異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと 作:アニッキーブラッザー
臆することはねえ。構わずいく。
「おい、義兄様よ、少し手荒に行くが勘弁しろよ!」
「愚弟、俺がどうした?」
「いや、お前じゃなくて、こっちの………あ~、紛らわしい! とにかくロア、行くからな!」
やり方は、マッキーとマニーとかわらねえ。力づくで取り押さえるだけだ。
俺、ムサシ、ファルガの三人と連携があれば、何も問題がねえ!
というのに………
「時間だよ、ヴェルト君」
マッキーが切なそうに呟いた瞬間、ソレは現れた。
「えっ………?」
突如、森の木々の更に上の空から、巨大な針が落ちてきて、ロアに突き刺さった。
「ッ?」
「なにが起こっているでござる!」
腹部を貫通するように刺さった針。しかし、完全に肉体を貫通しているのに、血が一滴も出ていない。
それは、『刺さった』というよりは、『同化』しているかのようで。
「こいつは一体……」
そして、気づいた。針は落ちてきたのではない。伸びているのだ。
それは、遥か空の上で黒い太陽のように巨大な大きな球体。
なんだ、あれは?
「こいつの使用方法は……『真理の紋章眼』の所有者にしか分からない」
「ッ、お、おい、マッキー!」
しかも、針に貫かれているのは、ロアだけじゃねえ。
マッキーも、マニーも……
「ちょ、ど、どうなってるの! ピースちゃんが!」
クレランの悲鳴のような声が聞こえた。
その悲鳴は森の奥から。そして、姿は見えないが、その方角にも針が一本伸びているのが見えた。
まさか、ピースも?
「マッキー、テメエ………」
「ふふ。『超危険指定倉庫』に封印されている神族の遺産については、『深海族』が所有していた『封印の祠』に『ナノマシン技術』と『カラクリモンスター』と一緒に『リスト』として残っていた。それを見て、俺はパナイ震えたよ」
マッキー。そして、マニー、ロアの肉体が針に貫かれた箇所を基点に変色している。
「ナノマシン技術により肉体を改造したものにのみ、入ることが出来る。本当は、『創造の紋章眼』で更に形を整えて、『聖命の紋章眼』で命を吹き込み、そして『真理の紋章眼』で自在にコントロールすることで、より真の力を発揮できるけど……今のこの世界の文明や力なら、これでパナイ十分だと、俺は判断した」
「マッキー!」
「ロア君には可愛そうだけど、運転手としてこのまま借りることにするよ。俺やマニーちゃんの意志をリンクさせ、あとはロア君に操縦してもらう!」
その瞬間、マッキー、マニー、ロア、そして恐らくピースも。
黒い太陽から振り下ろされた四本の針が戻り、四人を空へと引き、そのまま飲み込んだ。
一体、何が始まろうとしてるんだ?
すると………
「アハハハハハハハハハハハハハ! これで準備オッケーだね、マッキー!」
「そうだね~、マニーちゃん。それじゃあ、コアマシンを起動させちゃいますか! 素材はもう、山ほどあるからね」
「りょーかーい! それじゃあ、ロア君、よろしくね♪」
黒い太陽からスピーカーのように拡声された声がランド……いや、その外の戦場にまで届いたと思われる声に俺たちはただ見上げることしか出来ない中、ついに、黒い太陽が動いた。
「なにっ!」
「ちょっ………おいっ!」
黒い太陽が、今度は数え切れないほどの無数の針を伸ばした。
今度は何をする気だ?
って………
「殿、あれを!」
「あれは………カラクリモンスター!」
針が地上に伸び、次々と再び元に戻る。その先端に、大量のカラクリモンスターを貫きながら。
「ぎゃああああああああああああああ、助けてっすーーーっ!」
カラクリモンスター……って、やべえ!
