異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第77話 ハンターギルド

 人類大陸には、『ハンターギルド』という組織が存在する。

 実は俺も詳しくは知らないが、ハンターのことを「永遠の冒険者」と呼ぶものも居れば、「取り柄のない奴らの何でも屋」と呼ぶ者も居る。

 その仕事は、怪物や賞金首の討伐や捕獲、遺跡や財宝の発掘や保護、未知なる土地への探査など、職種は様々だ。

 ハンターになるには特に試験などはなく、登録制で誰でもなれることから、ハンターの質も正直ピンからキリだ。

 職に困ったチンピラなども居れば、自由な探求に魅せられた本物の実力者も居る。

 人類大陸の国家に所属する領土内なら、どんな小さな村や里にでも、ハンター専用の換金所や仕事を斡旋する掲示板を兼ねた施設が備わっている。

 大きな都市や街になるにつれて、それが大きな酒場だったり、娯楽施設と併設されていることもある。

 俺たちが今いる『ヨウルミチ村』は人も少なく、景色は綺麗だが周りが山と森と小川に囲まれた不便な村。それゆえ、換金所は掘っ立て小屋のように小さいものだったが、少し様子が変だった。

 それは、小さな掘っ立て小屋の前に、武装した旅人風の男や女たちが列を作って並んでいたからだ。

 

「おいおい、すげー人だな」

「全員がカタギとは思えぬな。それに腕が立つ者もチラホラ居る。ハンターか?」

「ほほう、彼らがハンター。これまで人攫いの商業ギルドしか見たことなかったでござるが、なるほど。これがハンターというわけでござるな」

 

 のどかな村で人もそんなに居ないと思っていたのに、余所者がやけに多い。

 それにしても、巨大な大剣とか、弓とか、大斧とか、それっぽい武器をいっぱい担いで、こいつらどうしたんだ?

 

「クソが。どうやら新聞記事に飛び込んだらしいな」

「どういうことだよ、ファルガ」

「俺たちと同じだ。カラクリドラゴンの噂を聞きつけ、クソどもが飛んできたんだろ」

「えっ、マジで? あれって、今朝の朝刊だろ? 俺たちはたまたまこの村に来てたからいいものの」

「ふん、ハンターを侮るな、愚弟。新聞に載ってから動き出すのは、二流三流以前にクソ一般人のやることさ」

 

 なるほど。チンピラみたいな顔してる奴らもいるが、こいつらも一応はプロなんだな。

 確かに、新聞に載って一般人でも知ってしまうようなニュースを、一般人と同じタイミングで手に入れても仕方がねえ。

 お宝や犯罪者に対する仕事は情報とスピードが命。

 全員、どういうルートでかは知らないが、昨日のうちにカラクリドラゴンがこの近くにいるかもしれないという情報を手に入れて飛んできたわけか。

 

「おい、愚弟。とりあえずここで待ってろ。道具屋で必要になりそうなもんを買ってくる。順番が来たらハンター登録だけしておけ」

 

 そう言われて俺たち三人はハンター達の集まりの中にポツンと残されたわけだが、当然浮いている。

 てか、みんな二十代から三十代ぐらいか? 同世代は一人も居ねえ。

 なんか、緊張するな。

 

「おお? なんだ~? やけに、獣くせえ匂いと、うす汚い魔族の匂いがするな?」

「本当ね? ちょっとやだ、どこから?」

 

 急にハンターの人ごみがざわつきだした。

 慌ててウラは白い帽子を深く被り、ムサシは編笠を被って、獣や魔族の耳を隠そうとする。ってか、ムサシ、その編笠はいつから持ってた?

 だが、相手はプロ。誤魔化しは……というより、頭隠して尻隠さずなムサシの虎の尻尾のおかげですぐにバレた。

 

「おい、亜人がいるぞ!」

「本当だ。へえ、おい、坊主の奴隷か? ハンターの仕事で亜人を使うとか、分かってるじゃねえか」

「そうそう、こいつらの嗅覚は人間よりもすぐれてるし、運動能力は人間以上だ。おまけにいざとなったら囮や捨て駒に使えるしな」

 

 何か、当たり前のような顔で感心された。三十代ぐらいのおっさんたちだろうか?

