異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと 作:アニッキーブラッザー
俺の言葉に目を見開き、そして重苦しい雰囲気の中でようやく口を開く。
「お若いの……何者じゃ?」
ようやく喋った声は、やけに掠れていて弱々しいものだった。
その小さい背中、疲れ切った声。お前はどれほど途方もないしんどい人生を送って来たんだ?
「何者……いや、その答えはもう出ているか」
「ああ?」
「ワシをその名で呼ぶ者は限られておる」
老人口調。それが、作りではないぐらい馴染んでいる。
こいつは間違いなく宮本だ。でも、既にバルナンドという亜人になっている。
だが、一つだけ違和感がある。
それは、こいつはあんまり驚いていないということだ。
「こうして会いに来てくれるのは、嬉しいことじゃ」
「おい、あんまり驚かねーんだな」
「驚いておる。だが、信じられない……というほどではない。なぜなら、ワシはあの修学旅行で死んだ者が、自分以外もこの世界で生まれ変わっていることは知っておったからの」
「なん……だと?」
知っていた? どういうことだ? 鮫島なんて、魔王のキャラ崩壊するぐらい泣いてたのに、こいつは知っていた? 何で?
その時、俺はハッとなった。
そうだよ。知ってる理由なんて一つしかない。
「お前、まさか……俺以外のクラスメートとも再会したのか?」
俺の問いかけに、宮本はゆっくりと頷いた。
「クラスメートとの再会は、君で三人目じゃ」
そう、俺以外の奴と、こいつは既に再会していたんだ。
だから、知っていたんだ。
あの事故で死んだ俺たちは、この世界に生まれ変わっていることを。
「さて、君の名前は?」
「朝倉リューマだよ」
「……ああ……朝倉くん………懐かしのう………って、えっ?」
やれやれ、もっと驚くかと思ったが、肩すかしだったな……と思ったら、急に宮本の顔つきが変わった。
「あん?」
「朝倉、くん? あの、やんちゃしてた?」
「やんちゃって随分だな、おい」
「ええええええええええええええええええ! 朝倉くんなの?」
「おま、驚くポイントはそこかよ!」
「いや、だって、えっ、うそじゃろ? 朝倉くんは死んどらんと思っておったから、君が会いに来るとはまったく予想しとらんかったわい!」
「悪かったな。死んだんだよ」
「あ、うん、その、す、ま、すまぬのう」
「おい、何でいきなり口べたになってるんだよ! テメエ、今はスゲエ奴になってんだろ!」
「う、その、じゃの、うむ、その、すまぬの。昔から君が苦手じゃったから、不意に昔を思い出しての」
落ち着いているかと思ったら、いきなりキャラ崩壊した。
宮本は急に椅子から立ち上がって俺に詰め寄ってきた。
閉じているか開いているかも分からなかった目も、今ではパッチリと開いていた。
「参謀? これは、どういうことですか? ムサシ、彼は?」
「いえ、ソルシ組長。拙者も何が何だか、……って、大ジジはヴェルト殿をご存じで! というか、大ジジがここまでハシャぐなんて、何年ぶりでござるか!」
「む~、ヴェルト! 私たちにも話せ! 一体どういうことなんだ!」
「愚弟。テメエは一体なんなんだ?」
全員驚いているが、俺は別の意味で驚いていた。
もっと違う再会を考えていたのに、何だよこのグダグダ感は。
まあ、宮本とはそこまで仲良くなかったから仕方ねーんだけど、微妙過ぎる。
どのぐらい微妙か?
