アイを甘やかしたい   作:甘えん坊将軍

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今話はルビーとかなに焦点を当てた話で、次はアクアとかなに焦点を当てた話。
実はもう出来てるんですけど出来立てほやほやだから、そっちはまだ推敲が終わってないんで。
もう1日お待ちください。
何度推敲しても誤字が無くならない不思議。
毎度誤字報告ありがとうございます。






後日談 ケンカするほど仲が良い

 

 

 

 

「えと、有馬かなです。よろしくね」

 

「という訳で、二人とも。今日からうち(苺プロ)に所属することになった有馬かなちゃんだよ」

「何がという訳なの、お父さん。いきなりすぎる上になんの説明にもなってないよ」

「父さんてたま~にこういう所あるよね」

「ちょっとしたお茶目に子供たちが辛辣なんだけど……」

 

コントは兎も角。説明を省略できるのはフィクションの中だけの話。

とは言え説明するほどのことでもなく、かなの所属していた子役事務所との契約が満了となり、元々スカウトを受けていた苺プロへと身を寄せることとなった。それをサプライズと称して突然紹介してビックリさせようとしたら子供たちが残念でもなく当然な反応を返したというだけの話なのだが。

 

 

無事に有馬かなを苺プロへ迎えた壱護は己の懸念が杞憂に終わった事に胸を撫で下ろした。

しかし目に見える大きな出来事がないからこそ、壱護は気付いていなかった。

 

本来であればこの時期の有馬かなへの仕事というのはほぼ存在しない。既にお払い箱に近い扱いであり、そのまま子役事務所を去り、以後はフリーとなる。筈であった。

 

大手の苺プロから勧誘されたことを知った子役事務所は有馬かなへの期待を再燃させた。

元々有馬かなは一躍脚光を浴び一世を風靡した。その際の有馬かなの興行収入は軽く数億はくだらない。

所属する子役事務所にも当然だが相応の収益が舞い込んだことは想像に難くない。その夢をもう一度。と期待を膨らませた。

 

けれど当然の事だが結果は芳しくはない。

かなを迎えるのは興味のないものを素通りする冷めた視線。

子役と呼ぶには(とう)が立つ年齢に加え、世間的にも業界的にも有馬かなはすでに旬が過ぎて久しい。

碌なプロモーションもなく売り出し、営業を掛けたところで期待する成果が得られるはずもない。

 

大々的に投資したなら結果は変わっていた可能性もあった。

なまじピーマン体操が大ヒットしたせいで2匹目のどじょうを狙って全員が大火傷を負った事が尾を引いている。

その際の赤字は目を覆いたくなるほどで。子役事務所が有馬かなに対して投資する事には及び腰になるのも無理もない事だった。

そうこうしている内に刻一刻と契約満了の期限は迫る。

 

結果として子役事務所は大きな傷を負う事はなく。しかし同時に成果を手にすることなく。有馬かなの契約満了の期限を迎えてしまう。

 

 

ただただ徒労に終わる。失望とも落胆とも違う。期待の顔は徐々に「ほら、やっぱり」と白けた表情へと変わっていく。

期待に応えられなかった。それは有馬かなに小さくない痼りを残していた。

その痼りが後に彼女の選択に大きな影響を及ぼすのだが、今はまだ知る由もない。

 

 

「えっと、紹介しておくね。この子たちは」

「アクア君とルビーちゃんですよね。最近よく見ますし、これからお世話になる事務所の子ですから。下調べはしてあります」

 

あれ……。こんな子だったっけ?もっと傍若無人というか、割と明け透けにモノを言う子だったような……。と、そんな感想を抱く。

 

かなの対応は堅い。

なにしろヒカルはレギュラー番組を幾つも持つ苺プロの筆頭タレント。かなは売れるべくして売れた「本物」だと感じている。キャスティング権を持つ業界人の覚えも良い。

スカウトを受けての事とはいえ、不興を買ってしまえば苺プロどころか本当にこの業界に居られなくなってしまう事だってあり得る。故に失礼があってはいけないと盛大に猫を被っている。

