異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第55話 旅の序盤から手がかり見つけた

「なぁ、ヴェルト……そろそろ私も……もう子供ではないということを認識してほしいというかだな……とにかく私は――――」

 

 かつて惚れた女をはじめ、クラスメートたちを探しに行くための旅のまだ始まりの段階で、いきなりそれは困る。

 いや、正直、俺もウラに女としての成長は分かっているものの、それでも今はまだ家族で、妹分で、鮫島の娘。

 だから、その気持ちを言われちまっても、今の俺は―――

 

「クケケケケケ、どーしたよ。いつもシケた飯屋が少しだけ騒がしいじゃねえか」

 

 その時だった。

 

「オラオラどけよ、今からこの店は、俺たち『商業ギルド・シーシーフズ』の貸切だ」

「おいおい、女用意しとけって言っただろうが。攫っちまうぜ? くく、なーんてな。冗談だ冗談。とびきりの女なら別だけどな」

 

 下卑た笑を浮かべたガラの悪い男たちが十人程店の中に入ってきた。

 

「ちっ、奴らだ。兄ちゃん達、あんま関わらねえほうがいいぜ」

「ほ~、見るからに。つか、あれが船を貸し切った迷惑野郎共か」

「むぅ……いいところで……ええい、雰囲気が台無しだ。だが、ヴェルト、後でもう一度話の続きするからな!」

「……う……」

 

 雰囲気台無しということで、話は一時中断。ウラはイライラしたようにふくれっ面になるが、俺はある意味で少し助かった気分でホッとした。

 現れた連中に少しの感謝。

で、肝心のそいつらは、我が物顔でズカズカと店の中を歩き、乱暴に机や椅子を動かしたり、勝手にカウンターから酒を持ち出そうとしている。

 

「お、お客さん、あの、勝手に棚の酒を持ち出されては……」

「ああ? 何だてめえは、汚ねえ手で触ってんじゃねえよ、貧乏人!」

「ぎゃふっ!」

「おい、さっさとメシ持って来い!」

「ひ、ひいい、た、ただいま!」

 

 止めに入ろうとした店の店員まで蹴り飛ばされる始末。

 

「あーあ、やりたい放題。やっぱいるんだね、ああいうのは」

「王都には居なかったがな」

「クソが」

「あー、ほっとけよ、ファルガ。きりねーよ。所詮はチンピラだ」

 

 やりたい放題の連中に呆れた。あれは商売人と言うよりチンピラだ。

 どうやら、当初感じたとおり、途中まで乗せてと交渉する気にもなれねえな。

 

「ったくよー、ほんとシケてやがるぜ。こんな大した女もいねえ田舎町に三日だぜ」

「ああ。でも、いいじゃねえかよ。今日には積荷の移動も航海の準備も終わる。一週間後にはシロムに帰れる」

「ああ、それに今回は大仕事だったからな。今から楽しみだぜ」

「それもこれも、ジードの兄貴のおかげだぜ」

「ああ、ジードの兄貴が居りゃあ、海賊も盗賊も異種族も怖いものなんてねえ」

「ああああ、俺は早く帰って溜まったもん抜きてえよ。商品に手を出そうとしたらジードの兄貴に怒られるし」

「まあ、いいじゃねえか、一週間後にはシロムでヤリまくりだ。ひゃはははははは!」

 

 まだ、昼間だというのにいきなり宴会をはじめる男たち。

 ウラとファルガが明らかに不機嫌そうな顔で男たちを横目で見ているが、まさか妙な正義感に駆られねえだろうな?

 いや、その予想は正しかった。

 

「おとーさん、倉庫の整理終わったよ」

「私も手伝ったよ~」

 

 今の俺とタメか少し上ぐらいの若い女とその妹らしき子が店の扉を開けて入ってきた。

 

「おっ」

「へ~」

 

 その姿を見た途端、商業ギルドの男たちの目に止まり、品のない笑とヨダレが見えた。

 

「お、お前たち、入ってくるんじゃない!」

 

 父親である店の店主が慌てて叫ぶが、既に遅い。

 男たちはいきなり娘の手を掴んで、強引に自分たちの席に引き寄せた。

 

「なんだよ、まあまあな女が居るじゃねえかよ」

「きゃああああ! ちょっ、な、なにするんですか!」

「ひゅう、元気もあっていいね~、胸は、おっ、やわらけえ!」

「えっ、いやあああ、な、何を!」

「おらおら、せっかく金を払うんだ。酌でもしてくれよ。おっと、少しはサービスを。スカートは、ひゃはっ、じゃーま!」

「いや、破らないで、いや、いやあああ!」

 

 それはもう、強引で、何の迷いもなかった。

 男たちはいきなり娘の胸を触ったり、衣服を破いて身ぐるみを剥がそうとしている。

 平和なエルファーシア王国王都の生活が馴染みまくった俺には反応するのにかなり時間がかかった。

 何やってんだ? こいつら。

 

