仕事の打ち合わせ中、パヴィアは小言を言うヴェルティに過去を想起し…という感じです。
パヴィアの昔の女捏造。
「パヴィア、仕事前の確認作業をするよ。いいね?」
「確認も何も……神秘学家を迫害する運動を主導する鶏野郎を絞めて、
店頭にならべりゃいいんだろう?」
俺の言葉にヴェルティは深いため息をついて、いつも被ってる帽子を傾けた。
「あのね……今回私が君に頼んだのは、“きな臭い”噂のある運動家の説得に、
戦闘能力が無いものを向かわせるのは余りに危険だからだ。
そして、危険性があると言っても飽くまで“噂”レベルでしか周囲に隙を見せない、
周到で用心深い、賢い対象が相手って事。
相手を舐めて切った張ったすればいいって仕事じゃないんだよ」
呆れた、という表情で小うるさいお袋がいればこういう奴を指すんだろうな、
って勢いでまくし立ててくる。
「んだよめんどくせぇ。噂があるなら問答無用で潰しちまえばいいじゃねえか」
俺としてはその方がシンプルで好みだ。
薄汚ねぇ悪党野郎を、薄汚ねぇ殺し屋があの世にデリバリーする。
普段はそーゆー解りやすい仕事をしてる。
それをなんでこんな面倒な内容で依頼を受けるようになっちまったんだったか。
小言をまくし立てるヴェルティを他所に、意識を過去に飛ばす。
「全ての人が平等で、救われていて、幸福にする。それが私の使命だ」
無理だ、と思った。
ヴェルティは、俺に依頼を出すのもそんな目的の為の一環だといった。
殺さず、奪わない、そんな必要が無い真っ当な仕事に俺を付ける。
それが回り回って俺の行く先の人間から不幸を取り除く。
俺を幸福にすることが、見知らぬ他人を幸福にする。
そんな夢物語を本気で言っているのがヴェルティだった。
俺の意識はさらに過去に飛ぶ。
妙な女だった。
『お腹空いたの?良かったらご飯食べさせてあげるけど……来る?』
寂しい女だった。
『なんであんたにご飯あげるのかって?一人で食べるディナーはディナーじゃないから、かな』
酷い、女だった。
『あんた、そのサングラス偽物だね。解ってる?そんなに大事にしてるのに?
……大事にしてるつもりはない、ね。そっか。あんた、自分が大切な物作っちゃいけない。
そう思ってるんだね』
人を見透かしたよう物言いをする女だった。
『あたしさぁ、こんなうらぶれた暮らしをしてるけど、夢を持って働いてるんだ。
いつか舞台女優の主演になってさ、皆からちやほやされんの
だって、寂しいからさ。そう、寂しいから──耐えられなくなったら殺してくれる?」
いつも天国を望んでる女だった。
そして意識は現在に戻る。
「だから私達はあくまで法に則った……聞いてるのかい、パヴィア」
疑惑のまなざしを向けてくるヴェルティに、知らん顔をして見せる。
それにさらに小言を加速させるのも、こいつを感じられるなら悪くないと思う。
俺が仕方なしに殺した相手にも哀しみを覚える、思いあがった小娘。
優しい女。
こいつが時折、ひどく疲れた瞳をしているのを知っている。
その度に“何を見たのか解らない”が、瞳に宿す覚悟を強くする。
天国を望んでるのに、それでも離れられないと地上(地獄)に張り付く馬鹿野郎。
そんな女たちにばかり惚れちまう俺も、度し難い馬鹿野郎だ。
「ちょっと、聞いてるの!?パヴィア」
「へいへい。全ては偉大なる主の御言葉のままに、それが望みだろ?なら俺はそうするだけだ」