多々走らねば、生き残れない!!   作:芦毛スキー

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どうか、強く頷いて。



◆『幸せ』の選択肢

目を覚ますと、知らない天井だった。

身を起こそうとすると視界の中にナースコールらしいボタンがあったので手を伸ばして押せば、慌てた様子でたくさんの人々がやってきた。

そのあまりの勢いにはじめはタジタジであったが、随分と長い間(半年ぐらい)ベッドの住人となっていたと聞くとさもありなんと。

 

「よォ、久しぶり」

 

検査を受けて、それでリハビリどうすっかな〜と悩んでいたある日、同室…いや俺がベッドにいた間に卒業してたらしいからもう元同室か?のエクスクイジットが病室に尋ねてきた。

……なんか覚悟キマった顔して。

 

「元気か?」

「…うん」

「髪、伸びたな。俺がベッドにいる間に」

「まぁ…」

 

煮え切らない返答。

どこかうわの空のエクスクイジットに、俺は思わず首を傾げてしまった。

 

「どうした?」

「いや……その、さ」

 

言い淀む様子にますます首を傾げる俺。

そんな俺に、エクスクイジットは意を決したように口を開いた。

 

「キミを、買った」

「は、」

「あの…人、いや人というのも烏滸がましいな。キミの親と名乗るのからキミを買った」

 

もたらされたのは数分呆けてしまうほどの爆弾。

買った?

何を?

───俺、を?

 

「あのまま行けば保険金をかけて…となってもおかしくなかった。」

「えぇ……そんな、」

「だから、その……キミを、買った。いや違うな。『買った』なんて言い方はおかしいか。でも、ううん」

 

エクスクイジットが何を言っているのかわからない。

走れなくなった俺に意味は無い。し、それを受け入れるしかなかったはずだ。

…なのになんで今更俺を?

いやそもそもなんで俺を買ったんだ?

 

「もうあの家に戻る必要はないよ。これからは僕がキミの世話をする」

「いや世話っていっても俺もう歩くのすらおぼつかないんだろ?お医者サマが言ってたぞ、リハビリしても補助ありで歩けるかどうかって」

「だからふたりで住める家を建てた。全部バリアフリーにしてる」

「ええ…」

「キミが望むなら、仕事も。……キミは、どうしたい?」

 

エクスクイジットの言葉に思わず俺は頭を抱えた。

どうって? どうもこうもねぇよ! なんでこうなった!?

 

「ねぇ」

「……なんだよ」

「僕はキミに幸せになって欲しいんだ。だから……」

 

エクスクイジットのその言葉に、俺は思わず笑ってしまった。

幸せ?俺に?

そんなのもうとっくの昔に諦めたよ。

でも。

 

「選択肢は、それだけだろう?」

「…そうだね」

 

俺を見つめるお前の目は悔恨に満ちていて。

満ちているのに。

 

「お前の『幸せ』にはさ、」

「うん」

「俺は…必要?」





【金食い虫】:
マネーピット。
命はあるが、ウマ娘という種族的には死んだも同然。
リハビリを懸命にしても補助ありで歩ける…かな?ぐらい。
目が覚めたら同室に見受けされてた。
いちおう血縁上の親のことを聞いても見るがはぐらかされた模様。
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