異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと 作:アニッキーブラッザー
「ちょっと待てよ! なんで俺が今、責められる! 少なくとも今、俺は何も間違ったことはしてねーじゃねえかよ! ここでこいつらを始末しねえと、まだまだ犠牲者出るだろうが! タイラーたちの死も、何のケジメもつけねえままに出来ねえだろうが!」
なのに、どれだけ自分に言い聞かせるように叫んでも、涙とともに訴える子供のトドメの一撃が、俺の心を抉った。
ダメだ……俺の心が……折れる……
「ヴェルトさん。確かにこの世は彼らを許さないでしょう。でも、今、この場にはあなたが居ます。ならば、何だってできるはずです。それでもあなたは、子供の見ている前で彼らにケジメをとらせますか?」
クソクソクソクソクソクソクソがァ!
「だから、なんでテメェに言われなくちゃいけねーんだよ! 俺はスーパーマンじゃねえんだぞ! できねえことだってあるさ! 俺が本当に何だって出来るってんなら……できるなら!」
「そうです! できるなら? もし、なんでもできるのなら、あなたはどうしたいのですか!」
分かってるんだよ。どうしようもないから俺も諦めたんだ。マッキーと同じように。
でも、本当に、もしそれでもどうにかできるなら……
「俺が本当になんだって出来るなら、殺したくねえに決まってるじゃねえかよ! 何とか救ってやりてーに決まってんだろうがッ! せっかく俺たちは色々と乗り越えられたんだ! マッキーのことも、娘のことも……こいつら家族をどうにかしてやりてーに決まってんだろうが!」
それが、感情任せであるものの、全てのしがらみを無視した俺の本心だった。
「あっ……………」
その時、俺の言葉を聞いたロアは……
「その言葉を聞きたかったんです」
ただ、微笑んでいた。
その笑顔が無性に腹立たしくて、煮え切らねえ自分がムカついて、だから俺は今の顔を見られないよう、そして震える唇で言葉を振り絞った。
「言えよ……マッキー……テメェも!」
「……ヴェルトくん……」
「クソォ! 俺は言ったんだよ! じゃあ、テメェも言えよ! テメエが言わねえと、俺だけってことになるじゃねえかよ!」
それを本当に言わせてしまったら、本当の意味で「後戻り」ができなくなる。
マッキーは俺たちを切って、マニーとピースを選んだ。
俺は、マッキーを諦めて、今の仲間や家族を選んだ。
どっちが大事なものなのかを、俺たちは見極めたんだ。
でも、もし両方選べるなら?
そんな選択を選んだら、抜け出せねえ迷路に陥ることは分かりきってる。
だけど、それでも、本当に選べるなら………
「ヴェルトくん……俺は……死んでも構わない。でも……ち……ちかッ……」
マッキーも、「その言葉」を口にしていいのかどうか迷っている。
いや、常識的に口に出していいものじゃない。「どの口が言う」と返されるに決まってる。
今更、ふざけるな! ありえない! できるはずがない!
でも、それでも俺は「可能なら救いたい」と言ったんだ。
なら、お前も言うべき言葉がある。だから、お前も言えと俺は言った……
「ヴェルトくん……マニーちゃんの心を救ってあげたい……死刑になるにしても、このまま死なせるのは、あまりにも……だから、お願い……力を貸してよ……」
もう、聞いちまった。マッキーの本心を。そして、願いを。
今までは理解してても口に出されてなかったから、まだ、シカトできた。
でも、今、聞いちまった。
「あ~~~~~~もうっ! めんどくさっ! くっそめんどくさ! なんでこんな面倒なことになってんだよ! ぶっ殺したほうが手っ取り早いってのによ!」
ふっざけんなよ!
ロアのせいだ!
どーしてくれんだよ、本当に。
「でも……仕方ねえな、クソ……」
でも、それでも俺はこいつに借りがある。
紅茶飲んでる時にも言ったが、こいつが居たからこそ俺も助かったことはかなりあった。
「んで、どー力を貸せばいんだよ、マッキー」
「ひはははは。一緒に考えてくれる……それだけでパナイ百人力だよ」
だから、これでもう本当にチャラだ。
そう考えると、なんだか少しだけスッキリした気分になった。
「どうして……ラブ……こいつら全員殺せば、私たちだけの世界になるのに……どうして今更そいつらに頼るの! どうして、私たちを捨てるの!」
この女をどーやって救えって言うんだよ。ユズリハみたいにケツペンペンでもするか?
畜生、ただの頭の悪い喧嘩ばかりの不良のままで居させてくれってのに…………
「ほんと、パナイどうしてなんだろうね……マニーちゃん……でも、俺……俺は……」
「ッ! 言い訳なんて聞きたくないよ! そうやって、ラブはまた私を裏切るんだ! 前世がどうとか、私を見ないんだ! 私を捨てるんだ! 私とピースちゃんを捨てるんだ! 捨てるんだッ!」
会話をはじめとする意思疎通の全てが困難と思われるこの女をどうするか?
行き当たりばったりで俺もマッキーも本心をさらけ出しちまったが、特に妙案はねえ。
「あ~、優男勇者。チャラ男気取り」
「はい?」
「ひはは、なに?」
ここに居るのは男三人。そしてその男は…………
「妻六人の俺。世界中の女からモテモテの勇者。前世でも現世でも女遊びに長けたチャラ男。女には不自由ない経験豊富な男たちの意見を搾り出し、どうにかこの女を救えないもんか?」
「ははは……残念ですが、僕は女性との交際経験がありません」
「ひははははは。俺、女の敵とかって良く言われるけどね。むしろヴェルトくんは……無理だよね……恋愛経験というより捕食された経験の方が多いだろうし……」
役に立たね~、俺たち。
つうか、ロアもロアだ。
人に反対するぐらいなら代替案を出せってのは世間の常識だろうが。なのに、何もねえと来てやがる。
というより、この悩んでいる状況で、何か新鮮さを感じているかのような表情だ。
まるで、俺がどうしようとしているのか、見定めようとしているかのようだ。
ほんっと、うっぜ~、こいつ。マジであとでぶん殴ろ。
でも、それでも…………
「は~、嫁にどんな言い訳しよう」
「あなたもそういう悩みをするんですね、ヴェルトさん」
「ヴェルトくんは、何げにそういう悩みパナイ多いからね」
それでも、何だろうな。
何か方法が見つかったわけじゃないのに、俺の敵として向かい合うわけでもなく、一人の女を救うために横に並ぶマッキー。
その状況は、さっきまでの陰鬱な空気と打って変わり、何だか何でもできるような気がした。
「うらぎりものォ! もういい、ラブもゴロズ! ゴロズ! 結局、マニーはひどりなんだっ!」
さて、救うどころか悪化しちまったよ。マジでどーすんだよ、このお姫様。