【悲報】メラメラ食っちゃった 作:敗北者
「獅子威し・地巻!!」
「……………」
カタカタと小石が揺れたと思ったら、大地がめくれ上がり、土の獅子の群が現れる。フワフワの実の力で土一粒一粒を望む形で浮かせているのだろうが、一つ一つが小山並の質量。
擦れる音か、作り物の獅子でありながら獅子の咆哮のような音を立て襲いかかってくる。
意思を持った土石流のように襲いかかる獅子の群が渦を巻き、巨大な土の柱が生み出される。圧縮された土の塊はすべてを押し潰すだろう。
「なんだ、もう終わりか…………ん?」
土の柱の一部が赤く染まり溶け崩れる。上部が音を立て地面に激突した。
「大した火力だ」
「………………?」
感心するシキに対して、カガリは訝しむように顔をしかめる。
「だが能力者。まして炎なら、海には逆らえまい!! 子供でも知ってる!!」
島の周りに存在した海の一部が浮き上がる。能力者の力を奪う海水が、能力者の意思により襲いかかる。
「獅子威し・海煽巻!!」
「炎日・
海水の獅子はカガリに触れることなくジュオオオという悲鳴のような音を立て、蒸発する。
「なに!?」
「この程度、焼け石に水だ。子供でも知ってる。狙い火」
シキの周りに複数の炎球が浮かび、空へと伸びていく。
「“
「ぐおおおおお!?」
炎に導かれ落ちてきた雷は、より通りやすいものに向かい移動する性質そのままに炎より伝導率の高い金属、シキの義足代わりの剣に向かいシキを焼く。
雷撃で痺れたシキへカガリが蹴りかかる。
「島を下ろせ」
「がふ! ああ?」
冬島の断面に押し付けるように踏みながらカガリは命じる。
「お前を気絶させたり殺して落としても、島の獣が何匹か死ぬからな。なるべくゆっくり降ろせ」
シキを焼き尽くさないのはそれだけが理由。そう言外に告げられシキの顔が屈辱に歪み。
「!!」
と、見聞色で背後から迫る攻撃に気付いたカガリが振り返ると同時に赤く輝く溶岩がカガリの体に当たる。
「ははあ! 焼かれる気分はどうだ、クソガキ!!」
物質の熱伝導率次第では同じ温度でも内包するエネルギー量はまるで別物。シキを焼かぬために温度を下げていたカガリよりも、カガリが先程溶かしたマグマの方がエネルギー量は上。マグマグがメラメラの上位とされる所以。
だが………。
「生憎、俺は頑丈なんだよ」
炎の王、燃えず。
これは炎の体質というより、カガリ本人の体質。火守りの戦士の血を引くカガリの肉体の頑強さはカイドウにも迫る。
「お前さっきから、水と言いマグマと言い………何故覇気を使わない」
「………………!」
「………覇気を失ってるのか?」
病と老いで衰えた白ひげのように、シキは頭蓋に刺さった舵輪と老いで衰え、策謀の為に目立つ動きも出来ず精々が自分より遥かに弱い島の怪物しか相手せずに鈍っている。今の彼はカイドウ達と肩を並べていた過去よりも遥かに弱いだろう。
「その程度でよくもまあ、
シキの王宮から手にした資料。どうもシキは
海賊島と呼ばれるハチノスすら凌駕する
「儚い夢だな。平和の海を滅ぼせたところで、お前につく程度の海賊もたかが知れる」
平和の海…………蔑称を最弱の海。平均賞金額は300万ベリーという、世界政府から大きな脅威はないと認識されている海だ。ただし海賊王や海軍の英雄、革命軍のリーダーなど時折強者が現れる海でもある。
現状あの怪物達を倒せる程の人物が居るかは知らないが、海軍のみならず革命軍がすぐに動くだろう。そうすればシキなどすぐに捕まる。
「黙れ! 俺は、あの海を滅ぼす! 滅ぼしてやる! あの海は、ロジャーが死んで良い場所じゃねえ!!」
島が崩れる。シキが拘束から逃れ、超大質量の土の獅子がカガリへと襲いかかる。
「大人は知っているぞ! 熱は移動する!」
1000度の鉄球を氷に当てれば熱を取り込んだ氷は溶けるが、鉄球の温度は急速に奪われる。
氷であろうと無かろうと、カガリが熱を生み、その熱で何かを燃やし何かを溶かせばその分熱は奪われる。
成る程道理だ。だが…………
「この程度の小石で俺は傷つかねえし、そうでなくても俺は炎そのものだ」
消費したエネルギーなどいくらでも補充出来る。溶けたマグマが渦を巻き、冷えながら再びカガリへ迫りまた溶ける。
更に近付いても蒸発する。
陽炎が浮かび上がる。距離を取ったはずのシキの肌が焦げ付きそうな熱波が襲う。
「……………!」
覇気さえ使えれば、或は耐えられただろうか? 此方の攻撃も当たっただろうか?
残酷なまでに衰えたシキは、海の皇帝の足元にも及べない。
「
「………未来の、海賊王だと」
「………あ?」
「ふざけるなあああ!!」
冬島に続き春島が崩れ、カガリへと襲いかかる。先程以上の質量は燃やされ、溶かされながらカガリから確実に熱を奪い始める。
「宝目当てのミーハー共が海にのさばったって邪魔なだけだ…!!」
大した覚悟もなく、海にのさばる海賊達に怒りを込め、今よりも盛況な、ガープやセンゴクが最前線で暴れていた時代の海軍と戦い続けた男は叫ぶ。
「熱に浮かされただけの雑魚がのさばって良い海などありはしない!! 彼奴が、俺が、俺達が築いた時代が、汚されてたまるか!!」
覇気、では無い。
嘗ての時代を生き抜いた怪物が放つ気迫が雨粒を弾く。
「何が新しい時代…!! 海賊は海の支配者だ…!! 弱い奴等を支配し、強い奴だけが君臨出来る海! 頂点に立つのは、俺だあ!!」
取り出されたのは深緑の液体の入ったガラス筒。シキは蓋を取り、針を己に突き刺す。
「ぐ、ぎぃ………ぐあああ!!」
「……………!」
島に残る怪物達の怯える声が聞こえる。大気を揺するそれは、間違いなく覇気。
シキの筋肉が盛り上がり、一周り、二周りも膨れ上がる中、義足代わりの剣を抜く。吹き出る血は止まり、代わりに獅子のような足が生える。
肉体の再生………ではなく
ザワザワと毛が逆立ち、息を荒く此方を睨むその姿は正しく黄金の獅子。
「────!!」
ぶつかり合う得物…………否、
「………体に悪そうだな」
「ジハハハハハハ!! はぁ……知った、ことか! 俺は世界を、支配する!! 邪魔する奴は全て殺す。まずはお前だ!!」