アイを甘やかしたい   作:甘えん坊将軍

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後日談 アクアの平和(?)な日常

 

 

 

 

とある昼下がり。

家族が揃ったリビングでの一幕。

 

「アクア。おなかへった?おっぱい飲む?」

 

そう言って何の躊躇いもなく、アクアの目の前でぺろんと胸部を露出される。

 

なぜそんな事をしたのかと問われたなら「アクアにおっぱいあげたかったから」と臆面もなく言うだろうが、アクアにとっては堪ったものじゃない。

 

「~~~っ!」

「あ、アクア暴れないで!」

 

真っ赤になって声にならない声を上げて。

筆舌に尽くし難い必死さでブンブンブンと上下左右に頭を振って身を捩り逃れようとするのも至極当然の反応だろう。

 

「あっぶな……」

「よかった……アクア、ケガしてない?」

 

取り落としかけたアクアをあわやという所で駆け付け支えられて事無きを得た。

 

「一体どうしたんだ?アクアがこんなに暴れるなんて」

「アクアにおっぱい飲む?って聞いたら、いきなり暴れ出しちゃって」

「……それは暴れる」

 

だよねだよね!父さんもっと言ってやって!

そう言いたいところだが、突然の事で心臓が破裂しそうなくらいに早鐘を打つアクアは視線で訴えるに留まる。

 

「アクアは……哺乳瓶の方がいいんじゃないかな」

「でもルビーは喜んで飲んでくれるよ?」

「ああ……それは……まぁ」

 

ルビーは女の子だからいいんだ。それに前世は12歳。まだまだ子供の範疇だろう。

でも僕は男だから。それも元が成人男性なんだから。いくら何でも授乳は勘弁してほしい。越えてはならない一線を越えてしまう。

 

ただ擁護するならアクアとアイの認識の違いだろう。

そもそもアイはアクアとルビーが転生者である事を最初から知っている。

知っていて、それでも逢いたいと二人を身籠ることを決意した。

アクアにとっては重大な告白。

自分の正体がもとは成人男性であることを明かしたのだが、アイにとってそれは今更の話だ。

7年も前にとっくに受け入れた事でしかない。

 

アイにとってアクアもルビーも自分がお腹を痛めて産んだ子供。

二人をお腹に宿した10カ月の時間がアイを女性から母親へと成長させていた。

それゆえに前世の事はアイがアクアを忌避する理由にはならない。

 

「それにヒカル君が買ってきた子育ての本にも親子のコミュニケーションて書いてあったよ」

 

今回の事も特に深い理由などない。

少しばかり手慰みに開いた本の、たまたま開いたページにそう書いてあったから。

「そう言えばアクアにおっぱいあげたこと無いな」と思い、アクアと親子のコミュニケーションをしたかった。ただそれだけの事。

 

「確かにそう書いてあったけど……だけどアクアは……」

 

父さん何とかして!父さんだけが頼りなんだ!

 

「……だめなの?」

「「うっ!」」

 

そんな願いも、僅かに瞳を潤わせて、悲しげな表情を浮かべられては。

まるで悪い事をしてしまっているかのような罪悪感に取って代わる。

 

そ、そんな悲しそうな顔をされても……。

母さんを悲しませるのは……。さりとて一線を越えるのは流石に。

そんな内心の葛藤をよそに。

 

「……すまないアクア。恥を忍んでくれ」

「ちょ!?父さん!」

「大丈夫。アクアは赤ちゃんなんだから」

 

待って父さん無理矢理はやめてアーッ!

 

……堪能してしまった。

あったかくてやわらかくてあんしんしてしまう。

……開いてはいけない扉を開いてしまった気がする。

 

きっとこの時の僕はおかしくなっていたんだろう。

死なば諸共。そんな言葉が浮かんだ。

 

「……母さん、父さんもおっぱい飲んでみたいんだって」

「え゛っ!?あ、アクア?」

「ヒカル君もおっぱい飲む?」

「いや……それは、子供たちのご飯だから。遠慮しておくよ」

 

それはもはやただのプレイじゃないのか。

そう思ったが、止まれない。

 

「何を言ってるんだい父さん。母さんを見てごらんよ」

「じー」

「うっ……ぐ……分かった……」

 

期待するような母さんの視線を受けて。

歯を食いしばり何かを堪えるように絞り出した父さんの姿に奇妙な喜悦を感じてしまう。

 

 

 

