異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第423話 ゾッとした

 イーサムと戦ったり、一緒にフットサルやったり、俺たちはこういう戦い方も身についていた。

 でも二年後、俺が監獄から飛び出して、周りに集まった仲間は、一緒に戦うことがあっても、特に連携をする必要があまりなかった。

 それは、個別で戦って十分勝てたからだ。キシンとか、カー君とか……

 たまにアルーシャと連携したり、ユズリハの背中に乗ったぐらいだ。

 

「そういや、あたしんとこでやったフットサルでも、なんか合体シュートとか色々やってた……」

「なるほど。元祖ならではというわけね。やっぱり羨ましいわね。まっ、私はヴェルトくんと連携魔法何回かやったことがあるけれど♪」

「ふん。私のほうが、婿と息ピッタリだもん……合体できるもん」

「ワ……ワタクシだって……ヴェ、ヴェルトと合体しましたもの」

 

 二年前の俺たちはいつもギリギリの状況下で戦っていた。

 だからこそ、奥の手などの出し惜しみもなかったから、互の実力も、互の手の内も分かりきっている。

 そんな俺たちだからこそ、こういうことができる。

 互をカバーしあい、そして連携する。

 二年ぶりだってのに、俺が「ふわふわどんでん返し」やら「ふわふわ回収」なんかでフォローすると思っているファルガやウラを見りゃ、一目瞭然。

 

「意外だっく。だが、確かに考えてみれば、ヴェルト・ジーハの技は、むしろサポートに向いているだっく。自分が前線に出るよりも、後方で全体のフォローをするのに向いているだっく」

 

 一度目の攻防に加わらなかったブラックダックが、冷静に俺たちをそう判断した。

 その言葉に、今度は味方のニートが、何かに気づいたように、ハッとした。

 

「そうか……RPGでいう、勇者、魔法使い、僧侶、戦士、みたいなもん?」

「どういうことです、ニート君?」

「いや、ほら、さっきまでの朝倉~、つうか、ヴェルトの仲間は、なんか雷女だったり、氷使いだったり、ドラゴンだったり、魔王だったり、チートライオンだったり、とにかくジャンルバラバラだったじゃん。でも、なんかあのパーティーは……バランス良い感じで、そう思ったんで」

 

 まあ、例はアレだが、確かにバランス良く感じるというか、俺もやりやすい。

 

「だが、昔とは比べ物にならねえほど、クソ強く、そして技もクソキレてるじゃねえか、愚弟」

「ふん、ファルガよ、こんなものでヴェルトの力に驚いているようでは早いぞ? それこそ、私にプロポーズするために覚醒したヴェルトの力は超カッコよかった!」

「そういえば、そうでござる! 殿が魔王シャークリュウのアンデットと戦っている映像を拙者も見たでござるが、途中で映像が途絶えたりして、結局詳細は分からなかったでござる!」

「そうね~、気づいたら、弟くんがウラちゃんをお姫様抱っこしてたし~」

「オイラご主人様と見てたっす! ご主人様、兄さん見て『プレイボーイならぬ、プレイヤンキーだね♪』って言ってたっす!」

「むう、ヴェルト様、……コスモスを取り戻し、落ち着かれましたら、私とも正式に天空世界で婚姻の儀をお願いしますね?」

 

 監獄から脱走した後に出会った仲間を蔑ろにするわけでも、区別するわけでもねえが、これはこれで一つの完成形でもあった。

 すると…………

 

 

「個ではなく、連携で倒すか。それもまた、貴重な体験だ」

 

 

 どこか嬉しそうに前へ出て、ピイトは体を広げる。

 すると、徐々にピイトの着ぐるみから剥き出しになっていた肉体についていた傷が塞がっていっていた。

 

「クソが。なんだ、アレは。治癒能力か?」

「いいえ、違うわよ、ファルガ。アレは『超回復』ね」

 

 それは、クレランから出た言葉だった。さすが、歩く生物百科事典。知ってたのか?

