異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと 作:アニッキーブラッザー
「クロニア。聞いたことありますわ。確か、ボルバルディエ王国で行方不明になった姫がそのような名前だったと思いますわ」
「ワシはまるで聞いたことないのう。随分と愉快なようじゃがな」
「この、フィアリを超える空気読めないウザさは………」
「いや、ニート君、私ウザくないですから。アイムノット、ウザイ」
そういえば、バタバタしていてスッカリ忘れていたが、コスモスはクロニアと面識があったと思われる。
スモーキーアイランドでそんなようなことをコスモスが匂わせていた。
だから、あいつがコスモスのことに絡んでいてもおかしくはねえ。
「ルシフェルから聞いたのかもしれねえな。でも、この様子それだけじゃねえ」
魔族大陸での出来事などを、あいつの仲間であるルシフェルから聞いているのかもしれねえ。
この手回しの早さは、そうとしか考えられねえ。
コスモスの安否。そして、マニーたちの行動。そして俺がどう動くかを把握して先回りして手を回している。
だが、そうなると一つ気になることがある。
「クロニア。やつは、俺の正体を知ってるのか?」
このノリからして、俺が誰なのかまで把握している。
そうなると、どこでだ? どこで、いつ、俺が朝倉リューマだと気づかれた?
「それよりも、朝倉……いや、ヴェルトか。あんたに色々聞きたいことあるんだけど」
「そうですよー! そもそも、朝倉くんとか、何がどうなって、今は何が起こってるんですか?」
つうか、何から話せばいいのやら。この世界の情勢か? 状況か? それとも俺が再会したクラスメートたちのことか? 喋ることが多すぎて、何から説明していいのか分からねえよ。
「『クロニア・ボルバルディエ』。メイル元帥やマニーが言ってたんだけど、マニーの実の姉らしい」
「ああ、知ってる」
「本物の紋章眼を持ってるらしい」
「知ってる」
「もしそいつを見つけて捕獲できたら、莫大な恩賞だとさ」
「まあ、希少価値から言えばそうなんだろうな」
「クラスメートだったのかよ! ってか、『あいつ』か?」
「たぶん」
そう、俺が地底王だとか最強の元帥がどうとか気にしないと言っても、こいつらはこいつらで気になることは山ほどあるだろう。
だが、ニートとフィアリの気になること全部に答えると日が暮れちまいそうになるし、俺も何から語っていいのか分からない。
すると、そんな俺たちのやりとりに、ゴッドリラーが割って入ってきた。
「この地底世界を実質統治しているのは、メイル元帥です。元帥が自由に動き、地底世界内で起こる事象の全てを千里眼のように把握する朕を王として存在させる。代々地底族はそうやって歴史を繰り返してきました。しかし、メイル元帥ですら知らないことが一つだけあります。朕は、聖命の紋章眼にだけは逆らえないということです」
地底世界内で起こるすべてのことを把握する。確かに、こいつなら容易いだろう。
「聖命の紋章眼により生まれた朕は、同じ紋章眼に尽くすことになっています。もちろん、ニート・ドロップの試作品ではなく、本物限定となりますが」
「ですよね~、いや、俺も今の話聞いててひょっとしたらとか、少ししか思ってなかったんで」
「フィアリ。いや、トゥインクル・ベル? あなたが諜報員であるということも分かっていましたが、ラブ・アンド・ピース側の行動を把握するために野放しにしていました」
「あ~、あらら~、何だか私ってばバレバレだったんですね~」
だって、全部自分の腹の中で起こっていること。誰が何の会話をしているのかも、企んでいるのかも、全てを把握。
そんな存在、正体がバレれば確かに住民からすれば大問題だろう。プライバシーもへったくれもない。
だからこそ、その正体が僅かな者にしか知られないというのは、当然のことかもしれない。
しかし、それをここでアッサリと俺たちに言うか?
「朕に戦闘能力はなく、この地底世界内の施設に対する自己修復能力しかありません。ゆえに、メイル元帥や他の地底族たちを止めることも守ることもできませんでした。しかし、僅かでも……あなたたちを手助けすることだけはできます」
手助けだと? 一体クロニアはどこからどこまで企んでいて、俺たちに何をさせようとしているのか。
今の時点でまるで分からねえ。それとも、深く考えずに、ただ純粋にコスモスだけを考えていればいいのか?
