ライブダンジョンwith吸血鬼   作:努×ダリルこそ至高。ヒロインはユニス推し

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2016年の作品が今も更新中ってすごい。しかも隔週ペースで。あんなに多くのキャラを操れる作者樣の頭ん中見てみたい(狂気)。

努登場は次話


ギルドから逃げろ

「うぎゃ!」

 

 

 

 視界が暗転したかと思えば、圭樹は木製の床に尻から落下してしまい痛みはなかったものの驚いて情けない声が出た。

 

 

 目の前から爛れ古龍が消えたことに安心するのも束の間、まずは耳が周囲の喧騒が騒がしいことを察知し、続いて多くの人物が圭樹のことを見ているのが視界に映った。

 

 

「ひ、ひぇっ……」

「おい」

「はひっ!?」

 

 

 圭樹が思わず後ずさると、背後から藍色の服を着た強面の男性に声を掛けられた。

 

 

「死に戻りか? にしては服や装備を失っていないが……」

「あ、あの……えぇと……」

「どうした? 何か言いたいことでもあるか? 悪いが少し話を……」

 

 

 圭樹がなぜMMOを始めたのか、それは好きなゲームを通してコミュニケーション能力を鍛えてコミュ障を治したかったからだ。しかし、結局はソロでも戦える吸血鬼に逃げてしまった。それはstriveに出会ってからも変わらず、彼に認知されていることを知ってからも自分から話しかける勇気は湧かなかった。

 

 

 だから、いくら優しめの口調とはいえ強面の男性に話しかけられるのは圭樹にとって恐怖でしかなく、周囲の目も相まって『逃げたい』と思ってしまうのは仕方のないことだと言えよう。そして、今の圭樹にはそれを可能とするスキルがあった。

 

 

「て……テレポート!!」

「お、おい急に」

 

 

 座標を適当に指定して放ったスキルは無事成功し、圭樹はその場を脱することができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……疲れた」

 

 

 

 まだ圭樹は知らないが、圭樹はその浮いた見た目と服装からかなり注目を浴びていた。体格は背の高い成人男性と大差ないものの、その病的なまでに白い肌と真っ赤な眼、そして吸血鬼専用装備である黒いマントは獣人やエルフ、ドワーフが溢れる街においても異彩を放っていた。しかし圭樹は人付き合いの少なさ故、自分自身がなぜ注目されているのか分からず、有り余る身体能力を無駄遣いしながら人のいない場所を探して街の中を逃げ回った。結果として街の外れであるスラムのような場所に辿り着いた。そこでは注目は浴びるものの、自分が生きるために必死なスラムの住人は次の瞬間には圭樹から目を外していた。その空気感が今の圭樹にとっては大変ありがたく、圭樹は狭い路地の壁にもたれかかって一息つくことができていた。ちなみに、今の圭樹は内心はともかく外面は吸血鬼でありかなり強面で強者のオーラを纏っていたため、スラム民の標的になることはなかった。

 

 

 

(何なんだここは……ほんとにライブダンジョンの世界に迷い込んじまったのかよ)

 

 

 

 圭樹は周囲を見渡しながら呟く……が、ゲームにスラム街という場所などなかったため、確信までは持てなかった。しかし、逃げてきた道中や爛れ古龍から逃げた先には少しだけ見覚えがあった。

 

 

(あれはギルドで……もしかしてここは迷宮都市なのか)

 

 

 この世界がライブダンジョンなら、この推測はおそらくほぼ確定だろう。それにギルドからテレポートする瞬間、モニターらしきものが宙に浮いていた……気がする。気のせいかもしれないが、もしそれがダンジョンを配信する機能を持っているならライブダンジョンにも設定に神様が暇つぶしにつけた機能としてあったため間違いはないだろう。ただ、あの時は急いで逃げようとしたためダンジョン攻略の様子が配信されていたのかわからなかった。

 

 

(それに、なぜかあれから「テレポート」が使えない。吸血鬼のMP的にはまだ余裕で使えるはず……)