「ドラッ!」
あいつは大丈夫か? そう思って俺たちは悲鳴の聞こえた森の奥底へと駆け出した。
すると……
「ふう………危なかった……」
「うえええええん、ウラ姉さん、助かったっすーーーーーーっ! オイラ、一生、ウラ姉さんについていくっすーーー!」
黒い太陽から振り下ろされた針が、ウラの蹴りで両断されていた。
鼻水流しながらも無事だった様子のドラにホッとするも、結局なんなんだ? アレは……
「どうなってんだ?」
「しかも、相当数のカラクリドラゴンが……殿、これはひょっとして外の戦場にあったカラクリモンスターを全て?」
「かもな」
あの大量のカラクリモンスターは、恐らく今、キシンたちが戦っていたカラクリモンスターの軍だろう。
ってことは、これで外の戦争は終わりになる? なんて甘いことはねえか。むしろ、もっとヤバイものが出てくるってことに?
『素材受入。材料数規定値ヲクリアシマシタ。タダイマヨリ、『メカ・ゴッドジラア』ニ変形合体シマス』
メカ………ゴッドジラア? なんかその語感、どこかで聞いたことあるような………ッ!
「まさかっ!」
その時、俺は……
「おい、朝倉! なあ、何が起こって、つうかもう、全然分からないんでアレだけど、ゴッドジラアって、まさか!」
つうか、居たことすら忘れていたニートの悲鳴にも似た声に、俺も脂汗がダラダラと流れた。
ゴッドジラア。なんか、聞いたことがある。前世で。映画とか、野球のホームランバッターとかで………
「おお、おお、そそ、そうだな、ニート。ゴッドジラアといえば、メジャーリーグの歴史に名前を残した日本人選手の、松●のことだよな」
「いやいやいやいやいや! つか、この状況、絶対『そっち』じゃないんで!」
嘘だろ? と思いつつも、ニートの言うように、ソレしか思いつかなかった。というか、絶対そうだし。
「ヴェルト様、何が起こっているのです!」
「えええええん、ええええええん、パッパー、パッパー! ピースちゃんが、ピースちゃんが攫われちゃったよー」
「ごめん、弟君……私がついていながら……」
正直、エルジェラたちを気にしている場合じゃなかった。
なぜなら、黒い太陽が徐々に面積を広げ、そして球体から形を変形させているからだ。
「あれは……ドラゴンか?」
いや、ファルガ。アレは、ドラゴンじゃねえ。
確かに、ドラゴンのような顔、そして牙、巨大な背ビレも尻尾の先までついている。だが、アレはドラゴンじゃねえ。
「ななななな、でで、でか、……ニート君! 朝倉君! ちょっと、何が起こってるんですか! 加賀美くんは何をやらかしているんですか! って、ゴッドジラアってまさか!」
その巨体の割には短い腕。しかし、その腕には巨大な爪。
そしてその巨体を支えるのは、逞しい二本の足。
二足歩行で、まるでリザードマンみたいに見えるが、あれは、そんなもんじゃねえ。
「アレは……ドラゴンじゃねえ。バケモノで、怪物で……ただ、形容する言葉を一つ選べとなったら……怪獣だ」
天を覆い尽くすほどの巨体。
弩級魔王のヴェンバイの身長が十メートルぐらい。
ダンガムも似たようなもんだ。天空族のクラウドジャイアントがその倍の三~四十メートルぐらいだ。
ならこれは?
「朝倉………俺さ、特撮物好きなんで」
「ニート……そういや、お前は、あのドリル車のマー君に興奮してたな」
「んで、ゴッドジラアも当然カバーしてるんで。ゴッドジラアは、映画でシリーズはたくさんあったけど、当初の大きさは四十メートルぐらいだったんで」
「四十メートル? なんか、もっと大きそうに見えるが?」
「ああ。そこからシリーズを重ねるごとに大きくなってるんで。敵の怪獣と力を合わせるためとか、エネルギーを吸収してパワーアップしてるとか……まあ、リアルな理由だと、文明の発展で高層になっていくビルに比べて、ゴッドジラアが小さく見えちゃうから、ゴッドジラアを大きくしたんだって」
「ほうほうほうほう」
「そーいえば、アメリカ版とかもあって、最終的には……百メートル越えてたな……」
大きくすりゃいいってもんじゃないと思うぜ。てか、誰だよその迷惑極まりない設定を採用した神族は!