 そこそこ鍛えられた肉体と、旅慣れていそうに着こなしているジャケットなどを見れば、そこそこのベテランということが分かる。

 ただ、唯一俺が「マジか?」と感じたのは、亜人に対してそういうことを言う奴らの目は腐ってると思ってたけど、特に陰りもない目でそんなことを言われた。

 だから、微妙に反応に戸惑ってしまった。

 

「あ~、あ~、……可愛いだろ? 俺のだからやらねーぞ?」

「と、殿ォ!」

 

 亜人が奴隷だと常識的に思ってる連中に怒っても仕方ねーし、俺はそう言うことにした。

 奴隷ではなく懐刀であると言いたげなものの、俺に可愛いと言われたために、怒っていいのか喜んでいいのか分からずに、ムサシはただ「う~ん、う~ん」と唸るだけだった。

 

「はっはっは、何だよ、坊主。その歳で亜人を『そういうこと』にも使ってるんじゃないだろうな?」

「ダメだぜ、男はそんな安易に童貞捨てちゃ。十代二十代のうちは真剣に惚れた女を追いかけて、三十代でも童貞だったら、そんときゃお金払って誰かにお願いしな」

「ところで、見ねーツラだが、お前さんの出身は? 新人か? それでもここに来てるってことは、例のドラゴンが目的か?」

 

 品のない話になりそうになって、ウラがさらっと俺の腰をつねるが、少し大人しくしていてくれ。メンドクセーから。

 

「あ~、まあ、ドラゴンが目的だな、一応」

「だよな、分かるぜー、男のロマン。だって、カラクリドラゴンを本当に捕獲できりゃ、死ぬまで使いきれね莫大な金になるって話だからよ」

「何? そんな高いのか? そんなの誰が買うんだよ。シロムのオークションだってしばらく無いだろうしよ」

「坊主、なんも知らねーんだな。カラクリドラゴンなんて、神族大陸のみにしか生息しないと言われている超希少種なんだから、当然だろ? 生息は確認されても捕獲はシロムの競売に流された一頭のみ。正に伝説のドラゴンだよ」

「ふ~ん」

「心配だな~、坊主。なんなら、おっちゃん達と組むか? 報酬は山分けしたって構わねえ。どうせ、捕獲できたら、金だけは腐る程余るからよ」

「いや、そういうのは俺たちの大将に聞かねーとな」

 

 なるほど、そりゃーハンターが群がるわけか。

 

「ちなみに、いくらぐらいになるんだ?」

「ん~、シロムでの最低落札価格は5,000万に設定する予定だったって話だ」

「はあああああああああああああ? マジかよ、桁のレベルが全然違ェ!」

 

 というか、あんまカネカネ俺も言う気はなかったが、それぐらいの額になるとやる気が出るよな。

 5,000万って、そんなもん使い道を考えるだけでも時間がかかる。

 お姫様だったウラですら卒倒する金額だ。てか、戦争している世界でそんな金をどっから用意してんだ?

 

「おお、お前はバウンティングハンターのライポーじゃねえか! 俺たちと組もうぜ!」

「お前、いいガタイしてんじゃねえか、どうだウチらと。ウチらのチームには探索魔法使いのサーチが居るんだぜ?」

「ちょっ、あそこの金髪の巨乳ビキニアーマーの二人組! 妖艶絶技コンビのクリとリスじゃねえか! 欲しい情報もハントも身体使って手に入れる二人組だ。く~、仲間に欲しいぜ」

 

 それに、よく見たら集まったハンター達はそれぞれバラバラに集まったようだが、何か色々とハンター同士で話し合って交渉しているように見える。

 確かに、一生かかっても使い切れない金が手に入るなら、山分けしても痛くないだろうし、むしろ捕獲の確率も上がる。

 

