異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第405話 カオスの時間②

「ヴェルト。この元気な姉さんたちは、誰なんだ?」

「ん?……な~んか、ひっかかる喋り方ですが……」

 

 ニートとフィアリが尋ねる。「何者か?」と

 その瞬間、向こう側にはどういう空気が走ったのかは分からない。

 ただ、まるで「よく分からないけど、ここど出遅れたら負ける」という空気が流れているかのごとく、ニートの言葉に、三人の女たちは高速で反応。

 

『ヴェルト様の奥様です』

『ヴェルトのお嫁さんだ』

『うっ、わ、私は……ヴェルト君のハニーよ!』

 

 そして、ニートとフィアリは悟った。

 

「苦労してるんだな」

「苦労してるんですね~」

 

 さっきまで、俺をゲス野郎を見るような目で見ていた二人が、心の底から哀れんでるように俺を見てきた。

 そして互いに、

 

「ハーレムって精神的に疲れそう」

「当たり前じゃないですか。ニート君はマネしちゃダメですよ」

 

 と言葉を交わす二人は、何だか一番まともなカップルに見えた。

 

「つうか、ウザくて腹黒でも、フィアリが一番、女としてまともかもな……」

 

 俺の周りに居る女は、たいてい恋愛が絡むと大暴走するし………

 

『……………えっ?』

『……………ぬっ?』

『……………はっ?』

 

 その時、こっちの状況やメンツをまるで分かっていない向こう側の三人の女から、不気味な雰囲気が漂ってきた。

 さらに……

 

「がぶううっ!」

「ぎゃあああ、いったああ!」

 

 不意打ちのようにユズリハに腕を噛まれた。

 

「あらあらまあまあ」

 

 そして、意外なことにフォルナだけはどういうわけか余裕で微笑ましそうに見ているし、何なんだよ。

 

「婿、どういうことだ! 私のほうが一番可愛いのに! 妖精なんて虫なんかより可愛いもん! 婿の馬鹿! ゴミ婿! がっぶう!」

「ぐをおおお、って、ちょっと待て! 今のはそういう意味で言ったんじゃねえよ! って、離せバカ!」

 

 ほらな。こういうのがあるから! ちょっと他の女を褒めたぐらいで、何で竜人に噛み付かれるんだよ!

 しかも、絶対、噛まれるだけではすまねえし!

 

『ヴェルト様……ッ、どういうことですか! よ、妖精……ッ、そんな! ヴェルト様、コスモスや私たちを放ってなにを!』

『ヴェルト~~~~、ヴェルト~~! どういうことだ! どういうことだ! まさか、いつもの……いつもの、どこか寄り道したら嫁が増えるパターンじゃないだろうな!』

『ヴェルト君……そこにフォルナ居るわよね。ねえ、フォルナ、説明しなさい。何があったのかしら?』

 

 ほらな。めんどくせ~。あ~もう、そうじゃねえし。つか、フィアリはニートの女だから……

 

 

『つかさ、ユズっち、いつからヴェルトのことを、『ゴミ』じゃなくて、『婿』って呼ぶようになったん?』

 

『『『確かにッ!』』』

 

 

 なんでアホのくせに、アルテアの奴はそんなところに気づくんだよ!

 つうか、戦争中に、随分と余裕じゃねえか、お前ら!

 

「少し落ち着いたらどうですの? 嫉妬で取り乱すのはみっともないですわ」

 

 いや、フォルナ。お前は、どの口がそんなこと言ってんだ? あの、暗黒カウントダウンを忘れたのか?

 だが、そのフォルナが、今はどうしてこんなに余裕があるのかは、俺には分かる。

 

『フォルナ。あのねえ、妖精だか何だか分からないけど、少なくともユズリハ姫は……』

「ええ。ユズリハ姫、とても素直で積極的で可愛らしいですわ。まあ……まだ、ようやく手を繋いだり口付けしたりの初々しい接触のみですが」

『はっ? ちょっとフォルナ……く、口付……ッ、ちょっと! それはどういうことよ! あなた、自分で何を言ってるか分かっているの?』

「あら、アルーシャらしくありませんわ。ワタクシも、あなたも、エルジェラ皇女もウラも、『その程度』のことは既に済ましているでしょう? まあ、ワタクシは………うふふ……」

 

 って、ちょっと待て! そこで勝ち誇るな! だって、あれは幻だし! 夢の中だし! 実際にはお前はまだ膜ついてんだからな!

