【悲報】メラメラ食っちゃった 作:敗北者
音もなく男達が燃え上がる。
異変に気付くのは、働かされていた坑夫達。いい気味だとは思うが、その炎が自分に向けられない保証はない。
「誰か! 誰かいないの!? 王が何者かに殺さ──」
王妃の首が飛ぶ。切断面から炎が上がり、一瞬で炭になる。
音はない。だが切られる前に叫びで集まってきた兵士達が男に気付き銃を向ける。その発砲音に、漸く島が異変に気づく。
気付いたところでもう遅い……いや、この島で王を気取り、あるいはその配下として暴力に酔っていた時点で最初から遅かった。
「か、海賊………」
「お、おれ達これからどうなるんだ………」
と、坑夫達が不安そうに海賊を見る。結局これまで通り奴隷として働かされるのだろうか。
いや、どうせならここで死んだほうが楽なのかもしれない。
「船長、どうします?」
「ん? ああ、島は取り戻したし………宴だな」
「宴ですか」
「ああ、おいお前等」
と、声をかけられビクリと震える坑夫達。これから宴の準備をさせられるのだろう。
「宴の準備をするから、邪魔にならない場所で休んどけ。宿舎とか」
「船長、宿舎は船長が燃やしました!」
「……………マジか」
じゃあ温泉にでも入ってろ、と温泉を独占するパイプを破壊して温泉を復活させた海賊達。
現場監視員達しか入れなかった温泉に肩までつかり、風呂から上がれば女海賊達が冷えた果汁入り牛乳を持ってきてくれる。何だこれは、天国か?
「はい、口を開けて〜」
「あがが………」
「はい、良いですよ。次の方〜」
と、顔色の悪い女医に口を開け霧のようなものを突っ込まれる。ところで何故この女医はさっきから自分に薬を注射してるのだろうか?
「あの、僕も手伝います」
「うお!? でっか………!」
ホカホカと湯気を立てる大男が話しかけてきた。
カガリよりでかい。
「ん? 何だお前、バッカニア?」
「バッカ……? よくわからないけど、血液検査したところ普通の人間だよ」
「なんだそうか」
まあこの世界割と大きいのをチラホラ見かける。ゲルズも、でかい人間がいると言ってたし、ビッグ・マムやカタクリなんかもデカい。
コーラも3メートル近くあるし。
「ところでバッカニアって」
「親父の友達」
「僕は、人間だよ………」
「そうか。で、どうした?」
「宴の、手伝い………」
「じゃあ櫓造り手伝ってくれ」
ドンドットット、ドンドットットと太鼓の音が響く。大きな焚き火を囲い、騒げや騒げ。
「美味い……! 肉なんて、何年ぶりだ!」
「お酒もありま〜す!」
海賊も奴隷も関係なく肉を食い、酒を飲み、果物をかじり、踊る。
様々な非加盟国から(実は加盟国からも)連れてこられた奴隷達は各々の故郷の踊りを踊る。
「ほ、本当に………本当にありがとう」
「良いってことよ」
「コーラさん! 焚き火に近づくな、燃えてる〜!」
コーラが燃えて周りが慌てて土をかける。ワハハと笑いが起きたり、慌てる声が響く。
「うお何だあれ!?」
と、動物の玉を見つけて驚く海賊達。動物が遊ぶためではなく、動物が集まってできた玉だ。
「おれだ」
「「「船長!?」」」
毛玉の奥から顔を出すカガリ。狐や狼にペロペロ舐められている。
「どういう状況!?」
「皆、王様大好き………」
と、混乱する船員や奴隷の中で一番大きな男が笑う。因みにまだ14歳らしい。
名前はテリア。種族は純人間。銃弾を食らったら血が出る程度の防御力。
「へえ、やっぱりお前聞こえるんだな。範囲はともかく、聞く深さならおれよりも上か?」
「聞く?」
「此奴等の声が聞こえるんだろ? 感情を何となく感じるならおれにも出来るが、具体的な声までとなるとおれには無理だ。てか、此奴等おれのこと王って呼んでんのか………確かに母さんは族長の娘で親父は戦士長だけど…………」
割と真っ当にこの島の王を名乗れる血筋だったりするカガリ。とはいえ、滅んだ国だ。
誰もいない玉座に座り王を僭称した所で滑稽なだけだろう。
「ワフワフ!」
「コンコンゴォン!!」
「………此奴等が怒ってんのは解るんだが」
「王様が、自分は王じゃないって言ったから………」
「そうか…………」
喉や眉間を撫でてやれば怒っていた動物達も気持ちよさそうに目を細める。
「まあ、彼奴等にくれてやるよりましか」
「…………僕も、手伝う?」
「いや、おれ等は宴を楽しんでいろとよ」
ペレン。
同時に金属を生み出す鉱石が取れる天竜人の所持する島の一つ。その島から、近隣の海軍基地に無言通話が届いた。
その後返信しても、返事はない。すぐに異常事態と判断し海軍が派遣された。
「ペレン……炎魔に滅ぼされた悲劇の島か」
現在四皇の一角として君臨する【炎魔】ウルカス・カガリの故郷にして、最初の虐殺現場。
老若男女は勿論、近くに海軍が寄り付く必要がないほどに精強な戦士達が居たというのに、僅か5歳で殺し尽くしたというのだから2億も納得の賞金額だ。
「戦士達がいなくなり暫く海賊共が荒らしたらしいが………」
その海賊達も最近手を出さなくなった。それだけ海軍が働いた証拠だ。
「何処の誰かは知らんが、我等の許可無くあの島を物にできると思うな!」
「我等の盟主の帰郷だ。貴様等こそ、許可無くあの島に近付くな」
「「「!?」」」
何時の間にかマストに腰掛けた中年ほどの男。右足を左膝に乗せ、右膝に肘をつき頬杖をつく不遜な態度の男。
何時から居た。どうやって、この船に乗り込んだ!?
