異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第417話 カオスの時間⑭

「バカな………たった数分ちょっとで……何をしただわね……」

 

 たった、数分? エロスヴィッチの術のおかげか。

 正直何時間ヤリまくったか……

 

「へへん、舐めんなってーの! 女なんてソッコーで変わるんだってーの!」

 

 ビシッとデイヂに向かって指差して吼えるアルテア。

 しかし……

 

「アルテア姫、なぜガニマタだわね?」

「………うっ……」

「いや、そこの姫君たちもほとんど………」

 

 そりゃ、不自然だよな。

 

「ふふ、まだ何か挟まってるような感じですわ」

 

 そこで、全員まとめて「えへへ」と行為を思い出して照れてんじゃねえよ。

 そして、それを見て、デイヂは舌打ちをした。

 

「ッ、おのれ、力を摂取しただわね」

「おおよ! もう、腹パンパンになるまで補給したってーの! マヂ覚悟しろよ? ママンをゼッテー取り戻すかんな!」

「なんということだわね……しかし、たった数分……補給できる回数等たかが知れているだわね。しかし、それでも私の魔力を打ち破るのは……それほどの才能だったということだわね……」

 

 あんま真剣な顔で解析されるのも困るが、デイヂにとっては予想外だったようだ。

 しかし、そこはプロ。すぐに余計な考えを捨て、行動に移る。

 

「だが、所詮は経験の浅い小娘だわね。私には及ばないだわね!」

「あん?」

「邪悪魔法・暗黒刃《ダークカッター》!」

 

 威力ではなく速度。相手に防御する間さえ与えずに、デイヂの魔法がアルテアに向かって放たれる。

 しかし……

 

「ぬりゃあああああああっ!」

「おお、チーちゃんじゃん!」

「ボケッとしてんじゃねえぞ、このブス! もうテメエ一人の体じゃねーんだぞ!」

 

 アルテアを庇うようにチーちゃんが割って入り、グーで暗黒刃を殴り壊した。

 

「ぐっ、チロタン!」

「ぐらあああああああ! 母体に何しやがるんだゴラアッ!」

 

 すげえ、なんかよくわからねえけど、チーちゃんがメッチャ活き活きしている。

 

「ぐわはははは、どうじゃ? 良かったじゃろう?」

「ああ、テメエの言うとおりだ、クソジジイ! あの着ぐるみ女もぶっ殺さず、クソオカマもブチ殺さず、とにかく事が終えるまでひたすら時間を稼ぐなんてメンドクセーことと思ったが、待って正解だった!」

 

 ちょっと待て。なんだよ、そのセリフは。

 そもそも、今回の合戦は、アルテアパワーアップが目的だったんじゃねえのか?

 でも、今の会話、まるでイーサムもチーちゃんも、やろうと思えばあの空間を破壊することも、デイヂや洗脳ママンをいつでも倒せた的な口ぶりじゃねえか? 気のせいだよな?

 まさか、二人の利害が一致して、こんなカオス計画を立てたわけじゃねえよな?

 

 

「ど、どういうことだわね。お前たち二人は、ユーバメンシュに押されていたように思えただわね」

 

 

 俺と同じように、二人の会話に引っかかったデイヂが尋ねると、イーサムはケロッと応えた。

 

「ぐわはははは。ユーバメンシュのリミッター解除で力が五倍。確かに脅威じゃ。しかしのう、それはあくまで『通常状態』のユーバメンシュの五倍の力じゃろう?」

「…………………はっ?」

「まっ、そこらへんは知らんほうが身のためじゃがの」

 

 その言葉は、どれだけ俺の頭を打ち付けただろうか。

 ドヤ顔だったアルテアの表情がどれだけ固まっただろうか。

 

「えーっと、つまりどういうことでしょうか?」

「多分、聞かないほうがいいと思うんで。朝倉と備山固まってんじゃン」

「そういうことでしたの。でも、まあ、ワタクシたち的に、おいしかったと申しますか……」

「散々弓で追いかけられていた僕たちの苦労はなんだったの?」

「私はラガイアと手を繋いで逃げていた。それはそれでおいしかった」

 

 じゃあ、俺たちのあの獣のように狂った時間はなんだったのか?

 思うところは色々とあったのだが、とりあえず、これで何の問題もなくなったとばかりに、イーサム、そしてエロスヴィッチは……

 

「さ~て、色々手間かけたのう、ヴィッチちゃん」

「いや、わらわも見ていて楽しかったのだ。………というわけで、とりあえず……」

「そうじゃの~、とりあえず、デイジちゃん♪」

「その着ぐるみを脱がして、とりあえず犯し……とりあえず倒させてもらうのだ」

「ならば、ワシは愛を教えてやろうかのう」

 

 とても爽やかにニッコリと微笑む、イーサムとエロスヴィッチ。

 その、あまりにも恐すぎる笑顔に、あのデイジが無言で尻餅ついてしまっている。

 

「ッ! ……こ、この私が……震えているだわね……」

 

 そして、俺は思わず手を合わせて合掌した。

 ご愁傷様………デイヂ……と。

 このカオスもようやく幕を閉じると。

 

 

 

 

 だが………

 

 

 

 

 

 俺たちは気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 本当のカオスは………

 

 

 

 

 

「何時間も報告がないからいい加減心配だっただっく」

 

 

 

 

 ―――――――――ッ!

