多々走らねば、生き残れない!!   作:芦毛スキー

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しあわせになろう。



◆ふたりの暮らし

あの宣言のとおり、退院した俺はエクスクイジットに引き取られた。

カラカラと車椅子に揺られ、エクスクイジットの言う家に到着した俺は、そのまま屋敷の奥へと連れられ、そしてとある一室へと通された。

 

「ここが今日からキミの部屋だよ」

「はぁ…」

 

「また小物とか見繕おうね」と話しかけられるが何も返せない。

なにせ目の前に広がる光景は広々とした部屋。

『え?これが俺の部屋なんですか?』という顔で振り返ればニコニコと微笑まれるばかり。

 

「部屋の大きさで言えばトレセンの寮部屋ぐらいかな?あ、そこのドアは僕の部屋と繋がってるから何か用事があれば呼んでね」

「お、おう……」

 

あの物置部屋とはえらい違い。

テレビだってついてるし、ベッドだってフカフカだ。

 

「それじゃあ、僕は仕事があるから。何かあったら」

 

そう言ってエクスクイジットは部屋から去っていった。

残された俺はと言うと、車椅子から下ろされた通り、とりあえずベッドへと横たわる。

リモコンで動作するそのベッドは何度かボタンを押すとちょうどいい角度になり、近くに置かれていたテレビのリモコンを取ってはぼんやりと眺める。

ありがちなワイドショー。

特段興味のないそれをBGMに、いつしか眠りに落ちるまで…そう、時間はかからなかった。

 

 

エクスクイジットの貯金は、マネーピットと暮らすための諸々のもので、その大半が消費された。

とはいえ、元より()()するために勉強をしていたところもあったので、特に問題もなく生活はできている。

 

「エクス〜」

「なぁに?」

「お腹へったぁ」

「あぁ…もうそんな時間か」

 

今のマネーピットは無一文だ。

あの日、完全に縁切りさせて終わりかと思いきや、それまで彼女が必死に稼いできた賞金がすべてマルっと持ち逃げされており。

はやく捕まればいいものを、未だ逃げ回っているらしい不届き者のことを思い出して、エクスクイジットはため息を吐く。

 

「今日は何が食べたい?」

「ん〜……野菜!」

「またかい?この前も食べたじゃないか」

「だって美味しいし!ねぇいいだろぉ〜」

 

車椅子を押しながら、そんな会話をする。

マネーピットはあの日以来、エクスクイジットにべったりだった。

どこに行くにもついて回り、何をするにも一緒で、まるで親鳥を追う雛のようだと彼女は思ったが口にはしなかった。

 

(そもそも、そうしないと)

 

カラカラと駆動する車椅子。

何度頑張ったって、マネーピットの脚はエクスクイジットの支えがあってようやっと立ち上がれるぐらいにしか回復せず。

一歩でも歩こうとするものなら、その足は震え、彼女はすぐにその場にへたり込んでしまう。

 

「なぁエクス〜」

「ん?」

「今日のご飯なに〜?」

「今日は……そうだね」

 

車椅子を押しながら、エクスクイジットは考える。

 

(やっぱりそろそろお肉かなぁ)

 





【金食い虫】:
マネーピット。
幸せ(?)。
エクスクイジットに全ての面倒を見てもらっている。
はじめは自分に与えられた自分だけの部屋に気遅れしていたが段々と順応。
少しずつ小物とかが増えていくようになる。

【この上なく素晴らしい】:
エクスクイジット。
元からこうなるために貯金を頑張ってた。
【金食い虫】の世話は特に苦でもなく嬉々としてしている。
【金食い虫】を幸せにしたい。
…ただ、それだけ。
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