「貴様、どうやって船に乗り込んだ!?」
「泳いで」
と、船を………いや、恐らくはその下の海を指差す男。
「海賊の仲間か!」
「いいや、儂は王だ」
と、戯言を宣う男に向かい月歩で接近し押さえつけようとして、かわされる。
「頭が高いぞ、兵士風情が」
そのまま後頭部を掴まれ海面へと投げ飛ばされた。
「カッハッハッハッ! まあ、非加盟国の儂等を貴様等世界政府が人間扱いしてないのは周知の事実だったな!」
「ひ、非加盟国!?」
「おうとも。貴様等政府に、やってきた海賊諸共国民が焼かれかけたわ!」
「で、出鱈目を!!」
銃が発砲されるがマストを飛び降り避ける。そのまま船を破壊し、内部に侵入して、壁を壊して出て来た。
「でたらめらもんかよ! ヒック、人のふんでねぇ島だにょ言いやがってよぅ!!」
「ええ、酒のんでる!?」
「しかももう酔ってるぞ! どんだけ弱いんだ彼奴!!」
「酔ってね〜!」
明らかに酔っている。何だこの男は、何処まで海軍を、此方を馬鹿にする!?
「海軍への侮辱は許さんぞ海賊風情が!」
「海賊じゃねーへの!」
「ぐあ!?」
「ぎゃあ!」
「がは!」
グビグビと口に含んでいたワインをプッと吐き出す。高速で放たれたワインが海兵の体を貫いた。
「ま〜儂等の盟主は海賊だがなあ!」
「海賊………帰郷………まさか、アカツキ連盟か!」
「そんにゃにゃまえだったか? 婆さんやどう思う」
「え、おれ?」
「「「話聞けよ酔っぱらい!!」」」
何故か海兵に尋ねる酔っぱらいに海兵達が突っ込む。
「資源の価値を知り今更滅ぼした島が惜しくなったか、浅慮で欲深い海賊が!!」
「……………あぁ?」
ピリッと空気が張り詰めた。訓練を積んだ海兵達が身を竦ませる程の殺気が男から放たれる。
「浅慮も欲深いのも、てめぇ等世界政府だろうが。もう良い、沈めろ」
その言葉と同時に船が揺れ、傾く。
「儂等の故郷の冷たい海と違い、この海は温かい。泳げば助かるかもな。尤も、この辺りは海王類も多いが」
「ま、待て!!」
傾いていく船の端に移動する男に背後から襲いかかる海兵。男が振り向きざまに放った蹴りで吹き飛ばされ船を貫く。
骨が折れ、各所から血を流す海兵。血の匂いに鮫が集まってきた。
「王様の、部下?」
「そうだ」
「すごく、怒ってた」
「故郷を侮辱されたんだろ。非加盟国ってだけで、何をしてもいいと思う海兵も、それを知らず正義を信じる海兵も嫌いだからなあ彼奴等」
猿達が運んできた酒を飲みながら答えるカガリ。木の洞に隠した果物が発酵して生まれる天然の酒だ。追加で木の実を食う。糖分が高く、地面に落ちると直ぐに自然発酵する。
宴が好きなだけあり、酒好きが多く、そんな島に相応しい植物ばかりだった。というか祖先がそういう植物の種をもらっては島に蒔いていたらしい。
「僕達は、これからどうなるの?」
「どうもこうも、好きにすりゃいいさ。帰りたいと言うなら故郷に帰してやる」
「僕は………王様といたい。すごく強くて、かっこいい! 僕もレーザー撃てるかな?」
「無理だろ。後あれはレーザーじゃなくて超高出力バーナーに近い」
海賊達が次にさせたのはビーチに捨てられた屑石の回収。屑石にしか見えないが、これがカガリ達の一族にとって有用な鉄鉱石。
温度とかコークスや石灰の量とか結構シビアどころか、見た目殆ど変化のない鉄鉱石から鉄の含有量を見極めその都度変えなくてはならない。
後普通の鉄と違い底にたまらないので取り出す場所をキチンと把握して取り出さなくてはならない。
「そして出来たのがこの王鉄鋼だ。これで新しい船を作れ」
「ふむふむ。なるほど、強度次第ではさらに巨大な船が作れるかもしれませんね」
「おまけに軽いからな…………まあ、一部は貰うぞ」
「どうするんですか?」
「成人の儀」
火山の麓にある洞窟。それが成人として髪が白くなったカガリ達火守りの戦士達が成人の儀を行う場所。
