アイを甘やかしたい   作:甘えん坊将軍

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拙作を読んで頂き誠にありがとうございます。


星野アイを救いたいだけのお話     作者:でぃあ 様
キミガマリア             作者:れいんいる 様
星の子たちにハッピーエンドを     作者:天凪 様
推しガイル              作者:TrueLight 様
天に輝く二ツ星            作者:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル 様

他にもここに書ききれないほどのたくさんの作品を生み出されました皆さまがた。
いつも楽しく拝見させて頂いております。

このハーメルンに投稿されている【推しの子】作品のかなりの数を拝見しています。
評価バー8以上の作品はほぼ全てに目を通しています。
文章をコピー&ペーストで丸パクリした事は無いと断言できますが、話の展開上どうしても似通ってしまうところがある事は否めません。
それはパクリではありません。リスペクトなのです。
拙作は皆様の作品に多大な影響を受けております。

「あ、これ〇〇で見た!パクリだ!」

と騒ぐのではなく。

「これ〇〇に似てる!こういうところ影響受けてるんだな」

と生暖かい目で見て頂ければ幸いです。


第1話

自分が死ぬのに、特に痛いとか苦しいと思うことなく死ねたのは不幸中の幸いだと言えたのだろうか。

なんだろうね、実に不思議な感覚。朝の微睡みの中のような、感覚に薄い膜のようなものを被せた様な。

 

ただ、ああこれ死んだな……。なんてぼんやりと考える余裕があった。

 

幸福だったか不幸だったかは死ぬときに決まる。とどこかで聞いたような気がする。

充実した人生とは言い難かったような気がする。不幸だったとは言わないが、幸福だったとも言えないような。

 

俺には母親というものが居なかった。

母と思っていた人は実は母ではなく、お金で雇われただけの人だった。

そうと知ったのは物心ついてから大分後のこと。ショックはショックだけど同時に納得もした。

本当の母というべき相手は、俺がまだ1歳か2歳くらいの頃に育児ノイローゼで家出して浮気からの離婚という流れで母親ではなくなった……らしい。

だけど母親だけを責められないというか。父はステレオタイプの昭和の男で、家事育児は女がやるもの。男は黙って稼いでくる。みたいなタイプで家事育児を殆ど手伝わなかったそうだ。そりゃ育児ノイローゼにもなるわ。浮気は擁護できないが。

母親が嫌いかと聞かれたら……どうだろう?

なにしろ一度も会った事がないから、そんな相手に向ける感情が分からない。結局死ぬまで会わず仕舞いだった。

 

父とはほとんど没交渉。仕事仕事で顔を会せることも少なく、一日の会話がないこともザラで。

たまーに会話しても「おかえり」「……ああ、ただいま」で終わる。

だから子供の頃は父親に愛されていないんだ。なんて思い込んでちょっとぐれていた時期がある。今となっては黒歴史だけど。

 

あれだな。エヴァのマダオみたいな人だった。

今なら分かるけど、本当はただ不器用だっただけで。愛し方が、接し方が分からなくて。

俺が大人になって、死に別れる時にようやく愛されていたんだと思える。

最後の言葉が「すまなかったな」って、マジでマダオみたいな事言ってるの。

 

そんなだからか、俺は昔から愛するということが良く分からない。

好きってことはわかる。でも愛って何?どういう感情が愛?何をすれば愛したことになる?

愛することが分からないから、知りたいと思った。

父の愛は……あんまり参考にならない。あれは世間一般で言う愛からは遠いだろうし。

愛されることと愛することは同じようでちょっと違う。うまく言葉に出来ないけど。

色んな女性と関係を持ったけど、愛ってなんなのかは結局死ぬまで分からないままだったな。それが心残りと言えば心残りか。

 

まぁ童貞のまま死ぬ訳ではないので。呪いの装備は外せたからまだマシな人生だったといえよう。

非モテどもざまぁ。人生から年齢=彼女いない歴という不名誉のまま除隊されることが無いよう草葉の陰からプークスしながら祈ってる。

 

なんかテンションがおかしい気もするが、たぶん脳内麻薬とかドバドバ出てるんだと思って大目に見てくれ。

 

 

 

そうして目覚めれば赤ん坊になっていた。うっそだろ。

いや、最初は状況が掴めなかったよ。

全く身動き取れないし。口から声が出てるのかさえ分からない。

目が悪いのか見えるもの全てボヤけてる。聞こえてくる音はボーと響く。

おまけに凄まじく眠い。起きてる時間より寝てる時間の方が圧倒的に長いんだ。

寝起きは頭がボーっとしていて頭が働くまでの時間がやたらと掛かる。

 