 

ヒカルはかなの本性を知っているし、多少の事で目くじらを立てるつもりなどないので空回りでしかないのだが。

 

 

「かなちゃんは二人より一つ前の世代に天才子役として活躍していた、いわば二人の先輩だね」

 

「あ~……、どこかで見た事ある……ような?」

「あれ?お兄ちゃん、知らないの?ほらアレだよ。ピーマン体操の子」

「ああ、それでか。どこかで見た事あると思った」

「……んぐっ」

 

ルビーの一言にかな本人にとっては忘れ去りたい黒歴史を掘り起こされて固まってしまう。

 

「あ、思い出した。父さんが主演の映画にも出てた子だ。もう何年も前のやつで、ちっちゃい時のだけど」

「へー。お父さんと共演してたんだ。でもそんなシーンの映画有った?」

「まぁぶっちゃけちょい役だったよね。僕もさっきまで忘れてた」

 

忘れてたという追撃の言葉のナイフがかなの胸にグサっと刺さる。

元よりその映画は父が主演だったから見ただけで映画の内容そのものさえうろ覚え。

有馬かなが活躍したのは7年前。最近で目にすることが無い故に、この反応もむべなるかなとしか言いようが無かった。

 

「なんてタイトルの映画?」

「確か……桜が散るころにだったかな」

 

「……あー、だから覚えてないんだ。あの映画途中で見るの止めちゃった。だってお父さんがお母さん以外の人ヒロインにするのって超複雑だし」

 

芸歴が長くなればピンでの仕事も多く、逆にアイがヒカル以外の役者とラブロマンスを演じた事もある。こればかりは仕方ない事であり、ヒカルもアイもお互いに納得している。それを割り切るのも仕事の内だと。

両親の仲睦まじい光景は目に毒なのだが、ルビーにとってある意味で理想的な夫婦の姿だと言えた。

そこにお芝居とは言え違う女が割り込むのは、理解はしても感情が納得できていないようで。ルビーの目からハイライトが消える。

 

「……あの、ルビー。あれ、お仕事だからね」

「……分かってるけど、やだ」

 

ぶっすー。と分かり易く頬を膨らませ、私不機嫌ですアピール。

こういう時どうすればいいのだろうか。とヒカルは頭を悩ませる。

 

「……父さん、ルビーは後で僕が宥めとくから。それよりも」

「ああ、そうだね。ごめんね、かなちゃん。身内で話し込んじゃって」

「あ、いえ、気にしなくて構いません」

 

「……ええっと、どこまで聞いてるかな?」

「あ、はい。この子たちの指導も含めてのスカウトだというのは伺ってます」

「うん。そう。とは言ってもそんなに固く考えなくても大丈夫。芸能界の先輩として後輩の面倒を見るくらいつもりで良いから。

 それにかなちゃんにとってもメリットのある話でね。しばらくはかなちゃんはこの子達のバーターという形で売り出しを掛けることになる。この子達が売れていけば、その分かなちゃんの出演の機会も増えるから」

 

「この子達のバーター……ですか」

「まぁ思う所はあるかもしれないけどね。でも実績を積んでいけば営業もやり易くなるから」

「……いいえ。問題ありません」

 

かなとて思う所はある。本音を言えば一人の役者として求められたかった。

けれど飲み込む。気に食わない事も全部飲み込んで、この世界にしがみ付いてきた。

 

一人、また一人と自分から離れていき、母親もマネージャーだった人も、かなを一人ほったらかしにした。

 

何度も引退という文字が頭にチラついた。

誰か私を見て。私が必要だと言って。

心の中で、ずっとそう叫んでいた。

 

『苺プロの斉藤壱護ってんだ。有馬かな。君をスカウトしに来た』

 

