【悲報】メラメラ食っちゃった 作:敗北者
魚人の男の名前はフィッシャー・タイガー。
冒険家だ。
「お前達は、おれが怖くないのか?」
「島の猛獣より小さいし」
「傷だらけだったし」
「むしろうちの船長のほうが化け物じみてるし」
「おい誰がバケモンだ」
船医に再び治療され、落ち着いたタイガーは食堂にて飯を食いながら船員達に囲まれていた。ちなみに事前に嫌いな食べ物、宗教的な理由で食えない食材を聞いている。
「魚人が、気持ち悪いとは思わないのか?」
「俺の一族なんて火を出す一族だぞ」
「火を? 悪魔の実か?」
「悪魔の実を食わずともだ。例えばおれは今、特訓のために海楼石の腕輪をしてるがこうして炎を出せる。これは俺の自前だからな」
片手に灯した炎を握り潰し消し去るカガリ。それに、と付け足す。
「おれ達は海賊、海に生きる者達だ」
「…………そうか」
「それで、お前はなんでまたあんな場所に…………いや、話したくねえなら良いが」
「…………この模様を見れば、解るだろ」
「私解らない、誰か教えて」
と、船医。自分の体を実験体にするほど薬学には興味津々のくせに、それ以外の知識は子供以下なのだ。
「天竜人の所有物であることを示すマークだ。ようはこいつは、天竜人から逃げ出した奴隷さ。治療が露見した場合、所有物を
そこはもちろん天竜人の機嫌次第だろう。十中八九後者だろうが………。
「おれは天竜人に故郷を滅ぼされてんだ。なんだってあのクソ共のご機嫌取りなんざしなきゃならねえ」
「…………そうか」
「お前は………大変そうだな」
人間を見る目に交じる、憎悪の炎。それを抱えてこちらに手を出さないよう戒めているのだから大したものだ。
「……………金属加工が行われてる島に、連れて行って貰えないか?」
「なんのために?」
「まずはこの、忌々しい模様を消す…………」
「焼印か。なら、おれが作ってやるよ。好みの形はあるか?」
「……………太陽」
「了解………だがまずは、傷を癒やせ。ああ、それとお前等。不用意に近付くなよ、まだ反射的に手が出る可能性がある」
「ああ、そうしてくれると助かる……」
「海王類のステーキだ! マグロの兜焼きもあるぞ!」
「「「おおおおお!!」」」
「悪いなタイガー。病み上がりだったのに」
「少しぐらい動かねえとなまっちまう」
今回の食事はタイガーがリハビリを兼ねて海から獲ってきた獲物だ。カガリもマグロの背骨からこそぎ落とした部位を食ってる。
「…………………」
少し離れた位置で食うタイガーを見ながら、カガリはマグロの背骨を焼き噛み砕く。
「人間を許せそうにねえか?」
「船長か…………滑稽だろ?」
甲板で海を眺めるタイガーにカガリが話しかける。タイガーは酒を飲みながら月を睨んだ。
「解ってるんだ! いい人間だっている、おれを助けたのは、人間のあんたらだ! なのに、おれは………人間に助けられたことを………余計なことをと思っちまってる!」
「まあ実際お前一人でも助かったかもしれねえしな」
人間よりよっぽど頑丈。あの傷でも、生きて故郷に戻った可能性はある。
「天竜人殺しに行くなら、手伝うぜ?」
「……いや、おれは人間を殺さねえ!!」
「……………………は?」
「おれはどうせ、今のガキより早く死ぬんだ! なのに、これから生きてく奴等のために恨みしか残せねえなんて、それこそ滑稽だろう!?」
「…………まあ、知性体って種族で分けたがるからなあ」
魚人が魚人を傷つけようと、傷つけられた者やその身内が傷つけた魚人を恨むだけ。だが人間が魚人を、魚人が人間を傷つければ種族全体がその種族全体に敵意を持つ。
