【悲報】メラメラ食っちゃった 作:敗北者
「IQ?」
「ああ。どうやらこの島特有の植物みたいでね? 摂取した動物に状況に応じた進化を促すんだって」
「……………成る程」
カガリに燃やされた熊が炎への耐性を手に入れたのはそのIQの効果なのだろう。恐らくは濃縮、加工したエキス。
「この島の住人の腕に羽があるのも、空に連れてこられて飛んで逃げたいという願いがあるのかもね」
どうやら人間にも効果があるらしい。
人間達はダフトグリーンという動物の嫌う匂いを放つ木を村を囲むように育ててそこで暮らしているのだとか。
しかし環境に応じた進化という事はこの島は弱肉強食の島だったと言うことになるが、良く生きていたな。
「動物達はここ数年凶暴化を初めたらしい。この島を支配する海賊の仕業だろうね」
「海賊?」
「この島……メルヴィユを空へと運び外界から隔離した張本人。伝説級の海賊の1人、金獅子のシキ」
「……………聞いた覚えがあるな」
カイドウやビッグ・マムから聞いたことがある。
元ロックス海賊団の幹部にして、海賊王ゴールド・ロジャーとも戦った海賊の1人。
元本部所属の海兵によると、インペルダウンから脱獄した後海軍本部へ強襲したぶっ飛んだ男だとか。
「確か、フワフワの実の能力者。物を浮かせるとは聞いていたが、ここまでの規模か………」
となるとシキを倒しても島が落ちる可能性がある。というか薬の影響なら倒したところで動物の凶暴化は治らないか。
「それから、シキはどうやら村の男集や若い娘をさらって労働力にしているみたいだ」
と、コーラの言葉にカガリはそうか、と返す。
「どうする、船長?」
「決まってんだろ」
聞かれるまでもないと言うように、カガリは島の中央を見つめる。
「あの王宮、潰すぞ」
五秒で制圧した。
「どうやら大規模な海賊同盟を組む気だったみたいだな」
「新世界目指してそこそこ名を挙げてる連中か。覇気も使えねえ雑魚ばかりだが」
定期的に勧誘した海賊団を連れてきて島の戦力となる動物を見せているようだ。その間の世話をさせるのが島の住人達。
彼等からすれば驚異の海賊団も、カガリ達からすれば雑魚も雑魚。こんな連中集めて何をするのか。
後半の海は五皇の縄張り。そこの海賊は五皇に従うか、逆らい続けるかの二択。逆らえば当然目をつけられる訳で…………。
まあ後半入りする手前の海賊を鍛えると考えたらかさ増しになるのか? それに、今回いた奴等が特別弱いってだけかもしれない。
「船長、海賊リストを見つけたぞ」
「おう。ここ数年名を挙げた海賊達か………エースが載ってねえな。節穴め」
「白髭に取られたからじゃねえの………」
と、リストを読み込んでいく一同。このキッドとかいう新人、かなり派手に動いている。
「ルゥオオオオオオオオ!?」
「わ、びっくりした」
唐突にコーラが叫んだ。視線を向けると慌てて手配書を握り潰す。
「どうした?」
「ああ、いや………なんでも…………なんでもねえんだ」
「そうか? ところで、また燃えてるぞ」
「ん? あっつああああ!?」
タバコの吸殻が羽根コートに引火し火達磨になるコーラ。手配書も燃えた。あれでは何を見て叫んだのかさっぱりだ。
「船長、海賊達はどうする?」
「とりあえず海に落として、海軍にここの座標を送っとけ。運が良けりゃインペルダウン。海軍も月歩で飛んでくるだろ」
火達磨のコーラに触れると炎がカガリに吸い込まれ鎮火した。
「ふう、死ぬかと思ったぜ」
「タバコの火が引火した程度で死ぬかよ」
「普通は死にますよね」
「でもラチェットさん、副船長、船長との鍛錬で燃やされてる」
加減しているとは言え、それでもピンピンしている。存外コーラは頑丈なのだ。
「あの………」
と、その時ドアが開く。怯えながら入ってきたのは一人の美女。腕の羽から解るように、メルヴィユの住民。
「お食事をお持ちしました」
「ん。そこに置いとけ」