 

 

「ヴェルトったら………四つん這いになったワタクシを後ろから………エルジェラ皇女に比べてつつましいワタクシの胸にも、あんなに一生懸命に愛撫して………もう、恥ずかしいですわ!」

 

 

 いやいやん、と頭を横に振るフォルナ……こいつ……本当に復活しやがったな。前より頭がおめでたくなってやがる。

 そしてその瞬間、世界が凍結したかのように、一気に気温が下がった。

 更に……

 

『ッ、ヴェルト……さま?』

『おい、アルテア………お前の邪悪魔法で転移魔法とかできないのか?』

『そうね。あなたなら出来るわ、アルテアさん。今すぐ……ある人の所へ私たちを転送して欲しいのだけど……』

『はあ? できるわけねーし。転移って、ワープだろ? 瞬間移動的なのだろ? いや、マジ無理だから!』

 

 おいおい、あいつら、戦争中に何を……

 

「なんと、邪悪魔法を使えるものがおったとはのう。アルテアとは、確か、ユーバメンシュの?」

「スドウ?」

「まあ、色々と騒がしそうであれじゃが、邪悪魔法が使えるのなら、転送魔法は使えてもおかしくないぞ? マニー・ボルバルディエよりは劣るだろうがのう」

 

 いや、このジジイ、何を余計なことを抜かして……

 

「アルテア姫よ。念話の要領で、リモコンのヴェルトやワシらの魔力の波長を掴んでみよ。ワシが手伝ってやろう」

『はっ? つうか、誰だし?』

「ワシも鬼族きっての魔道士じゃ。おぬしとワシの魔力の波長を合わせて、こちらに転送してやろう」

 

 えっ……いや……なに言ってんだ、このジジイ………

 

「ちょっと、お待ちになって、スドウ。今、感情に任せて彼女たちをこちらに呼び寄せても、地上の戦力が減るだけで、返って地上が危機になりますわ」

 

 そうだよ、フォルナの言うとおり、ただでさえカラクリモンスターと死闘を繰り広げてるところに、何を……

 

「うむ、じゃから、『転送』というよりも、『交換』といったところじゃ」

「……どういうことですの?」

「キシン様が地上で戦われているのじゃ。ならば、ワシらはそっちに行かせてもらいたい。その代わり、地上で戦っておるおぬしらの仲間を何名かをこちらに呼び込む。これなら戦力は偏らんじゃろう?」

「こ、交換! そんなことが可能ですの?」

「当たり前じゃ。六鬼大魔将軍を舐めるでない」

「そんなことが可能でしたら、コスモスの元への転送はできませんの?」

「コスモス? 誰だか知らぬが、知らんやつ相手ではワシも無理じゃ」

 

 そう、スドウ、そしてゼツキたちが記憶を取り戻した以上、優先すべきはキシンの元へ馳せ参じること。

 性格の悪そうなスドウも、そこだけはマジメな武人の顔をしてそう言いきった。

 

「その通りだ。我輩らが今すべきことは、一つしかない」

「なるほど。交換か……それが出来るのであれば、状況は変わってくる」

 

 最初は、空気の読めない女たちの恋愛バカ話ゆえに、蚊帳の外に居たゼツキとイーサムも身を乗り出してきた。

 

「ワシはこのままブラックダックを殺しに行くが、それでも地上は無視できんと思っておったが、指揮官として十二分の能力を持った六鬼大魔将軍が行けば、統制が取れるじゃろう……キシンもゼツキと再び組んで戦えば、鬼に金棒じゃろう」

 

 いや、そうなんだけどさ、そうなんだけどさ、お前、状況分かってるのか?

 この状況下の中に俺の嫁たちを一挙集結させるって………

 

『マジ? いや、ハチョー合わせるとか、イミフなんだけど』

『大丈夫、あなたらなら出来るわ、アルテアさん!』

『アルテアさんは才気溢れるお方です。ご自身の力に自信を持ってください』

『出来なければ蹴る。早くしろ』

 

 あっちも……

 

「あらあら、賑やかになりそうですわね」

「ううう~~、婿のイジワル~!」

「ラガイア………ラガイアラガイアラガイアラガイアラガイア」

 

 こっちも………

 

「ええい、お前ら、さっさとコスモスを助けに行くんだから、もういい加減にしやがれってのに!」

 

 思わず叫んだ俺の声など、もはや誰にも届いてねえ。

 本来、俺が主体で動くはずのコスモス救出作戦が、何で俺が尊重されずに、余計に場を掻き乱す展開になるってんだよ……

 

 

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