五条悟の妹は最強に並びたい   作:タカオ山

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決心

 

 

 何もない平原に一人の少年がいる。その少年の目は透き通った青色をして、私と同じ白髪の少年。……昔の兄様?少年は何をするでもなくただ一人、ぼーっと空を眺めている。空は超高速で動き1秒で数回日が昇っては沈んでいき、少年はそれに伴って大きくなってゆく。

 

 少年が青年と呼べるような身長になり、あれは兄様であることを確信する。私のすぐ横を兄様と同じぐらいの身長の青年が通り過ぎ、兄様のもとへ行く。その青年は胡散臭い顔をしていて、前髪が特徴的だ。

 

 兄様と前髪の青年が楽しそうに談笑しており、自然とその周りには人が集まっていく。ほとんどが知らない人だけど、なんだか見覚えがあるような気がする人もいるけど思い出せない。他にも中学生ぐらいの子やメイドのような人も居て、みんながみんな笑顔だ。

 

あぁ……とっても楽しそうだ。

 

 そう思ったのも束の間、メイドが足元から消えていき、中学生も消える。次々と人が消えていき、兄様と前髪の青年だけが残る。

 

 悲しい。なぜか分からないけど、とても悲しい。私はとっくに今見ているこの景色が夢だということに気づいている。こんなに悲しい気持ちになるならもう見たくない。夢から覚めてと心から願っているバズなのに、どこがで最後まで見届けないといけない気もする。

 

 兄様と青年の様子が険悪で、何か言い争っている。青年がない様に背中を向け歩き出す。兄様はそんな背中に私が見たことのない掌印を結ぶが何もしない。いや、なにもできないのか。青年が消えると兄様は力無く腕を下ろし静かに空を見上げる。

 

 そうか。兄様は1人なんだ。何年も五条家の中に閉じ込められていたから少年期は1人だった。高専に入学したことで、友人や後輩ができて周りに人が集まるが、何らかの理由で消えていく。死んでしまった人もいるのだろうが、兄様が『最強』になりそれに並ぶことを諦めてしまったのかもしれない。

 

 同じ人間だけど隔絶した何か。そんな兄様に真正面から並ぼう、超えようと思う人間など誰もいない。1人で問題の解決を行える。行えてしまうから群れる必要もない。

 

 私も幼少期は1人だった。兄様は何百年も生まれてこなかった天才。術式が判明した段階で時期当主を確約され、家の者皆が甘やかした。五条家は兄様1人いれば良かったため、私のことなど放置。物心着くまで、生きていくための必要最低限のことしかされなかった。物心が着いてからは完全に放置。

 

 父、母の寵愛を受けられなかった私は兄様を憎んだ時期もあった。しかし、その憎んでいた兄様から愛されることで私は繋がりを得た。それがなければ今頃呪詛師をやっていたかもしれない。

 そこから、恵や真希先輩。パンダ先輩に棘先輩に憂太先輩。様々な人に出会い、私を1人の人間として見てくれた。

 

 この人達が私から離れていってしまったらどうだろう。きっと私は何もできなくなってしまうだろう。幼少期のような孤独はもう2度と経験したいものではない。

 兄様を1人にしてはいけない。1人のままにしていてはいつか取り返しのつかないことになる気がする。

 だから、強くなろう。兄様に置いていかれないぐらい。五条悟が本気を出せる条件で1人の時と言われなくなるぐらいまで強くってやる。そう決心し、夢の世界に兄様を1人残して意識を手放した。

 


 

 クンクン。心地よい香りがする。大きく包み込んでくれるような優しい香り。兄様の香りだぁ。

 

「ん。美悟起きた?今は動かないほうがいいよ。」

 

 ……ん?兄様の香り?それにこの目の前にあるのは兄様の背中……?兄様におんぶされている……!!

 あたりを見回すと、兄様の隣に恵が歩いていて、器の男は玉犬の背中に気絶しながら乗っている。。てことは、男がボロボロなのに対し兄様はそんな気配がない。兄様vs宿儺は兄様の勝ちということか。まあ兄様が負けるはずないんだけど。

 

「兄様。私、宿儺に対して何も出来ずに負けちゃいました。悔しいです。」

「そんなことはないよ。美悟の攻撃は宿儺に相当のダメージを与えていたよ。呪力を半分ほど消費させるぐらいにはね。宿儺に領域使わせなかったのは美悟のの功績だ。一年生がそんな偉業を成し遂げたんだからもっと自分を誇っていいんだよ。」

 

 兄様は終始優しい声音で私を慰める。泣きそうになり、思わず抱きしめている力が強くなってしまった。力が強くなり首が閉まった兄様はグエェって言っていた気がする。ごめんね。

 

「私。兄様ぐらい強くなるよ。兄様の隣で戦えるぐらい。」

「お?本当かい?だったらまずは油断しないようにしないといけない。宿儺に対し油断していたから美悟は負けちゃったわけだからね。」

 

 そう。私は油断していたのだ。私の攻撃は宿儺に対してもダメージが与えられていたらしい。あのとき、宿儺からの反撃はないと思って油断した結果だ。もし油断していなかったのなら、カウンターをもらわず攻撃を続けることができた可能性が高い。勝てる要素があったのに私はそれを投げ捨てていたのだ。

 

「お前は十分強いと思うぞ。俺なんて宿儺を相手にしたらダメージを与えることすらできずに死ぬわ。」

「恵……」

「俺もお前に負けない。強くなってやる。」

「いいねぇ。ところで二人ってできてんの?」

「「違います!!」」

 

 まったく兄様は。恵はあくまでも友人。私が好きになるとしたら兄様ぐらいだよ。そういえば……

 

「兄様。この男どうするんですか?」

「あぁ。起きたときに宿儺に戻ってなかったら高専に入学させるつもりだよ。」

 

 まぁ兄様ならそうするか。その辺に宿儺の器を放置するわけにもいかないし、かといって器なら宿儺じゃない自我があるということ。そんな人を殺すのは一般人を殺すのと同義だ。まあ上層部は死刑を言い渡すんだろうが。このクソカスどもがぁ!

 

「兄様。死なせないでくださいね。」

「恵にも言われたよ。」

 

 へぇ、恵も。ニヤニヤした顔で恵を見るとゴミを見るみたいな目で睨んでくる。たまに兄様に向ける目と同じだ。でも残念だったな恵。私にとって兄様と一緒にされることはご褒美なんだよガハハ。

 

「恵。なんだか楽しくなりそうだね。」

「……そうだな。」

 

 素直じゃないなぁ恵は。お前もだろとか言わないでね。泣いちゃうぞ。兄様ならどうせなんとかしてくれる。だから今は兄様の背中を堪能しようではないか。






 1話での乙骨の呼び方を憂太先輩に修正しました。悟と同じように下の名前で呼ぶことを失念していたぜ。
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