「や、やめてください! む、娘には手を出さないでください! お代は一切いりませんので、娘だけは!」

「お姉ちゃん! おねえちゃん!」

「うるせえ! ちょっと借りるだけだよ。別に命を取ろうなんて考えてねえよ」

 

 泣いて土下座する店主すら男たちは嘲笑う。 

 

「さーて、どーせだから全部脱いじゃいましょうね|」

「いやああああ、ぜったい、や、た、助けて!」

「あっ、俺一番な」

「ったく、じゃあ俺は二番ね」

 

 不快だ。

 不良なんて呼ばれた時代の俺が可愛く見えるぐらいだ。

 でも、だからこそ微妙に同情する。

 こいつら、ついてねーなーって。

 

「クソクズが」

 

 ほらほら、怒っちゃった。ファルガが。

 ここはさ、まだギリギリでエルファーシア王国の領土だろ?

 だからさ、今お前らが襲ってる女も当然、この国の国民なわけよ。

 普段は王座とかになんの興味もねえ放浪王子だけど、国に対する愛は本物なわけだから、こいつの前でんなことをすると……

 

「やめぬか、下郎が!」

 

 お前も反応すんのかよ! ウラだった。

 まあ、飲食店で育った娘として、見過ごせるわけがないのは分かっていた。

 あーあ、喧嘩か。

 

「飲食店の子は、汗水たらして働く父親の宝。それに手を出すからには、血まみれになる覚悟はあるのだろうな?」

 

 って、ウラ! それって俺がたまに言う殺し文句のパクリじゃねえかよ!

 

「ったく仕方ねえな。俺より喧嘩っぱやい奴らめ」

 

 仕方ねえから便乗してやることにした。

 と言っても、これぐらいの人数相手ならウラもファルガも一人で瞬殺なんだけどな。

 

「なんだ~、テメェら……誰に生意気な口きいてると思ってやがる!」

 

 うわ、ありきたりすぎる。

 なんの前触れもなく女に手を出すのには驚いたが、セリフはありきたりすぎる。

 

「くくく、どこのどいつか知らねえが、いい度胸だな」

「ほんとだよ。俺たちシーシーフズを知らねえとはな」

「まあ、帝国からも遠い辺境国家の旅人なんざそんなもんだろ」

「だな。この国で有名って言ったら、『聖騎士将軍』、『女王軍神』、『巨人殺し』、『緋色の竜殺し』、『金色の彗星』、の五人だけだ。あとは平和ボケしたカスの集まりってのが、この国だからよ」

 

 残念だったな。その五人のうちの一人がこのフードかぶってる奴なんだけど。

 てか、良かった。『リモコン』が出てこなくて。

 

「俺たちには、絶大な兄貴がついてるからよ~」

 

 ダメだな、こいつら。全然怖くねえ。

 多分、ウラとファルガじゃなく、俺でも楽勝だろうな。

 この指を軽く動かして全員ふわふわパニックしちまえば…………

 

「どうした? 何を揉めてやがる」

 

 その時、タイミングを見計らったかのように一人の男が店内に入ってきた。

 肩の袖なしの服を着た、スキンヘッドの大柄な男。腰元には鞘に収められた剣が携えられていた。

 

「ジードの兄貴!」

 

 どうやらこいつらの偉大な兄貴のようだ。

 こいつは、まあまあ。でも、多分俺でも勝てそうだ。

 やっぱ、普段からファルガとかウラを見てるとそうなんだろうな。

 

「くくく、揉め事ならちょっと俺にやらせてくれよ。一昨日の亜人の女剣士共が持っていた、このサムライソードとやらの試し切りをしたかったところだ」

 

 そう言って、ジードと呼ばれた男は腰から剣を抜いた。

 それは結構珍しいもんだったので、俺も少しだけ驚いた。

 

「サムライソード? おお……日本刀か。またマニアックな」

 

 そう、侍の代名詞とも言える刀だ。

 すると、俺が思わず口にした言葉に、ウラとファルガが訪ねてきた。

 

「おい、愚弟。ニホントーってなんだ?」

「うむ、なかなか美しい造形だが、私も見たのは初めてだな」

 

 えっ、マジで? そいつは驚いたな。

 

「はっ? お前ら、侍とか日本刀って知らねえの? 信じらんねー」

「だから、何だ、それは」

「侍ってのはな、昔日本に居た……あっ……」

 

 その時、俺は気づいてしまった。

 侍とか日本刀を知らない?

 いや、知ってるわけがねーだろ。

 だって、侍や日本刀があったのは、この世界じゃねえ。

 朝倉リューマの居た、前世の日本だ。

 じゃあ、何でこのスキンヘッドは、日本刀を…………

 

 

「ええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」

 

 

 気づいたら俺は叫んでいた。

 まさか、こんな旅の序盤の序盤で、こんなことになるとは思ってもいなかった。

 

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