「言葉が通じて同じ酒が飲めるだけで十分だろうに」
因みにカガリは現在18歳。船長なのに酒を飲もうとすると皆が邪魔してきたが、今はこうして堂々飲める。
「おれは、奴隷達を放っておけない!!」
「そうか…………」
「だが、恨みを残したくない………」
「健気なことだ。生憎、手伝えそうにないな」
なにせタイガーは奴隷を救いたくて、カガリは天竜人を殺したい。マリージョアに襲撃までは足並みを揃えられても、それ以降は無理だ。
「世話になった!」
海から顔を出し腕を振りながら叫ぶタイガー。甲板に集まった船員達は涙を流す。
「うおおお〜〜ん! 行かないでくれタイの兄貴ぃぃ!」
「もっと冒険の話聞かせてくれよー!」
オロロ~ンと泣く船員達。タイガーは2ヶ月ほど滞在したが、見事に船員達に慕われたようだ。
人間嫌いでありながら、恨みを遺さぬよう心掛けた海の男とあの時島にいた天竜人は必ず殺すと決めているカガリ。
二人の道が交わることは、きっともう二度とないだろう。
そして数ヶ月後、フィッシャー・タイガーによるマリージョア襲撃。数多の奴隷達が解放された。
タイガーに感謝する者、世界に憎しみを残すもの、救われたことをただ喜ぶ者、革命軍に保護される者など様々。
「というわけで、ちょっくらマリージョア焼いてくるわ」
「何がというわけなんだね…………」
シャボンディ諸島。後半の海前の、最後の島…………島というか、街が建つほどの巨大なマングローブの諸島にて、カガリは気が合い飲み仲間になった老人にそう提案する。
先日保護された三姉妹は何言ってるんだこいつとあり得ないものを見る目をカガリに向けていた。
「何がって……おれの仇の天竜人達が上に居て、今なら派手に焼いても巻き込まれる奴隷は少ない。そいつ等を巻き込まないよう気を付けて焼いても、百人ぐらい殺せるだろ?」
「神の騎士団は一筋縄では行かんぞ…………」
「そうか。カイドウとビッグ・マムぐらいか?」
「いや………どうかな、私は今のあの二人の強さを知らない」
「まあ、
聖地マリージョア。この世界を作った神々が如き天竜人が暮らす遥か上空の都市。
「早く飯を持ってくるえ!」
「がう!」
ここでは少し苛立っただけで人が死ぬ。この前までは殆ど奴隷がそんな立場だったが、居ないなら代わりは使用人。そもそもこの世界は天竜人とそれ以外。
奴隷も使用人も、どこかの王すら天竜人が殺したいと思えば殺しても良いのだ。それが世界のルール。
「使えんえ! お前使えんえー! 使えん罪で家族も処刑だえー!」
「お、お許しを……む、娘だけでも……………」
「娘? むふーん、ならその娘をわちきの新しい妻にしてやるえべ!!」
ごう、と天竜人が突然燃えた。
人体自然発火現象。火気もなく人が突然燃える超自然的ないまだ解明されていない現象があるらしい。
ただし、今回は自然発生ではないが。
「これで67人目。後33人か………まああの時と無関係の奴等もムカついて殺しちまってるから、正確には今123人だから、足して33…………最終的に、最低でも156人殺すことになるな」
天竜人の屋敷の1つで使用人の女の指を折って殺してくれというまで何回かかるか賭けていた親を焼くカガリ。
因みに殺してない。
「後何秒で殺してくれって言うと思う?」
と、親と一緒に笑っていた彼の子供に尋ねるカガリ。
鉄の牛頭骨で顔を隠したカガリに恐怖の目を向けながらも、その瞳の奥に宿るのは身に覚えのない脅威にさらされた、 理不尽に怒りを向ける者の目。