「あれは神族の遺産って言ってたな……あれを開発した神族に俺たちと同じようなのが居るってことか?」
「クラスメート?」
「ちなみに、心当たりは? 俺は分からねえ」
「オタク的な知識となると……『橋口』……『佐々木原』……『神乃』……あとは、『迎』あたり?」
「おー、そうかそうか。友達いなかったくせに、クラスメートはよく見てるんだな」
「人間観察ばかりの学生生活だったんで」
「はは、そうか~。そいつは、ワリーワリー。くはははははははははは」
「ひでーやつ、ふひひひひっひひ」
くははははははははははははは。
俺とニートは笑い会っていた。
「ところで、ニート。彼女との仲はどうだ?」
「あんたほど、修羅場ってないから大丈夫なんで」
「修羅場? あ~、いや、確かに一昔前までは修羅場っていうのはあったが、最近なんだかあいつら結託してるようなところがあるな」
「結託? あ~、確かに、そう見えるな。集団で標的を追い詰める特殊部隊的な」
んで、話題を変えてみたりしてみた。
だが、そんな俺たちの「あはははは」「くはははは」みたいな会話を、フィアリが耳元で大騒ぎしてきて割って入ってきた。
「って、二人ともーーーっ! 現実逃避してる場合じゃないですよーーーっ!」
現実逃避させてくれよ。つか、なんだよアレは!
『さあ、終わりだよ、みんな………』
巨大なメカ怪獣からマッキーの声が聞こえてきた。
『怪獣が生まれる目的は何? 答えは……破壊ッ!』
ゴッドジラアの目が光った。その瞬間、全身にエネルギーが行き渡ったかのように、、手足の関節が煙を出して動き出した。
おい、おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!
ちょ、ちょっとまてええええええええええええええ!
「ちちちちち、ちなみに、あ、朝倉!」
「おおお、おお、おうっ!」
「ゴッドジラアの必殺技は………破壊光線!」
ニートのウンチクと共に、ゴッドジラアが巨大な口を広げた。
すると、耳鳴りのような音が響いた。それは、何かを充填している音だ。そう、エネルギー。
「マッキイイイイイイイイイイイイイイイ!」
口から光線だとかビームを放つ魔族とかは居ることは居る。俺だってレーザービームを出せる。
しかし、これは………
「く……そが……」
「あば、あばばばばばば、とと、とにょ~……」
「兄さん、なんすか……アレ……」
あさっての方角に向けて放たれた巨大光線。恐らくはテストのつもりで撃ったんだろうな。
遠くの方角で巨大な爆発と炎が舞い上がるのを見て、俺たちはもう、反応の仕方すら分からんほどに唖然とした。
「山が……消し飛んだ…………」
とりあえず、見たまんまのことを言うしかなかった。
『ふふふふふ、あーっはっはっはっは! すごいすごいすごいよ、マッキー! これで、私とマッキーとピースちゃんは世界一だよ! 聖騎士も、十勇者も、七大魔王も、四獅天亜人も、全部消えちゃえ!』
そして、狂ったように笑い続けるマニーの言葉。だが、確かに、それを実現するだけの圧倒的な力が、ついに神族大陸に降り立ち、この世界に牙を向けた。
神族の遺産? もはや、破壊神そのものじゃねえかよ。
だが、その時、空耳だろうか?
「ん?」
俺にしか聞こえなかったのだろうか? それは分からない。
でも、狂ったように笑うマニーの声とは別に、俺に呟くマッキーの声が聞こえた気がした。
『今が、『その時』だよ、ヴェルト君』
マッキー? なんのことだよ!
『どうして、君が、二年の沈黙を破って、あの監獄から脱獄したのか……何を目指して、何になるためだったのか……その答えがここにある………』
マッキー! だから、何を………
『世界を破滅させる破壊神を倒したとき……君は、『ソレ』になることができる』
俺が……何を目指して、何になろうと?
『倒せるものなら、倒してみろよ、ヴェルト君。さもないと、俺が『ソレ』になっちゃうよ~?』
その言葉だけが頭に響き、ゴッドジラアは世界を破滅させるための産声を上げた。