正直、クロニアのことをどこまで信用すればいいのか分からねえ。
「これは、クロニアからの預かりものです」
その時だった。俺たちの立っている宮殿前広場のだだっ広い床の一部が大きな真四角に亀裂が入り、徐々に床がせり上がってきた。
一体何事かと目を見開くと、そこには巨大な倉庫。いや、ガレージのようなものが出現し、シャッターが自動で開いた。
そこには…………
「うお、お、お、おおおおおお! ななな、なんじゃこりゃあ!」
そこにあったのは、巨大なドリル。そのドリルには車輪までついている。
ドリルでありながら、まるで乗り物のような巨大な物体。
「ぐわはははは、なかなか豪快なイチモツじゃのう!」
「なんだこれ?」
「これは、カラクリモンスターではありませんの?」
カラクリ? 確かにそうかもしれねえ。装甲は鉄のようなものに覆われて、この世界の文明とは比べ物にならないほど高度な技術で作られているのが分かる。
すると、その巨大な物体を見た瞬間、あのやる気のないニートが興奮したように声を上げた。
「こここここれは! 『地底戦車・マグマライダー』! ほ、本物だ………」
いや、なんだよそれは………
「ニート君、このカラクリモンスターを知ってるんですか?」
「バッカ、お前は知らないのか? これは俺たちの前世の世界で存在した兵器! あの、伝説の特撮ヒーロー・仮面スペシャルマンに出てくる、スペシャル警備隊が所有する兵器! 巨大ドリルで地中を掘り進み、時には搭載されたビームで標的を破壊する、伝説の兵器なんで!」
「………ニート君、特撮マニアだったんですか? まあ、可愛いから許しますけど」
「いや、特撮マニアでなくても唸るほどのものなんで。朝倉だって知ってると思うんで」
俺は知らねえよ。まあ、仮面スペシャルマンぐらいは知ってるけど。確か、宇宙から来た怪獣を、巨大なマスクマンが倒す奴だろ?
にしても、このいかついカラクリモンスターのような乗り物をどうしろってんだ?
「これはクロニアが所有していたカラクリモンスターを改造したものだそうです。名前は、ニート・ドロップが述べた通りです」
「……朝倉……そのクロニアさん、仕事しすぎだけど、絶対あいつなんで。関わりが少なくても、あの女がこういうの好きだというのは俺も知ってるんで! あいつは特撮系プラモ作るの超好きだったんで!」
確かに、『あいつ』らしいかもしれねえ。確か、模型部に所属していたあいつは、こういうのが好きだったのを覚えてる。
つうか、人の娘に機動戦人ダンガムを作らせるような奴だしな。
「ヴェルト・ジーハ。これをあなたに渡します。これを使い、地中を真っ直ぐ突き進めば、ランドに着けるでしょう」
「はっ? こんなの渡されたって、どう動かせばいいんだよ!」
「操縦の必要などありません。どう動くか指示さえすれば、あとは彼が連れて行くだろう」
こんなもんくれると言われても、どうすりゃいいか分からねえと文句言おうとした瞬間、なんとこのドリルの乗り物が急に目玉を開いて口を開けた。
「てーやんでい、兄ちゃんたち! あとは、オラに任せてくれってことよ!」
…………もう、何でもアリだな。喋っちゃったよ…………
「クロニアの紋章眼で意志を持ったカラクリモンスター。マグマライダー……通称『マー君』です」
ああ、そうですか、そうなんですね。もういいよ。これはアレだ。考えるだけむだって奴だ。
「そうだぜい、兄ちゃん達! オラに乗ってくれよ。御主人様から兄ちゃんたちに力貸せって、言われてるんでい!」
「クロニアからか?」
「おうよ。あと、ドラの兄貴からも頭下げられてるんでい。兄貴の頼みを蔑ろにしたとあっちゃあ、男が廃るってもんでい!」
「何? ドラ? 兄貴だと?」
あの、ヘタレ鼻水垂らしビビリカラクリモンスターのドラが、兄貴だと?
まさかあいつのことまでこの場で出されるとは思わなかったな。
だが、一方で俺からすればクロニア云々よりも、ドラの存在を聞いただけで、何となく大丈夫な気がした。
「ちょ、どうしますの? ヴェルト」
「……婿……これ、カッコイイ。乗りたい」
「ワシも乗りたいのう! こやつ、ワシのアレに勝るとも劣らぬ剛直じゃ!」
「俺は絶対乗るんで。むしろ、朝倉の仲間云々どうでもよくて、純粋にこれに乗りたいんで」
「はうわ! 私とラブラブになってもダルそうなニート君が、ここまで活き活きするなんて!」
賛成派多数。こりゃ、決まりだな。
「せっかくのプレゼントだ。マー君……ありがたく貰ってくぜ」
「任せてくれよ、ヴェルトの大兄貴! オラがどんな困難も風穴開けて突き進むぜ!」
なんだかもう、ヘンテコな組み合わせになっちまったな。
こんなもんで乗り付けたら、仲間も、シンセン組もラブ・アンド・ピースも全員驚くんじゃねえのか?
これで乗り込んで大暴れしちまえば……
「これを使い、内部に侵入し、そして娘を連れ戻したらそのまま急いで逃げるように。それがクロニアからメッセージです」
大暴れ…………ん? 逃げろだと?