【悲報】メラメラ食っちゃった 作:敗北者
「ケミカルジャグリング!!」
Dr.インディゴはコーラに向かい炎の玉を放つ。能力ではない。薬品だ。
コーラはそれを全て銃弾で撃ち落とす。
「
爆炎の壁の向こうに聞こえた声を最後に、音が消えた。一瞬の動揺。その隙を逃すはずもなく、腹に叩き込まれる拳。
「!!??!!」
血を吐くほどの衝撃だが、殴った音も悲鳴すら出ない。違和感………これまで育った世界から切り離されたような気持ち悪さを覚える。
「ご、は………」
音が戻った時には、既に重症。それでも倒れず、敵を睨めるのは彼もまた海賊王の時代に海に生き、海賊王の船と戦い続けた海の男故か。
だが老いた。シキや白ひげ、レイリー達よりも若いインディゴだが元来研究者であり、この島に潜伏して以来研究ばかりの毎日。
最早嘗ての力はなく、そして、頑丈な体についていくだけの精神も、もう………。
「「────!!」」
突如島全体を震わせる膨大な覇気。海の皇帝、そして海賊の王に抗った者が放つ覇王の威圧。
雑兵の意識を奪い、資格なき者が立つことを許さぬそれは、しかしインディゴの意識を逆に覚醒させた。
知っている。覚えている。忘れるはずもない、この覇気は!
「!! 俺は、金獅子を王にする! お前等は、邪魔だあああああ!!」
残りの全薬品を注ぎ込んだ巨大火炎。人一人を容易く飲み込み焼き尽くす緑の業火。それでも、カガリの炎に遠く及ばず…………しかし、コーラはそれを確かな脅威と認識した。
漆黒に染まった足が振るわれる。炎を切り裂き、呑み込み、風を巻き込んだ圧縮された嵐のような空気の刃がDr.インディゴを切り裂いた。
ルナーリア。
汎ゆる環境に適応し、背中の炎が燃えている間は如何なる攻撃も弾くとされる種族。
血が薄まったとは言えその血を引くカガリをして、覇王色を纏う攻撃は効く。あと妙な技………覇気が体内に流れて内部に響く攻撃もそこそこ効く。
覇気の技術………レイリーが使っていた技だろう。本当にそこそこだが。
「黒獅子・延罹巻!!」
覇気を纏い黒く染まる土の獅子。先程までの小山サイズとは比べ物にならない、小島一つをそのまま使った大質量の土石が襲いかかってくる。
「
炎で出来た無数の狗が矢の様に空を駆け抜ける。武装硬化された獅子を炎の牙で食い千切るも、消しきれない質量が襲いかかる。
溶かしても溶かしても尚付きぬ大質量。解けてマグマになった島の一部も空中を飛ぶ間に冷やされ再び迫る。
「…………!!」
熱が急速に奪われる。触れる前に解けていく黒獅子が少しずつカガリへと迫ってくる。が………
「げは!」
シキが唐突に血を吐き出し武装色が消える。島は融解を超え蒸発する。
「がは、はぁ…………はぁ!」
「………命を削ったか」
今のシキは、喧嘩するたびに勘を取り戻すか、或は成長するかのように強くなっていく今のカイドウよりは弱い。しかし出会ったばかりのカイドウとほぼ同等か僅かに勝る。
腐り、怠け、失った力を取り戻すかの如き進化は老いた体を蝕む。
「ジハ、ジハハハハ! はぁ、それが………どうした! 俺はまだ戦える。俺はまだ、生きている! てめぇを、殺して……ぜぇ、治療して、また再スタートだ………ロジャーの作った時代を終わらせる。俺が、時代を作るんだよ!!」
「命を削ってまで、か? そこまで勝ちにこだわるのか。イカレてんぞお前」
ましてや相手は死者だ。生きているだけで勝っているようなものだろうに。
「………はっ。人なんざ、人より上に立ちたいと常に思ってんだよ。その為に力を求めて、その為に他人から奪う! 気取ってんじゃねえぞ小僧! 男に生まれ、覇王に生まれたからには、命を賭けて、上を目指すんだろうが!!」
