どうか、強く頷いて。
目を覚ますと、知らない天井だった。
身を起こそうとすると視界の中にナースコールらしいボタンがあったので手を伸ばして押せば、慌てた様子でたくさんの人々がやってきた。
そのあまりの勢いにはじめはタジタジであったが、随分と長い間(半年ぐらい)ベッドの住人となっていたと聞くとさもありなんと。
「よォ、久しぶり」
検査を受けて、それでリハビリどうすっかな〜と悩んでいたある日、同室…いや俺がベッドにいた間に卒業してたらしいからもう元同室か?のエクスクイジットが病室に尋ねてきた。
……なんか覚悟キマった顔して。
「元気か?」
「…うん」
「髪、伸びたな。俺がベッドにいる間に」
「まぁ…」
煮え切らない返答。
どこかうわの空のエクスクイジットに、俺は思わず首を傾げてしまった。
「どうした?」
「いや……その、さ」
言い淀む様子にますます首を傾げる俺。
そんな俺に、エクスクイジットは意を決したように口を開いた。
「キミを、買った」
「は、」
「あの…人、いや人というのも烏滸がましいな。キミの親と名乗るのからキミを買った」
もたらされたのは数分呆けてしまうほどの爆弾。
買った?
何を?
───俺、を?
「あのまま行けば保険金をかけて…となってもおかしくなかった。」
「えぇ……そんな、」
「だから、その……キミを、買った。いや違うな。『買った』なんて言い方はおかしいか。でも、ううん」
エクスクイジットが何を言っているのかわからない。
走れなくなった俺に意味は無い。し、それを受け入れるしかなかったはずだ。
…なのになんで今更俺を?
いやそもそもなんで俺を買ったんだ?
「もうあの家に戻る必要はないよ。これからは僕がキミの世話をする」
「いや世話っていっても俺もう歩くのすらおぼつかないんだろ?お医者サマが言ってたぞ、リハビリしても補助ありで歩けるかどうかって」
「だからふたりで住める家を建てた。全部バリアフリーにしてる」
「ええ…」
「キミが望むなら、仕事も。……キミは、どうしたい?」
エクスクイジットの言葉に思わず俺は頭を抱えた。
どうって? どうもこうもねぇよ! なんでこうなった!?
「ねぇ」
「……なんだよ」
「僕はキミに幸せになって欲しいんだ。だから……」
エクスクイジットのその言葉に、俺は思わず笑ってしまった。
幸せ?俺に?
そんなのもうとっくの昔に諦めたよ。
でも。
「選択肢は、それだけだろう?」
「…そうだね」
俺を見つめるお前の目は悔恨に満ちていて。
満ちているのに。
「お前の『幸せ』にはさ、」
「うん」
「俺は…必要?」
【金食い虫】:
マネーピット。
命はあるが、ウマ娘という種族的には死んだも同然。
リハビリを懸命にしても補助ありで歩ける…かな?ぐらい。
目が覚めたら同室に見受けされてた。
いちおう血縁上の親のことを聞いても見るがはぐらかされた模様。