それは………この後に起こったことが衝撃的すぎて、再会が霞んでしまうほどだ。
「ひぎゅうううううううううううううううううう!」
あまりにも唐突だった。広場に女の甲高い声が聞こえた。
俺たちが周りを見渡す。それは中央の巨大な天幕からだ。
「ひぎゅう、ら、らめれす~、こ、こわれ、ああん、ひぎゅう、もっど、もっとー!」
「もうらめええええ、いっじゃうの、いっじゃうのう~!」
「あああん、あん、あん! アンアンアンアンアンアンアンアン!」
「こ、きょんなのはじめでー! もう、どうなっでもいいの~!」
複数の女たちの、なんか絶頂寸前まで高ぶっているようなあえぎ声。
俺たちは開いた口がふさがらない。
そして、俺たちは見た。
巨大な天幕が激しく揺れているのを。
そして、
「「「アアアアアアア! イーサム様アアアアアアア!!」」」」
最後の雄叫びと共に、急に静まり返り、ギシギシ揺れていた天幕が収まった。
なんだ? いや、中で何があったのかは、何となく想像できるが、マジで何だ?
「ガーハッハッハッハッハッハッハ! これで捕虜になった亜人は全員癒してやったぞい!」
豪快な笑い声が中から聞こえた。
「うおおおおおい、ソルシはおるかー! これで全部かー!」
急に聞こえた豪快な声に俺たちがキョトンとする中で、ソルシだけは冷静に答えた。
「いいえ。先ほど、貴族の屋敷らしき地下室から、魚人族と犬人族の奴隷が八人ほど発見されました。皆、ひどく心を病んでおります」
「ぬあにいいい、これじゃから人間は許せぬ。今すぐワシの天幕に連れてこい! 心の傷を癒すには、トラウマ以上の愛で包み込んでやることが一番じゃ! 牡でも雌でもかまわん、ワシが抱いて愛を与えてやる!」
「いいんですか? これまでで既に三十人越えてますよ?」
「かまわん! ワシの愛は無限大じゃ! あっ! あと、今抱いてやった四人の娘ッ子は全員ワシの妻にするから、手続きしておくように! みんな、ワシがプロポーズしたらアッサリ頷いてくれた!」
「いいんですか? これで奥さんは何人目ですか?」
「なーに、たかが六百二十六人じゃ! その程度の人数でワシの愛が薄れることなどありえんのじゃ!」
何だ………この会話は………
「ん? くんくん。おーい、ソルシー、なんか近くから人間と魔族の匂いがするんじゃが、どういうことじゃ!」
し、しかも、何かスゲー!
「魔族? いや、今ここに、参謀の知り合いという人間が来ておりまして」
「ぬあにいい? バルの知り合いじゃと~? なら、ワシも挨拶くらいせねばなるまい!」
次の瞬間、天幕が勢いよく開けられた。
そして、出てきたのは俺の倍以上の巨体と鋼のような筋肉を搭載した亜人。
獅子のような立派な鬣を靡かせて、その顔面と肉体には無数の傷跡。
歳はかなりいっているが、衰えては見えない。
衰えを知らない屈強な老人。それが抱いた印象だった。
だが、それよりも気になるのは、天幕が開いた瞬間に漂った女と汗と生臭い匂い……ではなく、
「い、きゃ、きゃあああああああああ、ヴェ、ヴェルト!」
「あ~、よ、よしよし、怖かったな」
「ななななな、なんだ、アレは、なんだアレは! ううううう~ガクガクブルブル」
顔面を蒼白させたウラが思わず俺の後ろに隠れてしまうほど……
「ほほう。将来有望な娘と、ワシと同じ色男に、ワシ好みの生意気な目をした小僧じゃな」
仁王立ちしてデカイ声で挨拶してくるが、このジジイ………
「ワシがシンセン組の局長、イーサム・コンドゥじゃ!」
「服を着ろオオオオオオオオオ!」
「ん? おお、忘れておったわい。ガーハッハッハッハッハ!」
巨大な老亜人のスーパーフルヌードに俺たちは全部もってかれた。
しかも、ぶっとすぎるアレが直立の完全臨戦態勢状態だった。
「ヴェルト殿、気をつけるでござる。局長は、牡でも雌でも両方イケる御仁でござる」
ムサシ、そういう情報聞きたくなかった。怖すぎ。