 

「ほう。博識だな、モンスターマスター・クレラン」

「ふふ、ええ。何年か前に教えてもらったことがあるわ。それと、山猫ちゃん。ピイトって名前らしいけど、ようやくあなたの正体が分かったわ」

「……なんだと?」

「君、『ケヴィン』の教え子の、『バスティスタ』でしょ?」

「ッ!」

 

 その時、クレランの口から出た名前を、俺も、そして他の連中も分からず首をかしげたが、ピイト自身は言葉に詰まったような反応を見せていた。

 

「……ケヴィンを知っているのか?」

「ええ。辺境のチェーンマイル帝国から南に下った海岸を超えた先にある小さな島。『サバス島』。そこに居た、筋肉モリモリの漁師ケヴィンに教えてもらったわ」

「そうか……サバスに行ったか………」

「普段は漁師だけど、ケヴィンはどういうわけか肉体を鍛え上げるための自己鍛錬方法を熟知していた。その噂を嗅ぎつけた、聖騎士のガゼルグが、かつて師事をお願いしたってぐらいだものね」

 

 ガゼルグ? ああ、あのデカイ秒殺聖騎士か……

 

「ケヴィンが教えてくれたわ。昔、自分の家の近くに住んでいた、生まれながらにして特異な体質を持った子の話を」

「古い話だ……」

「話では、かなり素行の悪い子だって聞いてたけど、何かあったの? 随分と、今は紳士的じゃない」

 

 そういえば、イーサムも言っていたな。ピイトの本性はもっと凶暴だと。

 本来であれば、ラブ・アンド・ピースの幹部程度で収まるような奴ではないと。

 それなのに、何故か自分を押し殺してここに居ると。

 すると、ピイトは首を横に振った。

 

「俺の事情など、ありきたりなありふれたものだ。気にすることはない」

 

 それだけ言って、ピイトは再び構えた。

 

「さあ、そんなことより、もう少しお前たちの連携を楽しませてもらおう。だが、決定打にかける攻撃を繰り返しても、俺には勝てんぞ?」

 

 今は戦いを。そのことには、俺も異存はなかった。

 そして、ピイトの言うとおり、いくら俺たちが互をフォローし合っても、ピイト、そしてメイルやノッペラ、その後方に待ち構えるデイヂと洗脳ママン。何より、未だ不動のブラックダックを倒さなければいけないからだ。

 今はそのことをどうするかの方が…………

 

 

「あら、楽しむ余裕、あるのかな~?」

 

 

 しかし、クレランが不気味な笑みを浮かべた瞬間…………

 

 

「ッ! がっ、ごほあっ!」

 

 

 突如、ピイトが咳き込み、そして地面に膝をついた。

 えっ?

 

 

「ぐっ、うぐうう、が、おっ、っ…………これは…………」

 

 

 着ぐるみを被っていても分かる。明らかに異変が起こり、ピイトが苦しんでいる。

 激痛のような呻き声を上げている。

 

「えっ、何があったんだい、ピイト専務ッ!」

「……まさか、毒だっくか?」

 

 一体ピイトに何があった。さすがに俺たちも驚いた。

 するとクレランは…………

 

 

「あなたの体内で、ジャイアント・カンディールが成長しているのよ」

 

 

 カンディール?

 

 

「さっき、あなたの傷跡からカンディールを侵入させたわ。カンディールは肉食の魚。魚や動物の皮膚などを食い破り、体内に侵入して肉や臓腑を喰らい続ける。肉体を再生できるあなたは、その子達にとっては最高の餌場」

 

「………ッ!」

 

「そして、ほんの僅かな大きさのカンディールは、喰らえば喰らうほど大きくなり、卵を産み、増殖するわ。私の力をブレンドして上げてるから、たとえ陸上で、あなたの体内にいようとも活発に動き回るわ」

 

「………キサマッ! うぐっおおおおおおおっ!」

 

「漁師の弟子なんだから、筋力鍛錬以外でも教わっておかなきゃね♪」

 

 

 

 ……クレランのニッコリと微笑みながらの解説。

 

「でも、大丈夫。体内の魔力をコントロールして死滅させれば問題ないから♪ あっ、でも、君は魔法を使えないんだったっけ?」

 

 さっきまで、俺たちは以心伝心で連携が取れるとか思ってたが、今のクレランの説明に一人残らずゾクッとしてた。

 ニートやフィアリを始め、アルーシャたちも顔を青ざめている。

 ムサシ、ユズリハなんてガクブルしている。 

 

 

「ぐがああああっ、つ、おの、おのれっ、き、きさまっ!」

 

「口から、目から耳から鼻から尿道からお尻から、全部吐き出しちゃうぐらい、育ててあげてね♪」

 

 

 あのピイトが苦しみのたうちまわっている。その姿に、敵も味方も同情を感じずにはいられない。

 そして、俺は二年前のことを思いだした。

 クレランとの初めての出会い。俺はあの時、色々あって、クレランと戦った。

 そのときを思いだし、心の底から思った。

 

 

「…………クレランに、あの力を使われなくて…………ほんと良かった」

 

 

 俺たちの全身は、おもクソ鳥肌が立っていた。

 だが、クレランの打った最恐の手は、紛れもなくピイトには有効だった。

 

 

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