 

 

 

「ッ、ガッ…………カハッ!」

 

 

 次の瞬間、俺たちは何を見た? 噴水のように飛び散る大量の鮮血。

 ファンシーなランドの地面に一瞬で血だまりを生み、その中心に立つのは……

 

「ほう、咄嗟に心臓の貫通を避けたか。野生の勘は恐るべしだな」

「ッ、お、おぬしっ!」

「だが、深手には変わらない」

 

 大柄な山猫の着ぐるみの右腕により、胴体の中心を貫かれている……

 

「イーサムっ!」

「ゴ……ゴミ父ッ!」

「なっ、あれは……」

 

 イーサムが! ピイトだ! イーサムが、ピイトに背後から貫かれているッ!

 

「なんなのだ、おぬしはっ!」

 

 エロスヴィッチすら気づかなかったのだろう。

 さっきまでのふざけた態度を一変し、肉食の獣のような勢いでピイトに飛び掛ろうとする。

 だが………

 

 

「螺旋茨」

 

「ッ!」

 

 

 何の前触れも無く、突如地面の中から飛び出し、何本にも枝分かれして出現したドリル。

 油断、驚き、色々あっただろうが、これはさすがのエロスヴィッチも予期していなかった。

 

 

「ぐ、ほ……がっ………なん、なのだ!」

 

 

 空に向かって高く伸びるドリルに貫かれ、鮮血と同時に血の塊を吐き出すエロスヴィッチ。

 なんだ? おい、今、何が起こって………

 

「助けてくれたのだな。礼を言おう」

 

 ピイトが静かにそう言うと、地面の奥底から何者かが飛び出した。

 

「ふっ、いやいやいや。これも仕事でね。悪く思わんでくれたまえ、地上の英雄殿」

 

 現れたのは、白衣のような白いコートを纏った、長身の女。年齢は二十代ぐらいか?

 頭にはゴーグル。口元には、タバコ。地面の中から現れた故、白衣もその頬も土に少し汚れているが、女でありながら男らしく「ニッ」と笑う姿は、こんな状況下であろうと、思わず見惚れそうになってしまった。

 だが、すぐに気づく。ポニーテールのように後ろで束ねたその長い髪の先端は、螺旋が渦巻いていた。

 

「げっ、メ、メ………『メイル元帥』!」

 

 ニートが顔を青くしてそう叫んだ。

 

「おお。やあ、やあ、ニート。全く、君は本当に困ったものだな。故郷を捨てて逃避行とはいただけないな~」

「ッ、ど、どうして、ここにいるんすか……」

「ふむ、しかし顔つきがどこか男の顔をしているね。ふむふむ、嬉しいものだな。しか~~~し、君の暴走行為もこれまで! 残念ッ!」

 

 メイル……ッ、ておいおい、こいつが!

 

「くっ、お兄ちゃんッ!」

「新手……でも、ラガイアは守る」

「けっ、どっからともなく現れやがって、このクソミソ共が! 俺様がまとめてブチ殺してやるっ!」

 

 僅か一瞬で状況がとんでもないことに! イーサムは? エロスヴィッチは無事か?

 分からねえ。だが、とにかく俺たちは……

 

「ぐっ、か、体が………」

「は、破瓜の痛みで……」

「こんなときに……」

「私としたことが……」

「動かない……」

「ヤベ、なんか普通にヤベ!」

 

 ちょっとまてえええ! 俺も含めて大半が今、まるで役に立たない状態なんだけど!

 

「おいおい、イーサム、エロスヴィッチ! お、おま、お前ら、これもお前らの想定の範囲内だよな? って、何か言えよ!」

「さわぐんじゃねえ、クソガキが! こんなん、屁でもねえ! 俺がテメエも母体もまとめて守ってやらア!」

「チーちゃんッ!」

 

 動けるのは、チーちゃん、ラガイア、キロロ、ニート、そしてフィアリ。

 五人は俺たちを囲むように陣形を………

 

 

「魔王チロタン……魔王キロロ……二人の魔王がそちら側につき、そこに出来損ないとはいえ、我が血族まで居るとは皮肉な話……」

 

 

 新手の声。今度は誰だ?

 

 

「…………………あっ……………」

 

 

 その時、ラガイアが上を見上げると、その先には建物の屋根の上に足を組んで座りながら、こちらを見下ろす何者かが居た。

 緑色の肌。人間じゃねえ。頭髪はなく、その体はチロタン並に大柄な筋肉質。トーガのような布を纏った姿。

 だが、一番目に付くのは、やはり顔だ。顔の中心に大きな傷跡があり、『そこに一つしかなかったと思われる目』が潰されている。

 

「ステロイたちからの報告は受けていたが………生きていたか、ラガイア」

「………ち……父上……」

 

 膝をガクガク震わせ、恐怖で顔を引きつらせるラガイアの口から出た言葉。

 それに俺たちは衝撃を受けると共に、キロロ、そしてチロタンも顔を引きつらせた。

 

「ッ、無眼魔王ッ! なぜ、そちら側に?」

「おいおいおいおいおい、ぐわはははははは! これは、どういう冗談だ? ああん? 『ノッペラ』! テメエ、こんなクソ共に買収されたか? ああん?」

 

 僅か一瞬で状況が完全に入れ替わったというより、訳が分からなくなっちまった。

 そんな状況下、ゆっくりと俺たちに近づいてくるのは、黒いアヒルの着ぐるみを纏った……

 

 

「随分とまぬけな状況だっく。リモコンのヴェルト」

 

 

 この喋り方は、顔も見たことなくても一人しかいねえ。あいつだ……

 

 

「ブラックダックッ!」

 

「さあ、お前とニート・ドロップだけ来るだっく。社長と副社長が二人を待っているだっく。お前の娘もいるだっく」

 

「ふっざけんなよ………テメエ……」

 

「他の連中には牢屋に入っていてもらうだっく。抵抗してもいいが……状況的に無理だっく」

 

 

 ただただ………カオスだった……

 

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