ソード・アートオンライン〈黒の剣士と白の拳士> 作:黒川可憐
お待たせしました。では、続きをお楽しみください。
二人一緒に出現したのは、第五十層にある街、《アルゲート》。その転移門だ。
この街はアインクラッドの中でも、一際人口密度が高い。
理由は単純。そこかしこにある商店だ。
良く言えば、活気溢れる。悪く言えば、ばか騒ぎが盛んなこの街を、キリトも俺も、実は結構好きだったりする。
街に入ろうとするキリトを、
「ちょっと待って」
と止める。
「なんだよ……て、ああ」
と納得し、少し顔を曇らせるキリト。
「さすがにな……すぐ終わる」
そう言うと、俺はメニューウィンドウを開き、一つのアイテムを装備する。
それはなんの変哲もないローブだ。
頭から踝の上あたりまで隠す地味な色をしたローブ。
「じゃ、行くか」
「あ…ああ」
と、キリトは若干声を重くし、歩き出した。
(悪いな、キリト)
隣にいる親友に心の中で謝る反面、心配してくれることに、少しうれしくなりながら、歩きはじめた。
俺達はねぐらにしている宿に戻る前に先の戦闘で得たアイテムを売りに行こうと、馴染みの買い取り屋に向かっていた。
数分歩き、店の中に入ると、プレイヤーが数人アイテムの売買をしていた。
店の奥にいくと、店主で、俺達の馴染みであるエギルが、ちょうど商談を終えたところだった。話終えたプレイヤーは顔を苦くしながら店をあとにしていった。
少し同情しながら、エギルに話しかける。
「おっす。相変わらず阿漕な商売してるな」
「あんまり反感買うようなことしてると、PKされるぞ」
と、キリト、俺の順に言った。
「よぉ。キリトにカイト。安く仕入れて安く提供するのがウチのモットーなんでね」
悪びれる様子もなくエギルは言った。
「ったく……まあいいか、俺のも頼む」
「お前らはお得意様だからな、あくどい真似はしませんよっ、お……?」
そう言ったエギルだが、キリトのトレードウィンドウを見ると目を丸くした。
どうでもいいが、こいつほんとにでかいなと思う。外見はどう見たって、レスラーとかそんな風にしか見えない。
「おいおい、S級のレアアイテムじゃないか。《ラグー・ラビットの肉》か、初めて見るな……。キリト、金には困ってねえんだろ?食いてえとは思わねえのか?」
「そりゃできれば食いてえよ。だけど、これを料理できるほどスキル上げてる奴なんてそうそう……」
とその時、俺のうしろから声がした。
「キリト君」
それは女性の声だった。その時点で俺はその声の主に心当たり、もとい、確信があった。
その女性はキリトの肩に手を置こうとし、その前にキリトがその手をとり言う。
「シェフ捕獲」
「な……なによ」
その女性はキリトの言動に少し面食らった。
一目見れば忘れない、少なくとも、圧倒的に女性の少ないこのせかいで、忘れることのできないと思うほど、女性は美人だった。
彼女の名はアスナ。SAOの中にあるギルドの中でも最強と呼ばれるギルド《血盟騎士団》のサブリーダーである。その剣術はあまりにも、繊細で素早いことから《閃光》の異名を取る程だ。
そう言えば、と思っていると、いまだアスナの手を握るキリトに殺気に満ちた視線を向ける奴がいた。
どうやらアスナの護衛らしい。その男をよく見ると、少し見覚えがあった。
「(たしかクラディールだったか?)」
俺はこいつを知っている。
昔、奴といざこざがあって、決闘《デュエル》をしたのだが、その時の顔をしていた。視線に攻撃判定があれば、間違いなく、ダメージを食らってしまいそうだ、と思うほど奴の視線は激しかった。
その視線を受け流し、アスナの手を離しながら、キリトは言った。
「珍しいな、アスナ。こんなごみ溜めに顔を出すなんて」
途端、クラディールと、エギルの顔が少し引きつる。
「なによ。もうすぐ次のボス攻略だから、ちゃんと生きてるか確認に来てあげたんじゃない」
「フレンドリストに登録してんだから、それくらい判るだろ」
そう言うと、アスナはキリトから顔をそむけた。
仕方なく俺はアスナに話しかける。
「ようアスナ。そんなつんけんしなくても、キリトはちゃんとわかってるって」
「久しぶり、カイト君。やっぱり直接確認しなきゃ駄目だと思うの」
「キリト限定だろ」
そう言うと、アスナは珍しく頬を少し朱に染めた。
実を言うと、俺はアスナが苦手である。今はまだ周りの目があるが、これが俺、キリト、アスナだけの場所になると―――いかんいかん。考えては駄目だと思い、話を戻す。
「それで、キリトにさっきのこと聞いてみたら?」
「あ、そうだね。キリト君。さっきのなんだったの?シェフがどうとかって?」
「そうそう。あのさ、お前いま、料理スキル熟練度どのへん?」
とキリトが聞くと、アスナは不適に笑い
