【悲報】メラメラ食っちゃった 作:敗北者
メラメラの実で起こした炎を本に当てないように近付け乾かしていく。
このサイズ差では巨人達には細かい作業になるのでスカイタートルの船員達も手伝う。
「チビ達の中でも一番チビが船長か!」
ゲラゲラと豪快に笑う巨人の男に何人かの船員は及び腰。技術者の眼鏡は気絶して部下二人に介抱されている。
「能力者ゆえ、ではないな。俺も戦士だ、解るぞ。お前もまた戦士だ」
「ああ、火守りの戦士という一族なんだ。本来成人したら自らの炎で鉄を鍛えるんだが、故郷を奪われちまって」
「故郷を?」
「ああ、しかも島民皆殺しの罪を政府に押し付けられた。悪魔の実を食ったところで、俺一人で滅ぼせたと思われるなんざ親父達に対する侮辱だ」
「「許せん!!」」
戦士として生き誇りを重んじるエルバフの戦士達が叫ぶ。雷でも落ちたのかと思う大声だ。
「故郷を取り戻す時は呼ぶがいい! 同じ戦士の誼だ、手を貸そう!」
「故郷を奪い、汚名を被せる不届き者共を共に討とう!」
「そうと決まれば、我等がエルバフの剣を教えてやろう!」
「チビに使いこなせるかは解らねぇがな! ディガガガ!!」
戦士だからか気が合う巨人族達とカガリ。
食べられないか心配だ。
「まあまずは本を引き上げてからだな」
「だな!」
「引き上げるのを手伝おう。で、あれはあんたらの客か?」
「ん?」
と、一人の男がこちらを窺っていた。何処かでみたようなその男の片手には、花束。
「…………君達は、その本をどうするつもりだ?」
「どうすんの?」
「エルバフに持っで帰る。オハラが命がけで残しだ財産だ。ごんまま歴史から消させなんでしねえ」
サウロはグッと拳を握る。男はそうか、と何処か嬉しそうに微笑んだ。
「ところで君は………もしや【炎魔】ウルカス・カガリか?」
「ああ」
「その髪は…………いや、それほどの目にあったのだろうな」
「ストレスじゃない」
真っ白な髪を見てこんな子供が、と悲痛な顔をして勘違いする男にカガリが訂正する。いや、余程の目にあっているのは確かだが…………。
「俺達の島の住民の特徴だよ。こうなった奴等はまず戦士になるから、戦士の一族のほうが殆どで一族じゃない奴等は偶にだけど…………」
世間的には戦士として一人前になると髪を染める民族と認識されていた。まあこの世界、いろんな民族が居るし…………。
「ま、生き残りは俺だけだが…………」
「オハラと同じか………」
「俺達は法律を破った覚えはねえよ」
「その法律は、誰のためにあると思う?」
「……………………」
世界政府……いや、天竜人だろうな。スレでも、政府が知られたくない事実を知ってしまったからと言っていた。
「世界のためじゃない、自分達の知られたくない恥部を隠すためだけに、戦う力のない学者も、学者が乗っているかもしれない船も沈めたのさ」
「……………戦う力はないが、オルビアを含め全員覚悟はあったさ」
悲しむより、悼むより、こうして大量の本を後世に残したことをまずは称賛する。
「まあ、だからといって彼奴等の都合のいいようにされていく世界は気に入らねえが」
「それにはおれも同意だ…………」
と、目を伏せる男。不意に妙な人影に気付いた。
本当に妙だ。頭が電球みたいにでかい。
「あれは……!」
男は心当たりがあるのか走っていく。念の為カガリもついて行った。
「久し振りだな! ベガパンク!! 相変わらず目立つ頭だ、すぐ解る!」
「お前は……ドラゴン!? お前が何故ここに!」
男達はベガパンクとドラゴンと言うらしい。かっこいい名前だ。
「そりゃこちらの台詞だベガパンク。また一段と頭が肥大化したな…………」
生まれつきではなかったらしい。
「おれはクローバーのおっさんと面識があってな」
「なんとお前もか! かつては世界中を飛び回るやんちゃな男だったから……彼が世界を滅ぼそうとしたなんて、バカげた情報操作だ!」
