異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

400 / 468
第397話 謎の人物からのメッセージ

「んで、地上に戻るのか?」

「いいや。分からぬか? 地底世界とランドは繋がっておる。そうでなければ、ピイトたちもここまではこれまい」

 

 地上に帰るか? とも思ったが、そういやそうだったな。

 つーと、どこかに地底族が作った特別なルートみたいのが…………

 

「ワシの嗅覚を侮るな? その気になれば、一里先のオナゴが処女か生理か貧乳かどうかまで嗅ぎ分ける。先ほどのブラックダックのバカタレの念話魔法の魔力残渣を追いかければ良い」

 

 嗅覚が優れている以上のことをツッコミ入れるのはやめておこう。話が拗れるだけだから。

 仲間のもとへ戻るよりもさきに、奴らをブッ潰すってことだ。

 イーサムもどうやら、さっきのブラックダックに相当腹を立ててるようだな。

 

 

「ぬどりゃあああああああああああああああああ!」

 

 

 ………と思った瞬間、イーサムは壁に向かって拳を突き出して、その拳圧だけで壁に巨大な穴を開けやがった。

 

「ぐわはははは、近道じゃ。迷路をクネクネ行くよりも、真っ直ぐ進んだほうが早いじゃろ」

 

 ドリルもないのに地底族も泣いてしまうほどの非常識ぶり。

 ツッコミをやめるやめない以前に、もはや言葉が出ないほど、ドヤ顔で振り返るイーサムに、俺たちはただただ絶句するだけだった。

 

「頼もしいことこの上ねえな」

「このおっさん居ると死ぬ気がしないんで」

「ですよね~、まさか亜人がこれほど強いとは知りませんでしたよ。『地底王ゴッドリラー』や『メイル元帥』もビックリでしょうね」

「そういや、チョクチョク名前だけ出てきたな。結局実際には出てこなかったが、何者だよ、その二人。俺らが気を失っている間も出てこなかったんだろ?」

「ああ、そういやそうだな。つっても、そのまんまなんで。この地底世界を統べる王と、地底世界最強の一人」

 

 イーサムに呆れながら呟いたフィアリの何気ない言葉。サラッと出てきたその名前に少し気になった。

 

「地底王と地底世界最強ね~、まあ、俺とフォルナがぶっ倒して来た連中も肩書きだけは立派だったけどな」

「そりゃ、あんたらと比べると可哀想なんで。ぶっちゃけ、地底世界の兵隊があそこまで自信満々なのも、あの二人が凄すぎるからなんで。人事にあの二人も携わるんで、あの二人に幹部とかに任命されると、そりゃ有頂天になっちゃうんで」

「そんなに凄いのか? の割には、その二人はグーファの暴走時にも出てこなかったが」

「ああ。メイル元帥は、この間の地上の戦争の戦後処理で出かけてて、地底王は………ぶっちゃけ俺も良く分からないんで。王様なんで関わり無いんで。つうか、離れたところから見たことしかないんで」

 

 あのブラックダックとかいう奴も言っていた。あの時、宮殿から俺たちを見ていると。しかし、結局最後まで手を出してくることはなかった。

 たとえ、あのグーファが、地底世界の街を破壊してもだ。確かに何を考えてるか分からねえ存在といえばそうだがな。

 

「しかし、他の地底族とどこか異なる存在感であるのは間違いないのう。ワシも地底世界に来て少し戸惑ったぐらいじゃ」

 

 その時、イーサムが振り返って言う。

 

「イーサム?」

「ワシが感じたもの。しかし戸惑ったのは、なにも強そうだからとかそういうのではない。地底族でありながら………どこか………」

「どこか?」

「………まっ、王のくせに前に出てこんやつには興味ないのう。どのような理由であれ、泣き叫ぶ民を前に傍観する王になど信はおけん。気になりはしたが、気にしても時間の無駄じゃ」

「めんどくさくなったな? いや、別にいいけどよ………」

 

 何だ? 何だかムズ痒いところで区切って、イーサムはまた前を向いた。

 まあ、イーサムらしいと言えばイーサムらしいし、確かに手を出してこない以上、俺が気にしても仕方ないことでもあるな。

 だが、その時だった。

 

「ッ、うおっ!」

「なんですの?」

 

 地面が大きく揺れた。地震? まるで、地底世界全体が揺れているかのように。

 だが、驚くのはむしろこれからだった。

 

「おい、婿! どうなっているんだ、アレ!」

 

 俺にも何が起こっているのか分からない。

 

「修復の魔法? いや、少し違うのう………何者か?」

「は?」

「これは一体!」

 

 ただ、現状のありのまま説明すると、グーファの攻撃でメチャクチャにされた地底世界都市部の建造物がみるみる内に欠片が集まり、パズルのように組み合わされ、そして元の姿へと修復されていっている。

 それは建造物だけではなく、道路も舗装され、破壊される以前の姿へと戻っていっている。

 

「ニート君、これは……この力!」

「ああ……」

 

 ニートの頬に汗が流れて、その口元が引きつっている。

 破壊された世界が元の姿に戻っていくこの様子に、どこか心当たりがあるのか?

