バイトが忙しい也
「兄様。交流会の団体戦は私の代わりに悠仁に出場してもらうことは可能ですよね?」
「可能だけどどうして?」
交流会が始まる正午までの時間は、それぞれ作戦会議が行われている。東京校の作戦は基本的には変わらないだろう。変わるのは私が葵先輩を撃破することから、悠仁が葵先輩を足止めすることになるぐらいだろう。強くなったとは思うが、いきなり葵先輩を倒すことができるレベルには至っていないだろうからね。
「悠仁がどれぐらい強くなったのか見たいからです。あとは、悠仁を死なせないためです。」
「京都校の奴らが悠仁を殺しに来るって考えてるわけね。」
呪霊を放つのは京都校だ。だからやろうと思えば、二級以上の等級の呪霊を放つことができる。あとは生徒全員に悠仁襲わせるとかね。交流会のどさくさなら悠仁を暗殺しても事故だと偽ることは十分可能なのだ。
「だから、交流会には参加しませんが、近くで様子を見つつ悠仁が死にそうになるのであれば私が悠仁を守ります。」
「まぁ構わないよ。ただ、大丈夫だと思うよ。悠仁はもう簡単に殺されるほど弱くないからきっと出ていく必要はないと思うけどね。」
「そうなるのが一番いいんですけどね。」
私が出ないことが一番ではある。そもそも悠仁を殺しに来ないか、殺しに来たとしてもそれを退ける、もしくは時間を稼げればいい。でも保険は張っておきたい。葵先輩も混ざって悠仁を殺しに来たのなら私が出るしかなくなるだろうからね。
『まもなく正午です。出場プレイヤーは開始地点に至急集まってください。』
そろそろ開始時間か。じゃあ私も行こうか。
交流会が始まった。東京校は始まってすぐに散開するわけではなく、棘先輩以外はいったんはまとまっている。……ん?葵先輩がまっすぐ向かってきてるな。どうやら全員を同時に相手取るつもりだろう。
「いよぉーし!全員……いない!美悟はどこだ!」
あ、葵先輩に団体戦でないことになったの伝え忘れていた。まぁ何とかしてくれるでしょ。
「美悟は俺と変わった……っよ!」
悠仁は私がいないことに呆けた葵先輩の頭をつかみ膝蹴りを食らわせる。なかなかいいのが入ったとは思うが、この程度ではダメージにもならないだろう。
「散れ!」
真希先輩がそういうと、パンダ先輩と野薔薇。真希先輩と恵の二組に分かれて散開してゆく。やっぱり悠仁に時間稼ぎを任せて、その他はその間に目標の呪霊を祓いにいったのだろう。
「お返しだ1年。死ぬ気で守れ。」
葵先輩が悠仁を三級呪霊の上とガードの上から殴り飛ばす。木を数本なぎ倒して勢いが弱まる。まずいな、次の一撃を入れに行っている葵先輩に対し、衝撃でまだ防御状態に悠仁が入れていない。葵先輩がそんな状況を見逃すわけがなく、悠仁の頭に次々と蹴りを叩き込む。反応しなくなった悠仁にため息をつき、散開した東京校のメンバーを追おうとする。……死んでないよね?
