アンダーワールドの創造者 作:l.l.(pixivでも活動中)
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「お疲れ様です。主任」
重村ラボの主任にして、天才量子物理学者 茅場昌彦に結城明日人はそう声をかける。
「ん、お疲れ」
茅場は集中して作業していたが、作業をする手を一旦止め、明日人に律儀に返答する。
普段の彼なら、返答などしないだろう。しかし、VRMMORPG『
「もう少しで完成ですね、『SAO』」
「そうだな。君がモンスターデザインやステータス、マップデータを担当してくれたおかげでβテストを始め、製品版の開発が予定より半年早くできた。ありがとう」
茅場が素直な賞賛を送るが、明日人は「アンダーワールドの方で手一杯で主任たちより担当できてませんよ」と謙遜をする。
「謙遜も過ぎれば嫌味だぞ」
「いえ、謙遜というわけでは……」
「はは、冗談だよ。それに君が
「自己評価が低いというより主任たちの方が私を天才だと持ち上げているんですよ。それに僕は主任の方が天才だと思ってますよ」
「たった一人で一から仮想世界を作り上げた天才に天才と言われるとは光栄だね」
茅場が言った通り、明日人はたった一人で仮想世界『アンダーワールド』を作り上げた。彼がいなければ、『ソードアート・オンライン』の完成は最低でも半年後であっただろう。それほどまでに結城明日人という人物は天才であったのだ。
しかし、それと同時に結城明日人は
***
明日人が重村ラボから家へと戻り、自室に向かっていると廊下の反対側から双子の妹の結城明日奈が長兄 結城浩一郎の『ナーヴギア』を持ちながら、歩いてきた。
「あれ、あーちゃん帰ってたの? お帰り」
「ああ、ただいま。それとあーちゃん言うな。明日奈」
「えー。だって、あーちゃん可愛いもん」
ここで補足しておく。結城明日人は天才で自己評価の低い人物であるが、可愛いなどの本来ならば女性に用いられる形容詞を使われると口よりも先に手が出そうな人物になる。
「普通に殴るよ?」
日常茶飯事の兄妹の微笑ましい戯れだが流石にイラッときたので、本気で殴る気はないものの僕は明日奈に「殴るよ?」とほぼ無意味だが言っておく。
「あーちゃん、殴るよ?って言って、これまで私のこと殴ったことないじゃん」
「ぅ……てか、なんで『ナーヴギア』持ってんの?」
図星を突かれたような反応をするも明日人は先程から気になっていた疑問を明日奈に問う。
「なんでって、『
「ッ!」
そんな明日奈の何気ない答えに僕は声にこそ出さなかったが少し驚く。
『
できれば、明日奈だけは『
明日奈は僕の双子の妹だ。僕の片割れと言っても過言ではない存在。この
アンダーワールドの"クィネラ"と同じくらい絶対に失いたくないほど、愛しい存在。
「じゃ、私行くね。あ、お兄ちゃんやお母さんには内緒ね」
と、言い残し明日奈は自室へと戻って行った。
残された僕が感じたのは妹すらも自身の咎へと巻き込んでしまったという罪悪感だけであった。