異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと 作:アニッキーブラッザー
「バカな………たった数分ちょっとで……何をしただわね……」
たった、数分? エロスヴィッチの術のおかげか。
正直何時間ヤリまくったか……
「へへん、舐めんなってーの! 女なんてソッコーで変わるんだってーの!」
ビシッとデイヂに向かって指差して吼えるアルテア。
しかし……
「アルテア姫、なぜガニマタだわね?」
「………うっ……」
「いや、そこの姫君たちもほとんど………」
そりゃ、不自然だよな。
「ふふ、まだ何か挟まってるような感じですわ」
そこで、全員まとめて「えへへ」と行為を思い出して照れてんじゃねえよ。
そして、それを見て、デイヂは舌打ちをした。
「ッ、おのれ、力を摂取しただわね」
「おおよ! もう、腹パンパンになるまで補給したってーの! マヂ覚悟しろよ? ママンをゼッテー取り戻すかんな!」
「なんということだわね……しかし、たった数分……補給できる回数等たかが知れているだわね。しかし、それでも私の魔力を打ち破るのは……それほどの才能だったということだわね……」
あんま真剣な顔で解析されるのも困るが、デイヂにとっては予想外だったようだ。
しかし、そこはプロ。すぐに余計な考えを捨て、行動に移る。
「だが、所詮は経験の浅い小娘だわね。私には及ばないだわね!」
「あん?」
「邪悪魔法・暗黒刃《ダークカッター》!」
威力ではなく速度。相手に防御する間さえ与えずに、デイヂの魔法がアルテアに向かって放たれる。
しかし……
「ぬりゃあああああああっ!」
「おお、チーちゃんじゃん!」
「ボケッとしてんじゃねえぞ、このブス! もうテメエ一人の体じゃねーんだぞ!」
アルテアを庇うようにチーちゃんが割って入り、グーで暗黒刃を殴り壊した。
「ぐっ、チロタン!」
「ぐらあああああああ! 母体に何しやがるんだゴラアッ!」
すげえ、なんかよくわからねえけど、チーちゃんがメッチャ活き活きしている。
「ぐわはははは、どうじゃ? 良かったじゃろう?」
「ああ、テメエの言うとおりだ、クソジジイ! あの着ぐるみ女もぶっ殺さず、クソオカマもブチ殺さず、とにかく事が終えるまでひたすら時間を稼ぐなんてメンドクセーことと思ったが、待って正解だった!」
ちょっと待て。なんだよ、そのセリフは。
そもそも、今回の合戦は、アルテアパワーアップが目的だったんじゃねえのか?
でも、今の会話、まるでイーサムもチーちゃんも、やろうと思えばあの空間を破壊することも、デイヂや洗脳ママンをいつでも倒せた的な口ぶりじゃねえか? 気のせいだよな?
まさか、二人の利害が一致して、こんなカオス計画を立てたわけじゃねえよな?
「ど、どういうことだわね。お前たち二人は、ユーバメンシュに押されていたように思えただわね」
俺と同じように、二人の会話に引っかかったデイヂが尋ねると、イーサムはケロッと応えた。
「ぐわはははは。ユーバメンシュのリミッター解除で力が五倍。確かに脅威じゃ。しかしのう、それはあくまで『通常状態』のユーバメンシュの五倍の力じゃろう?」
「…………………はっ?」
「まっ、そこらへんは知らんほうが身のためじゃがの」
その言葉は、どれだけ俺の頭を打ち付けただろうか。
ドヤ顔だったアルテアの表情がどれだけ固まっただろうか。
「えーっと、つまりどういうことでしょうか?」
「多分、聞かないほうがいいと思うんで。朝倉と備山固まってんじゃン」
「そういうことでしたの。でも、まあ、ワタクシたち的に、おいしかったと申しますか……」
「散々弓で追いかけられていた僕たちの苦労はなんだったの?」
「私はラガイアと手を繋いで逃げていた。それはそれでおいしかった」
じゃあ、俺たちのあの獣のように狂った時間はなんだったのか?
思うところは色々とあったのだが、とりあえず、これで何の問題もなくなったとばかりに、イーサム、そしてエロスヴィッチは……
「さ~て、色々手間かけたのう、ヴィッチちゃん」
「いや、わらわも見ていて楽しかったのだ。………というわけで、とりあえず……」
「そうじゃの~、とりあえず、デイジちゃん♪」
「その着ぐるみを脱がして、とりあえず犯し……とりあえず倒させてもらうのだ」
「ならば、ワシは愛を教えてやろうかのう」
とても爽やかにニッコリと微笑む、イーサムとエロスヴィッチ。
その、あまりにも恐すぎる笑顔に、あのデイジが無言で尻餅ついてしまっている。
「ッ! ……こ、この私が……震えているだわね……」
そして、俺は思わず手を合わせて合掌した。
ご愁傷様………デイヂ……と。
このカオスもようやく幕を閉じると。
だが………
俺たちは気づいていなかった。
本当のカオスは………
「何時間も報告がないからいい加減心配だっただっく」
―――――――――ッ!