「くっくっ……マジかオマエ。」
葵先輩は悠仁を仕留めきったと思ったのだろう。実際、私もあんな攻撃を受け続けたらやられてしまうだろう。そもそも喰らわないけど。
「人の頭バカスカ殴りやがって。これ以上バカになったらどうすんだよ!」
「心配するな。男の子はバカな位が丁度いいと高田ちゃんが言っていた。1年、名前は。」
「虎杖悠仁。」
「そうか、虎杖悠仁。オマエに一つ聞きたいことがある。どんな女が
それ今聞くこと?どうやったらこんな局面で女のタイプを聞くように成長する?葵先輩の師匠か親は相当いかれているな。
「女の
「気にするなただの品定めだ。」
「よく分かんねぇけど強いて言うなら……
よし、交流会が終わったらこいつを殺そう。こいつも女の敵だった。……ただ葵先輩と全く同じ女の趣味をしている。もしかしたら謎の共感を感じるかもしれない。実際葵先輩は天を仰いで……えっきったな。涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしている。
「俺たちは親友であり
「今名前聞いたのに!?」
うん。なんかそんな気はしていた。イカれた人が多い呪術師の中でも葵先輩は別格。他の呪術師と違うベクトルのイカれ具合をしている。めちゃくちゃ怖い。
そんなあほみたいな応酬の裏で京都校の学生が悠仁を取り囲む。当たれば命を刈り取れるであろう攻撃を次々と繰り出す京都校の面々。悠仁はぎりぎりで回避をし続けるが、等級の高いメカ丸先輩と憲紀先輩の攻撃はかわすことができないだろう。
もういいか。こいつらは悠仁を戦闘不能にしたいんじゃなくて確実に殺そうとしている。私が介入して終わりにしよう。
パン!とこの状況には似つかわしくない手を叩く音が耳に届いた。その音が鳴った瞬間、憲紀先輩と悠仁の位置が入れ替わっているのが視界に入る。
「おい。言ったよな。邪魔をすれば殺すと。」
呪力をフルに開放して憲紀先輩を殴りかかりながら言う。どうやら葵先輩は京都校の作戦に加担しておらず、親友と認めた悠仁を守る方針を取ったようだ。それなら大丈夫。あの二人なら京都校全員で襲い掛かっても返り討ちにできるだろうからね。
さあ。次の仕事だ。区画内に放たれた呪霊の等級を確認しよう。もしも一級以上の呪霊が放たれているのであれば、呪霊狩りに行っている棘先輩が危うい。準一級以下なら放置しよう。そのレベルなら棘先輩一人でも祓えるし、もしほかの人が遭遇してもツーマンセルだから協力すれば祓えるだろうしね。
ただ、バレちゃいけないから術式が使えない。この広い空間を術式なしでしらみつぶしに探すのは非常に面倒だ。……やっぱやらなくてもいいかな?
呪霊は準一級だったので大した問題ではなかった。位置関係的に棘先輩が一番最初に遭遇するだろうから、問題なく祓えるだろうしね。……たった今、問題を発見したけど。
「闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え。」
どこから侵入したかは分からないが目の前で帳を下ろされてしまった。敵の人数は二人。上裸にエプロンを着た変態な男と、額に縫い目がある
「
私一人では女の足止めはできたとしても、男にまで混ざってこられたら正直分からない。だから時間稼ぎに出る。
「それを話して私にメリットが「ハンガーラックを作りに来た」」
女のセリフを遮り、男が私を恍惚とした視線で見てくる。……気持ち悪い。
「……目的は言うつもりはないけど、君のお友達を助けに行かなくて大丈夫かい?」
「……?何を言って」
凄まじい音と揺れを感じ思わず振り返ると、帳内に存在する城がとんでもない量の木に飲み込まれかけているのが視界に入る。
あのレベルの攻撃を平気に繰り出すとは、特級呪霊もいるようだ。不味い、どうする。あのクラスの呪霊だと私ぐらいしか祓える奴がこの場にいない。だけどこの女も放置はできない。
…………こいつらが何を企んでるかは知らないが、悠仁たちが殺されたら私の敗北だ。だったら悠仁たちの救援に行くべきだろう。……術式を開放して向かう!
「行かせないよ。私の役割は君の足止めだからね。」
女を背にして術式を発動したので普通であれば一瞬で置き去りにできるが、加速しきる間に正面に回り込まれ止まらざるを得ない。
クッソ。やっぱりそうなるよな。だったら仕方がない。さっさとこいつを殺して悠仁達が殺される前に呪霊も祓わなくちゃいけない。
「おい女。私に殺される覚悟は出来てるんだろうな?」
「怖いね。君は私に勝つ気でいるのかい?」
イラつくな、焦るな、落ち着け。呪霊のほうには葵先輩と悠仁がいる。何故か分からないが、あの2人ならそんじょそこらの特級呪霊なら祓ってしまいそうな気がする。実際、葵先輩は特級呪霊を祓ったことがあり、悠仁も特級呪霊との交戦経験を持つ。
だから、私は私の戦いに集中するんだ。集中しないで勝てるほどこの女は弱くない。……以前宿儺に敗北をした時のことを思い出す。その時に誓ったはずだ、強くなると。私も最強になると。それなら、こんなところで負けるわけにはいかない。兄様ならこう言うだろう。
「……勝つさ。」
二人の戦いが今、始まる。
戦闘シーン。うまく書けるかしら。