異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第443話 ニンニン

 もはや、世界が歪んで見えるほどの圧倒的なエネルギー。

 戦争という言葉すら生易しく感じる、生物が生み出せる力の限界を遥かに超越している。

 こんなもん食らえば、さすがに………………

 

 

『ひはははは、いや~、パナイパナイ。映画の世界じゃ、自衛隊のミサイルとかまるでへっちゃらな怪物は、同等のサイズの怪獣が巨大化した正義のマスクマンで倒すのが定番なのに、人型サイズの生物が、こんだけすごいのやっちゃうとはね~』

 

「「「「「ッ!!??」」」」」

 

 

 だが、その時、あいつの機嫌良さそうな余裕の声が、爆炎の中から聞こえてきた。

 周囲何キロ、そして雲すら突き抜ける炎の中、ようやく晴れて来たと思ったら、そこにはさすがに苦笑しちまうほど何ともねえ、メカ・ゴッドジラアが立っていた。

 しかも、その周囲を強力なエネルギーの壁で覆いながら。

 

「バリア!」

 

 あのデカブツ、そんな機能まで兼ね備えてんのかよ! どこまで、反則すりゃ気が済むんだよ。

 

「ぐわはははは、ワシの攻撃を防ぐとは、何とも強力な障壁じゃのう」

「常識を破るミーのロックですら破れないとは、アメージング」

 

 これには、さすがに全力全開の力を放ったと思われる、キシンとイーサムも苦笑している。

 まあ、ただでさえサイズもパワーも火力も桁外れな怪物が、防御まで完璧だと、そりゃどーすりゃいいんだよって感じだ。

 しかも………………

 

 

『でもさ~、マッキー、みんなちょっと、チョーシに乗りすぎじゃない? ほら、見て~。ピースちゃんが怯えて泣いちゃってるよ? ほんと許せない。ほんと、私とマッキーとピースちゃんの幸せを邪魔する世界は、本当に邪魔!』

 

 

 お姫様は大層ご立腹のようだ。

 こりゃ、マジでやばくなって来たな。

 

 

『だから~……ミナゴロシィィィィィィィィィィィィィィィィ!』

 

 

 次の瞬間、ゴッドジラアの巨大な胸部が観音開きのようにパカリと開き、中から無数の砲台が出現…って、おいおい、百や二百どころじゃねえぞ! つうか、指も、口も、全身砲台!

 

 

「ぐわはははははは……まずいの~……」

 

 

 ソレがいかにヤバイ事態かは誰にも明らかだ。あの、最強無敵を誇るイーサムが額に汗かいてやがる。

 わかってるんだ。アレが火を噴いたらどうなるのかを。

 

 

「ッ、今すぐッ! 全軍退却するゾウ! 少しでも遠くへこの場から離れるゾウ!」

 

 

 カー君が戦場全土に聞こえるほどの声を上げ、兵たちに今すぐ逃げろと指示を出す。

 だが、メカ・ゴッドジラアは既に動いていた。

 全身無量大数の砲台が、周囲三百六十度全てに砲撃を放つ。

 

 

『いけええ、ゴッドジラアちゃん! 全兵装アターーーーーーーーーック!』

 

 

 一瞬で、世界全土が閃光に包まれた気がした。

 ヤバイ、光で何も見えねえ。砲撃が飛んでくるのが分かっても、威力がデカすぎて方向も変えられねえ。つか、数が多すぎる。

 避けるのも無理だ。だって、逃げる隙間なんてねえからだ。

 じゃあ、どうなる?

 

「ま、まずい! アルテア、空間魔法だ!」

「ちょ、いきなり無理だって!」

 

 ダメだ、間に合わねえ。アルテアだって、デイヂとの戦いで疲弊して、いきなりは無理だ!

 だが、他にどうする?

 アルーシャの氷の壁も、フォルナの雷も、ラガイアの闇も、チーちゃんの爆発魔法も、エルジェラの超天能力も、この場にある選択肢でどうにかできねえ。

 俺のふわふわ魔法もこの量と火力を防ぐことは無理だ。

 ドラの装甲は? 無理だ。この空気から感じる威力は、明らかにドラよりも強固だ。

 なら、地中は? 無理だ、掘り進んでる時間もねえ。ニートだって、ランドに置いてきてるし、もう逃げ場は…………

 

 

「ふ~……時空間忍法・時間外世界……」

 

 

 ………………はっ?

 

 

「えっ?」

 

 

 それは一瞬だった。

 突如聞こえてきた謎の声

 同時に、視界に入る世界全体に影が遮った。

 

「これは?」

 

 世界が変わった? いや、周りを見ると、ゴッドジラアや放たれた砲弾、そして戦場も全て時間が止まっている。

 この状況下で動いているのは、俺たちだけ。

 

「これは、空間魔法ですわ!」

「ええ、しかもこれは、聖騎士の一人であるオルバンド大臣が得意とする高度な魔法よ!」

 

 ああ、そうだ。この感覚は覚えがある。あの、キモ豚大臣の空間魔法だ。

 だが、一体どうして今……

 

 

「空間魔法……魔法なんて言い方は嫌いさ~……ワザワザ、『忍法』って言ってるさ~」

 

 

 ―――――――――――ッ!

