ライブダンジョンwith吸血鬼 作:努×ダリルこそ至高。ヒロインはユニス推し
原作1話は下のリンクからどうぞ
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だんだんと空が赤くなる時刻――夕方、それは多くの人にとって1日の仕事の終わりを意味しており、探索者にとっては仕事の始まりを意味する。つまりこれからギルドや神の目に人が集まり、盛り上がっていくだろうという時間帯だ。ギルド内の酒場には、既に盛り上がりを見せる駄目な大人たちもいた。
「最強の探索者ぁ? そんなのstri……じゃない努さん一択に決まってんだろ!」
「はははっ! あんな弱そうなヒーラーが火竜突破したのもカミーユさんとガルムが居たからだろ。最強はやっぱヴァイス一択だって!」
「いーや、俺はエイミーを推すね!」
「てか最強はアンタだろ。あっさりと単独火竜討伐した吸血鬼さんよぉ……」
「あんくらい努さんは余裕でできるわっ!!」
「「「無理無理無理」」」
酒をしこたま飲んでは普段は白い肌を、自身の目と同じくらい真っ赤に染めて酔っ払い、大声で努を過剰評価しては同じような顔をした酒飲み達に総出でツッコまれる圭樹の姿があった。
「……努の評価はあの男によってかなり変わったようだな」
「見ているこっちが恥ずかしくなるけどね〜……」
「ほんと誰か止めてくれ……あのバカ吸血鬼」
「んふふ。そこが、かわいいのよねぇ♡」
それを改めて火竜を討伐するためにギルドを訪れた努のPT一同は微妙な顔で見て見ぬふりをし、警備のためにギルドを訪れているブルーノが身体をウヨウヨとくねられせて周囲を引かせていた。
「あれでも噂を消すのに役には立っているんだよね……認めたくないけど」
努は今すぐにでもあのベロンベロンに酔った吸血鬼の妄言を止めたかったが……事実、ヒーラーを始めとした一部の探索者からは一目置かれる……どころか神格化されている気配さえ感じるが、とにかく周囲の努を見る目は『幸運者』から『謎の実力を持った白魔道士』に置き換わろうとしているのは事実であり、『幸運者』と呼んだものはその夜吸血鬼に襲われる、という物騒な噂まで広まっているほどだった。
「……あんなのが本当に火竜倒したの? まだ信じることできないんだけど」
「心底嫌だがお前に同意見だ……俺も、直接見ていなければ信じられなかっただろう」
「はぁ……これだから吸血鬼は」
当然だが、「〇〇が最強!」なんて一概に決められるはずもなく、それを火竜討伐したとはいえ周囲からは疑いの目を向けられている努の名前を挙げたところで、誰も信じないだろう。圭樹はそれを酔った勢いで口にして、同じく酔っ払った周囲と口論になり、理論は飛躍して『ならお前が火竜討伐してみろよ!』『あぁ、やってやるよ!』という売り言葉に買い言葉により、圭樹は酔ったままギルド職員の静止を振り払って60階層の火竜に行き、30分もかからず一人で討伐してしまった。明らかな偉業にも関わらず、目撃者は極端に少なかった。なぜなら、一番台では紅魔団による61階層の攻略が行われていたため、殆どの観客がそちらに釘付けだったためだ。それに口論していた酔っ払い探索者達もまさか本当に挑むとは思わず、圭樹が死に戻りするのを酒を飲みながら待つだった。結果、圭樹の火竜討伐を見たのは数人しか居らず、その内の1人がガルムだった。
「努があっさり信じたのは意外だったな」
「まぁ、あれでも吸血鬼だしね……」
周りの目もあるため努は曖昧な発言に留めたが、ゲームのライダンでは圭樹が火竜どころか100階層の爛れ古龍までソロ討伐しているのを知っている。ゲームのライダンも階層が上がる毎に単純な強さだけでなくPTの必要性を感じる設計になっているため、爛れ古龍に比べてしまえば火力が高いだけの火竜の討伐など吸血鬼にとってしまえば朝飯前なのだろう。まぁ酔っ払った状態というのは予想外も良い所だし、それに対して数時間かけて突破した自分を持ち上げられるのはなんとも言えない気味悪さを感じるが。
「結論! 努さんが最強!」
「……早く行こう。馬鹿が移る」
「あ、あぁ……」
「なんか悔しー! ねぇ努! 私達も30分で突破しよ!」
「無茶言わないで?」
酔ってない時の圭樹はただの純粋なファンなんだけどな……誰だよ、あいつに酒教えたやつ。
そう内心で愚痴りながら、努は圭樹を見ないようにしながら2人を連れて渓谷階層に飛ぶのだった。
元日本人、『那間 圭樹』がこの「ライブダンジョン!」の世界に転生したのは1ヶ月ほど前のことだった。
圭樹は「ライブダンジョン!」のそこそこ新参者のプレイヤーだった。だいたい「ライブダンジョン!」全盛期終わりくらいからプレイし始め、サービス終了まで続けていた。続けてきた理由は、もう一度会いたい憧れのプレイヤーがいたからだ。それは圭樹がレイドボスに挑む際に一緒に戦ったパーティに居た。そもそも圭樹はソロプレイが好きで、攻撃防御バフ回復などだいたいのことが一人で出来るがクセの強い課金ジョブの「吸血鬼」を使っていた。さすが課金必要なキャラだけあって、その強力無比な能力でしばらくはソロプレイでも無双できるほど楽しめていた。しかし、ダンジョンに潜って階層を進めていく内に一人では詰まる部分が増え、気まぐれで受けたレイドボスを最後に「ライブダンジョン!」を辞めようとしていた。