茜色に染まる空を見上げながら、父さんと二人でベランダで膝を抱えて。

 

「……アクア。すまなかった」

「……分かってくれたらいいよ」

 

死線を乗り越えた男たちの絆は深まった。深まった……でいいのかな。

ルビーはそんな男たちに呆れた視線を向けていた。

 

「♪」

 

まぁ母さんは嬉しそうだったから。これで良かったのだろう。たぶん。きっと。めいびー。

 

 

 

 

 

 

転生者の3大試練。おむつ替え、授乳に続く最後の試練。それは風呂。

 

「アクアー!ルビー!お風呂入ろー♡」

「待ってましたァァー」

 

お風呂グッズを片手に持った母さんに誘われて。

うおおーーと気炎を上げるルビーが、実に羨ましい。

いっそここで割り切ってたら楽なのかもしれないが。

 

「ぼ、僕は父さんと入るから」

「えー。またー?アクアもママと一緒に入ろうよー」

 

ねーねー。と可愛らしくおねだりをする母さんの姿に激しく心を揺さぶられるものの。

なけなしの理性を総動員して、これ以上黒歴史を増やしてなるものかと必死に抵抗する。

 

「むー……。あ、そうだ!」

 

いいこと思い付いた!と駆け出していくアイ。

 

「ヒカル君も一緒に入ろー」

 

いや、父さんなら。あの日のベランダでの誓いがある。きっと断ってくれるはず!

 

「そうだね。たまには家族皆でお風呂ってのもいいか」

 

だ、だにぃ!?

またか。またなのか。裏切ったな!僕の気持ちを裏切ったな!父さぁん!

 

「まぁ待てアクア。ちゃんと考えてるから」

 

なにをだよぉ……。えぐえぐと泣きじゃくるアクア。

そんなアクアをヒカルもアイもルビーも「可愛い」と暖かい目をして見ていた。

順調に黒歴史を増やしているようである。

 

「アクア。熱くないか?」

「……へいき」

「いい加減機嫌直してくれよ」

 

準備があるから先に入ってて。と父さんに連れられ風呂場へ。

ぬるめのお湯を掛けられてベビーソープで丁寧に洗われる。

 

「……早く一人で入れるようになりたい」

 

まだまだちっちゃな手の平はスポンジを持つのさえ難しい。ましてや自分で洗うなどなおさら。

ざばぁとお湯を掛けられて泡を流した後、沐浴布を巻かれてベビーチェアに。

 

「はい。おしまい。

 少しの間なんだから。もうちょっとだけアイの我儘に付き合ってあげて」

 

二人が生まれてくるの、毎日本当に楽しみにしてたんだよ。

つわりで苦しい時にも弱音を吐かないでさ。と。

 

「分かってるけど……」

 

まだ雨宮吾郎であった頃に母さんから子供が生まれてきたら、あんな事をしたい。こんな事をしたい。と幾度となく聞かされた。

だからこそ、そんな二人には普通の子供を産ませてあげたかったと後ろめたかった。

転生者である事を明かしてもなお変わらぬ愛情を注いでくれる二人にアクアは申し訳なくも嬉しく思う。

 

この風呂場を見ただけでも分かる。

広めの洗い場にはベビーチェアを用意されてて、他にも赤ちゃんグッズが沢山ある。

湯温計。沐浴布。ガーゼにタオル。ベビーソープにスキンケア用品。

 

風呂場だけじゃない。リビングには子育ての本がずらっと並び、生活の中心に僕らがいる。

本当に僕らを大切にしてくれているのが伝わってくる。

 

「お待たせー」

 

ガラっと開いた扉から、アクアはさっと目を逸らす。

だけど、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

 

「大丈夫だって。ちゃんと見てみなよ」

「あ……なんだ。水着着てるのか」

 

ホッと一安心。だけど少しだけ残念なような複雑な心境。

白のビキニ姿の母さんはどこかで見覚えがある。何かの週刊誌の表紙を飾った時のものじゃなかったか。

普段は全く読まない漫画雑誌だったが、その号だけは購入した記憶がある。……5冊ほど。観賞用、保存用、布教用はドルオタの嗜みである。

 

「あれー。もう洗い終わっちゃったの。ママも洗ってあげたかったのに……」

 

本当に残念そうな声にチクチクと罪悪感が刺激される。

 

「ちぇー。しょうがないか。また今度だね」

 

勘弁して。

 