「聞いて驚きなさい、先週にコンプリート《完全習得》したわ」
と彼女は言った。
その答えに俺とキリトは
「へぇ」
「なぬっ!」
おれは若干、キリトはかなり驚いた。
恐らくキリトの方は呆れもあるのだろうが。
「……その腕を見こんで頼みがある」
とキリトはそう言いながらアスナを手招きした。
あの野郎アスナに頼む気だな、と俺は思い少し顔が綻んだ。
「うわっ!!こ……これ、S級食材!?」
と心底驚いていた。まあ当然だろう。俺でも驚く。
「取引だ。こいつを料理してくれたら一口食わせてやる」
言い終わらないうちにアスナはキリトの胸ぐらを掴み、キスするんじゃないかと思うほど顔を寄せ、
「三分の一!!」
と言った。
キリトはその勢いに圧倒され、頷いていた。それと同時に
「どうして半分じゃないんだ?」
と、聞いていた。
アスナは当然という風に
「もう三分の一は、カイト君の。どうせ君のことだから、狩ったのカイト君なんでしょ。だからカイト君も食べる権利はあるし、君たちは料理できる道具なんてないんでしょ。だから特別に私の部屋を提供してあげるわ」
とんでもないこと言ってきた。
途方に暮れる俺とキリトを気にもとめず、アスナは護衛の二人に声をかけた。
「今日はここから直接《セルムブルグ》まで転移するから、護衛はもういいです。お疲れ様」
そう言うと、片方―――クラディールは、ものすごい剣幕で
「アスナ様!こんなスラムに足をお運びになるに留まらず、素性の知れない奴を二人もご自宅に伴うなど、とんでもないことです!」
と、叫ぶように言うクラディール。
そのセリフに俺は少しムッとした。《様》をつけるとは、こいつとんだいかれ野郎じゃないだろうか、と思う。見ると、当の本人も相当にうんざりした表情をしている。
「素性はともかく、この二人は、腕は確かだわ。あなたより十はレベルが上だと思うわよ、クラディール」
「そ、そんな馬鹿な!こんな奴らに劣るなど………」
言い終わらないうちに、俺は言う。
「そんなカッカすることないだろ。別に料理振る舞ってもらうだけだし」
すると、クラディールは、俺を憎々しげに睨んできた。
「なんだと!?貴様!文句があるなら顔を見せろ!」
そう言うと、クラディールは俺のローブのフードを剥ぎ取った。そして俺の顔を見た途端
「!?」
奴は絶句した。
それもそのはず、俺はキリトやクラディールたちとは、まったく違う部分があるからだ。
それは髪の色が真っ白だということだ。
長さこそ普通ではあるが、とにかく白いのである。
―――あの日、SAOが始まった日、プレイヤーは全員、現実の体となったわけだが、俺の場合、現実の髪は白いため、このせかいでも、例外なく適用されたのだ。
ただ、クラディールが驚いたのはそれだけじゃない。
「き、貴様はあの時の!?」
「久しぶりだな。まさかお前がギルドに入っているとはな」
「な、なん………」
と、口ごもるクラディールだが、アスナはそんなこと気にすることもなく、
「ともかく今日はここで帰りなさい。副団長として命令します」
そう言い残し、こちらに振り返ってきた。
「さ。行きましょ」
「あ、ああ」
「…」
呆気にとられていたキリトだが、俺は少し気分が落ち着かなかった。
というのも
「なにあの髪?」
「気持ち悪い」
「どうやったらああなったんだ?」
などといった声が聞こえてくる。
やめてくれ。もういやだ。なぜ俺ばっかり。
そんな思いになる。結局何も変わらないのか?どこにいこうと、どこにいようと、俺はあんな感じに見られ続けるのか?
興味と、忌避と、羨望と、蔑みと、哀れみの視線に―――
不意に現実の彼女の声が耳に響いた。
―――『海斗の髪、好きだな。だって僕、海斗のことが―』―――
「楓……」
そう呟いた。会いたい。彼女に。
会って話したい。自分が何をしてきたかを。
会って抱き締めたい。もう離れないという思いを込めて。
会ってキスしたい。楓が好きだという思いを込めて。
だけどできない。彼女はこのせかいにはいない。なら自分が戻るしかない。そのために今まで生きてきた。だが、最近は考えが変わってきた。
キリトとアスナ。
あの二人によって。
あの二人に守られてきた。なら今度は俺が助ける番だ。
「お似合いだぜ。二人とも」
手でフレームをつくり、前をいく二人を収めた。なぜだかとても似合ってると思った。
どうも黒川可憐です。
如何でしたか?
正直タイトル通りだったか微妙でしたが、皆さんの意見が聞きたいです。
さて、次回は少し紹介回にしたいと思います。
何で?とか思う方いると思いますが、カイト君の想い人も出てきた(名前だけですが)ことなので、いいかな~みたいな?すいません僕の独断で。
というわけで、意見、要望、感想、などなど、お待ちしております。