ただ、愛されたかったの。
「そんなに稼いで、何かしたいことでもあるの?」
「あ゛?」
「だって、普通はそうじゃない?」
暇つぶしの貯金箱の小銭チェックをしていると、同室のエクスクイジットにマネーピットはそう問われた。
「別に。この世界は金が支配してんだから、金があれば幸せになれるだろ?」
「そこだよ」
「は?」
「キミ、そのお金で何かしたいって」
『夢』はあるの?と。
ひどく純粋な目で問われた。
「は、」
「ほら、些細なことで言えばあの化粧品が欲しいとか小さい頃に食べてたあの駄菓子を大人買いしたいとかさ。スケールが大きくなれば外国でお城を買いたいとか。…買えるかは、また別としてね」
「スケールがでかいな」
そう言われてみれば、とマネーピットは考える。
『守銭奴』と揶揄されるぐらいには金の亡者というヤツになってしまった己だが、その実そのお金で何をしようというのだろう?
菓子もトレーナー室に備え付けとか、もらい物でしか食べねぇし、そもそも食に関しての感慨が薄い。
甘い辛い苦い酸っぱいはちゃんと分かっているが、どれがどうして美味しいのかと聞かれると、答えられない。
「キミはお金に執着してるけど、お金そのものには興味がないのかもね」
「…そう、かもな」
*
マネーピットというウマは金によって救われる…ということになっている。
遠に彼女は実家から勘当されているが、これまで彼女を育てるために使用した費用とトレセン学園に通っている間の諸々の費用を払い終えることが無い限りは彼女はかの家の
「あと、どれだけ払えば」
賞金が入っても入っても数字が引かれていく通帳。
それを見つつ、彼女は思う。
「あとどれだけ稼げば」
金は力だ。
金さえあれば何でもできるし、何にでもなれる。
「そうだろ?」
その、はずだろう?
・
・
・
マネーピットが生まれた家が、使用人もいるまぁそこそこの家柄であることは紛うことなき事実ではあるが。
その家の家計とやらが少々傾いていることは…その家の、中枢しか知らぬ極秘情報で。
元より成金でのし上がった家で、節制なんてあってないような家であったから、レースの世界という多額の金額が動く世界に足を踏み入れたマネーピットは彼らにとって渡りに船であったのだ。
…それまで、空気のように扱っていたとしても。
「ははは」
戸籍こそあるものの、ずっと存在をないもの扱いされていたマネーピットに社会的な知識はない。し、マネーピットは彼らに逆らわない。
それが何故かと聞かれると…?
【金食い虫】:
マネーピット。
稼いでるし金勘定もするけど、その実稼いだ金でなにかしたいという『夢』はないウマ娘。
「金を稼ぐ」というところで停滞しており、その先がない。
たぶん将来の夢を聞いてもろくに答えられないタイプですね。