そんな中、求められたことが嬉しかった。

誰からも求められない事に比べれば、この程度を飲み込むことに何の躊躇いがあろうか。

 

「よろしくお願いします」

 

深々と頭を下げる。

最後かもしれないチャンス。瀬戸際の気持ちで受けたスカウト。絶対にものにしてみせる。

 

「そういう訳だから、二人とも。かなちゃんの言うことをよく聞く様に」

「分かったよ、父さん」

「仕方ないなぁ。仲良くしましょ」

 

素直に頷くアクアは兎も角、本当に不承不承と言った様子を隠さないルビーの方にはピキッとこめかみ辺りに力が入る。

落ち着くのよ、子供の言う事。子供の言う事だから……。と念仏の様に自分に言い聞かせる様は軽く不気味だった。

 

「……ええっと、とりあえずなんて呼べばいいですか?」

「ああ、好きに呼んでくれていいわ。それと無理に敬語でなくても大丈夫よ」

「じゃぁロリ先輩」

「はっ倒すわよ!」

 

アクアに向けて言った言葉に横合いから失礼にもほどがあるルビーの発言にビキッと青筋立てて反射で悪態が口を突いて出た。

被っていた猫が外れ生来の口の悪さが露呈したことに「やっちゃった!?」と後悔するも、ヒカルの反応はかなの予想に反してどこか安堵したように見えた(・・・・・・・・・・・・・)

 

「あの……怒らないんですか?」

「どうして怒るんだい?」

「いえ、だって今お子さんに……」

 

「いや、今のはルビーが悪い」

「ぶぅ……」

 

確かにヒカルは親馬鹿&過保護であるが、決してモンスターペアレントではない。

盲目的にルビーの味方をしたりしない。間違っている事は間違っていると注意するし、悪い所はちゃんと叱る。

甘やかすだけが優しさではない。時に厳しさこそが何よりも優しさになる事もある。

 

「ルビーって割と失礼な所があるから。かなちゃんも遠慮せずに言いたい事言っていいよ」

 

注意してはいるんだけど、中々治らないんだよね……。と零す。

0歳児からアンチと口汚く壮絶なリプ合戦を繰り広げたり、「バカで失礼で図太い」と壱護から評されるのがルビーの素だ。

前世(さりな)から受け継がれた性質だろう。三つ子の魂百まで。というが、生まれ変わってもなお治らないとはまさに筋金入り。

それでも、ありのままのルビーを受け入れるとは、こうして毒を吐く事も含めての事。良い所も悪い所も含めて可愛い我が子。

 

なによりこうして毒を吐くのはルビーなりの信頼の表れでもあり、家族への甘え方でもあった。

それは「お父さんがよその子を気に掛けているのが気に入らない」という子供じみた駄々。前世の年齢を鑑みても実際にまだ子供ではあるのだが。

 

天童寺さりなはずっと演じていた。『健気で可愛そうな少女』という役を。

そうしなければ生きていけない事を理解していたから。

 

ルビーは演じていた。『素直で天真爛漫な子供』という役を。

そう育つことを望まれていると思っていたから。

 

醜い感情を。汚い本心を。本当の自分を、演じることで隠していた。

本当の自分を曝け出すことを恐れていた。

本当の自分を曝け出してしまえば嫌われてしまうのではないかと。

 

飾らない自分を、偽らない自分を、アイとヒカルなら受け入れてくれるというルビーなりの信頼の表れ。

そして、そうした自分を想い、ちゃんと叱ってもらえるのは叱ってもらった記憶すら朧げなルビーにとっては嬉しい事なのだ。

 

まぁそれでも身内だけならいいけれど、公でするのは止めて欲しいというのが親としての本音なのだが。

この辺りは社会経験の乏しさが起因する。まだまだお子様なルビーであった。

 

なお雨宮吾郎もアクアの目を通して目の当たりにしており、「そう言えばこんな子だった……」*1と思い出補正で美化された幻想は脆くも崩れ去っている。それでも健気で可愛らしい少女という一面もさりなの素顔だと思っているが。