そのレイドボス戦でであったのが、「strive」という名前のプレイヤーだった。そのプレイヤーは名前を体現するかのように、神懸かりなプレイスキルを持った白魔道士のヒーラーで、一度は殆どが全滅した合同パーティを自分含めて切断したプレイヤー以外全員が生存した状態でクリアしてみせた。その圧倒的な時間管理、ヘイト管理能力とそれを維持する集中力は凄まじく、白魔道士のくせにアタッカーまで務めている場面すらあった。吸血鬼という強ジョブに甘えているだけのプレイしかしてこなかった圭樹はそのヒーラーの圧倒的なプレイヤースキルに憧れ、自分自身もそのくらい上手くなってやろうと息巻いた。
あのレイドボス以降、「神の目」と呼ばれる配信で「strive」というプレイヤーの配信を探しては、その人のヤバすぎヒーラー配信やボイチェンクソガキ成敗配信を見て感心したり爆笑したりしていた。一度だけ吸血鬼配信をしていて、吸血鬼ソロプレイヤーとして少しだけ有名だった自分の名前がstriveから出た時は舞い上がるほど喜んだ。それをモチベーションにして、圭樹は更にライダンをやり込んだ。
結果、100階層を吸血鬼ソロプレイでクリアという偉業を成し遂げたものの……その頃はもうライダンは下火となっており、サービス終了の告知までされていた。それに100階層クリアもサービス終了告知間近に追加された吸血鬼用の強力無比な課金装備やアイテムの影響も大きく、表ダンジョン制覇はしたものの、悔しさが残る結果になった。それからは裏ダンジョンに潜る気も改めて制覇するモチベーションも湧かず、サービス終了を迎えた……と思っていた。しかし、サービス終了日にふと気まぐれでログインしてみると、イベントが無くなってからは使わなくなって久しいプレゼントボックスに『新規プレゼント』の表記があった。
「なんだコレ?」
受け取った表記はちょうど100階層ソロクリアの後になっていた。あの後は悔しさもあってすぐ止めたし、今日まで一切ログインしなかったせいで受け取れていなかったらしい。
「単独でのダンジョン制覇おめでとうございます! そんな貴方にはこれを差し上げましょう!」
サービス終了するってのに、随分と粋な計らいをする運営だな……そう思いつつ、プレゼントボックスをクリックすると……
「神からの誘いを受け取りました」
その表記と共に、圭樹の意識は暗転した。
「……どこだ、ここ」
圭樹が目を覚ますと見慣れない風景が広がっている場所の土の上で寝ていた。周りをよく見ると、まるで古い闘技場のようで圭樹には見覚えがあった。
(ライダンの100階層に酷似してやがる……しかも俺の服装に装備、これって……俺が使ってた吸血鬼の装備か)
あり得ない状況に夢かドッキリを疑っていると……空から羽ばたき音と共に黒い点が近づいた。それはあっという間に大きくなり、全貌が見える頃には圭樹の足は恐怖で立ち竦んでその場から動けなくなっていた。
「……ただれ、古龍……なのか」
それはライダンの100階層のボス、爛れ古龍を彷彿とさせた。しかし、ゲームではただの一枚絵だったのが立体的な姿となっており夢や作り物にしてはデカ過ぎるしリアル過ぎた。爛れ古龍が轟音と共に目の前に着陸し、圭樹は目なんてあるはず無いのに爛れ古龍の無機質な骨が自身を睨みつけているような気がした。
「お、おぃ……嘘だろ……」
爛れ古龍が口を開けた瞬間、圭樹はライダンにおいて爛れ古龍が開幕にする行動である「爛れたブレス」を思い出し、当たっては不味いと本能的に右に
「……は?」
「GYAAAAAA!!!!」
自分の遥か左側を淀んだブレスが通り過ぎ……俺は情けなく闘技場の壁に激突した。
「いたっ……くないな。そんなに」
明らかに骨折してもおかしくない衝突音が立ちながらも、俺の身体は軽く転んだくらいの衝撃しか感じなかった。立ち上がろうとするとひょいと立てて、痛覚が鈍ってるわけでももない。
「GUUUU……」
圭樹が自分のあり得ない身体能力に再び呆然としていると……骨を軋ませながら爛れ古龍がこちらを向き、再びブレスを吐こうとしているのに気づいた。圭樹の脳裏を(遠くに居るとずっとブレス撃ってきて厄介だったな)と場違いな思考がよぎり、慌てて『眼の前の爛れ古龍をなんとかする方法』を考えて……自分がもし「吸血鬼」なら、アレが使えるかもしれないとあることを思い立った。しかし、ここにはスキルを使うためのPCもUIもないことに気づき……爛れ古龍が口を開くのを見て、圭樹は咄嗟に叫んだ。
「え、
ブレスが圭樹に当たる瞬間──圭樹の体と身につけていたものは赤い粒子となって闘技場から消えた。
残ったのは獲物を逃がしたことに、どことなく
マンガ版はAmazon他にて発売中。