異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第427話 遠心分離

 それにしても、『縁』ってのは不思議なもんだ。まるで関係ないと思っていたものも、紐解いていけば、それはどこかに繋がっていたりする。

 その典型を目の当たりにしながら、たぶん今、俺は笑っているんだと思う。

 

「助ける? そう、まっ、弟くんがそう言うならね」

「細かいことは聞かねえ。だが、このクソ笑えねえ状況下、このクソ筋肉を始末しねえで、あえて助けるってんだな? 愚弟」

「拙者、殿の命令とあらば!」

「いいっすね~、そういうテキトー感、兄さんらしいっす!」

 

 俺の、本来ならありえないだろう行動も、こいつらは呆れたように了承してくれる。

 この、俺の思いつきの行動で振り回されるも、結局「仕方ねえ」の一言で付き合ってくれるこいつらの空気も、何だか懐かしいと感じながら、俺は改めて迫り来る何十メートルもの大きさに肥大した肉の塊と向かい合った。

 

「この肉の塊の中にいるピイトの心臓に絡みついてる魚を取れってさ。ちなみに、クレラン、できるか?」

「ごめんね~、中途半端に私の力を込めた子たちだから、生命力があるから、こんな状況下でもたぶん元気に暴れまわってるわ」

「となると、この肉を削ぎ落としながら中に入り、直接ブチ抜いてやるしかねえか」

 

 まあ、それがオーソドックスなやり方だろう。外部からどれだけ攻撃しても、この肉の密度では表面を傷つけるだけで、すぐに再生される。

 それならば、一点集中で内部に突き進み、そのまま一気に……

 

「その一点集中とやらはどうする気だ? 悔しいが、私の拳や蹴りでは道は開けん」

「なんの、ウラ殿! ここは、拙者の剣で突き進むでござる!」

「分厚すぎる。テメェのクソ剣だけじゃ無理だ」

 

 だが、一点集中突破というのも、それはそれで単純なようで、このレベルのものになると難しい。

 

「一点突破といえば、ドリルって相場が決まってるが…………」

 

 と思ってチラッとニートを見ようとしたら、青ざめたニートを庇うように、フィアリが鬼のような形相でブンブン首振ってた。

 

「何を言ってるんですかーーーっ! もし、中に入って出て来れなくなっちゃったらどうするんですか! 大体、カンディールって確か……その、あれですよね、お、お、男の人のおちん……、食べちゃう、アレですよね?」

 

 ん? いや、体内に入って暴れるってのはクレランが言ってたが、他に何かあるのか? メッチャ怒りながらも、どこか恥ずかしそうにフィアリがゴニョゴニョ言ってる。

 

「とと、とにかく! ニート君に何かあったらどうするんですか! 絶対にダメなんですからね!」

 

 クレランを見る。すると、フィアリの様子に疑問を思ったフォルナたちが、苦笑したクレランに耳打ちされている。

 

「あのね、カンディールって、男の子のゴニョゴニョゴニョ…………」

「「「「「「ッ!!」」」」」」

 

 その瞬間、俺と行為に及んだ嫁六人衆ヨメーズが驚愕の表情を浮かべて慌てて俺に飛びついてきた。

 

「ヴェルトオオオオ! あなたも、もうアレに関わってはなりませんわ!」

「ヴェルト、お前が敵をも救おうという心意気は分かった。だが、関わるな! もし、お前のアレに何かあったら!」

「ヴェルトくん、君はもう一人の体ではないのよ! 子孫繁栄に影響があったらどうするの?」

「ヴェルト様、私はまだあなたのモノを愛で尽くしていません!」

「婿ダメ婿ダメ婿ダメ!」

「ヴェルト、お前、その歳でもう使いもんにならなくなるのヤバイからやめとけって」

 

 なんか、のっぴきならない事情があることは分かった。

 いや、じゃあ、どうするよ? どうにかできそうなレベルのイーサムとエロスヴィッチはまだ万全じゃなさそうだ。

 

「大体、朝倉くんは既に女の子達に色々搾り取られて、いつ死んでも満足かもしれませんけど、ニート君はまだ経験ないんですよ? まだ、私とシテないのに、一滴も出させずに再起不能にするなんて、ぜ~~~~~~ったいにさせません!」

 

 その時、フィアリの言葉に何か別のことが閃いた。

 

「ん? 搾り取る……」

「そーですよ! ついさっきまで、かわゆいお姫様たちに、カラッカラのミイラになるぐらいまで搾り取られて、大満足なエロ倉くんには分からないでしょうけど~!」

 

 カラッカラのミイラ……あ~!

 

「なるほど……その手があったか」

「……はっ?」

 

 いや、正直、助けると決めたものの、どうやって助けるかの具体的な案がなかったからどうしようかとも思ったが、それは使える。

 となるとだ、方法は思いついた。だが、どっちにしろこの方法は一点突破とあんま変わらねえから、どっちみちあの肉山に突入する必要がある。

 それを誰がやるか?