「おい、ヴェルト見ろ」

「どうやら他の者たちも徐々に仲間を集めているようでござるな」

 

 俺たちはどうするか? まあ、腕っ節なら正直問題はないだろう。

 ざっと見る限り、結構な腕前の奴らもチラホラ居るが、俺たち四人よりも劣るだろう。

 だが、探索とかそういう関連になると、その手の魔法は使えないからどうしたものか。

 

「おい、愚弟、登録は終わったか?」

「ん? いいや、まだだ。買い物は終わったのか? ファルガ」

「ああ。こんなクソ小さな村じゃ手に入るもんも限られるが、最低限のもんはな」

 

 巨大な布袋とカバンを担いで、買い出しから帰ってきたファルガの名前を何の気にもせずに俺は呼んだのだが、次の瞬間、ハンター達の表情がかたまり、それにつられて他の連中もファルガの姿を見た瞬間ザワつきはじめ、しまいには大声が上がった。

 

 

「「「「「ひ、緋色の竜殺し・ファルガ!」」」」」

 

 

 おお、ナイスザワザワ。

 

「おいおいおいおい、あれがあのファルガか!」

「やっぱ、ファルガまで参加すんのかよ」

「まあ、当然だよな」

「マジかよ。こうなったら、あいつと組んで………」

「バカ。ファルガは誰ともパーティーを組まないことで有名だぞ? 断られるに決まってんだろ?」

「お、おい、坊主、てか、お前はファルガの知り合いなのか?」

 

 ベテラン勢までがスゲエ驚いた顔をしてる。

 やっぱ、ファルガは有名なんだな。まあ、そもそも人類最強ハンターとか言われてるんだから当然か。

 

「へ~、あんたがあの有名なファルガなの~、本当にラッキ~」

「ねえ~、ファルガ様~、私たちを~、あなたの~、仲間に~、いれて~、ねえ、いれて~」

「そー、そー、いれていれて~、そしたら何でも挿れていいからさ~」

「私たちのコンビネーション~、すごいよ~、もうやみつきになるからさ~、ね~、いいでしょ~」

 

 速い。さっそく、さっきから実は視界でチラチラ気になっていたビキニアーマーの二人組がファルガにしなだれかかった。

 まあぶっちゃけ、今回のドラゴン捕まえるなら、ファルガと組んだほうが絶対に高確率だからな。

 だが、ファルガは顔色一切変えねえ。それどころが、まとわりつく二人の姉ちゃんの顔面を鷲掴みにした。

 

「失せろ、クソアバズレ共」

 

 うおおおおおおおお、お、男だあああああ。

 

「つっ、た、な、何すんのよ!」

「も~、痛いじゃない~。何よ、私たちを仲間に入れたら、すっごいのよ~」

 

 まあ、確かに仲間に入れたらすごそうだ。

 他のハンターたちもメチャクチャ羨ましそうに見ているからな。

 だが、ファルガはただ舌打ちして、俺たちの背中を蹴った。

 

「パーティーなら間に合ってる。俺の愚弟と、愚弟の愛人と、愚弟の子分だ」

「ま、待てファルガ! 愛人とは何だ! 勘違いされるだろうが! 愛人ではなく、正妻だ! せ・い・さ・い・だ!」

「ファルガ殿! こ、子分では、子分では安っぽいでござる! 拙者は殿の懐刀でござる!」

 

 ギャーギャー騒ぎ出すウラとムサシだが、騒いでいるのはハンターたちも同じだった。

 

「なっ、ファルガがパーティーを組むだと! そんな話、聞いたこともねえ!」

「ファルガの愚弟だと? そんな奴が、居るのかよ!」

「ちっ、弟? じゃあ、弟を堕とせばいいんじゃないの? 食っちゃお~」

「ふ~ん、歳下の童貞なんて初めて~。やば、燃えてきた~」

「おい、坊主! 頼むから、おっちゃんを仲間に入れてくれよ~!」

 

 ちょ、ちょ、何かスゲー俺にまで注目と群がりが! 