 

 

「ネットタレント部門とアイドル部門の人たちはまた今度紹介するよ。今日は二人と親睦を深めてもらおうか」

 

ゆっくり慣れていけばいいから。と柔らかい声音に、かなは少しだけ肩の力が抜ける。

 

「ようこそ。苺プロへ」

 

 

 

 

 

 

有馬かなはアクアとルビーの二人に舌を巻いていた。

 

アクアの方はそうでもないが、ルビーに関してはもうちゃん付けする気も失せた。こんなクソ生意気なガキは呼び捨てで十分だと。

アクアの方も悪い子ではないと思うが本当にこいつ5歳児か?と言いたくなるほどに子供らしくない。

可愛げという意味ではどっちもどっちであった故、敬称は数時間と持たず早々に撤廃され呼び捨てとなった。

 

それはさて置き。

どの程度の演技力なのかはある程度下調べをしていたが、実際に見ると聞くとでは違うために簡単な小芝居をやってもらった。

 

レッスン自体は真面目に受けているのだろう。それなりに基礎は出来ているし、努力の跡も見える。

けれどはっきり言ってしまえば演技力という点で言えば粗が多く、まだまだ「あくまで年齢にしては」という注釈が付く程度。

 

しかし芝居を始めると途端にスイッチが入ったかのように切り替わった。

演技力とはまったく別の、異質な何か。それを当て嵌める語彙をかなは持っておらず、そうとしか言えない。

雰囲気。オーラ。空気感。視線を向けざるを得ない不思議な引力。芸能人としての嗅覚がヒカルを彷彿とさせるものを感じ取っていた。

 

演技が上手いことが良い役者という訳じゃない。時として拙い演技ですらも説得力に変え得るもの。それは役者として大きな武器だ。

 

率直な感想を言えば、「これ私要る?」だった。

指導も含めてスカウトされたが、とても私の指導を必要としているようにも思えない。

細かい粗は多いし教える事自体は可能だと思う。けれど見た感じ本格的なレッスンを受けている。私でなくとも教えられるなら、私である必要はない。

それに演技のコツだのテクニックだのは色々あるけど、演じ方なんてものは結局の所長い時間を掛けて自分に馴染ませていくしかない。

 

「(つまり、私に求められてるのは演技指導じゃない……と思う)」

 

かなに求めているのは杓子定規な演技指導ではない。

ならば何を求められているのか。朧げなそれを形にするために思考を巡らせる。

 

ちらりとルビーを見やり、恐らくはこの子のため。と当たりをつける。

 

 

「ふふん。どーよロリ先輩」

 

 

ルビーの言葉にかなはピキッと額に青筋を立てる。

このガキ……。いっぺんキャン言わしたろか。と頭の中でシバキ回すことで一先ず留飲を下げる。

 

「(トントン拍子で売れてる子にはよくある事だけど……)」

 

かな自身もそうだった故に昔の自分を見ているようで、なんともいたたまれない気持ちになる。

 

「(あれ……、もしかしてそういうこと?)」

 

パッと思い浮かんだ想像に、まさか。いやいや。でも、そうだとしたら納得できる。と想像を膨らませる。

 

「(同じような経験をしている私に、この子を諫めさせようとしている。とか?)」

 

それならかながルビーに阿ることなく反発したことに安堵したのも納得がいく。と断片的なピースを当て嵌めていく。

 

 

ここまでのかなの予想は割と正鵠を射ている。

 

かなの想像通り、ルビーは調子に乗ってしまっている。かなに対し失礼な言動を取ったのはそれも一つの要因だった。

しかしそれも致し方の無い事だろう。何しろ一切の挫折を知らずに売れてしまった。

 