「!!」
「
SIQがシキの闘志に反応するように寿命を対価に肉体を更に進化させる。振るわれた一撃は、カイドウを連想させる強力な一撃。
巻き込まれた岩の残骸を塵の如く消し飛ばし、カガリを夏島へと叩き付けた。
勢い止まらず島をぶち抜き本島へ激突した。
「ジハハハハハハハ!! ゲホ、ハハ………! 懐かしい感覚だ! これだ、この力! 取り戻したぞ、俺の力だ!!」
と、再び血を吐くシキ。
さっさと治療しなければ、勝っても死ぬ。はやくとどめを…………。
「くそ! 老いぼれが…………」
内臓のどこかしらが出血し、口から血を吐き出すカガリ。
歴戦の海の戦士。今の皇帝の内3人と肩を並べた、力だけなら間違いなくその皇帝に匹敵し、さらにまだ進化を続けるシキ。勝ち目はある。逃げに徹すれば、勝手に自滅する。
「……………………」
それがシキの、伝説の海賊の最期の戦いとなる。
「それはなんか、いやだな…………」
と、倒れていた体を起こす。体はまだ動く。だが………どうするか。
「…………ん?」
と、島の動物達がカガリの元へ集まっていた。敵意はない。数匹が前に出てきて、手や口に持つ花を差し出していた。
「……………IQ」
島を海から離し、支配し続けたシキに戦う男へと差し出されたIQ。シキが独占し、殆ど自生していない僅かな残りを島の動物達が差出す。
メルヴィユを支配する偽りの王を倒せと。
「………………」
カガリはその花を受け取り飲み込む。
シキのSIQの様に調整もされていなければ、濃縮もされていない原種。しかしあらゆる環境に適応するルナーリアの血と共鳴するように、その変化は劇的に現れる。
「見つけたぞ!!」
シキが放つ巨大な岩を、背中から噴き出す炎で焼き尽くすカガリ。
「ああ? なんだ、その姿は」
「神の姿」
褐色の肌となったカガリは炎を推進力に浮き上がる。その姿はまるで炎の翼。
「もう解ってんだろ。今さら治療したところで、お前はもう戦えない」
「ジハハ! だから、どうした! てめぇは、
俺は違うと、言外に言う。何時だって彼は、その戦いが最後になるかもしれないとロジャーに挑み続けた。今回だってそれは変わらない。
「そうか…………そうだな」
この海で生きて、強敵や同格と戦い、命を取り合い、次がある可能性など何処にもない。
「お互い悔いも残らぬ程全力で、恨みっこ無しでいこうぜ!!」
溢れる膨大な炎。渦巻き形作るは炎の竜。
「黒獅子!
「
春島、夏島、秋島、冬島のすべてを使った一匹一匹が大山サイズの獅子の群が、全てを飲み込み火葬する龍と喰らい合う。
飲み込み、溶かし、蒸発させる龍の炎。その炎を貫いていく獅子の牙。互いに消し合い、互角。次の瞬間には既に動いていた。
「獅子・
「
覇王を纏う二刀流と大剣がぶつかり合う。既に斬られていた嵐が再び斬られ空に十字が刻まれる。
競り負けたのはシキ。名刀が砕ける。
「ってめぇ!!?」
そのまま斬らず剣を引いたカガリに情をかけるつもりかと怒りを露わにするシキ。しかし、カガリの目には未だ消えぬ闘志が宿っている。
「言ったろ。全力だ」
赤く発光する掌底がシキの胸に叩き込まれる。
「
自らの同盟の名を冠した一撃。巨大な炎が膨れ上がる。嵐も、大気も、触れた全てを焼き尽くす緋色の月。
それは座標に向かっていた海兵達だけではなく、彼等が出航した近場の海軍支部からも目視にて確認できる程の大規模な炎。
未だ夜が明けぬ時間でありながら暁の如く空を照らし、伝説の海賊の一人の終わりを告げた。