多々走らねば、生き残れない!!   作:芦毛スキー

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それだけの。



(かね)

『金は命よりも重い』というのなら。

命も、金でどうにかできるのだろうか。

道徳的にはよろしくない話ではあるが、このトレセン学園という場所に幸か不幸かひょんなことから入学し、その結果『金』という、人間として生きるなら永久逃れられないものに纏わりつかれているマネーピットからしてみれば、その問いは無視できないものだった。

 

「は、こりゃあ金銭感覚狂うやつも出るわな」

 

契約しているトレーナーや、チームに半分持っていかれるとしても、普通の学生ならバイトしてでもそう稼げない額がポンと。

しかも、寮生活の学園という閉じた環境であるであるならなおさら、周りに引きずられて。

 

「まぁ、俺には関係ない話だけど」

 

実のところ。

誰もが『"あの"マネーピット』と呼ばれるまでに過密な出走スケジュールをこなしている彼女でも、その稼いだ賞金の大半は実家に送金することとなっている。

それがトレセン学園に入学すると決まった際に決められた『約束』といえば間違いでは無い。

が、幼き日より小さな物置部屋に閉じ込められ、本格的に勉学をし始めたのは学園に入学以後…という彼女にとっては『約束』の内容である金額が世間一般に見て適正なのか、そうでないのかが分からず。

 

「また、レースなの?」

「おう。お土産は買ってきてやるよ」

「ストラップぐらいでいいからね」

「おうよ」

 

 

エクスクイジットの同室であるマネーピットの出走スケジュールは普段マネーピットを遠巻きにする生徒たちでも思わず眉をひそめてしまうほどに過密であった。

しかし当の本人を止めようにも「ストレッチはちゃんとやってるから」、トレーナーに話を通そうにも「彼女の自主性に任せている」と。

 

「なんだ、また家族に電話してきたのか?」

「うん」

「カーッ、相変わらず仲が良いなァ!」

 

就寝前の自由時間、家族へと電話をかけて戻ってきたエクスクイジットを、今日もマネーピットはからかうような、それでいてどこか羨ましいとでもいうような顔をする。

 

「ピットくんだって連絡すればいいじゃない」

 

だから、当然のようにそう告げた。

だってエクスクイジットにとって、家族というものは仲睦まじいものだったから。

 

「俺は、…別に」

「?」

「下のヤツがまだ手ェかかる歳だから」

「あぁ…なるほど」

「それに」

「それに?」

「……ゃ、いいわ、やっぱ」

 

───────

─────

───

 

(ほんとに、いるんだな。『仲のいい家族』っての)

 

ごろりとベッドに転がりながら考える。

 

(別に、嫌いなワケじゃあない。そもそも…)

 

────嫌いになる、思い出もないしな。





【金食い虫】:
マネーピット。
ちょっと『家族』というものに対しての知識があんまない。
だって外から眺めてたばっかだしね。
なのでよく家族に電話しに行く同室を見ては何とも言語化できない感情を抱いてたりしそう。
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