自分達を支配していたシキの部下も傘下に入る予定だった海賊達も容易く蹴散らしたカガリ達に若干の怯えがあるのか声は震えていた。が………
「あの、すぐに、逃げてください!」
「…………ん?」
「貴方達は強いけど、この島を支配するシキは、此奴等なんかとは比べ物にならないほど強くて、だから………」
「………」
まさか現状が海賊に支配されている住民に心配されるとは思っても居なかったカガリは目を見開く。というか……
「俺のこと知らない?」
「二十年近く外界の情報は規制されてましたから」
そりゃ隠すか。
「まあ、問題ねえよ。この世界で俺とやりあえるのは数える程だ。相手が伝説の海賊でも、カイドウやリンリン避けてる時点で、俺の敵じゃねえ」
「で、でも…………!」
「ラチェット、コーラ、島民が何時でも避難できるようにしておけ。明日朝、ペレンに乗せる。アピス、島の動物たちとは?」
「全員じゃないけど、それなりに仲良くなれたと思うけど…………皆、シキを倒すって言ったら喜んでくれた」
嫌われているようだ。そりゃそうだ。フィナもSIQというIQエキスを改造した薬品を確保済み。投与が止まれば凶暴性は薄れていくらしいが、それを早める薬も作れるようだ。
熱せられた海が水蒸気を生み、上空で冷やされ氷に変わる。氷の粒が摩擦を起こし、静電気が蓄積され、やがてゴロゴロと音を立て雷が起こる。
「それで俺の力を封じたつもりか、小僧」
王宮を見下ろし、佇む青年を睨みつける金獅子のシキ。
「封じれるとは思っちゃ居ねえさ。ただの嫌がらせだ」
「ジハハハハハ! 生意気な! 知ってるぞ、お前。五皇だったか? ロジャーの所の見習いは兎も角、てめぇみてえなガキが白髭やカイドウ達と肩を並べてるとはなあ」
「………………………」
「勘違いするなよ! てめぇ如きが、奴等と同格なわけあるか!」
まあ、皇帝同士の戦いは基本的に世間には隠されるから、カイドウ達と戦ったことがあるのは知らなくても不思議ではない。
「だがまあ、それでもてめぇが強い海賊で、戦力を持ってることに変わりはねえ。俺の右腕になれ! 共にこのくだらねえ世界を滅ぼそうじゃねえか!」
「短い夢に付き合わせるな」
「…………ああ?」
カガリは炎を放ちながら剣を抜く。王鉄鋼により作られたカガリの剣。あれから何度も打ち直し、鍛え直された漆黒の剣。
「支配なんざ、興味ねえんだよシキ」
「──────!!」
──俺は支配に興味がねえんだよシキ!
重なる。この海で最も自由だった男に。最後の最後まで支配を拒んだあの男に。
「なら、死ね若造!」
「夢は終わりだ、老いぼれ」
海軍本部マリンフォード。
元帥室の電伝虫がプルプルと鳴きだす。
緊急回線。この番号を知る者からの連絡となれば、もっと事前に何か予兆がありそうなものだが。
「私だ」
『…………………』
「おい?」
『
紡がれたその数字に、海軍元帥センゴクは固まる。
顎が外れそうなほど大きく開け、目玉が飛び出しそうなほど目を見開いた。
『メルヴィユより緊急連絡。指定座標にて、海賊金獅子のシキ確認。シキは現在、動物実験と共に傘下となる海賊を集め戦力を補充しています。報告、以上』
「待て! 切るな! お前なのか!? どうして………何故お前がそこに!!」
返答はなく、通信は切れた。
「ピロピロピロ、何処から迷い込んだこの馬の骨め!」
「ん?」
「ん? 何だ鏡か」
振り返ったピエロのようなメイクを見て、大柄なピエロは紛らわしいというように肩を竦める。
「って俺はそんなイケメンじゃねえ! だぁれがイケメンじゃないだ!!」
「何も言ってねえ!!」
コーラは思わず叫んだ。
「まったく、ピエロってのはふざけまくって真面目な話も出来ねえ」
「お前もピエロだろ!」
生意気な、と剣を構えるピエロを前にコーラは煙草を吸う。
「その炎、能力者か!」
「あっつ!?」
「ただのドジか!!」