 

 

『安心しなさい。例え地底世界や地底族がどれほど壊れようとも、朕に争いの意思なしゆえ』

 

 

 それは、聞こえたというより響いた。この世界に反響するかのように。

 

 

『戦えもせぬ、崇められるだけの無能王が何も出来ぬ中、良き働きをしましたね、ニート・ドロップ。そして、地上人たちよ』

 

 

 男の声。どこか上品で、柔らかく、落ち着いた雰囲気を感じさせる。

 すると、その声が聞こえた瞬間、ニートが思わずビシッと気を付けした。

 

「おお、お、ごご、ゴッドリラー様………」

 

 ッ! ゴッドリラー! 地底王か!

 

「ぐわはははは。ワシの挑発に煽られて出てきたか? 意外と青いのう」

 

 そして、何かを察したイーサムの表情に笑みが浮かんだ。

 

『いえ、そうではありません。少しだけ見届けたかったからです』

「そのために、どれだけの者が死んだと思っておる? よくぞ傍観できたのう?」

『遥か昔から何千万の命と血を、この神族大陸に散らしてきた者よりはマシだと思いますが?』

「……ほう」

『もっとも、どちらの方が非道であるかの論議に意味はありません。朕は存在するのみで、干渉できる存在ではないゆえに』

「じゃろうのう。おぬしの声を聞いた瞬間にワシも理解したわい」

 

 どういうことだ? イーサムは何かに気づいたようだが……

 

「ブラックダックが、宮殿から地底王がワシらを見下ろしていると言っておったが、そんな気配も視線も、そしてそれらしい匂いも感じんかった。つまり、あの宮殿には王などおらんのじゃろう?」

 

 宮殿に王がいない? でも、王の声は聞こえる。じゃあ、王はどこに?

 

「地上で戦った地底族の中に、土を使って本物ソックリの義体を作り出したものがおった。泥人形というものらしいが、人前に出るときはそれを使っておるのじゃろうな」

『一瞬でそこまで理解されていたとは、恐るべし。さすがは広大な地上における最強の戦士。ラブ・アンド・マニーは誰一人気づいていないというのに』

 

 いや、だからさっきから何の話を……

 

 

「地底王ゴッドリラー……おぬし……この地底世界そのものが、おぬしなのじゃろう?」

 

 

 は?

 

 

『ええ、その通りです。この地底世界は、朕のボディ……遥か昔、神族の者と、聖命の紋章眼の所持者が、神族大陸の地下深くの広大な空洞に巨大基地を作り、その基地に命を与えました。その世界に与えられた命が、朕です』

 

「ぐわはははははは。これは傑作じゃわい。地底族の王が地底世界そのもので、正体は地底族ではないとはのう」

 

 

 いや、ちょっと待て、もう何言ってるのか全然理解できてねえ。

 

『このことはマニーも知りません。彼らと会うときは常に泥人形で対応していましたから。故に、朕の正体を知っているのは、『メイル元帥』、『旧ボルバルディエ王』、そしてもう一人だけ……』

 

 俺が馬鹿なのか? いや、どうやらフォルナもニートもフィアリも意味不明のようだ。

 一体、イーサムとこの声の主は何を言って…………

 

 

『地底族が、コスモスという子を攫ってしまったことにより、ある男が絶対に現れる。ひょっとしたらここに来るかもしれないだろうと彼女は言いました』

 

「ッ!」

 

『クロニアから、あなたにメッセージを預かっております。ツンクラくんでしたね? 今の朕の言葉はあなたたちだけにしか聞こえません。安心して聞いて下さい』

 

 

 ああ、本当に驚いた時ってこういう感じなんだろうな。

 

 

『読み上げます。え~……「やっほー、懐かしのツンクラくん♪ ウラ姫ちゃんと結婚、おめでとうもろこし。それと、妹のマニーが色々と迷惑をかけてごめんね……これはほんとに」』

 

 

 ツッコミどころが多すぎるのに、ツッコミひとつも思いつかず、ただ、言葉を失っていた。

 

 

『「おっとっと、懐かしのって言っても私のこと分かるわけないか。本名名乗っても覚えてないって言われるのはショックなんで、ヒ・ミ・ツってことにしマスカット」』

 

 

 もう、たぶんメッチャ分かるんだけど………

 

 

『「ラブ・アンド・ピースの中に、私が送り込んだスパイが居ます。スパイ……超カッケー響きだけどマジなんだぜい。彼にコスモスちゃんのことお願いしてるんで、今から言う方法で合流して欲しいのであーる。このメッセージをゴッちゃん……ゴッドリラーに渡してくれたのも、その人なんだ。スパイと落ち合う合言葉は、スパイが『ハチミツ食べたい』って言ったら、『メイプルシロップもあまり捨てたもんじゃ焼き。でも、どっちを食べるかはあなたのお好み焼き』って答えてね♪」』

 

 

 いや、やっぱメッチャわかんねーんだけど。

 

「なあ、朝倉……俺、このクロニアってやつ、名前だけは聞いたことあるんだけど、このメッセージのふざけ具合………」

「ええ。ねえ、朝倉くん、私、このメッセージの主の正体、何だか心当たりがあるんですけど……」

 

 ニートもフィアリも目がぐるぐる回った混乱状態。無理もねえ。

 ゴッドリラーのカミングアウトからの怒涛の展開で……

 

 

『「今、私は『ミシェル』の所為で自由に動き回れないから、あまり力になれなくてゴメンゴ。許してちょんまげ。あっ、ミシェルって聖王のことね。とにかく、きっとコスモスちゃんを無事に救い出してね♪」……だそうです』

 

 

 だそうなんだが、ワリ、もう少しだけ整理に時間くれ………

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。