 やっぱ、このメンツでどうにかやるしか……

 

「いや~、なんか大変そうっすね~、どうするっすか?」

 

 その時、この場に居た女たちが一斉にその声に振り返り、そいつを指差した。

 

「「「「「あなたなら一番影響がないっ!」」」」」

「…………えっ、オイラっすか!」

 

 女たちのドラの強制指名。ドラがマジビビった顔で鼻水垂らしてる。

 つうか、何でドラ? しかし、なんかクレランも納得したように手のひらを叩いてる。

 

「そっか、ドラちゃんなら、アレないし……ファルガだって、もし何かあったら私が困るし、うん、ドラちゃんが適任かも」

「ええええええええええええええ! お、お、オイラっすか?」

 

 アレって何だ? アレってナニを指してるんだ? しかし、なんかヨメーズたちが俺の股間を超厳重ガードの構えを見せているあたり、何となく理解出来た。

 しかし、あの山のようにデカくなった肉山の中にドラを送り込むか……なんか、可哀想な気もするが……

 だが、散々情けない顔をしながらも、ドラはどこか覚悟したように肉山を見た。

 

「ううううう~~~~~、ひどいっす、ひどいっす……でも……でも、オイラが兄さんたちに謝るならこれぐらいしないとダメっすよね?」

 

 いや、お前は別に悪くなくね? と思ったが、なんかドラが行ってくれそうな雰囲気なので、女たちは誰も指摘せずに「ウンウン」と頷いてる。なんかヒデエ……

 

「つ~~~~、分かったっす! オイラ、行くっすよ、兄さん! こんなの、兄さんの苦しみに比べれば、朝飯前田さんっす!」

 

 だが、あのドラにしては、二年前からは考えられない決意を見せている。ある意味でこのまま行かせた方がいい気がしてきた。

 だからこそ、俺も頷くことにした。

 

「そうか。だが、それならそれでフォローはしてやらねーとな」

 

 そして、キッチリ援護してやらねえとな。

 

「よっしゃ、お前ら! それじゃあ、ドラのために道を切り開く!」

 

 その意志だけは共有し、俺たち「トンコトゥラーメン」は以心伝心で一歩前へ出た。

 声に出して「おう」とは言わないものの、俺たちはすぐに行動に移った。

 

「作戦は単純だ! エルジェラ、俺と協力して、あの巨大な肉山を浮かせろ!」

「お任せ下さい! ヴェルト様との共同作業、必ず成功させて見せます!」

 

 俺たち一人一人の能力だけじゃ、たぶんこの状況はどうにもできなかっただろう。

 でも、今はこのメンツだ。このメンツの全ての能力を駆使すりゃ、昔のように乗り切れる。そんな確信があった。

 

「おおお! 何をする気だ、少年少女たち!」

「それよりも、我々も下がらなくて良いのか? あの肉が暴れ回れば、我らも被害を受けるぞ」

「ここは引くべきだと思うだわね」

「まっ、見てよーぜ。俺もこの目ではあんまり見れてねーんだよな。婿さんの力をな」

 

 少し離れた建物の屋根の上から、俺たちの様子を高みの見物している敵共に教えてやる。

 見せてやるよ。

 

「クレラン! ファルガ! ムサシ! 奴から水分搾り取る!」

「水分?」

「やつの傷が塞がっても、すぐに傷を作れ!」

 

 勿論この指示だけでどうなるか分かるはずもねえ。

 だが、それでも俺の指示を信じて、三人は飛んだ。

 

「どういうことかしらね~?」

「知るか。だが…………」

「殿の仰せの通りに!」

 

 三人は散開し、俺とエルジェラが宙に浮かべた肉山の周囲を……

 

「トランスフォーメーション・パンサーリオン!」

「エルファーシア流槍術・レインストーム!」

「宮本剣道・千華繚乱!」

 

 肉山の周囲を飛び回り、なぞる様に深い切れ込みを多数入れていく。

 当然、肉は切れ込みから血が飛び散る。だが、これだけではすぐに傷は塞がれる。

 なら、塞がなけりゃいい!

 

 

「エルジェラ、俺は別の作業に意識を集中させる! お前は、あの肉山が地面に落ちないように浮かせてろ!」

 

 

 宙に浮いた肉山。その周囲の空気に触れ、俺は一気に肉山を回転させる。

 

 

「ふわふわメリーゴーランド!」

 

 

 自己最高速度を更新するほどの勢いを込めて、俺は肉山を回転させた。

 そして、これはもう、メリーゴーランドなんて可愛らしいものじゃねえ。

 度重なる激戦の上、辿りついた俺のふわふわ技。その果てで掴んだ技のキレ。

 これはもう……

 

 

「ふわふわセントリフュージ!」

 

 

 遠心分離! 強力な回転の力で、水分と固体を分離させる!

 ファルガたちが開けた穴や切れ込みから溢れた血を、遠心力の力で更に外へと飛ばす。

 

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