本来成人した次の日に準備を始めるのだが、随分と時間がかかった。
改めて島から掘り起こし、製鉄した王鉄鋼。金槌も用意した。火種は持ってきていない。使うのは、自らの炎。
手に持つ王鉄鋼に炎を移し、赤く、柔くなるまで熱し、叩く。
叩いて、折り曲げ、重ね、叩き、また折り重ね、叩く。
これを繰り返し形を整えて、水で冷やし、熱し、叩き………。
「海賊共! 捕えた労働者達を解放しろ!!」
宴が終わり、帰郷を望む者とカガリの保護下にある島に移住を求める者と共に戦いたいと付いてくる者に分けていると海軍がやってきた。
「因みに海軍に保護されたい人いる〜?」
「と、とんでもない! 彼奴等、視察に来た時も儂らを無視したんだ!」
「そうだそうだ! 信じられるか、あんな奴!」
「ん〜。なら、好きにしていいね………あっはぁ」
と、自らの首に注射器を刺すフィナ。見るからに体に良くない色をしている液体が注入され、見るからに体に良くない発疹が浮かび上がる。
「
片手を振るうと同時に腕が霧になり海軍船を包み込む。耳をすませるテリアは声がどんどん消えていくのを感じ取る。
「あ、あれは?」
「フィナはキリキリの実を食べた霧人間。自らの身体に注射したウイルスや毒を自身そのものである霧と共に相手に届けるのさ。それの応用で体内に薬を届け、治せなかった内臓の傷も治すんだぜ。凄いよな! ゴフ!」
「コーラさんが霧の射程内に入って毒食らってるぞ!」
「医者〜!」
「あひ、ひひ………大丈夫、ひはがひひれれめゃいがしてらんらんひもひよふははへひふへへへは」
「そうだった、うちの医者こんなんだ!!」
「看護師〜!」
「看護師Aです」
「看護師Bです!」
「看護師Cで〜す!」
「今すぐコーラさんを治療してくれ!」
フィナは自分が作った毒やウイルスの抗体はちゃんと事前に作ってから実用化する。なのでこの毒に対する薬もちゃんとあり、看護師達はそれをきちんと覚えているのだ。
「待ってろコーラさん! わたしが助ける!」
「ボクが!」
「いいえあたすが!」
「「「ゴフ!!」」」
「コーラさんの好感度狙って全員毒霧に飛び込みました!」
「看護師やめちまえ!」
「騒がしいな……
と、炎が毒霧のみを焼き尽くす。振り向けば呆れた様子のカガリ。
吐血しながらビクビク痙攣し、しかし恍惚とした表情のフィナの懐から薬を取り出しコーラ達に打ち込んでいく。
「フィナを戦わせるならガスマスク用意しろって言ってんだろうが」
「新作の薬、私以外に対してあの人数、どの程度影響及ぼすか実証したかったからね〜」
と、元々毒に対して高い耐性があるフィナが回復したのか起き上がる。そのまま別の毒を飲んだ。
体が常に不健康じゃないと落ち着かないのだ。毒中毒だ。
そんな彼女の懸賞金は3億1190ベリー。
「フィナ、入れ墨頼む」
「入れ墨〜?」
「親父は死んだからな。戦士長はおれが継ぐ………成人の儀は終えたから、月桂樹の入れ墨と……戦士長を継いだから背中に黒い羽の入れ墨を頼む」
「よくわからないけど解った〜………」
「因みに成人した火守りの戦士に毒はそうそう効かねえから、死なない程度の毒を試そうなんて思うなよ」
「………………ちえ」
数日後、ペレン周辺の海軍基地から異変の報告を受けた海軍本部から救援が来たが、島そのものが消えていた。
船医ルルカリア・フィナ
船医だが常に服毒、発病してないと落ち着かないほど自分で実験を繰り返したマッドサイエンティスト。
キリキリの実を渡され、新鮮な毒やウイルスを服毒し相手に感染される。こんな使い方をするのは彼女ぐらいだろう。
また、塗り薬を自身に注入して患者の体内に直接塗ったりする。
看護師達
フィナの助手達。面食い。愉快で明るいコーラさんを狙ってる。因みにABCは役職名で、フィナが人の名前を覚えるのが苦手なため
コーラさん
ドジっ子。カガリによって新しいピエロメイクを施されている。