「それじゃルビーを洗ってあげちゃおう」

「ママァ……」

 

父さんに頭を、母さんに体を洗われて。ハァハァと荒い息遣い。

 

「はふぅ……」

 

一頻り洗われて、恍惚としているルビー。だからそれは一歳児の表情じゃないぞ。

欲望に忠実と言うか。この子は本当にどうしてこうなったんだろうか。

転生者である事を明かしてから……いや、明かす前とあんまり変わらないか。

むしろさりなちゃんの頃からこうだった様な気もする。思い出が美化され過ぎていたんだろうか。

 

「……ねぇお兄ちゃん。ママの髪を洗うパパの手付き、なんか手慣れてない?」

「ああ。うん。ソウダネ」

 

考えないようにしていたのに。なんで言っちゃうかな……。

手慣れているというか、なにも言わずに父さんが洗い出した辺りもう習慣付いているんだろう。

いちゃいちゃには慣れてきたけど、これはえちえちだよ。また別の意味で破壊力が高い。

脳が、脳が破壊される。

 

「♪」

 

母さんの鼻歌をBGMに早く終わってと切に願うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イェイ☆」

 

「イェーイ!ママステキー!」

「イェーイ!サイッコー!」

 

歌とダンスのノリに合わせて魂と本能の導くままにサイリウムを振るう。

今日も我がオタ芸に陰り無し。

 

僕とルビーの為だけの復活ライブ!これでテンション上がらないアイ推しが居ようか?!いや、ない(反語)

 

ライブスタジオの一室に、現役時代のステージ衣装を身に纏う。観客は僕とルビーの二人きり。

小さなステージだけど、そんな事は関係ない。やっぱりアイは最高のアイドルなのだ。

 

切っ掛けはルビーの「ママのライブ、生で見たかったな……」との一言。

10年も前に亡くなったさりなちゃんは生ライブを見たのは1度きり。ルビーとして転生した時には母さんはすでにアイドルを卒業していた。

もうあの輝く姿を生で見れないのかとの嘆きの声に、父さんが骨折りしてくれたのが今日のステージ。

 

『俺も生で見たかった!』と雨宮吾郎が滂沱の涙を流していたけど、無視無視。

僕らの為だけのライブなんだ。見せてやるだけありがたいと思え。金払ってでも見たいというやつは大勢いるぞ。

 

「アクア☆」

 

パチンと可愛くウィンク。

 

「ルビ~☆」

 

Chuと投げキッス。

 

ファンサービスに僕らのテンションはギガギガだ!

 

「……二人とも、父さんのサイリウムも振ってくれてもいいんだよ?」

 

「「あとでね!」」

 

見向きもせずにルビーと二人でそう言うと父さんが隅っこの方で小さくなってたけど、すまない父さん。ドルオタの本能には抗えないんだ。

僕らは時間を忘れてライブを楽しんだ。

 

 

 

後日、ノリノリでオタ芸をする僕ら双子の姿がSNSで話題を呼んだ。

トレンド上位に『サイリウムベイビーズ』が。

これ投稿したのって父さんだよね。

 

父さんは「お約束だから」と言っていたが、なんのお約束なんだろう?

 

 

 

 

 







もう一作、別の作品を書きたいなぁと思ってはいるのですが、まだまだ原作の情報が不足しているためなんとも書きづらい。
せめてDVDの内容とカミキの詳細を知りたい。映画編終わってから書いた方が……と思う今日この頃。

それまではこの作品でアイ幸成分(あいしあわせいぶんと読む)を自己補給したい。
たぶん原作でアイハードがある度に書きたくなる。なんで推しの子世界はこんなにアイに厳しいの?

ざっくり時系列。
アイ20歳。誕生日にドーム公演
アイ21歳。アイドル卒業。同年結婚&妊娠公表。
アイ22歳。アクルビ出産。

のつもりで、原作から6年遅れで誕生。
アクルビ16歳時、かな・あかね23歳。MEMちょさんじゅういっさい。

今後の展開どうすんべ……。元々ドームで終わる予定だったから、何も考えてないんよ。
かなMEMはともかく、あかねの自殺騒動はオリ主に頑張ってもらうしか。10歳児のアクアじゃ関わる理由が無さ過ぎる。

いっその事そこまで書かずに幼少期エピソードとか授業参観ネタとか短編でお茶を濁し続けるか。
それなら失踪しても完結してるって言い張れるし(メソラシ)
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