 

 

 それならギルドに戻り、確認できたらまたテレポートで逃げればいい……のだが、それも何故かMP不足らしくでできなかった。圭樹の使用していたキャラはもちろんレベルはカンストしているうえ、HPの自動回復に加えて消費MPの削減など強力無比な装備まである。ライブダンジョンの吸血鬼はソロ最強の名に相応しく自分一人のみの時に使えるたとえ階層ボスだろうが逃げることができる『緊急脱出』と同じ階層の座標を指定して移動するテレポートが使えた。緊急脱出は(ゲーム内における)一日一回までという制限があるが、テレポートにはそれがない。元々は階層内を移動する手段だが、さっきも使えたことから街の中でも使用できるのは間違いないはずだ。それに、さっきからもテレポートと唱えるたび青い粒子が右手から溢れていた。これはライブダンジョンをプレイしてる時も見たことある気がする……そうだ、まだライダン初心者の頃、MPが足りないままスキルを使おうとした時によく起こっていたことだ。

 

 

「ひょっとして……」

「み・い・つ・け・た♡」

「はひぃっ!?!?」

 

 

 ネットりとしたおどろおどろしい声に振り向くと、さっきのギルドにいた男とは比べ物にならないほどデカく巨大な男……いや漢が圭樹を見ていた。圭樹には知る由もないが、ギルドから突然消えたことに加えて街の至る所に出没しては圧倒的な速さで立ち去る圭樹は注目を集めており、被害はないが念の為警備団に通報した者が複数おり、偶然ランニング中だった警備団の取締役である男も捜索に参加していた。男は風貌や佇まいから圭樹の実力を見抜き、消えるほどの速さの持ち主という情報もあったため警戒しながら圭樹にゆっくりと近づいていった。しかし、圭樹にとっては怪物が己を捕食せんと向かってきているようにしか映らず、当然脱兎のごとく逃げ出した。

 

 

「な、なになになになに!?」

「逃がさないわよぉ〜!」

「こ、殺されるぅ……!」

 

 

 吸血鬼はスキルだけでなく身体能力も単独ならば最強と呼ばれるジョブだった。だから逃げに徹すれば大抵の相手なら引き離せる……はずだった。

 

 

「な、なんで……」

「待っちなさぁ〜い!」

 

 

 圭樹は最初こそ距離を離したものの、男には最高速度で負けて逆に距離を徐々に詰められていた。確かに男はその巨体から想像もできないほど速い。しかし、()()()()()()()()()()の吸血鬼が負けるのは少し……いやかなり想像できない。

 

 

(男は明らかにパワータイプ……なら、やっぱり俺のステが低いんだ!)

 

 

 ステが低い、どころか恐らくレベル1の可能性もある……というか可能性大だと圭樹は感じていた。それなら装備で強化されてもなおギリギリ2回しかスキルを使えなかったこと、今現状追いつかれそうになっているのが説明つく。

 

 

(よく見たら、周囲の人が全然怖がってない……?)

 

 

 それに、吸血鬼の優れた五感が後ろの迫ってくる恐ろしい見た目の男が街の人とすれ違う度、恐れられるどころか安心したような……あるいは圭樹に呆れを含んだ同情の目を向けていることに気がついた。これから推測するに、もしかして背後に迫る男は警察……あるいは自治団体のような組織に所属しているのではないだろうか。圭樹は今更ながら、今の自分が吸血鬼であること、そして吸血鬼って確かに肌白くて目は赤いし現実にいたら恐ろしいよな、と気がついた。それに暫定ギルドから逃亡した前科もある。もしかするとあの呼びかけしてきた男も仲間だったのかも……と、ギルドで話しかけてきた男が周囲と比べて上等な服を身に纏っていたこと、何かしらの身分を表すような金のバッチをつけていたことを吸血鬼の記憶能力の高さから思い出すことができた。

 

 

(……そう考えたら話せる気がしてきた)

 

 