子役としてデビューして既に2年。

大人たちの対応も初めは「ルビーちゃん、出番だよ」という子供扱いや「出番だぜ。おチビさん」というフランクなやり取りから、今や敬語を使われるまでになっている。

売れていけばどうしたって成功体験に基づく自信に繋がるし、それが増長だと分かっていても周りの大人たちは仕事だと割り切って許容してしまう。イエスマンばかりになる。結果として破綻した振る舞いを助長してしまう。

 

有馬かなが。鳴嶋メルトが。鮫島アビ子がそうであるように。

 

医者という社会経験を持つアクアでさえ、ふとした時尊大な態度を取ってしまいそうになる事もあるくらいなのだ。

前世を合わせてもまだ未成年の、とりわけ前世は人生の大半を病院のベッドの上で過ごした社会経験に乏しいルビーには芸能界の洗礼は毒であった。

ルビーは良くも悪くも純粋な子だ。それ故に染まり易い。

ヒカル達もそんなルビーに注意を促すが、家族の言葉ではどうしてもルビーに甘えが残ってしまう。

素直で天真爛漫な性格と陰険さや邪気の無いさっぱりとした気性から、多少の口の悪さは愛嬌として映り今のところは大きな問題とならずに済んでいる。

 

ヒカルとしてはかなと関わることで、少々危ういルビーが良い方向に向かってくれればとは思っていたし、かなの過去の過ちを教訓に省みてくれればと期待していた。

それ故かなの想像自体は間違ってはいない。ただそれはあくまでオマケ程度の期待。

ヒカルとしては原作みたいな喧嘩友達のような関係になってくれたらという想いの方がずっと強い。

 

 

兎角。そんなルビーを観察し、今のルビーに必要なのは家族の甘えではなく、他人の厳しさ。

求められているのは、それなのではないか。それが経験者(有馬かな)の出した結論だった。

 

周りと歩幅を合わせて、息を合わせて、周りが求める仕事をこなす。役者として言語化出来ない意図を汲み取り、実践する。

有馬かなが苦心しながらこの業界で生き残るために身に着けた術がその結論を導き出した。

 

「(……うーん。でも、どうしよう……一度確認はした方がいいよね)」

 

12歳という若さでありながら社会のホウレンソウを身に付け始めていることに苦労が偲ばれる。

 

「(まぁなんにしても)」

「全っ然ダメね」

 

ズバッと一言で切って捨てた。

 

「なんでよ!?」

「演技の良し悪し以前に、まずその人を舐めくさった態度が減点」

 

礼儀とは試験の答案用紙に名前を書かなければ0点として扱われるようなもの。どれだけ高得点を出そうとも、印象が悪ければ評価は下がる。

5歳児に求めるのも酷ではないかと言われればそうかもしれないが、お金を貰って仕事をしている社会人である以上避けては通れない。

 

「役者に大事なのってコミュ力よ。他の役者やスタッフに嫌われてたら、あっと言う間に仕事なくなるわよ。私みたいにね

「めちゃこわっ……」

「うわぁ……」

 

滲ませた負のオーラにアクアとルビーは揃ってたじろぐ。かなの狙い通りに。

それは半分は演技であるが、その半分はかなの負の感情を膨らませたものだ。

 

「それに、アンタがやらかしたら、苺プロに。引いてはヒカルさんの悪評に繋がるのよ?子供の躾も出来ない人って評価に繋がるの。それ分かってる?

 私もやらかして方々に迷惑掛けた経験あるから、偉そうに説教できる身分じゃないけど……」

 

厳しくするかどうかは兎も角として、最低限ここだけは認識させておくべきだろうと。

この手のタイプは最初が肝心。と遠慮せずに言いたい事を言っていいとの保証を貰っているのをいい事に、ここぞとばかりに捲し立てる。

その言葉に「うん。それはごもっとも」とばかりに神妙に頷くアクアの姿に、かなは「この子絶対苦労してるわね」と妙な感慨を抱いた。双子でこうも性格が違うものなのだろうかと益体もない事に思考が飛ぶ。