この二人はクローバーという男と知り合いで、クローバー…………というよりはオハラの学者が世界を滅ぼそうとした悪の学者集団とされたことに思うところがあるらしい。
「因みに俺はオルビアを含めた数人の学者。まあ、あの船はオルビア以外この島に着く前に海軍に殺されたらしいが…………」
「ああ、新聞に載っとった………」
チラチラと巨人族達を見るベガパンク。オハラの学者達が命尽きるまで残そうとした本をどうするのか気になっているようだ。
「あの巨人達が気になるか? 盗賊じゃない、さっき調べはついた………エルバフからやってきたようだが……彼等はこの文献の価値を知っている」
オハラが命懸けで残した財産。それを守ろうとしているのだとドラゴンが説明する。
「
「いや待て、私はそんな…………」
「聞いて呆れたぜ。お前がついに政府の飼い犬になったとは………我々「自勇軍」の勧誘は蹴るのにな」
「バカ言え! 私の知恵と技術があったところで、お前等の様な貧乏軍隊で何が作れる!?」
「解ったよ。相変わらず正直者だな……ああ、ウルカス・カガリ。こいつは確かに政府の人間だが、悪人ではない。少なくとも大量殺戮を行うような発明はしないだろう」
と、ドラゴンが呆れながら紹介する。
思い出した。ドラゴン………自勇軍という、大雑把に言ってしまえば各国でデモを起こしている集団。その長だ。
「なんじゃ、お前んとこの子ではないのか?」
「7年前、天竜人に故郷を滅ぼされその罪を被せられた子供だ」
「手配書でよく見ると思うが?」
「!! 【炎魔】か…………お主がこの島に訪れるとは、妙な運命を感じる」
そう言ってマジマジとカガリを見つめるベガパンク。
「お主がいる前で言うようなことではないが、「世界政府」はバカでかい組織……海軍には特に、話の分かる者も多い………標的は見失うな」
「ああ、俺の標的はあの時あの場にいた100人の天竜人だ」
「100人? 例年より少ないな…………」
「毒で弱めたとは言え、火守りの一族は強いからある程度動ける奴等に絞ったんだろ……少なくとも一般人以上に動けてた。その中で特に群を抜いてた奴等がいたな」
「神の騎士団だな。あれらは天竜人と相対する際に、必ず当たらなければならない…………ベガパンク、お前の言うことも解るがな、今回は流石に効いたよ」
法律という名を得た理不尽に意見し、それに対する返答は暴力。結局この世は世界政府の都合のいい形しか取れない………察する者は、そう察したことだろう。
「厳密には、五老星だがな…………各国の王も、天竜人すら、五老星の傀儡だ …………抗うために、俺は戦える軍隊を作る!」
「戦争を嫌ってたお前がか!?」
「見てろベガパンク。ベガパンク、俺が世界を変えてやる! クローバーの死は……オハラの意志は無駄にしない!」
そう言って去っていくドラゴン。残された二人はなんとなく気まずい。
「あー………カガリよ、お主能力者じゃったな。その、ちょっと血をくれんか?」
「え、やだ」
「そこをなんとか! 私は悪魔の実の研究をしてるのだ!」
「じゃあ本乾かすの手伝ってくれ…………」
「時にカガリよ、とりあえず外から見た限りではあるがお前さんの船の改善点を纏めてみたぞ」
夜になり、作業を一時中断。巨人族が釣ってきた海王類を食っていると、ベガパンクが設計図を差し出してくる。
「改善点ですって? 笑わせないでいただきたい。私の完璧なる船に改善点など…………………」
と、設計図を見た船大工は固まる。眼鏡を取り、目を擦りもう一度見る。
「天才のこの私が……………!」
「どうしたんじゃ彼は?」
「負けを認めたらしい」
うなだれる男を見て尋ねてくるベガパンクにそう返してやる。
皆が寝静まった後、見張りを買って出たカガリは見聞色で警戒しながらも乾いた本の幾つかを手に取り暇潰しに読む。
ほかに起きているのは怪我故にあまり働けなかったからとサウロ。文献を幾つか読みたいからとベガパンク。