「わ、わたくし達を誰だと思っているあます!? こんな、こんな事! 絶対許さないあます! お前も、お前の生まれた島も皆殺しに………いいえ、お前の生まれた海の人間全員生きたまま焼き殺してやるあます!!」
ゴウッと炎に飲まれ焼け死ぬ天竜人の女。と、その妹かガタガタ震える天竜人の子供。
「なんだまだ子供か」
その横を通り過ぎるカガリ。子供が睨んでくるが、眼窩の奥の瞳と目が合い小便を漏らして気絶した。
迫りくる天竜人を守るための騎士達を片手を振るい放つ炎で焼き尽くす。因みに、実の力は使っていない。
一族の血の力のみで殺しておきたかったからだ。
「ん?」
と、邪魔な一般兵士達を斬り殺しながら突き進む影。カガリを斬りつける。
「此処を何処だと思っている、汚らわしい血を撒かねばならんこちらの気持ちを考えろ」
「やだね」
「!?」
反応も出来ず斬られたと思ったカガリの返答に驚愕する男を蹴り飛ばす。そのまま追加で炎を放つ。
「会いたかったぜぇ三日月頭! 髭まではやして、ますます三日月じみたなあ!」
「……………誰だ、お前は?」
「13年前の島を覚えているか?」
「……………?」
「そうか、死ね」
マリージョア襲撃放火事件発生から、1時間。
炎の海の中に、6つの影。
「やってくれたな、カイドウとともに消えたルナーリアか? 炎魔か? 或いは、他の生き残りか……………」
「まさか世界の天辺にこんな怪物共がいたとはなあ…………大ニュースだが、教えてももみ消されるだろうな」
「誰かに教えることなど出来ない。貴様はここで死ぬのだから」
「っ!!」
ゴッと頭を何かで弾かれたように吹き飛ぶカガリ。顔が見えないよう自前の炎で隠す。
「…………まあ良いか。目的の奴等は半分以上殺せた。命を懸けて殺すなんて、それこそ向こうで殴り殺される」
「逃がすと思うか?」
「逃げるんだよ、頭わりーな」
自らの炎にメラメラの炎も混ぜる。正体を探るためか、敢えて覇気がない攻撃も混ぜていたが念の為食らっておいた。果たして騙せたか………。
あの反応からして、ルナーリアに襲撃される心当たりはきっちりあるようだし。
「神気取りのてめぇ等を殺すために編み出した技だ。さて、何人殺せるか…………」
「神を気取っていたのは、貴様等の愚かな祖先だ!」
「真似事が好きなのか。どおりで小物臭いと思った」
カガリの足元が、その熱量で赤く発光しながら溶け始めた。
「
その日、
神の騎士団、半壊。五老星トップマン・ウォーキュリー、重傷。他五老星も軽傷とは言えぬ大火傷。
天竜人死者合計256名。
世界最悪の大事件として、世に報じられた。
「いや死ぬかと思ったね実際」
敢えて攻撃を食らっていたのもあるが、あの5人はかなりの強さを持っていた。おかげで三日月頭を殺しそこねた。
次は腕を奪うとか拘らず確実にぶっ殺そう。
「また、傷が癒えれば殺しに行くのか?」
「……………………」
『おれはどうせ、今のガキより早く死ぬんだ! なのに、これから生きてく奴等のために恨みしか残せねえなんて、それこそ滑稽だろう!?』
『だが、恨みを残したくない………』
「……………暫くは良いかな。どうせそのうち、最近話題の革命軍と天竜人がぶつかるんだ。殺すのはその時で良い」
別に天竜人がいなくとも世界は回るだろうが、急激な変化は混乱を生む。それこそ海賊時代の始まりのように………。
「天竜人殺し尽くした後の世を栄えさせるだけの力を革命軍が得るまで、気長に待つさ」
「記憶喪失の新入りだ。ドジっ子だから仲良くしてやれ」
「船長! 文字通り焼きいれるのはやりすぎでは!?」
「違う、タバコの火がコートに引火したんだ。ドジっ子だから」
「そんなドジなのにそんな服を!?」