ルビーも考えるより先に反射で悪態をつくタイプだが、決して考えることを放棄した阿呆ではない。かなの言っている事が正しいと理解できない訳ではない故、反論できず。

とは言え正論を言う事と正論を受け入れさせることはまた別の話で。ここで終わっていれば完璧な説教であったのだが。

 

「私が実績積むまではアンタたちが干されるのは困るのよね。別にアンタが干されるだけなら自業自得だし、知ったこっちゃないけど」

 

止せばいいのに余計な一言を口にするのも、有馬かなの有馬かなたる所以か。

 

「……てーか、さっきと態度ぜんぜん違くない?」

「そりゃヒカルさんの前だもの私だって弁えるわよ。でもアンタくらいカマしてくるならこっちも遠慮しない方が良いかと思ってね。ヒカルさんも遠慮しなくて良いって言ってくれてるし?」

「ぐぬぬっ」

 

「ま、なんにしても私はアンタたちのコーチにってオファーを受けたの。やるからにはきっちり仕事をこなすわ」

「私ロリ先輩に教わるのすっごい癪なんだけど」

「……やっぱりまずはそのロリ先輩とかいう舐めた口の利き方からかしら」

 

生来の負けん気の強さからかなを睨みつけるルビーに、こめかみに怒筋を浮かべたかな。

アクアは二人の背後にフシャーと威嚇し合う猫を幻視し、ちょっとだけ二人から距離を取った。

 

そんな風に角突き合わせる二人は、気のせいかもしれないがどことなく楽しそうに見える。

年齢に差があっても馬が合うのだろうか。似た者同士というか。あるいは類は友を呼ぶというか。

 

コミュニケーションというのは双方向のもの。何も波風立てないように礼儀正しく振舞うだけがコミュ力という訳ではない。

原作においてアクアが五反田に子供らしくないくだけた態度を取り気に入られたように、相手によっては時として無礼ともいえる態度でも円滑なコミュニケーションとなることもある。或いはこの二人にとっては、こうやって遠慮なく言い合える関係こそ円滑なコミュニケーションだと言えるのかもしれない。

二人ともそこまで考えている訳が無いって?それはそう。

 

 

誰かさんの期待通りに、いがみ合いながらもきっと良い関係になれる。

そんな風に思える光景をほっこりした顔でこっそりと覗き見していた親馬鹿(ヒカル)が居た。

 

 

 

 

 

*1
スピカでさりなは吾郎に「せんせの感性犬以下」と遠慮ない一言をぶちかましている。それも初対面の時に。








「……おめぇはいつまで覗き見してんだ」
「壱護さん、もうちょっと!もうちょっとだけ!」
「良いからさっさと仕事行くぞ」
「ああ、そんな殺生な……」ズルズル

原作では調子に乗ったかなちゃんがやらかして、拙作では調子に乗ったルビーがやらかす。私の中のルビー像は割と調子に乗るタイプ。

何度もルビーエミュしつつ初対面だとこんな対応かな?と。
ただちょっとルビーを悪く書き過ぎたような気がしなくも無い。
けどこの時期のかなちゃんて小6くらいだからトラウマ期真っ最中なのよね。
そんな状況のかなちゃんが素を出せるならルビーぐらいカマしてくれる相手じゃないと。

かなちゃんも大概口悪いけどルビーも負けず劣らず口悪い。
144話でメルトにダメだしするところとか「有馬の悪い所が感染ってる」と言われてる。
が、ぶっちゃけ割と最初の方からルビーってああじゃない?アンチとリプ合戦シーンとかドン引きものですぞ。

重曹を舐める~のシーンについて。
描写するかどうか、もの凄く悩みました。何なら投稿した後でも悩んでると思います。
ただ、ルビーが原作において有馬かなの最盛期でさえうろ覚えなキャッチコピーを数年見なくなって久しい状態で覚えているだろうか?と考えると「無理じゃない?」と思ってしまった。なので描いたけど泣く泣く没にしました。
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