「いろんな歴史があるな…………お、これ懐かしい」
「懐かしい?」
「オハラの連中が調べに来た俺の島の過去の文字だ」
「────!!」
「戦士長と長老衆以外は読んじゃいけねえから、今読めるのは次期戦士長だった俺だけだが………」
「お、お主! それが、読めるのか!?」
と、顔を青くして叫ぶベガパンク。サウロも包帯から見える目を見開いていた。
「読めるけど………」
「その事を知っておるのは!?」
「し、知ってるやつは皆死んだ………」
「そうか………では、それを誰にも言ってはならん」
「そん字はよぉ、政府の隠したい事を読みどくためにひづようなんだ。読めるっで知られだら、そんだけで狙われる」
「それは………………今までと変わらないんじゃ」
「「……………確かに」」
とは言え、読めると政府の前で証明してやる必要もないが。
「助かったでよ。ワシ等はエルバフに帰るけ。ちゃんと遊びん来いよ」
「ディガガガ! 次会う時はもう少し大きくなっておけ!」
「エルバフに来たら、偉大なる巨人の戦士達の歴史も教えてやるぞ!」
「それまで海軍に捕まるなよ!」
「また会いましょうね〜!」
本を回収し終えた巨人達が帰っていく。カガリも約束通りベガパンクに血を渡そうとしたが、ベガパンクの持っていた機材では血が取れなかったので自分で自分の腕を噛み血を与えることに。
「お前さんは、これからどうする…………」
「何も変わらねえよ。海賊狩って金を集める毎日さ………」
「そうか…………まあ、何だ。捕まるようなことがあれば私が政府にかけあって引き取ってやろう」
「捕まる気はねえよ………」
「…………ところで、ドラゴンは良かったのか?」
ドラゴンはこれから世界を変えようと動くと言った。今までは力ではなくデモ………言葉で訴えていたが、暴力で潰されるだけならばそれに抗う武力を手にするつもりだ。
カガリは幼いながらも、この海でも有数の実力者。かのビッグ・マムに並ぶ最年少賞金首にして、初期賞金額は過去最大。
賞金額は政府への危険度を解りやすく示す。なるほど、政府に敵対する組織としては素晴らしい指針だろう。ただし………
「俺は世間的には悪逆無道の極悪人だからなあ。イメージが悪い」
カガリは表向きには邪悪さ故に懸賞金が高い事にされている。
天上金により餓死者が出る国や、非加盟国だからと人権を保証されず人も財産も奪われる国を助けようとするドラゴンは、世間的に危険視されていても、被害者からはヒーローに見える必要がある。
「俺は邪魔だろ」
まあ天竜人と敵対する組織であるなら、何時か士気上げにオハラと合わせてカガリの話をするだろう。仲間になるかはおいておいて、なるならその時にするべきだ。
「本当に12歳?」
「見ての通りだが?」
帰路につくアカツキ海賊団。ベガパンクの設計図を見ながら自分にも出来る改造がないか探す技術者に、カガリはベガパンクの昔の研究仲間が作ったという透明化の技術も渡しておく。
船員達が「消える飛行船!?」と目を輝かせる中、男は自分の世界がどれだけ狭いか思い知った。
「所詮私など井の中の蛙……いえ、大海漂う島亀の子亀」
「世間を広く知ってそうだな…………」
「げ、元気だすっす!」
「そうっすよ! 理解できるだけですげえっす! 俺等何もわかんねーもん!」
「元気出せよ。俺もお前は天才だと思うぞ。それを技術として実用化できるのは俺等の中ではお前だけだ。ほら、て〜んさい」
パン、と手を叩くカガリ。
「「「て〜んさい!」」」
部下も乗る。
「て〜んさい」
「「「て〜んさい!!」」」
「て〜んさい」
「「「て〜んさい!!」」」
5回ほど繰り返すと、うなだれていた男は起き上がった。
「ふふふ! 良いでしょう、この天才! ドクター・ラチェットの力を存分に頼りなさい!!」
「ああ、頼りにしてるぞ」
これは本気。
「おう、帰ってきたか!」
そして島に帰ると、せんべいを食ってる海軍の英雄がいた。