「ッ、ガッ…………カハッ!」
次の瞬間、俺たちは何を見た? 噴水のように飛び散る大量の鮮血。
ファンシーなランドの地面に一瞬で血だまりを生み、その中心に立つのは……
「ほう、咄嗟に心臓の貫通を避けたか。野生の勘は恐るべしだな」
「ッ、お、おぬしっ!」
「だが、深手には変わらない」
大柄な山猫の着ぐるみの右腕により、胴体の中心を貫かれている……
「イーサムっ!」
「ゴ……ゴミ父ッ!」
「なっ、あれは……」
イーサムが! ピイトだ! イーサムが、ピイトに背後から貫かれているッ!
「なんなのだ、おぬしはっ!」
エロスヴィッチすら気づかなかったのだろう。
さっきまでのふざけた態度を一変し、肉食の獣のような勢いでピイトに飛び掛ろうとする。
だが………
「螺旋茨」
「ッ!」
何の前触れも無く、突如地面の中から飛び出し、何本にも枝分かれして出現したドリル。
油断、驚き、色々あっただろうが、これはさすがのエロスヴィッチも予期していなかった。
「ぐ、ほ……がっ………なん、なのだ!」
空に向かって高く伸びるドリルに貫かれ、鮮血と同時に血の塊を吐き出すエロスヴィッチ。
なんだ? おい、今、何が起こって………
「助けてくれたのだな。礼を言おう」
ピイトが静かにそう言うと、地面の奥底から何者かが飛び出した。
「ふっ、いやいやいや。これも仕事でね。悪く思わんでくれたまえ、地上の英雄殿」
現れたのは、白衣のような白いコートを纏った、長身の女。年齢は二十代ぐらいか?
頭にはゴーグル。口元には、タバコ。地面の中から現れた故、白衣もその頬も土に少し汚れているが、女でありながら男らしく「ニッ」と笑う姿は、こんな状況下であろうと、思わず見惚れそうになってしまった。
だが、すぐに気づく。ポニーテールのように後ろで束ねたその長い髪の先端は、螺旋が渦巻いていた。
「げっ、メ、メ………『メイル元帥』!」
ニートが顔を青くしてそう叫んだ。
「おお。やあ、やあ、ニート。全く、君は本当に困ったものだな。故郷を捨てて逃避行とはいただけないな~」
「ッ、ど、どうして、ここにいるんすか……」
「ふむ、しかし顔つきがどこか男の顔をしているね。ふむふむ、嬉しいものだな。しか~~~し、君の暴走行為もこれまで! 残念ッ!」
メイル……ッ、ておいおい、こいつが!
「くっ、お兄ちゃんッ!」
「新手……でも、ラガイアは守る」
「けっ、どっからともなく現れやがって、このクソミソ共が! 俺様がまとめてブチ殺してやるっ!」
僅か一瞬で状況がとんでもないことに! イーサムは? エロスヴィッチは無事か?
分からねえ。だが、とにかく俺たちは……
「ぐっ、か、体が………」
「は、破瓜の痛みで……」
「こんなときに……」
「私としたことが……」
「動かない……」
「ヤベ、なんか普通にヤベ!」
ちょっとまてえええ! 俺も含めて大半が今、まるで役に立たない状態なんだけど!
「おいおい、イーサム、エロスヴィッチ! お、おま、お前ら、これもお前らの想定の範囲内だよな? って、何か言えよ!」
「さわぐんじゃねえ、クソガキが! こんなん、屁でもねえ! 俺がテメエも母体もまとめて守ってやらア!」
「チーちゃんッ!」
動けるのは、チーちゃん、ラガイア、キロロ、ニート、そしてフィアリ。
五人は俺たちを囲むように陣形を………
「魔王チロタン……魔王キロロ……二人の魔王がそちら側につき、そこに出来損ないとはいえ、我が血族まで居るとは皮肉な話……」
新手の声。今度は誰だ?
「…………………あっ……………」
その時、ラガイアが上を見上げると、その先には建物の屋根の上に足を組んで座りながら、こちらを見下ろす何者かが居た。
緑色の肌。人間じゃねえ。頭髪はなく、その体はチロタン並に大柄な筋肉質。トーガのような布を纏った姿。
だが、一番目に付くのは、やはり顔だ。顔の中心に大きな傷跡があり、『そこに一つしかなかったと思われる目』が潰されている。
「ステロイたちからの報告は受けていたが………生きていたか、ラガイア」
「………ち……父上……」
膝をガクガク震わせ、恐怖で顔を引きつらせるラガイアの口から出た言葉。
それに俺たちは衝撃を受けると共に、キロロ、そしてチロタンも顔を引きつらせた。
「ッ、無眼魔王ッ! なぜ、そちら側に?」
「おいおいおいおいおい、ぐわはははははは! これは、どういう冗談だ? ああん? 『ノッペラ』! テメエ、こんなクソ共に買収されたか? ああん?」
僅か一瞬で状況が完全に入れ替わったというより、訳が分からなくなっちまった。
そんな状況下、ゆっくりと俺たちに近づいてくるのは、黒いアヒルの着ぐるみを纏った……
「随分とまぬけな状況だっく。リモコンのヴェルト」
この喋り方は、顔も見たことなくても一人しかいねえ。あいつだ……
「ブラックダックッ!」
「さあ、お前とニート・ドロップだけ来るだっく。社長と副社長が二人を待っているだっく。お前の娘もいるだっく」
「ふっざけんなよ………テメエ……」
「他の連中には牢屋に入っていてもらうだっく。抵抗してもいいが……状況的に無理だっく」
ただただ………カオスだった……