だから最初のころは九死に一生を得た。でも大けがで体が動かないのかも。なんて考えていた。

 

とはいえそんな状態でも少しずつだが状況は掴めてくる。

正直時間間隔が曖昧過ぎて赤ん坊になってからどれくらいの時間が過ぎたのか分からない。

でも少しだけワクワクしていたんだ。だって転生なんて本当にあるって思ってもなかったからさ。

 

「世の中糞だな」

 

どっかのキャベツじゃないけど、こうでも言わなきゃやってらんないね。

赤ん坊が溜息つきながら言うセリフじゃないけどさ。

ところで0歳児ってこんなに流暢に話せるのね。もうちょっと喃語交じりになるかと思ってたわ。声帯はどうなってるんだ。

 

どうやら今世の俺は捨て子スタートらしい。異世界転生では無かった事に安堵すればいいのか残念がればいいのか。

漏れ聞こえてくる話を総合すると衣服ではなくバスタオルに包まれて、段ボール詰めで施設の門の前に捨てられていたらしい。身元不明遺棄児とでも言えばいいのだろうか。

俺を世話してくれてたおばちゃんは施設の職員さん。どおりで複数人のおばちゃんが代わる代わるだったわけだ。

世話をしてくれているのは初老くらいのおばちゃんで、授乳ではなく哺乳瓶だったのはある種の救いか。

おむつ替えと風呂は死んだ魚の目になっていたのだが。おばちゃんだから尊厳(性癖)はセーフ。

施設の前に捨てられた分コインロッカーベイビーよりかはマシか。下手すると享年0歳だったわけだし。

 

施設のおばちゃんたちにお世話になってはいるが、こうなんていうか、THE仕事って感じだな。優しいんだけど、一歩引いている。

親は居なくても寂しくない~とか、温かい愛情を受けて~とか、そういうメロドラマは現実には存在しないのだろうか。

別に良いんだけどね。前世の俺はソロ充だし。

親もいない、愛されてもいないか。

今更親に甘える気にもならんし。俺の親は父一人だけだ。それでいい。

捨て子ってのは生きるのに苦労しそうだけど、しがらみがないんだと思えば気も楽だ。

 

そういえば俺の名前が決まった。前世の名前と違うから呼ばれてもいまいちピンとこないけど。

こういう身元不明の児童の場合市町村長が名づける決まりらしい。

とはいえ最終的な決定をその人がするってだけで、10人いる職員さん全員で苗字と名前の候補出し合って最終的に投票が多い名前になり、生年月日は俺が発見された日になるとのこと。へー。

 

 

ところで転生した訳だが一つ奇妙な点がある。

自分には西暦2023年までの記憶がある。死んで同じ地球に転生したのなら2023年以降のはずだ。

しかし目に入るカレンダーには1992となっている。幾らなんでもそんなに古いカレンダーを使用しているとも思いにくい。

ということはこれはタイムスリップ転生ということになるのだろうか?それとも並行世界とかか。

せっかく転生したのだから超常バトルとか体験してみたいなぁ。なんて現実逃避をしながらおむつを替えられていた。ふぁっきゅー。

 

 

 

俺がこの施設で過ごして9年の時が過ぎた。

正直語ることがあまりない。

 

職員さんたちは誕生日会などで祝ってくれたりはするがそれは仕事であり、一歩引いた立場だ。

それに職員さんたちは様々な理由で数年もすれば顔触れが変わる。

俺以外にこの養護施設で暮らしている子供たちとも深い関係とは言えない。

職員さんたちほど壁がある訳ではないし、年下の子供たちからは頼りにされて、年上の子供たちから手間の掛からない後輩として重宝されている。

我儘を言わない、手間の掛けない。率先して他の子の面倒を見る。

それでも大人が必要だと判断したら大人を頼ることも忘れない。

そうして施設内で良い子の立ち位置を維持しつつ、柔軟に立ち回っている。

傍目から見れば仲は良いと思うが、俺個人の意識に壁があるというか。

 

「正直言ってクッソ面倒くさい……」

 

中学生になると小さいが個室を与えられるが、年齢一桁の自分に一人部屋なんて贅沢なものはないためトイレの中で溜息交じりに愚痴っていた。さすがに便所飯はしたことがないぞ。言っておくが。