 この世界に迷い込む前から、圭樹はよくその挙動不審さから薬使用者と疑われて何度も職務質問を受けてきた。そのため、警察相手ならばそれなりに話せる……いや話せてしまうという悲しい経歴があった。後ろの男も、俺に職務質問をしたいだけかもしれない……そんな希望的観測を含めつつ、圭樹は停止して男に向き合うように振り返った。ただし、話が通じなければ逃げようとスキルを使う用意もしながらだが。

 

 

「あらぁ〜? 私とヤり合う気になったのかしらぁ〜?」

「え、えっと……け、警察……じゃ、じゃなくて……自治団体……みたいな方でしょう、か」

「警備団のことを言ってるならそうだけどぉ〜、まさか私のこと知らないワケないわよねぇ〜?」

 

 

 目の前の男は訝しむのは辞めなくとも、急に襲いかかってくるような雰囲気ではなく話が通じそうなことに圭樹は内心でガッツポーズした。それに予想通り男は警備団という警察組織のようで、警察相手ならそこそこ話せる圭樹にとって朗報だった。警察相手には嘘をつかないことが重要だと職務質問を重ねるうちに身についた悲しい経験則から、圭樹は辿々しくも正直な思いを男に告げた。

 

 

「ご、ごめんなさい……最近ここに来たばかりで……、急によくわからない場所に飛ばされて、知らない人だらけで逃げちゃって……その、貴方から襲われるんじゃないかって勘違いしました! ごめんなさい!」

「ふぅ〜ん?」

 

 

 長身の吸血鬼が深々と頭を下げる様子はいささか不自然さすらあったが、警備団の男の直感は圭樹の言っていることが真実だろうと告げていた。その後、男が名前や年齢など簡単な質問しては圭樹は回答するのを繰り返して(出身地は日本と正直に言ったが伝わらなかった)、圭樹は悪人ではないと男は結論付けた。男ほどではないにせよ、背が高く屈強そうな男性が「会話は苦手でして……」と恥ずかしそうに語るのは寧ろ男の好みに近いまであった。

 

 

「事情はわかったわ。実際、アナタを拘束する理由もないのよね〜。でも、悪いけどギルドまでは付いてきてもらうわよ〜。ついでにステータスを調べてもらうのはどうかしら〜ん?」

「そ、そうします」

 

 

 男の迫力にビビりつつも、男が警察だと思い込めば重度のコミュ障である圭樹でもなんとか会話が成立していた。そしてギルドに向かう道中ではこの街やギルド、ダンジョンや「神の目」なんかについても親切に教えてくれた。「もし何かトラブルが起きれば私たちを頼るといいわ〜」と男が警備団の取締役であることを明かされ、もし抵抗してたら殺されたかもしれないと圭樹は怯え、話し合いを選んだ自分を自分で絶賛した。その後も何も知らない圭樹に対して色々な情報を教えていた男だったが、突然「大事なことを言い忘れていたわ〜」と言って、身に纏う雰囲気を真剣なものに変えて圭樹に顔を近づけて忠告した。

 

 

「それとダンジョンではね──害意を持って人を殺すべからず」

「べ、べからず?」

「神の規則って呼ばれてるわぁ〜。まぁ貴方なら大丈夫そうだけど♡」

「は、はぁ」

「神に見放されるのは死よりも重たいことよ。気をつけるのよん♡」

「はい……わかりました」

「素直でいいわね……はい、ギルドに着いたわよ」

 

 

 ゲームには存在しなかった謎のルールに、全てがゲーム通りに行くわけではなさそうだと圭樹は気を引き締めた……が、ギルドに入った瞬間、人の多さから本能的にまた逃げ出そうとして、なんとなくこうなると予想していた隣の男によって襟を捕まえられ逃亡は阻止された。吸血鬼とはいえレベル1がパワータイプの警備団の中でも最強格の男に勝てるはずもなく、半ば引きづられるように涙目でギルドの中に連行されて行ったのだった。

 

 

 




警備団の男……一体何ルーノなんだ……
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