 

「クソが、何もんだ!」

「何者でござる!」

 

 背後から俺たち以外の何者かの声が聞こえてきた。

 俺たちが覆わず振り返ると、そこにはこの絶体絶命の緊迫感をぶち壊すような存在が現れた。

 

「……はっ?」

「ええええっ!」

「ちょっ、はあ?」

 

 そこに居たのは、すげーユルイ顔した黄色い熊の着ぐるみの謎の人物。

 黄色い熊。そのキャラクターには心当たりがあった。

 明らかに、マッキーフレンドの一人だ。

 何でここに? つか、何で俺たちを助けた?

 すると、真っ先にその怪しい人物に声を上げたのは………

 

「あーーーーーっ! パーさんだッ! ねえ、パッパ、パーさんだよ!」

 

 ああ、知ってるよ、コスモス。そんな嬉しそうに目を輝かせなくても、あれがランドの超人気キャラクター、熊のパーさんだってのは知ってるよ。

 

「コスモスちゃんさ~、無事だったさ~?」

「うん! パーさん、あのね、えへへ、ねっ、見て! ほら、コスモスのパッパだよ♪」

「お~、知ってるさ~、よ~~く、知ってるさ~。よし、お利口なコスモスにはアメちゃんあげるさ~」

「やたーっ! アメちゃんアメちゃんだ~!」

 

 まるで幼稚園の先生のようにコスモスを手懐ける、パーさん。

 あ~、コスモスもそんなにハシャいじゃって……

 だが、コスモスがもらったアメに夢中になって嬉しそうに空間内を走り回っていると、パーさんはコスモスに聞こえないぐらいの声で俺たちに向かって………

 

「あ~~~~~疲れるさ~。ガキの面倒とか、任務とはいえほんと疲れるさ~」

 

 おい、パーさん! なんか、ものすごいダルそうな声で、あんた何を言ってんの? つか、子供の夢ぶち壊すぞ!

 しかし、そんなダルそうにするパーさんに、俺たちが言葉を失っていると、パーさんはゆっくりと俺たちに近づいてきた。

 すると………

 

 

「ヴェルトの大兄貴~~~~~~~~!」

 

 

 その後ろから、騒がしい奴が現れた。

 あっ……忘れてた……

 

「マーじゃないっすか!」

「おおおおお、ドラの兄貴~~~! 兄貴、なんで来てるんでい! 御主人様にダメって言われてたんじゃねーんですかい?」

 

 マー。あのドラの弟分のドリル車だ。つか、フツーに忘れてたよ。

 そういえば、気づけばランドでの戦いでもずっと姿見えてなかったけど、今までどこに?

 

「予定と大幅に狂っちまって、みんなもピンチだったじゃねえですかい! ですから、オラは状況を打破するために助っ人を呼びに行ったんでい!」

 

 予定が狂った? そうだ。当初の予定では、俺たちはラブ・アンド・ピースに紛れ込んでいる、クロニアが送り込んだスパイと落ち合う予定だった。

 しかし、イーサム、エロスヴィッチ、キロロの存在が予定を大幅に狂わせた。

 それならこいつが………

 

 

「ハチミツ食べたい」

 

 

 すると、パーさんは俺に向かって、そう言った。

 はっ?

 

「ハチミツ食べたい」

 

 食えば? 何で俺に……あっ!

 そういえば、クロニアのメッセージ……確か、スパイと合流した時の合言葉を言えって……

 

 

「ハチミツ食べたい」

 

 

 えっ? なに? この状況で合言葉言うのか? なんで? 

 

 

「ハ~チ~ミ~ツ~た~べ~た~い~さ~」

 

 

 それでも、しつこいぐらいに、俺に向かって言ってくるパーさん。

 仕方ねーから、もう、俺も言ってやることにした。

 

 

「ぐっ、メ、メ、メイプルシロップもあまり捨てたもんじゃ焼き。でも、どっちを食べるかはあなたのお好み焼き!」

 

 

 くそ、言ってやったぞ! 言ってやったぞ! これでいいのか? これで満足かよ畜生! つか、意外と恥ずかしいな!

 

「愚弟?」

「お、弟君、ど、どうしたの?」

「ヴェルトが乱心しましたわ!」

「ちょっと、ヴェルト君! どうしていきなり美奈みたいなことを?」

 

 いや、そんなお前らも引いた顔を見せんなよ。俺の意思じゃねえし!

 すると……

 

「ぷっ、ぐふ、ぐふ……」

「あっ?」

 

 パーさんは……

 

「あーっはっはっはっはっはっは! 本当に言ったさー、この人!」

「ブチ殺すぞこの野郎!」

 

 反射的に繰り出した俺の蹴り。それは、一瞬でパーさん目掛けて放たれていた。

 だが………

 

「ん?」

「ドロン。なんつって」

 

 蹴った感覚が……あれ?

 

「丸太?」

 

 パーさんに蹴り食らわしてやったと思った瞬間、パーさんがただの丸太の木に変わった。

 じゃあ、奴は………ッ!

 

「後ろかっ!」

「わおっ…………はは、やるさ~、凄い反応さー」

 

 空気の乱れを察知した瞬間、俺は振り返り、警棒を突き出していた。

 すると、そこにはパーさんが、突き出された警棒のギリギリのところで止まっていた。

 

「テメエ!」

「睨まないでほしいさー。ちょっとからかっただけさー。本当は、他にも合言葉はあったんだけど、あんたが可愛そうだと思って、こんなヌルイのにしてやったのさー」

 

 今のは、変わり身? なんか、随分と古典的だな。つうか、こいつは一体……

 

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