異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第429話 それがどうした?

 拗ねているカラクリドラゴンなんて歴史上初かも知れねえが、まあ、可哀想なドラの心情など知らずに、マイブラザーは実に堂々と宣戦布告をしていやがる。

 だが、相手もその挑発を簡単には受け流さない。

 

「ラガイア、この半端物が何を図に乗っておる。広大な魔族大陸に君臨する七人の魔王の一人でもある、この無眼魔王ノッペラに、下賎な血を引く半端な出来損ないの小僧が、何をほざくッ!」

 

 正に烈火のごとくとはこのことだ。伊達に魔王は名乗っていない。

 空気を揺るがす強烈なプレッシャーは、流石というところ。

 

「半端でも僅かに我が血を引く者。そこそこ見所はあるかもしれんと生かしておいてきたが、大きな間違いだった! やはり、お前は我が国に損失をもたらす前に、早々に始末するべきだった! 生まれたその瞬間から、頭を砕いて細切りにしてやるべきだった!」

 

 親子の会話には決して見えねえ。

 あまりにも悲しすぎる二人の立ち位置だが、ラガイアはまるで心乱さねえ。

 ブレない瞳で、己の胸を力強く叩いた。

 

「あなたの血を継いだぐらいで強くなったら苦労はしない」

「なにィ?」

「紡いだ絆が僕を強くしてくれた! マーカイ魔王国もサイクロプスも関係ない! 僕はラガイア。僕は僕の思うがままに生きる! もう二度と、僕の道に立ちはだかるな、ノッペラッ!」

 

 その瞬間、何かがブチキレた音がした。気づけばノッペラの顔面が光った。

 眼力か? だが、ラガイアも引かない。眼帯外して正面から見えない何かをぶつけ合った。

 

「ッ、この愚物がァ!」

「お兄ちゃん、今のうちだ。早くお兄ちゃんはコスモスを!」

 

 あら、逞しくてお兄ちゃん嬉しいよ。

 うん、だから、ドラ。お前も「オイラもかっこいいのしたかったっす」とかいつまでもイジけてんじゃねえよ。

 

「というより、愚弟。何で、あのクソサイクロプスの王子が、テメェを兄と呼んでやがる」

「え~~~っと、弟くん、ちなみにこの二年間ぐらい何があったのかな?」

「あの、その、と、殿の弟君になられるということは拙者にとっても、しかし、あれ?」

 

 あ~、まあ、そういう反応になっちゃうよな。

 

「ああああああ! ユユユユユ、ユズリハ姫ではござらんか! というより、なんかイーサム局長や、………エロスヴィッチ殿ーーーーーーっ!」

「あら? あ、あそこで治療受けてるの、ねえ、弟くん、あそこに居る黒い魔族って、弟くんが天空世界で戦った魔王じゃ………」

「オイラなんて、オイラなんて、オイラなんてどうせ………」

 

 こればかりは説明が長くなりそうで、フォルナやアルーシャもお手上げ態勢で苦笑していた。

 まっ、いっか。

 

「家族が増えたんだ。別に悪いことじゃねえだろ? ファルガ」

「………愚弟。さっきから気になっていたが、テメエにまとわりつくメスも増えてねえか? 俺らが追いかけたクソ竜人のユズリハ姫。クソダークエルフ。どういうことだ?」

「……カゾクガフエタンダヨ」

 

 それも説明がまた長くなる。いや、なんかヤッちまったの一言でもいい気もするけど。

 

「ぐわはははは、賑やかじゃのう。ムサシも、シンセン組を除隊させられてどうなったか心配じゃったが、元気そうじゃな」

「ムサシ? あ~、バルナンドの孫なのだ」

「ニート君。朝倉くんって、この世界でどういう立ち位置なんでしょうね………」

「なんか、俺も朝倉の仲間っぽくなって、リア充の仲間入りできるかとも思ったけど、やっぱいいや。埋もれるんで、こんな濃すぎる連中」

 

 しかし、ピイトの件が一旦落ち着いたと思ったら、また騒がしく、っていうか増えちまったな俺たちも。

 まあ、全員頼もしいから悪いことではねーんだがな。

 すると………

 

「ちっ! デイヂ、そしてメイル元帥、ここでテキトーに足止めするだっく! 俺は社長を――――」

 

 ブラックダックが一度態勢を立て直すために、この場から後退しようとしてる。

 だが、そうは――――――

 

「何処へ行くんじゃ~?」

「ッ!」

「ぐわはははははははははははは、ようやく会えたのうッ!」

 

 あら? 今の今まで目の前でムサシを労っていたはずのイーサムが、いつの間にかブラックダックの背後に回り込んでやがった!

 はやっ! つうか、もうそこまで回復? つうか、怖ッ! 気づけば後ろにニヤリと笑ったイーサムとか、どんな恐怖だよ!

 

「武神イーサムッ!」

「ふんぬるあああああああ!」

 

 拳骨のように振りおろされるイーサムのテレフォパンチ! 天災みたいなもんだ。

 だが、次の瞬間、ブラックダックは身動き取れずに潰され………

 

「ぬっ?」

 

 潰されたかと思ったら、イーサムの拳がブラックダックに触れた瞬間、ブラックダックの体はボンッと音を立てて煙に変わった。

 ブラックダックはどこに?