基本人格がソロ充なのだ。人間関係とか煩わしくて嫌いである。

別にコミュ症ではない。前世じゃ営業周りやってたし。コミュニケーション能力は営業には必須だ。

出来ないんじゃない。ただやりたくないだけだ。

しかし社会というのは人間が集まってできたもので、どこに行ってどんな仕事をしようと人間関係というのはついて回る。

煩わしくて嫌いではあるが、怠ればそれは回り回って自分に面倒事になって帰ってくる。

頑張っても怠けても面倒なんだ。

 

学校というのも言葉を濁さず率直な感想を言えば……わりぃ、やっぱつれぇわ……。

子供に交じって良い子を演じるのはストレスが溜まる。まずテンションに付いていけない。

学校で個室トイレを利用するとウ●コと囃し立てられ、赤やピンクを女色と呼び、女のいない世界に生きたいと嘯く。

女生徒と話すとそいつのこと好きなんだろーとか揶揄われる。

 

リアルコナン君とか、のーさんきゅー。

 

前世の自分がこの年齢だったころは拗らせたぼっちだったか。

ひねくれた態度で話し掛けられても無視したり突然キレ散らかしたり。

ガキだったなー。当たり前だけど。ただもうあんまり憶えていない。

しかし流石に大人になってまでぼっちはね。なけなしのプライド的に。

 

あと意外に勉強が難しい。

いや出来ない訳じゃない。特に勉強なんぞしなくても大体7,80点。ちゃんと授業聞いてれば満点は取れる。ちゃんと聞いてればな。

ただ今習ってる内容なんて将来社会に出ても絶対役に立たない。昆虫の節の名称とか社会でどう使うんだよって話で。使った記憶がないもん。

マジメな話良い子を演じるためだけに、テストで高得点を取るためだけの勉強、しかも小学生のってマジできつい。

 

あと内容じゃなくて常識?

例えば「記録」という漢字が教科書には「記ろく」と表記されてるのだ。読み難いったらありゃしない。なぜって「録」の字をまだ習ってないからだそうだ。記録と書いて読み仮名をルビ振ってくれよと常々思う。

ゆとり教育とか考えたやつタヒねばいいのに。あれ、ゆとり教育ってまだだっけ?

 

「転生したってメリットが全くないぞ畜生」

 

転生なんて超常現象を経験しながら、チートもなければ異能バトルなんかの心躍る展開など影も形もありゃしない。

現代日本に転生なんて罰ゲームなんじゃなかろうか。

赤子の頃は本当に辛かった。なまじ前世の記憶があるものだから非常に幼児らしくない幼児の出来上がりだ。職員の一人が「気味悪い」って呟いていたのが若干トラウマ。

参考にできる幼児がいればそれを真似て演技も出来たかも知れないが、生憎と居なかったしな。

4、5歳くらいになると先輩児童で予習していたから何とか大人し目の良い子という評価にまで持って行けた。俺を気味悪がってた職員も家庭の事情とやらで職場を離れていったので、当時の俺を知るものは今ではこの養護施設の園長くらい。

何故にこんな苦労を背負い込まねばならないのか。ストレスで円形脱毛症になりそうだわ。

何がしがらみがないだよ。しがらみだらけじゃないか。人間関係という名の。

前世じゃ経験したことが無い子供時代の人間関係がこんなにも大変だったとは。

 

 

「そろそろ出ないとなぁ……。ああ、行きたくねぇ」

 

新しい子が入園するって話で、朝から歓迎会の準備に駆り出された。

良い子の評価を維持するためにも率先して準備の手伝いをしていたが。

信頼されてると喜ぶべきなのか、体よく使われてると嘆くべきなのか。

重い足取りで食堂に向かう。とはいえ人前に出ると疲れた顔など噯にも出さないのはもはや刷り込まれた条件反射。パブロフの犬か俺は。

 

「えっと、星野アイです。よろしくお願いします」

 

元気良くハキハキとした発声で自己紹介をする少女。

傍から見れば歓迎会の主役として相応しい愛らしく可憐な少女に見えたことだろう。

だけど正直な話違和感の方が大きかった。だってそうだろ?ここは児童養護施設だぜ。

俺自身も捨て子だし、ネグレクトやら虐待やら、ここに居る子供は何かしらの事情持ち。言っちゃなんだがこんなところに来ること自体が厄ネタだ。

そんな厄ネタ満載の施設で元気よく、愛想よく、天真爛漫な子供って、場違いにもほどがある。

演技しているのが見え見えで。演技をするということは本性は別物だと言っているに等しいのだ。

俺自身が周囲を観察してそれに合わせて良い子を演じている。だから分かるんだ。

 

 

 

ところでなんでこの子のお目目は光ってるの?




この頃のオリ主はまだ前世の人格が強い。
性格の変化をうまく表現できてると良いのだけど……。
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