとか……たぶん、どんな償いよりも厳しいぜ?」
だが、次の瞬間顔を上げたフォルナの表情は、弱々しかったさっきまでとは違う。
「ふふ……ふふふ! ワタクシを誰だと思っていますの、ヴェルト! より困難であればこそ、立ち向かうのがワタクシですわ!」
罪悪感に囚われて、追い込んで暴走していた時の危うさは無い。
「分かりましたわ、ヴェルト! あなたを傷つけた償いとして、ワタクシがあなたを世界一幸せにしてみせますわ!」
「ああ。今以上幸せにしてくれるまで、許してやらねえからよ」
ああ、あん時のフォルナだ。ガキの頃からよく知っている。
「ウラよりも幸せにしてみせますわ!」
「おお」
「エルジェラ皇女よりも子供をたくさん作って、あなたの家族を増やしますわ!」
「ああ」
「前世もアサクラリューマも気にならなくなるぐらい充実させて、アルーシャに出番なんて与えませんわ!」
「はは」
「あなたが望むのなら、時にはユズリハ姫より忠実なペットにもなりますわ! わんわん、にゃんにゃん、ですわ!」
「それはどうだろうか」
「カミノミナ以上に!」
「ッ!」
「カミノミナ以上に、あなたに素敵な恋をさせてみせますわ!」
そうだ。数日前、記憶を取り戻した瞬間じゃねえ。正に今だ。
「ああ。やれるもんならな」
俺は今、ようやくフォルナと再会できたのかもしれねえな。
「ヴェルト……」
「ん?」
「ここは妄想であって、現実ではありませんので……」
「ありませんので?」
「……子供を作る、練習………してみません?」
おお! これでこそ、フォルナか。
「ワタクシ、経験ありませんがイメージトレーニングとお母様直伝の参考書で予習はバッチリですわ!」
泣いたカラスが秒で泣き止み、昔のオシャマだった生意気な女の笑顔から、今度は蕩けた女の顔と雰囲気を醸し出して俺に寄り添ってきた。
まさにパワーアップして帰ってきやがった。
そして、やはり二年前と違う。
胸のふくらみだとかそういうのが、前よりも……
「いやぁ……ど、どうだろう……ってか、俺も前世も含めて、ヤッたことねえし……」
「あら! ヴェルト、前世でも経験がないんですの?! って、エルジェラ皇女やウラやアルーシャとはしていませんの?」
「あ……そ、そこは、寸止めで……」
「あら……」
そして、どうしてだろう。
いつもチョップしたり、笑って誤魔化したり、いきなり邪魔が入ったりで、結局何だかんだで最後まではいけなかったのに……何だか……そんな様子もないし……
「ヴェルト……」
「……ま……も、妄想世界だから……ノーカンだし……ま……いいのかな?」
「むっ、ノーカン……いえ、構いませんわ。あなたを幸せにする練習ですので、重く捉えずに結構ですわ……」
フォルナがマントを脱ぎ捨て、ブラウスのボタンを外し……あっ……ブラはブルー……あっ、スカートも脱ぐの……あっ、パンツまでレース……あっ、フォルナが俺のベルトをカチャカチャ……あっ、俺も脱ぐのな……あれ? いや、ほんとにヤルのか?
「二年前の帝国で朝這いしたとき……そして、ジーゴク魔王国との戦争中に再会した森の中以来ですわね……ヴェルトの裸に触れますの……そして、ワタクシがあなたに肌を晒すのも……逞しいですわ……」
ここはフォルナの妄想世界。
だけど、伝わる感触も息遣いも想いも偽りはないリアル。
そして、昔からこいつの容姿は認めていたのに、何だか今になって改めて、ほんと今更だけど……
「お前の体も綺麗だ……はっ!?」
「え?」
って、俺は何を!? いや、なんか裸のフォルナの体が芸術品というか絵画というか、そりゃエルジェラみてーな爆乳じゃねえけども、美しさと艶っぽさというか……
「ヴェルトったら……ワタクシの体ではありませんわ……」
「……え?」
「この体は……ワタクシのモノではなく、あなたのモノですわ」
「ッ!?」
そう言って、フォルナは俺に両手を広げて俺を……そして、俺も生唾のみ込んで胸が高鳴った。
おかしい。
初めて出会った時や、記憶戻ったばかりのころは、ただの幼馴染のマセガキだったはずなのに、気づいたら俺はフォルナと見つめ合いながら距離を縮め……
「……そっか……俺のモノか」
「ええ……まぁ……出会ったころからそうなのですけどね」
もう、誰の邪魔も入らない以上……
俺にはもう止める術はなかった。
そして、俺たちは「最後」まで止まらなかった。