 

「そこまで雑魚扱いはやめるだっく」

 

 どこに? と思ったらイーサムの背後からゼロ距離で掌から閃光のようなものを放った。

 

「ブリーズ」

 

 まさに天変地異のような大嵐。激しい爆発的な突風がイーサムを吹き飛ばした!

 

「ちょ、なんだこりゃ!」

「局長ッ!」

 

 あのイーサムを吹き飛ばした? しかも、特に詠唱した様子もない。魔力を溜めた様子もない。

 なのに、あの一瞬で瞬間的に放った魔法でイーサムを?

 

「ちょ、ちょっとお待ちなさい! あの男、今、ブリーズと唱えませんでした?」

「何を言っているの、フォルナ! ブリーズなんて、ただの『そよ風』程度の魔法。児童魔法学校でも一番最初に習う程度の魔法よ?」

 

 だよな。ちなみに、俺は出来なかった………

 すると………

 

 

「フレイム」

 

 

 屋根の上から俺たちに向けて指一本向けるブラックダック。唱えたのはあまりにもありふれた低級の火属性魔法。

 だが………

 

「ちょっ!」

「でっか! あっちいいいい、何アレ!」

 

 一瞬、世界が大炎上したのかとすら思えたほど圧倒的な火力。その膨大すぎるエネルギーと質量は、イケイケムードになりかけた俺たちの気持ちを一瞬で変えた。

 

「させるかよっ!」

「………………………チッ」

 

 慌てて俺のふわふわ技で、迫り来る炎を遥か上空へと飛ばした。

 一瞬で空を真っ赤に染めるほど巨大な炎は、もしマトモにくらっていればと思うとゾッとした。

 

「やるだっくね」

 

 ちょっとイラついた様子で俺に舌打ちするブラックダック。だが、危うくちょっとヤバイことになりそうだっただけに、みんなも声を荒げた。

 

「何がフレイムですの! さっきの風魔法もそう。明らかに最上級クラスの威力だったではありませんの!」

「そうね。それをほとんど詠唱なしの状態で撃てるなんて………この男」

「おいおい、マヂ? なんなん、マッキーの部下って、こんなんばっか?」

 

 俺も同じことを思った。フレイムとか、そんな初級魔法はバーツとかなんて六歳ぐらいから使えてたしな。

 それなのにどうして………

 

 

「今のもさっきのも、紛れもなく初級魔法だっく」

 

 

 しかし、そんなありえるはずもないと思っていた俺たちの考えを覆す発言を、ブラックダックはアッサリと言った。

 

「なるほどなのだ……『極限魔法』……なのだ」

 

 その時、ブラックダックの発言に「ふざけるな」と言いそうになったフォルナたちより早く、エロスヴィッチが何かに気づいたかのように呟いた。 

 その言葉に、フォルナたちも顔色を変えた。

 

「きょ………………」

「極限魔法ですって?」

 

 なんだよ、その極限魔法ってのは! まあ、リアクション的にスゴそうなもんなんだろうが

 

 

「さすがはエロスヴィッチだっく。知っていただっくか」

 

「光属性魔法を極めしものは、神聖魔法を。闇魔法を極めしものは邪悪魔法を。そして、もう一つ……無属性魔法を極めし者が辿り着く、極限魔法……長い戦争時代においても、わらわも一人か二人ぐらいしか見たことないのだ」

 

「そうだっく。そして、これが俺の極限魔法………あらゆる初級魔法を最上級魔法の威力に引き上げて扱うことができるだっく。消費する魔力も、詠唱時間も、初級魔法のまま、威力のみを最上級にするだっく」

 

 

 それは、フォルナやアルーシャとかが、自分の最強魔法を長ったらしい詠唱しながら放つのに比べて、こいつは魔力もあまり消費せずに、ほぼノータイムで撃てるってことか?

 

「ちょっと、マヂくね? あいつ、ただのアヒルじゃねーの?」

「だから最高幹部ですよ、備山さん! って、ニート君、頭抱えてどうしました?」

「いや、すごそうなのに、あの着ぐるみと喋り方の所為で、全然緊迫感がないんで」

 

 確かに、ニートの言うことは一理あった。

 ブラックダックがいよいよベールを脱ぎ、確かにその力は噂以上かもしれねえ。

 あのイーサムやバルナンドもその噂は口にしてたし、これまで勿体ぶっただけはあるかもしれねえ。

 でも、なんでだろうな。それでも、「あいつ以上」とは思えねえ。

 

 

「グワハハハハハハハハハハハハ」

 

「ッ!」

 

 

 ほらな。

 

「で? だからなんじゃ?」

「貴様ッ、吹き飛ばされたはずだっく!」

 

 ふっとばされても、ほぼノーダメージか。さすがだな。

 まさか二度もイーサムい背後を取られるとは思ってなかったブラックダックも、改めて驚きの声を上げている。

 気の毒にな。だが、これでハッキリとした。

 

「確かにおぬしは強いのう。しかし、ピイトのようにワシを血肉沸き立たせるほどではないのうっ!」

 

 そう、イーサムやピイトを超える力じゃねえ。それがハッキリとした。

 すると、今度はグーではなく、獣の爪で引っ掻くようにイーサムが腕を振り下ろした。

 それだけで次の瞬間、ブラックダックの右腕が宙を舞った。

 

 

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