 

「ふ、ふざけるな! ヴェルトの童貞は誰にも渡さん!」

「ふにゃあああ! 拙者の殿に触るなでござるぅ!」

 

 おっさんたちがガチな目で俺に懇願するし、何かエロい姉ちゃんが俺の股間をまさぐってくるし、ウラとムサシが蹴散らすし、出発前からすげえ大騒ぎだ。

 こんなに騒がしくなるのは、恐らくこの村始まって以来のことかもしれない。

 

 

「へ~、それが噂の弟くんなのね、ファルガ」

 

 

 だが、その村の騒がしさも、あるたった一言で収まった。

 

 

「な……ッ!」

 

 

 若い女の声だった。振り返ったそこに立っていたのは、ある意味ビキニアーマーより異質な格好をした女が居た。

 なんか、朝倉リューマの時代にテレビで見たことあるぞ。

 古代ローマ人だかエジプトだかギリシャだかのお姫様が着てそうな服、トーガだっけ?

 すごい薄くて簡単に破けそうで体のラインが丸分かり。だけど、不思議とエロさは感じない。

 いや、それどころかどこか神々しさを感じる。

 

「こんにちは、弟くん。初めまして!」

「あっ、う、おう、ども」

 

 童顔の可愛らしい顔だが、多分歳は俺より少し上ぐらいだ。十代と二十代の境目、ファルガと同じぐらいか?

 ベージュ色のロングヘアーを頭の後ろで結わえている、思わず「お姉ちゃん」と言いそうになる不思議な雰囲気を醸し出している。

 

「おい、ファルガ、この女一体……」

 

 一体誰だと訪ねようとした瞬間、ファルガが舌打ちした。

 

「テメェは………『モンスターマスターのクレラン』」

「久しぶり、ファルガ。ここに居たら絶対に会えると思っていたわ。も~、今までどこに居たの?」

 

 モンスターマスター? クレラン? どっちも初めて聞いたな。

 つーか、ファルガにこんな美人な姉ちゃんの知り合いが居たとは思わなかった。

 しかも、あのファルガ相手に頬を膨らませて怒るよう仕草をする女がこの世に居るとは思わなかった。

 だが、普通なら「あれあれファルガさん、僕はこんな人知りませんよ~紹介してください~」とかって、茶化すんだが、そんな気分はしなかった。

 俺はこの女から言いようのない黒い何かを感じたからだ。

 

「ここ数年は……故郷に帰ってた」

「え! そうなの? だって、あなたは家族と喧嘩してるって……もう、私心配したんだからね!」

「ちっ、クソうざってえ」

「あっ、そんな汚い言葉を言っちゃいけません! でも、良かった。元気そう!」

 

 このニッコリとした美しく優しい微笑みから感じる、妙な違和感はなんだ?

 どこかで、似たような雰囲気を感じたことがある。

 

「そうだ、ファルガ。この五年……どう? 素敵な恋人でもできた」

 

 ちょっと不安そうに上目遣い。あら、可愛い………

 

「クソくだらねえ」

「ふふふ、もう、変わってないね、でも良かった。そんな人が居たら、ズタズタに引き裂いて肥溜めに捨てていたところだったもん」

 

 ………ん?

 

「あっ、それとね、さっきのクリとリスって人たち。あとで解体して脳みそと臓腑をドラゴンの餌にしておくから安心してね。あんな他の男の白濁液にまみれた便所女のくせに、ファルガにベタベタするんだもん。私、ちょっと嫉妬してるんだからね」

 

 あ~、思い出した。

 五年前の俺のトラウマ。

 変態ゆるふわ肉食系将軍・ギャンザと同じ、人間としてどこか大事な感覚が致命的なほどに欠けた女だ。

 もう、衝撃的すぎてウラもムサシも口を半開きで開けている。

 

 

 そして、俺は、この時、このメンツで今から狙われるドラゴンが気の毒で仕方がないと思った。

 

 

 

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